『これ、蛋白に渡してあげてねぇ』
帰り際に出会った爆弾岩さんに手渡された紙袋。
中身はもちろん見ていないし、教えてもらってもいない。気にはなるけど。
でも、蛋白石に手渡したとき、とても嬉しそうな顔してたなぁ。きっといいものなんだろう。
「ご主人様ーっ」
と、明るい声が居間に響いたのは夕食後。
食事を終えてすぐに隣の部屋へ籠もった蛋白石の、ふすま越しからの呼びかけ。
テレビを見ていた僕、そして殺生石と電気石が声の方向に振り返る。
「どうしたの?」
「えへへー、見ててくださいねー」
その一言と同時に、ふすまが開け放たれる。
現れたのはもちろん蛋白石……いや、え?
「……どうしたの、その格好」
正直、目のやり場に困った。
いつもより明るい笑顔を浮かべる蛋白石。その姿は普段の胸を強調したドレス姿ではなく、それよりさらに胸を強調する過激な水着姿だった。
白のビキニ。腰にはパレオを巻き、体を回してロングスカートのようになびかせる。
「似合いますか?」
「え……えと……うん」
うつむき加減に答える。体を見ていたら色々と収集がつかなくなりそうで、色々と……。
「どこからそんな破廉恥な服を持ち出したのですか……」
「むー、破廉恥じゃないもんっ。水着だよー」
「水着……主様、それはどういう物なのですか?」
「ん、その名の通りだよ。水に入るときに着る物」
その説明を聞き、その怪訝そうな顔をこちらへ向けてくる殺生石。
「……主様が購入なされたのですか?」
「違うよー。爆姉様に買ってもらったの。えへへ」
なるほど、あの紙袋の中身はそれだったのか。
確かに、爆弾岩さんならこういう水着を選んでもおかしくはない。
「えへへ、ご主人様ー」
「ん……あ、あの、あまりくっつかないで。当たるから」
「ほえ? それよりもー、今年はみんなで海に行きましょうね」
「あぁ、海ね……いいけど、でもいいの? 他の人に見られたりしたら大変な気も」
「爆姉様がその辺は任せてって言ってましたよー。だから大丈夫ですよー」
笑顔で腕に抱きついてくる。だから色々当たる……。
……と、こちらに向けられる視線。殺生石の冷ややかな視線はあえて気にしないとして。
「どうしたの、電気石?」
電気石が、僕の顔をじっと見つめている。
「……海?」
「うん、蛋白石が行きたいって……」
「……いっしょ?」
首をかしげる。
「そうだね、行くんだったらみんな一緒だよ」
きっとみんなで楽しい思い出が作れるに……と思った矢先、なんか電気石がしょんぼりと。
「……いい」
「え?」
一瞬、自分の耳を疑った。
電気石が、今いいって……いいよのいいじゃなくて、断る方の。
「って、電気石っ、どこ行くの?」
長い含み。
「お部屋」
それだけつぶやき、居間を出て行く。
顔はとても憂鬱そうで……放っておける様子じゃなかった。
帰り際に出会った爆弾岩さんに手渡された紙袋。
中身はもちろん見ていないし、教えてもらってもいない。気にはなるけど。
でも、蛋白石に手渡したとき、とても嬉しそうな顔してたなぁ。きっといいものなんだろう。
「ご主人様ーっ」
と、明るい声が居間に響いたのは夕食後。
食事を終えてすぐに隣の部屋へ籠もった蛋白石の、ふすま越しからの呼びかけ。
テレビを見ていた僕、そして殺生石と電気石が声の方向に振り返る。
「どうしたの?」
「えへへー、見ててくださいねー」
その一言と同時に、ふすまが開け放たれる。
現れたのはもちろん蛋白石……いや、え?
「……どうしたの、その格好」
正直、目のやり場に困った。
いつもより明るい笑顔を浮かべる蛋白石。その姿は普段の胸を強調したドレス姿ではなく、それよりさらに胸を強調する過激な水着姿だった。
白のビキニ。腰にはパレオを巻き、体を回してロングスカートのようになびかせる。
「似合いますか?」
「え……えと……うん」
うつむき加減に答える。体を見ていたら色々と収集がつかなくなりそうで、色々と……。
「どこからそんな破廉恥な服を持ち出したのですか……」
「むー、破廉恥じゃないもんっ。水着だよー」
「水着……主様、それはどういう物なのですか?」
「ん、その名の通りだよ。水に入るときに着る物」
その説明を聞き、その怪訝そうな顔をこちらへ向けてくる殺生石。
「……主様が購入なされたのですか?」
「違うよー。爆姉様に買ってもらったの。えへへ」
なるほど、あの紙袋の中身はそれだったのか。
確かに、爆弾岩さんならこういう水着を選んでもおかしくはない。
「えへへ、ご主人様ー」
「ん……あ、あの、あまりくっつかないで。当たるから」
「ほえ? それよりもー、今年はみんなで海に行きましょうね」
「あぁ、海ね……いいけど、でもいいの? 他の人に見られたりしたら大変な気も」
「爆姉様がその辺は任せてって言ってましたよー。だから大丈夫ですよー」
笑顔で腕に抱きついてくる。だから色々当たる……。
……と、こちらに向けられる視線。殺生石の冷ややかな視線はあえて気にしないとして。
「どうしたの、電気石?」
電気石が、僕の顔をじっと見つめている。
「……海?」
「うん、蛋白石が行きたいって……」
「……いっしょ?」
首をかしげる。
「そうだね、行くんだったらみんな一緒だよ」
きっとみんなで楽しい思い出が作れるに……と思った矢先、なんか電気石がしょんぼりと。
「……いい」
「え?」
一瞬、自分の耳を疑った。
電気石が、今いいって……いいよのいいじゃなくて、断る方の。
「って、電気石っ、どこ行くの?」
長い含み。
「お部屋」
それだけつぶやき、居間を出て行く。
顔はとても憂鬱そうで……放っておける様子じゃなかった。
「電気石、入るよ?」
ノックの後、蛋白石と電気石の部屋に入る。
電気石は……こちらに背を向けたまま、床に置いたスケッチブックに絵を描いていた。
別段変わったところのない、いつも通りの風景。でも、普段ならこちらに顔を向けてくる電気石が、今日に限って絵に没頭している。
「急にどうしたの? 蛋白石も心配してたよ」
背後に座りながら声をかけるも、返事はない。
「……もしかして、何か気に障ること言っちゃった?」
返事は……首を横に振るだけ。
これでは余計に分からない。いったいどうしたって言うんだろう。
「……みんなと……遊んで、あげて」
「え?」
「私は……いい」
「そんな、どうして一緒に遊ばないの?」
絵を描く手を止める。
そしておもむろに、その画用紙をこちらに向けてくる。
青と黄色、青の中で遊ぶ人々。人数は、3人。一人は耳と尻尾が付いている。
「海?」
こくりとうなずく。
「姉様と、殺生石と……マスター」
「うん……電気石は?」
沈黙。
「……いい」
そして、またこの言葉。
「……見てる、から……いい」
「見てる、だけなの?」
再びうなずく。
見てるだけ……どうしてそんなこと言うんだろう。
「海、嫌い?」
首を横に振る。
「じゃあ、水着がないの?」
うつむき、こちらから目をそらす電気石。
そして、小さくうなずく。
「水……めー」
そして付け加えられた一言。
……そこでやっと気が付いた。我ながら鈍感だ。
電気石は、水に入ることが出来ない。入れば周囲に電気をまき散らしてしまう。
だからいつも風呂に入っていないのに、どうして気が付かなかったんだろう。
「姉様……遊んでくれる……けど、みんなと……遊べない」
妹思いの蛋白石のことだ。きっと今まで、砂浜で電気石の相手をずっとしていたのだろう。
「気遣ってあげたんだ、蛋白石のこと」
沈黙。
「……ごめんなさい」
謝罪の言葉。悪いことなんて全然していないのに、怒られた子供のように声が震えている。
「どうして謝るの?」
「心配……させたの」
「そっか……」
彼女の頭を、軽く撫でる。
「電気石、海は好き?」
「……うん」
「それじゃあ仕方ないよね、我慢しないといけないから。だから謝らないで」
どうしてこう、この子はこんなに優しいのかな。
蛋白石に負けず劣らずのお姉さん思いで、好きな物も我慢しちゃうんだから。
本当は、遊び盛りの年頃なのに……。
「マスター……姉様と、遊んで……。姉様……マスター、大好き」
そして、また無理をしてそんなことを言う。
……放っておけないよ、やっぱ。
「電気石、水着を着たこと無いの?」
突然の質問に、目を丸くする電気石。
小さくうなずく。
「そっか。じゃあ今度僕と買いに行こう?」
「……水、めー」
「でも海で遊ぶのにドレスじゃ汚れちゃうよ」
「遊ばない」
いつもよりも早い反応。
「僕は電気石と遊びたいよ?」
「……姉様も、マスターと」
「そうだね。だけど……僕、泳げないから」
苦笑混じりに告げる。もちろん本当のことだ。
「……海、嫌い?」
どこか驚いた様子で、電気石が尋ねる。
「いや、嫌いじゃないんだけどね。ただ、昔溺れたことがあってね、それ以来どうも……」
とっさに出た言葉。嘘ではないけど、電気石にこんな顔はさせたくないから。
「……ぶくぶくー?」
「そう、ぶくぶく。だからちょっと水が怖くてね……友達と海に行っても、波打ち際にいるぐらいだよ」
……電気石が笑う。
「マスター……ぶくぶく」
「みんなには秘密だからね。恥ずかしいから」
「海……行ったら、ばれる」
「そ、それはまぁ……あはは」
電気石の顔から、憂鬱な雰囲気が薄らぐ。
「私は……びりびりー」
「うん」
「マスター……ぶくぶく。違う、けど……一緒」
笑顔で、僕の膝の上に乗っかってくる。
「……一緒に、お城……おっきいの、つくろ?」
そうつぶやいた顔は、いつもに増して明るい。
……そう、僕らはお互い泳げない者同士。
ノックの後、蛋白石と電気石の部屋に入る。
電気石は……こちらに背を向けたまま、床に置いたスケッチブックに絵を描いていた。
別段変わったところのない、いつも通りの風景。でも、普段ならこちらに顔を向けてくる電気石が、今日に限って絵に没頭している。
「急にどうしたの? 蛋白石も心配してたよ」
背後に座りながら声をかけるも、返事はない。
「……もしかして、何か気に障ること言っちゃった?」
返事は……首を横に振るだけ。
これでは余計に分からない。いったいどうしたって言うんだろう。
「……みんなと……遊んで、あげて」
「え?」
「私は……いい」
「そんな、どうして一緒に遊ばないの?」
絵を描く手を止める。
そしておもむろに、その画用紙をこちらに向けてくる。
青と黄色、青の中で遊ぶ人々。人数は、3人。一人は耳と尻尾が付いている。
「海?」
こくりとうなずく。
「姉様と、殺生石と……マスター」
「うん……電気石は?」
沈黙。
「……いい」
そして、またこの言葉。
「……見てる、から……いい」
「見てる、だけなの?」
再びうなずく。
見てるだけ……どうしてそんなこと言うんだろう。
「海、嫌い?」
首を横に振る。
「じゃあ、水着がないの?」
うつむき、こちらから目をそらす電気石。
そして、小さくうなずく。
「水……めー」
そして付け加えられた一言。
……そこでやっと気が付いた。我ながら鈍感だ。
電気石は、水に入ることが出来ない。入れば周囲に電気をまき散らしてしまう。
だからいつも風呂に入っていないのに、どうして気が付かなかったんだろう。
「姉様……遊んでくれる……けど、みんなと……遊べない」
妹思いの蛋白石のことだ。きっと今まで、砂浜で電気石の相手をずっとしていたのだろう。
「気遣ってあげたんだ、蛋白石のこと」
沈黙。
「……ごめんなさい」
謝罪の言葉。悪いことなんて全然していないのに、怒られた子供のように声が震えている。
「どうして謝るの?」
「心配……させたの」
「そっか……」
彼女の頭を、軽く撫でる。
「電気石、海は好き?」
「……うん」
「それじゃあ仕方ないよね、我慢しないといけないから。だから謝らないで」
どうしてこう、この子はこんなに優しいのかな。
蛋白石に負けず劣らずのお姉さん思いで、好きな物も我慢しちゃうんだから。
本当は、遊び盛りの年頃なのに……。
「マスター……姉様と、遊んで……。姉様……マスター、大好き」
そして、また無理をしてそんなことを言う。
……放っておけないよ、やっぱ。
「電気石、水着を着たこと無いの?」
突然の質問に、目を丸くする電気石。
小さくうなずく。
「そっか。じゃあ今度僕と買いに行こう?」
「……水、めー」
「でも海で遊ぶのにドレスじゃ汚れちゃうよ」
「遊ばない」
いつもよりも早い反応。
「僕は電気石と遊びたいよ?」
「……姉様も、マスターと」
「そうだね。だけど……僕、泳げないから」
苦笑混じりに告げる。もちろん本当のことだ。
「……海、嫌い?」
どこか驚いた様子で、電気石が尋ねる。
「いや、嫌いじゃないんだけどね。ただ、昔溺れたことがあってね、それ以来どうも……」
とっさに出た言葉。嘘ではないけど、電気石にこんな顔はさせたくないから。
「……ぶくぶくー?」
「そう、ぶくぶく。だからちょっと水が怖くてね……友達と海に行っても、波打ち際にいるぐらいだよ」
……電気石が笑う。
「マスター……ぶくぶく」
「みんなには秘密だからね。恥ずかしいから」
「海……行ったら、ばれる」
「そ、それはまぁ……あはは」
電気石の顔から、憂鬱な雰囲気が薄らぐ。
「私は……びりびりー」
「うん」
「マスター……ぶくぶく。違う、けど……一緒」
笑顔で、僕の膝の上に乗っかってくる。
「……一緒に、お城……おっきいの、つくろ?」
そうつぶやいた顔は、いつもに増して明るい。
……そう、僕らはお互い泳げない者同士。
電気石と共に部屋を出る。
「あっ……」
廊下に出てすぐに、ばつの悪そうな顔を浮かべる蛋白石と出会う。
「あ、あのっ……お姉様、ごめんね」
そして謝罪の言葉。
何のことかと、電気石が首をかしげる。
「私、お姉様のこと考えずに、その……はしゃいじゃったから」
「……んーん」
僕の隣から、蛋白石の隣に。
そして、彼女の体に抱きつく。
「……一緒に、お城……つくろ?」
「お姉様……うん、一緒に作ろうね」
お互い、いつもの明るい笑顔。
蛋白石もあんなに浮かれるんだから、みんな海が楽しみなんだなぁ。
……いい思い出が、作れそうだ。
「マスター……水着、買ってくれる」
「ホント? やったねー、お姉様っ」
「あっ……」
廊下に出てすぐに、ばつの悪そうな顔を浮かべる蛋白石と出会う。
「あ、あのっ……お姉様、ごめんね」
そして謝罪の言葉。
何のことかと、電気石が首をかしげる。
「私、お姉様のこと考えずに、その……はしゃいじゃったから」
「……んーん」
僕の隣から、蛋白石の隣に。
そして、彼女の体に抱きつく。
「……一緒に、お城……つくろ?」
「お姉様……うん、一緒に作ろうね」
お互い、いつもの明るい笑顔。
蛋白石もあんなに浮かれるんだから、みんな海が楽しみなんだなぁ。
……いい思い出が、作れそうだ。
「マスター……水着、買ってくれる」
「ホント? やったねー、お姉様っ」
「……尻尾に塩水は……ダメでしょう」
「え、殺生石どうしたの?」
「え、殺生石どうしたの?」