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ミルク

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「……!!」
  嫌な夢を見て飛び起きた。
「はあ、は……」
  じわりと目尻が熱くなる。
  ――あ、駄目。
  肩が震えて小さく嗚咽をもらす。
  もう怖いものはここにはいないと分かっているのに、ひきずる夢のせいで涙が止まらなくなる。
「――鶏冠石?」
「っ!!」
  扉の向こうから控えめにかけられた声。
  自分では気づかなかったが、悲鳴でもあげてしまったのだろうか。姉妹を起こしてしまったようだ。
「どうしたの。怖い夢、見た?」
「瑪瑙……いえ、なんでもありませんわ」
「鶏冠石……」
「なんでもないって言ってますでしょう。さ、あなたもお休みなさい」
「……」
  しばらくして、足音が遠ざかる。
  一人ぼっちの部屋がいっそう寒く思えて、肩を抱いた。
  ――今夜は、もう眠れないかもしれない。

  と、再び足音が近づいてきた。扉の前で止まる。
「……鶏冠石、起きてる?」
「!!な……何ですの?」
「ホットミルク作ってきたよ。入るね」
  返事をする前に瑪瑙が入ってきた。
「何ですの……夜中ですわよ、早く戻りなさいな」
  泣いたことを悟られたくなくて、シーツを手繰り寄せてそっぽを向く。
「うん、戻るよ。鶏冠石が眠ったら」
  瑪瑙はベッドサイドの椅子に腰掛けて、暖かそうな湯気の立つカップを差し出す。

「……」
「温まるよ」
「分かりましたわよ。いただきますわ」
  部屋は暗いから、きっと涙の跡なんか見えない。
  まったく、瑪瑙は普段は弱気なようで、こういう時には絶対譲らないのだ。
  温かいカップを受け取って、口をつける。
「……おいしい」
「よかった」
  蜂蜜を少し入れたのだろう、ほのかに甘いミルクを少しずつ飲み下す。
  怖い夢の欠片も、次第に溶けてゆく。瑪瑙が握ってくれている手も、もう震えない。
「……瑪瑙」
「ん?」
「……」
  ありがとう、と言いたかったがうまく声に出せない。
  ちら、と瑪瑙を見る。
  瑪瑙はにこ、と笑って、手をぽん、ぽん、と優しく叩いた。
  声にならないから、ぎゅっと手を握り返した。

  今夜はもう、怖い夢は見ない。


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