一昔前のお話――
「瑪瑙、今日も留守番よろしくね」
「はい、マスター」
思えばこのころにはもう、僕は“僕”になっていた。『僕には可愛いものなんて似合わない』……いつもそんなことばかり考えていたっけ。
「瑪瑙、今日も留守番よろしくね」
「はい、マスター」
思えばこのころにはもう、僕は“僕”になっていた。『僕には可愛いものなんて似合わない』……いつもそんなことばかり考えていたっけ。
「ごめんねー。遅くなっちゃった」
「お疲れさま」
マスターもいつもスーツで……なんていうか、女の人らしい服を見たことがなかったかもしれない。
「マスターは……その、おしゃれとかしないの?」
「うん? どしたの急に?」
マスターだっておしゃれとかしてみたいんじゃないかと思った。それは自分に重ねてたのかもしれない。
「私はおしゃれって性格じゃないからね。まぁ興味もないし」
……僕はどうだっただろうか。
「でも、興味があるのに自分を縛りつけるのはよくないよ、瑪瑙」
「な、何言って――」
「契約してそんなに長くはないけどさ。それくらいわかる」
僕はこのときどんな表情をしていただろう。
「まぁ瑪瑙は堅物だからね。言っとくけど瑪瑙の百面相見てれば誰だって気づくよ」
「別に僕は……」
「そうそう、その顔」
かんらかんらと彼女は笑った。『そうだ、裁縫でも教えたげよっか』なんて、まるで妹にでも言うように。
思えばこのころから、僕は変わり始めたのかもしれない。
「お疲れさま」
マスターもいつもスーツで……なんていうか、女の人らしい服を見たことがなかったかもしれない。
「マスターは……その、おしゃれとかしないの?」
「うん? どしたの急に?」
マスターだっておしゃれとかしてみたいんじゃないかと思った。それは自分に重ねてたのかもしれない。
「私はおしゃれって性格じゃないからね。まぁ興味もないし」
……僕はどうだっただろうか。
「でも、興味があるのに自分を縛りつけるのはよくないよ、瑪瑙」
「な、何言って――」
「契約してそんなに長くはないけどさ。それくらいわかる」
僕はこのときどんな表情をしていただろう。
「まぁ瑪瑙は堅物だからね。言っとくけど瑪瑙の百面相見てれば誰だって気づくよ」
「別に僕は……」
「そうそう、その顔」
かんらかんらと彼女は笑った。『そうだ、裁縫でも教えたげよっか』なんて、まるで妹にでも言うように。
思えばこのころから、僕は変わり始めたのかもしれない。