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今だけは、僕だけの

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
  いつもの散歩道。春の夕暮れは早く訪れ、冷たい風が吹く。
  今日の同行は瑪瑙。いつもは恥ずかしがって一緒に歩くことが少ないのだが、無理矢理引っ張り出してきた。

  他愛のない話をしながら二人で木立を抜ける。他に人や姉妹がいないせいか、いつもより少し饒舌な瑪瑙の姿が新鮮だ。自分の胸のうちを表に出さない娘なので気にはしていたのだが、こういう姿を見せてくれると嬉しいやら安心するやら。

  ヒュゥゥゥ

  冷たい風が吹きぬける。
「瑪瑙。おいで」
  手を差し伸べてみる。いつもなら照れ屋のこの娘は拒むはずだが……。
「……はい」
  風は相変らず冷たかったが、二人の手は温かだった。

    ◇    ◇    ◇    ◇
  マスターに引きずられるように散歩につき合わされる。
  いつもなら断るのだけれど、強引さに負けてしまった。
  一緒に歩けるのは、実は嬉しくて仕方ない。
  でも、マスターと二人きりだなんて……そんな……。
  だから、強引に誘われるのも実は嬉しい。
  散歩の時間の間はマスターを独占できる。
  いつもは他の娘に譲るマスターの隣も、今日は僕の指定席。

  周りの木々は静かに春の目覚めを待っている。動いているのはマスターと僕だけ。
  他には誰もいない。いつも話せないことも、今日はなんとなく話せる。
  マスターが僕の話に耳を傾けてくれる。微笑んで応えてくれる。
  そんな、他愛のないことを幸せに思う。

  ヒュゥゥゥ

  冷たい風が吹きぬける。
「瑪瑙。おいで」
  マスターが手をのばす。手をつなぐの? え……そんな……。
  でも、今日は……いまは……僕だけのマスターなんだから……
「……はい」
  風は相変らず冷たかったが、二人の手は温かだった。
  顔が赤くなっているはずだけど、夕闇が隠してくれた。
  家に帰るまでは、僕だけのマスター。
  つないだ手の温かさを忘れないでおこう。


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