時計のアラームが鳴り響き、パチっと目を開いた少年の一日が始まった。
急いで下に降りて、冷蔵庫から卵とベーコン、それに昨日のサラダの残りを取り出して朝食を作り始める。
今日はすでに夏休みなんだけど、兄の夏期講習があるっていうので食事当番の少年は早起きをせざるをえないのだ。
家事を分担してる中、主に食事担当のこの健気な少年、名を高崎尚吾という。現在十一歳の小学五年生、見た目はスポーツ少年というよりは生き物係でいっぱいいっぱいそうな感じである。
「あ、兄ちゃん。朝ご飯できてるよ」
「……ああ」
しばらくして、あまり目が覚め切ってない兄が降りてきた。ものぐさに食事を適当に取り、気だるそうに着替えをする様子にも尚吾は慣れっこである。
片付けをしているころ、兄が身支度を終え、欠伸を残して家を出て行った。
急いで下に降りて、冷蔵庫から卵とベーコン、それに昨日のサラダの残りを取り出して朝食を作り始める。
今日はすでに夏休みなんだけど、兄の夏期講習があるっていうので食事当番の少年は早起きをせざるをえないのだ。
家事を分担してる中、主に食事担当のこの健気な少年、名を高崎尚吾という。現在十一歳の小学五年生、見た目はスポーツ少年というよりは生き物係でいっぱいいっぱいそうな感じである。
「あ、兄ちゃん。朝ご飯できてるよ」
「……ああ」
しばらくして、あまり目が覚め切ってない兄が降りてきた。ものぐさに食事を適当に取り、気だるそうに着替えをする様子にも尚吾は慣れっこである。
片付けをしているころ、兄が身支度を終え、欠伸を残して家を出て行った。
こうなってしまえば後は小学生の身分となっては暇を持て余すのみだ。
ホントはラジオ体操とか宿題とか自由研究とかあるんだけどそれは気にしないことにした。
ホントはラジオ体操とか宿題とか自由研究とかあるんだけどそれは気にしないことにした。
兄が借りてきてくれたビデオでも見ようかなと思い、その前にポストに手紙を取りに行く。
ここからが、少年の日常崩壊の始まりだった。
「あれ? フツーの手紙が入ってる。珍しーな、いつもなら朝刊と広告ぐらいなのに」
物珍しそうに呟き、他に何かないかと尚吾はポストの中を覗いてみたが残るはいつも通りの顔ぶれだった。
尚吾はちょっとした興味を覚え、家に手紙を持ち帰り調べることにしてみた。
宛先には高崎という苗字しか書かれていない。さらに送り主がまた奇妙だった。
「『人工精霊タンドゥール』? なんだこれ……」
とっさに尚吾はテレビで見た詐欺のことを思い出した。そして迷いもせずに封を開けた。どうせ手紙なら返事出さなきゃ大丈夫だろって思ったのだ。
中には手触りのいい紙が一枚。そこに書かれていた内容がまたまた怪しかった。
ここからが、少年の日常崩壊の始まりだった。
「あれ? フツーの手紙が入ってる。珍しーな、いつもなら朝刊と広告ぐらいなのに」
物珍しそうに呟き、他に何かないかと尚吾はポストの中を覗いてみたが残るはいつも通りの顔ぶれだった。
尚吾はちょっとした興味を覚え、家に手紙を持ち帰り調べることにしてみた。
宛先には高崎という苗字しか書かれていない。さらに送り主がまた奇妙だった。
「『人工精霊タンドゥール』? なんだこれ……」
とっさに尚吾はテレビで見た詐欺のことを思い出した。そして迷いもせずに封を開けた。どうせ手紙なら返事出さなきゃ大丈夫だろって思ったのだ。
中には手触りのいい紙が一枚。そこに書かれていた内容がまたまた怪しかった。
『まきますか
まきませんか
まきませんか
どちらかに印をつけて、お好きな場所に置いて下さい』
「……なんだろう? この手紙。新手の宗教団体かな? それともお守りの無料サービスかも?」
普通だったら前者を採用し、コンマ数秒後ゴミ箱へ更迭するもんであるが、ちょっと能天気なこの少年はあっさり後者を採用した。
「さーて……兄ちゃんの借りたビデオってどこに置いてあったっけ」
数秒後には手紙のこともすっかり忘れて部屋を出ようと……した直後に体が宙に浮いた。
「わぁっ!?」
と思ったら次の瞬間、絨毯の上へと尚吾の体は果敢にダイビングを仕掛けた。早い話が、何かに躓いて転んだのだ。
ちょっと打っちゃったハナを擦って、尚吾はリビング脱出を妨害した真犯人の方角を睨んだ。どうせ誰もいないしゴミ箱とかだったら文句をぶつけたいし、その上でちらばったゴミを片付けなきゃならないからだ。
でも、犯人はゴミ箱なんかじゃなかった。
「……なんだろ、これ」
小物なんかをいれる、女の子が持ってそうな宝石箱。それを小さい子供ならカンタンに入れそうなぐらい大きくしたモノを想像してほしい。そんな宝石箱など実在しないかもしれない。だが、実際彼の目の前にはあったのだ。
「兄ちゃんが買ったのかな?」
兄が聞いたら即座にツッコミチョップが繰り出されそうな仮説が立てられた。
しかも止せばいいのに、先ほどの仮説を華麗に無視して好奇心をお供に宝石箱を開いてしまった。
「……お、おんなのこ?」
黒くて短い髪に、赤くてなんだか美しい服を纏った少女。
尚吾はとりあえず自分の髪を引っ張った。痛かった。自分の頬を殴って見た。やっぱし痛かった。
以上のことからこうみえても夢じゃないという結論が出た。
まだ兄の所有物って決まってもないのに兄が少女誘拐→宝石箱に監禁→近頃急増する少女殺人事件→弟は見た! →ジッチャン、謎は全て解けたヨ! →一旦CM入りまーす→ちょっとAD君後で裏まで来てくれ――といかいう光景が光速で書けめぐった。しかも後半がよくわからなかった。
「……あ! これ、よく見たら人形だ!」
なぜか119番して自首を考え、実行に移す直前に尚吾は指の関節の存在に気づき、ようやく人形だと理解した。サイズとか衣装とかで分かりそうなものだが、あいにく彼は人形にちょっと疎かった。
「へぇ、よくできてるなぁ」
復活した好奇心を再び仲間に加え、物怖じもせず尚吾は人形を抱き上げてみた。
「へぇ、これってからくり人形なんだ……あ、これがネジ穴だね」
さらに背中のねじ穴と、底にあった金色のねじ巻きに気づき、抵抗なくじこじこと回してみた。ついでだからと宝石箱から出してやり、床に寝かせて見る。もしかしたら起き上がって『モルスァ』とか喋り出すかなと思ったのだ。
でも、じじじじとかいう歯車が動いてるらしい音がするのみで動く気配は見せない。
「壊れてるのかな?」
尚吾が不思議そうに首をかしげた、次の瞬間。
「わぁぁ!?」
突如、人形が目を見開き、ぎこちなく起き上がり始めた。
ちょっとエクソシスト入ってるかもというのが尚吾の感想だった。だけど、ぎこちない動きは立ち上がるにつれ滑らかになる。
そして数回の瞬きをしてから、人形とは思えぬほど人間らしい動きで人形がお辞儀をした。
「あなたが、私のネジを巻いてくれたのですか?」
おどろきの第一声はさすがにモルスァじゃなかった。
「あ、うん。そうだよ。僕尚吾、高崎尚吾、キ、キミは?」
ちょっとわかりにくいが、どうやらさすがの能天気ボーイも動転したらしかった。
「私は宝石乙女(ジュエリーメイデン)の第5ドール、黒曜石です」
黒曜石と名乗る人形はにっこりと尚吾に微笑みかけた。何故か尚吾は赤面した。
「よろしくお願いします、マスター」
「……よ、よろしく」
普通だったら前者を採用し、コンマ数秒後ゴミ箱へ更迭するもんであるが、ちょっと能天気なこの少年はあっさり後者を採用した。
「さーて……兄ちゃんの借りたビデオってどこに置いてあったっけ」
数秒後には手紙のこともすっかり忘れて部屋を出ようと……した直後に体が宙に浮いた。
「わぁっ!?」
と思ったら次の瞬間、絨毯の上へと尚吾の体は果敢にダイビングを仕掛けた。早い話が、何かに躓いて転んだのだ。
ちょっと打っちゃったハナを擦って、尚吾はリビング脱出を妨害した真犯人の方角を睨んだ。どうせ誰もいないしゴミ箱とかだったら文句をぶつけたいし、その上でちらばったゴミを片付けなきゃならないからだ。
でも、犯人はゴミ箱なんかじゃなかった。
「……なんだろ、これ」
小物なんかをいれる、女の子が持ってそうな宝石箱。それを小さい子供ならカンタンに入れそうなぐらい大きくしたモノを想像してほしい。そんな宝石箱など実在しないかもしれない。だが、実際彼の目の前にはあったのだ。
「兄ちゃんが買ったのかな?」
兄が聞いたら即座にツッコミチョップが繰り出されそうな仮説が立てられた。
しかも止せばいいのに、先ほどの仮説を華麗に無視して好奇心をお供に宝石箱を開いてしまった。
「……お、おんなのこ?」
黒くて短い髪に、赤くてなんだか美しい服を纏った少女。
尚吾はとりあえず自分の髪を引っ張った。痛かった。自分の頬を殴って見た。やっぱし痛かった。
以上のことからこうみえても夢じゃないという結論が出た。
まだ兄の所有物って決まってもないのに兄が少女誘拐→宝石箱に監禁→近頃急増する少女殺人事件→弟は見た! →ジッチャン、謎は全て解けたヨ! →一旦CM入りまーす→ちょっとAD君後で裏まで来てくれ――といかいう光景が光速で書けめぐった。しかも後半がよくわからなかった。
「……あ! これ、よく見たら人形だ!」
なぜか119番して自首を考え、実行に移す直前に尚吾は指の関節の存在に気づき、ようやく人形だと理解した。サイズとか衣装とかで分かりそうなものだが、あいにく彼は人形にちょっと疎かった。
「へぇ、よくできてるなぁ」
復活した好奇心を再び仲間に加え、物怖じもせず尚吾は人形を抱き上げてみた。
「へぇ、これってからくり人形なんだ……あ、これがネジ穴だね」
さらに背中のねじ穴と、底にあった金色のねじ巻きに気づき、抵抗なくじこじこと回してみた。ついでだからと宝石箱から出してやり、床に寝かせて見る。もしかしたら起き上がって『モルスァ』とか喋り出すかなと思ったのだ。
でも、じじじじとかいう歯車が動いてるらしい音がするのみで動く気配は見せない。
「壊れてるのかな?」
尚吾が不思議そうに首をかしげた、次の瞬間。
「わぁぁ!?」
突如、人形が目を見開き、ぎこちなく起き上がり始めた。
ちょっとエクソシスト入ってるかもというのが尚吾の感想だった。だけど、ぎこちない動きは立ち上がるにつれ滑らかになる。
そして数回の瞬きをしてから、人形とは思えぬほど人間らしい動きで人形がお辞儀をした。
「あなたが、私のネジを巻いてくれたのですか?」
おどろきの第一声はさすがにモルスァじゃなかった。
「あ、うん。そうだよ。僕尚吾、高崎尚吾、キ、キミは?」
ちょっとわかりにくいが、どうやらさすがの能天気ボーイも動転したらしかった。
「私は宝石乙女(ジュエリーメイデン)の第5ドール、黒曜石です」
黒曜石と名乗る人形はにっこりと尚吾に微笑みかけた。何故か尚吾は赤面した。
「よろしくお願いします、マスター」
「……よ、よろしく」
宝石乙女と天然入った少年の物語が始まりを告げた。