宝石乙女まとめwiki内検索 / 「仕事の後のお付き合い」で検索した結果
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仕事の後のお付き合い
『もぉ、こんなに酔っぱらって帰ってきて。ダメですよ、飲み過ぎは』 『そぉはいうけどなぁ、漬物石ぃ……』 『ダメです。もしも事故にあったりしたらどうするんですか?』 『うぃー……』 ◆ 「それでマスターったら、廊下で寝ちゃいそうになって……」 湯飲みをテーブルに置きながら、向かいに座る姉さんがため息混じりに微笑む。 困ったマスターと、小さな声で呟く姉さんは、それほど嫌そうな顔を浮かべていない。 「【黒曜石のマスター】さんはしっかりしてそうだから、そういうことはないでしょう?」 「うん。まぁ……ね」 確かにその通りだ。今まで僕にそんな経験はない。 いつも疲れ混じりの笑顔で、みんなにただいまと言って帰ってくるマスター。 とてもしっかりしていると思うし、何より頼りになる人だ。 だけど……。 「どうしたの?」 「え? いや、何...
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小説‐メイン複数76‐103スレ目
...って」より 仕事の後のお付き合い 102スレ目「黒曜石とか宝石乙女が泣く子をあやしたって」より 生魚の恐怖 102スレ目「黒曜石とか宝石乙女が泣く子をあやしたって」より 落雪注意 102スレ目「黒曜石とか宝石乙女が泣く子をあやしたって」より 私と、狐耳の…… 102スレ目「黒曜石とか宝石乙女が泣く子をあやしたって」より もったいないこと 103スレ目「黒曜石や置石達が黒タイツにマフラー、手袋しても」より まるで新婚さんな家に秋が来る 103スレ目「黒曜石や置石達が黒タイツにマフラー、手袋しても」より 冬の朝は冷える 106スレ目「黒曜石とか宝石乙女が宿主に感謝しても」より それはとっても甘くて 106スレ目「黒曜石とか宝石乙女が宿主に感謝しても」より 祭事JAPAN 107スレ目「黒曜石が「電気...
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ヴァレンタインのそのあとは
ヴァレンタイン後の週末、夕食も済んだ静かな時間。ペリドットを誘って呑むことにする。 「少し付き合わないか?」 「お酒ですか? 喜んでお付き合いいたしますわ♪」 真珠さんの影響なのだろうか、アルコールに誘うと断ることが無い。 もっとも、酒というよりはその場の、その席の雰囲気が好きなようだ。 肩の力を抜いた、飾らない空気。 ヒトとヒトとの距離感が近くなることを彼女はよく知っている。 お互いに親密な関係になりたいからこそ、彼女は僕とも姉妹ともよく呑むのだ。 『妹達が大きくなるのが楽しみなんです』 頬を赤くしてそう言っていたこともあったっけ。 その時は僕も一緒に飲みたいと言ったら渋い顔をしたっけなぁ。 『マスターとお酒を呑むのは私だけです。本当は姉さん達とも一緒にはさせたくないのですからね』 そう言い切られたっけ。 目が据わっていたなぁ。 ...
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春宵月影
ある日、アメジストが突然訪ねてきた。 「やあ、お邪魔かな?」 「いいさ、あがりなよ」 「ああ、そうさせてもらう」 おまけが憑いているのもいつものことか。まあ、いいか。 「ちょっとぉ。おまけってなによぉ~」 「気にするな。些事だ」 「あのねぇ……」 「月長石」 「なによ」 「大人しくしてなさい」 ふふふ。しょげた『おまけ』にもイスを勧める。まあ、いつものことだ。気にするほどのことでもない。 「さて、食事でもしていくがいい。私は仕度をしてくる。茶道具はあそこ、葉っぱはあそこだ。 好きに使っていい。少し時間が掛るから、くつろいでいなさい」 「ああ、そうさせてもらう」 二人をおいてキッチンにこもる。さて、何を喰わせてやろうか……。 「オーブン待ちだ。食前酒に何か飲むか? あいにくワ...
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バランスの良い関係とは
夏もついに本番。これからどんどん暑くなってゆく。 普段からだらしのないマスターも、家のことは何もせず自室に籠もりっきり。 きっと、クーラーを全開にしているに違いない。全く、少しは環境のことを考えたら良いのに……。 ちなみに、私は暑いのについてはそれほど苦ではない。我慢強さも乙女として重要なことなのだから。 「夏だ!」 だけど、近くに暑苦しい状況があると、さすがに少々厳しい。 「……そんなの、分かってますわ」 人の部屋、しかもベッドの上で仁王立ちになって、薄手の洋服に身を包んだ金剛石は実に楽しそうだ。 一体夏の何が良いのか……。 「んー? 何か元気ないわねぇー。そんな暑苦しいドレス着てるのが悪いんだよ!」 「大きなお世話ですわ。それと貴女、もう少し慎ましさというものをですね」 「あー、こんな日に小言はいらないよ……いらないですわぁー」...
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私と、狐耳の……
時々、電気石の面倒を見るついでに、他の子供達の面倒を見ることがある。 正直、問答無用に尻尾を弄ろうとしてくる子供達は苦手だった。その後の手入れにどれほどの時間を要するか……。 だからこうして、自分は遠くから子供達を眺めているだけ。あの子達の輪に入ろうものなら、まただんな様に迷惑をかけてしまう。 自宅の庭で遊ぶ子供達。相変わらず、微笑ましい光景。 「……何か?」 その輪に入ろうとせず、荒巻を抱きながらじっとわたくしを隣から見つめてくるだけの少女が一人。 雲母……・この子とは、あまり面識がない。住んでいる家も違えば、互いを結びつける接点もあまりない。 電気石の友達、ただそれだけか。とにかく、わたくしはこの子のことをよく知らない。 「尻尾は触らないように」 「分かってる」 まぁ、それならいいのだけど。 ……会話が続かない。 黙って見つめられるのは嫌だけ...
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貴方がいれば
「んー……」 悩んでいる。 「え……と」 すごく悩んでいる。 「はぁ……」 「ペリドット、悩みなら聞くぞ」 「あ……実は、今晩のおかずはどうしましょうかと」 「嘘付け」 「……ばれちゃいましたか」 まぁ、おかずで迷うこともあるかも知れないが、先のペリドットの悩み方は レシピのそれとは違う。 大体、あからさまに七夕用の短冊を前にして悩んでいるのだ、察しは付く。 「妹達と、七夕を祝うことになったのですが、そのときにみんなで短冊を 飾りましょうということになっていて」 「で、その願い事に詰まっているわけだ」 はい、とうなずくペリドット。 「良い姉妹仲を続けていけますように、とか、そんなのでいいんじゃないのか?」 「ええ、一応そのようなことも考えているのですが……もっと、こう、違うものはないかと」 「……毎日おかずで悩まずに済みますように、ってのはどう...
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サタデーナイトフィーバー
明日は日曜日っ、気にせず飲みまくれ!! 主「そんな勢いで飲んだのが失敗でした……うぉぇ」 黒「もぅ……」 俗に言う二日酔い。飲み過ぎが巻き起こす悪夢。心配そうに、そしてちょっと呆れがちにこちらを見る黒曜石の目が痛い。 黒曜石が手渡してくれた水を一気に飲み干す。はぁー、体に染み渡る。 黒「今日はマスターと一緒にグリコンダー見られなかったって、金剛石ちゃんふてくされてましたよ」 主「あはは、後で謝らないと……うぅ」 黒「今は休んでいて下さい。ご飯は食べますか?」 主「いや……あぁ、たしか素麺の残りがあったよね。それ用意してくれないかな」 分かりましたと言って、台所に向かう黒曜石。なんだか母親みたいだなぁ。 しかし、あんまり飲めないくせに……調子に乗って飲むモンじゃないよな、やっぱ。 でもこちらは付き合いもある訳であって……あぁ...
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ある日の喧嘩
いい感じに恋愛をしている子を見ると、時々思い出す。 あたしにもそういう時期があったこと。そして、本気で好きになった男のこと。 無愛想なマスター。 それがあいつの第一印象。 でも、見てすぐ分かった。ただ照れているだけだって。 それをネタに、よく彼をからかってみた。不機嫌そうにして、そっぽを向くあいつの顔を今でも覚えている。 『ほっといてくれ』 あいつがよく口にしていた言葉。 言われるとちょっとだけ傷つくけど、そのときの顔がからかってるときと同じ。 あぁ、やっぱり照れてるんだって、そう思うとおかしくなって。 だからまたからかってやる。あの顔が見たかったから。 あいつと、本気で喧嘩したことがある。 今考えると些細なことなのに、あたしもつい意地になって言い返してしまった。 あとは自然...
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無理は禁物
主「おはよう黒曜石。今日は寝すぎたよ……」 黒「おはようございますマスター。朝食はどうなされますか?」 主「軽く貰おうかな。それじゃ顔洗ってくる」 黒「かしこまりましたー」 主「おはよう雲母」 雲「……遅いな」 主「ははは、ごめんごめん」 雲「……あまり無理はするな」 主「へ?」 黒「きっとマスターのお仕事のことですよ。はい、コーヒーです」 主「ああ、ありがと。うーん、心配かけない程度に仕事してるんだけどなぁ」 黒「雲母ちゃんはそれだけマスターのことを慕っているんですよ」 雲「……黒曜石!」 黒「ふふっ、……勿論、私も雲母ちゃんには負けませんよ?」
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日常あるいは平穏な日々
遊び相手を求めて虎眼石を迎えに行くアメジスト。 さらに3時間経過 ア「おっと。フルハウス」 虎「……ロイヤルストレートフラッシュ」 ア「おやおや。虎眼石さんは強運だねえ」 虎「……チェスでは勝てなかったから……」 置「なんかさあ」 月「うん」 置「別にいつも一緒にいるからいいんだけどさあ」 月「うん」 置「たまたまかまってほしいときに遊べないと……」 月「うん……ってあたしは別にアメジストにかまってほしいわけじゃ……」 置「あ、え、あたしだって別に虎眼にかまってほしいわけじゃ……」 月「あー……やめよう不毛な言い合いは。ところで髪の毛そろそろ離してほしいんだけど」 置「えー、もうちょっと遊ばせてよー。いーじゃんキレイな髪の毛なんだから」 月「てかさー、ヒマなら混ぜてもらえばー?」 置「……もうけっこう、ってかあの二人...
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願い事、ひとつ 前編
これは古い話。欲望が生み出した不幸の始まり……。 -願い事、ひとつ- 多少名の知れた大道芸人がいた。 人に笑顔を与える事が誇りだった彼。腕も良ければ、仕事にも人一倍情熱を持っている。 笑顔……彼自身も笑顔を絶やさない。それは笑顔を知らない奴が笑顔を与える事など出来ないという信念。 ――時は1789年の3月。フランス革命の近い頃。 ◇ フランス北部のとある森。 その日は空が青かった。雲一つない晴天だ。 だが気温は低い、例を見ないほど低い。南で生まれた彼には、それが相当堪える。 「うひぃ……」 フランスという国はあまり寒くはならない場所だが、これは異常気象とも言うべき寒さだ。 と、そこに彼のくしゃみが響き渡る。 「くっそぉ……お、見えた見えた...
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誤解の相合い傘
自宅前。 「先輩、ホントすみません」 「ううん、気にしないで」 そう言うのは、家が近所にある大学の後輩。 偶然駅前で雨宿りしている姿を見つけ、うちの傘を貸すためにここまで 来てもらった次第。 でも、僕より身長の大きい彼女に傘を持ってもらっている姿は、端からは 姉妹の相合い傘にでも見えたんだろうなぁ。 「今度ちゃんとお礼しますね。それじゃあ、また明日」 「うん、気をつけてね」 ビニール傘を差し、道路へ向かう彼女の後ろ姿を見送る。 ……さて、晩ご飯の用意しないと。改めてドアを開けて室内へ。 「ただい……うわっ!?」 靴を脱ぎ、自分の部屋の前を通り過ぎようとしたところで、突然そこに引きずり込まれる。 気付けばそのままの勢いで畳の上に押し倒され、何かが僕の上に馬乗りになる。 ……緊迫した面持ちの殺生石が、そこにいた。 「今の女は何者ですか?」 「...
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虎目石の逆襲
「さて、この街近辺でここ数日、イタズラ公認と称してイタズラを続ける 少女が現れるという事件がありました」 「ふぉらめぇーっ!」 「何? 姉さん」 「ふぁんふぇふぁふぁしふぁひぶぁられふぇるほよぉーっ!!」 「何で縛られてるか? それはもちろん、犯人が姉さんだから。さて、 姉さんはふぁと何回言ったでしょうか?」 「ふがーっ!」 ハロウィンの日は、毎年気が滅入る。 トリックオアトリックの精神で暴れ回る姉さんを、止めなければならないから。 特に、姉さんもこの日は特に気合いを入れたイタズラを行う。ある年のハロウィンは それがあんな事に発展してしまうし……ブギーマン、怖い。 「という訳で、今年は私のハロウィンに付き合ってもらう」 「ふぉろけーっ、ふぁるふつわはふへーっ!」 「解いたら逃げちゃう。猿ぐつわは外してあげる」 姉さん...
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仕事帰りの貴方へ
仕事帰りの貴方へ 47スレ目「黒曜石や雲母たちの最後の晩餐」より 夕食時、こうして家の玄関をくぐるとき、一日の終わりを一番強く感じる。 「ただいまー。ふぅ……」 「おかえりなさい。すぐにご飯用意しますね」 家に帰れば、こうして待っていてくれる小さな家族。まだまだ若い俺には、至れり尽くせりで贅沢すぎるかもしれない。でも、誰にも渡したくないよなぁ……。 「今日もまずはビールですか?」 「もちろん。これがあるから生きていける……って、なんかオッサンみたいだな」 「いいじゃないですか。ささやかな幸せがあることは、とても贅沢だと思いますよ」 ささやかな幸せかぁ。 「マスター、おつまみは何がいいですか?」 仕事帰ってきて、飯食って、風呂入って……。 「マスター?」 そんな中でのささやかな幸せ……あぁ、いいなぁ。 「マスターっ」 「ん、何?」 「...
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結
人生とはその時々に自然に変化し、移りゆくものです。 変化に抵抗してはなりません。 ――それは悲しみを招くだけです。 現実を現実として、あるがままに受け入れなさい。 ものごとをそれが進みたいように、自然に前に流れさせてやりなさい。 ~老子 その人は、あなたの前から姿を消してしまいました。しかし、それならば最初から出逢わなければよかったと思いますか? きっとそうではないと思います。お互いが愛し合ったという事実は、死が二人を別つとも、決して変えようのない事実なのです。 無論、二人の間には甘い体験もあれば苦い体験もあったと思います。 しかし、あなたがこれほど悲しんでいるからには、そこには純粋な愛情があったとことは、間違いないことなのだと思います。 あなたは、その人を愛したのです。そして、今も。――そのことは、多くのものを生み出しているはずです。 ~テニスン ...
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年長乙女のナイトパーティ
真「あら、アメジスト」 ア「真珠姉様、ごきげんよう」 真「妹たちがいい顔して帰ってきたのはあなたのおかげかしら」 ア「さあ? 私は本当のことを言っただけですから」 真「ふふ、たまにお人よしなんだから……あなた自身の悩みは癒されたかしら?」 ア「……まいりましたね」 真「空虚な心は一人では埋められないものね」 ア「ま、たまには可愛い子たちに癒されたくなるもので」 真「ふふふ、アタシでよかったら一晩中つき合うわよ」 ア「遠慮しときます。以前姉様につき合ったら一時間で潰されましたから……ザルなんだから」 真「まーまーたまにはつき合いなさーい」 ア「あ、ちょ、姉様」 鉄「おや、珍しい顔が」 ペ「あらあらまあ、うふふ」 爆「あらん? 今日はアメジストちゃんもつき合ってくれるのね?」 真「さあさあ、始めましょうか」 ア「……ごきげんよ...
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ママ? マスター?
結婚なんてする気など、まったくない。今の仕事は楽しいし、特にいい男がいるわけでもない。自分で働いて、気ままな一人暮らしと洒落込みたかった。でも……。 「んーとぉ……ま、ま……ママー?」 「ママじゃなくてマスター。ちゃんと覚えてね」 どうしてあたしの家に、こんな小さな女の子がいるのだろう。どうしてママって呼ばれることになったのだろう……。 「いい加減慣れたらどうかしら?」 「そうは言いますけどね、あたしまだ未婚ですから……結婚もするつもりないし」 あたしの傍らで眠る女の子、名前はソーダ珪灰石。悩みの種筆頭候補。なぜか知らないけど、とある事情からあたしはこの子の保護者となった。 そして、一緒にお茶をしている……なんというか、不思議な人? 彼女は真珠さん。あたしがソーダを育てる手伝いをしてくれている。 「相手もいないし」 「それは貴女が探していないだけよ」 ...
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どんなおつきあい?
姉の品定めより続く 月「黒ちゃん黒ちゃん」 黒「はい? どうしたんですか、月長石さん?」 月「ちょーっと相談に乗ってほしいんだけど……」 黒「はぁ」 月「えーっとその……お、男の人って何をもらったら喜ぶのかなぁって」 黒「……ひょっとして月長石さんの新しいマスターさんに?」 月「!!! な、なんで知ってるの!?」 黒「アメジストさんが『アイツにもとうとう春が来た』って教えてくれました」 月「うー……」 黒「でもちょっとわかりませんね……あの、ところで月長石さん」 月「んー? なーに?」 黒「き、聞いた話によるとあ、新しいマスターさんとはそ、その、えと……」 月「……んー? ないかなー?」 黒「い、いえ、別に、ど、どんなおつき合いをされているのか気になって……」 月「んふふー、それはねー――」 月「――なーんて感じですごく大事に……あれ?」 黒(...
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黒曜石と携帯電話
主「んー、久々に定時上がりだ。ん?」 『差出人:黒曜石 件名:お願いがあります 本文:済みませんが、お仕事の帰り にお醤油を買って帰って頂け ますか?お忙しいようなら構 いませんので( _ ;)』 主「『了解』っと。しかし、黒曜石が顔文字を使ってるのは誰も想像できないだろうなぁ。でもそれがいいんだけどね」
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春の夜更けは、まだ寒い
「虎眼ぇー、もっとくっつきなさいよぉ。寒いんだから」 夜の森の中。春になっても、こんなところの夜はとても寒い。 だけど、一枚の大きな毛布を共有して被っている虎眼は、それを気にせず 星空を眺めている。 見上げる空は雲一つなく、町から離れ、空気も澄んでいるため星がよく見える。 「何か、毎年同じ事言ってる気がするわ、あたし」 「寒がり」 「虎眼が季節選ばず流星群観察なんてするからでしょー。大体まだ1個も降ってきてないじゃん」 今日あたしがこんなところで震えているのは、この妹の天体観測に付き合わされたため。 これはすでに年中行事みたいなもので、何かと理由を付けては、こうして登山と 二人だけの寒地我慢大会に付き合わされる。 「ピークにはまだ時間がある」 「どれぐらい?」 そう尋ねられると、虎眼は懐から懐中時計を取り出し、それを懐中電灯の...
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月長石の素敵な一日
今日は実に快調。目覚めは最高に良かったし、朝ご飯は食べた。美味しかったよー、自分の腕を褒めちゃうぐらいっ。 だけど、そんな素晴らしい一日の始まりなのに……アメジストの奴ぅ~。 月「『今日は一人で遊んでなさい』だってぇ~? 付き合い悪いのーっ」 ま、別にいいモンねーだ、アタシ一人でもさ。 という訳で、今日は誰であそぼっかなぁ……いつも金剛石や瑪瑙ばかりだと飽きちゃうからなぁ。 んー……よし! 今日は人間を相手してやろーっと。 でもどいつを狙うか……天河石のマスターはちょっと柄が悪いから嫌いだし、蛋白石のマスターは面白くなさそう。 となると、やっぱ黒曜石のマスターかぁ。アレも人間としては面白みがないけど……まぁ、蛋白石のトコよりはマシかなー。 と、言う訳で黒曜石の家に移動ーっと。 月「さぁ~って、何しちゃおうかなぁー……ここは...
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ありあとー
珊「主、お茶を入れようと思うが飲むか?」 主「え?ああ頼む」 天「私も飲むー」 主「食後のお茶ってのも悪くないな」 珊「黒曜石のとこでは毎日のようだぞ。まあ向こうは紅茶のようだが」 天「はにぎゃ!?」 主「おい天、大丈夫か?」 天「うー、あふいのはらめれふ……」 珊「スマンスマン、氷2つだ」 天「ありあとー」 主「猫舌という概念はあるのな」
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ドッキリ乙女 中編
鶏冠石姉様のお願いだから、仕方ないことだった。 だけど、無理して姉様のドレスを着込んで、髪型を真似して。 「ゴールデンウィークねぇ……今更出かける気にもならないなぁ」 そして、広いリビングで二人並んでテレビ鑑賞。しかも隣は、 よく知らない姉様のマスター。 落ち着かない。落ち着かなすぎる。心臓なんてないのにドキドキしていると 言えばいいのか、この感覚は。 マスターとは違う、これは単純に緊張しているって、自分でも分かる。 少し離れてよう……拳一つ分ぐらい、間を空ける。 「どうかした?」 「べ、別に」 「別にって、虫の居所でも悪いのか? 不機嫌そうだけど」 「そんなこと、ない……ですわ?」 「首かしげられてもな。まぁ、あんまり無理するなよ」 こちらの顔をしばらく見つめた後、またテレビの方へ顔を向ける姉様のマスター。 実は...
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ストロベリー宝石乙女
「はっきり言って、うちの姉妹はストロベリってるのばっかりだと思うのよ!」 そんなことを唐突に言い放ったのは、うちの姉置石。 それを聞かされた私と月長石、そして呼び出された天河石。別にそんなの私は気にしないし、 そもそも月長石は……。 「天河石、イチゴ大好きだよ?」 「ノンノン。いい天河石、そーいう意味じゃなくてね」 と、子供らしい返答をした天河石に対し、置石が額をくっつけてお説教を始める。 天河石の方は、突然のことにとまどっている様子だ。だがそんなのを置石が気にするはずがない。 「つまり、不純異性交遊がはびこるこの宝石乙女姉妹。これをあたしはどげんかせんといかんって思う訳で」 「あうぅ……どげ?」 「置石、去年の流行語はもう古い」 「うっさい! とにかく、あたしはこのラブラブでストロベリってる連中の頭を冷やすために実力行使」 「あー…...
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続々・マリリン効果
「つき合ってもらって悪いね」 「いいんですよ、お手伝いも仕事のうちですから」 そんな会話をしながら、ビニール袋を両手に提げる二人組。まぁ俺と黒曜石なのだが。 別に何かあったわけでもなく、普段の買い物だ。何せうちは四人もの同居人がいる。食料だって毎週買いに行かなければすぐなくなる。 「食材を見るからに、今日はカレーだね?」 「はい」 黒曜石は、たまに食べたくなるような物をタイミングよく作ってくれる。 なんだか合わせてもらっているような気もするけど、こちらとしてはとてもありがたい。 そっか、カレーか……今から楽しみだ。 「もしかして手抜きとか思われちゃいましたか?」 「ん、そんなことないよ。ただ黒曜石はタイミングがいいなって」 「タイミング?」 「まぁ、こっちの話だ。それより早く帰ろう」 ビニール袋を持ち直し、黒曜石の前を歩く。 と、その...
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名も無き乙女の昔話3
地下へと続く階段を降りる。カツーン、カツーン 先祖伝来の城は今の時代の僕にとっては住み心地がいいものではない。 ベッドは無駄に広く。大理石の床は冷たく。父や母の部屋には遠かった。 父亡き後、この城を受け継いだ私は不便を感じながらも この城を手放す気にはならなかった。 ここは、見たことも無い先祖が代々、家族を護ってきた『家』だから。 見たことも無い先祖がどれだけ家族を愛し、『血』を引き継いできたのか 私は知っているから。 なぜ、私がご先祖の全てを知っているのか。 それは、ご先祖と共に生きてきた『存在』が地下で生きていたから。 私が生まれた時、いや、父や祖父が生まれた時にも その『存在』、彼女が祝福してくれたと聞いた。 この家に生まれた全ての者は彼女に祝福され、その愛を受けとる。 そして彼女を残して、未来を託して死んでいく。 彼女は、全てを見て、全ての思い...
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VinMousseux
「パパ、おかえりなさ~い」 金曜日、仕事で遅くなって帰宅すると、ソーダが玄関まで出迎えてくれた。 「おみやげ?」 いつものかばんとは別に持った紙袋を目ざとく見つけると、手を伸ばしてきた。 「ごめんよ、これはソーダにはあげられないんだ。でも、いつもみたいにいい子にしてたのならグレープソーダを入れてあげるよ」 「うん、今日もいい子だったよ!」 冷蔵庫の中に紙袋の中身を入れ、代わりにグレープソーダのビンを出す。コップに注いでソーダに渡してあげると、うれしそうにストローに口をつける。 「コキュコキュ……ぷはぁ~。パパおいちぃよ」 ソーダのうれしそうな笑顔に心癒される。こんな幸せな日々がいつまでも続きますように……。 ポンッ! 床についてからしばらくして、そんな音が台所から聞こえたような気がした。私は仕事の疲れもありベッドから出ず、再びまどろみに身を任せた...
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姉妹のつながり
「あーん……」 ソーダにアイスを一口。 「えへへ、あまーいっ」 で、どこかのコンビの片方と同じ反応。 でもソーダの方が可愛いし、こちらの方が見ていて気分がいい。 「何だかんだで、料理上手よねぇ」 爆弾岩さんが、ニヤニヤしながらこちらを見ている。 きっと結婚したらいい奥さんにとか思っているに違いない。 「一人暮らしですから。でもアイスは初めて作りました」 「ママー、もっとー」 「ママじゃなくてマスターだよ。はい、あーん」 爆弾岩さんの視線を感じながら、もう一口ソーダにアイスを――。 ピンポーン。 インターホンの音が、部屋に鳴り響く。 「真珠さんかな?」 「真ちゃんは今日来れないって言ってたわよ」 じゃあ誰かな。NHKの集金とかだったら嫌だな。 とりあえず玄関へ……。 「おでむかえー」 「こーら、ソーダはここで待って...
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マシンガントーク
「~って、聞いてます? ご主人サマ」 「ん? あ、ああ」 「もー、でね、そのとき雲母ちゃんが……」 蛋白石はたまに、どこのスイッチが入るのか、喋り続けて止まらなくなることがある。いわゆるマシンガントークってやつだ。 楽しそうに喋るからいいんだけど、二時間を越えたあたりから僕の意識は朦朧としてきてしまう。どこからこの体力が来るんだろう……やっぱり蛋白質かな……。 「それでね、黒曜石が……」 そろそろ限界だ。卑怯な手のようで気がひけるが……。 「きゃっ! ……あ、あの、ご主人サマ……?」 僕は、蛋白石を腕の中にすっぽり抱きしめた。 「ん? 続き話してていいんだよ?」 「あ、え、えっと……いーです……忘れちゃった」 さっきの勢いとはうってかわって、顔を真っ赤にしてしがみついてくる。 「えへへ、ご主人サマ……」 蛋白石のマシンガントークは甘えたくな...
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除湿器と加湿器
「この時期は洗濯物が乾きにくくて……日本は大変ですねぇ」 ペリドットさんとの世間話。 学校の帰りに寄ったスーパーで出会い、そのまま近くの喫茶店へ。雨宿りついでだ。 「そうですね……あ、でも僕の実家はそうでもないんですよ。この時期も雨が多いってことはないし」 「あら、それはいいですねぇ。私は日本にいることも少なかったもので、どうにもこの季節には参ってしまって」 それは僕も一緒だ。こっちに来てまだ日が浅いため、この湿気地獄は体に堪える。 「湿気が籠もって大変ですからね。うちは除湿器フル稼働ですよ。蛋白石もすぐ除湿器の水が溜まって大変って言ってました」 「ふふふ、こちらもまったく同じ状態ですよ。殺生石さんは湿気で尻尾を整えるのが大変でしょう?」 「お見通しですね……でも夏は除湿、冬は加湿って、大変ですよね。形が似てると、間違えて夏場に加湿器なんてドジもしちゃったり」 ホ...
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キッチンマスター
正月気分が抜けない日曜。 レッドベリルとこたつで横になりながらテレビを見ていたときに、事もあろうかインターホンが鳴り響く。 「……レッドベリル、頼む」 「やだ。寒いもん」 まぁ、そう来るとは思ってた。 言い争っても仕方がない。体を起こし、こたつから抜け出して玄関へ。 肌寒さを我慢しながら、サンダルを履いてドアノブに手を掛ける。 「はいはい、どちらさんです……お?」 ドアを開けると、目線に人の顔はない。 視線をわずかに下へ……そこには。 「明けましておめでとう」 と、頭を下げる虎目石。そして彼女の右手の先には。 「もぉーっ、何でこんなとこ連れてこられないといけないのよーっ!」 やけにご機嫌斜めな様子の置石……何なんだ、一体。 虎目石からの一言に、俺は驚愕するしかなかった。 「お、置石に料理教えてやって欲しい...
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願い事、ひとつ 中編
青年は少女と出会った。 一時の出会い……二人は、そう思っていた。 そう、これはただ一時の出会い。再会を約束出来る、ただの出会い。 -願い事、ひとつ- 「娘と話をしたそうだね」 夕食後、笑顔と髭が印象的な、初老の男性が彼に話しかけてくる。 この老人こそ、今回の仕事の依頼主であり屋敷の主。ホープの義父だ。 彼は先日挨拶を済ませているが、その容姿に合った穏やかな人物だというのが第一印象。 「はい。可愛らしいお嬢様ですね」 「ああ、私(わたし)には勿体ないほどに、な」 「そんな事はありません。貴方も立派な方ですから」 「そうか……娘の事は聞いているんだったな」 「はい。確か人形、と」 正直、まだ信じ切れていない事実。 姿形は人と変わらぬ……いや、元々人形は人を模したものだ。その言...
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落ち葉舞う、腹が減る
紅葉真っ盛り。近所の林から色とりどり、大量の落ち葉が舞い上がる。 「わぁー」 それを見て天河石がはしゃぐ。何が楽しいのかは分からないが、とにかくはしゃぐ。舞い散る落ち葉を手に取り、指で回したり……あぁ、楽しそうだな。 「こらぁ天河石ぃ! 手伝えよ!!」 遊んでる暇なんてない。想像以上の落ち葉の嵐による襲撃を受け、俺は今家の前の掃除に追われている。くそっ、何でこんなに落ちてくるんだ。こんなんだったら火炎放射器でも使って焼き払ってやりたい。 ……火炎……火……焚き火かぁ。最近はいろいろ規制が多くて焚き火もダメなんだよなぁ。やったらきっと近所のおばさんに怒られる。 「マスタぁー、ぼーっとしてないのっ」 「え? あぁ悪い……って、さっきまで遊んでた奴に言われたくないっ」 秘技、箒旋風で落ち葉を天河石に向けて飛ばす。 「きゃーっ」 攻撃なのに、天河石は実に...
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マスターのストライクゾーン
置「ふっふっふー、今日はいい物手に入っちゃったさぁ~」 虎「……それがいい物とは思えない」 今日の晩ご飯、何作ろうか。そんなことを考えながら家へと到着した僕。今日もお疲れ様でした。というわけで帰宅。今日は殺生石と二人きりの夜だからちょっとだけ緊張かなぁ。 主「ただいまー」 殺「おかえりなさいませ」 主「うわぁっ!?」 玄関で正座した殺生石がいきなり迎えてくれる。でも気配を消すことはないと思う……声かけられるまで気づかなかったよ。 主「え、えーっと、出迎えてくれるなんて珍しいね」 殺「はい、居間で待つのが少々息苦しかったもので」 ……息苦しかった? 一体どういうことなのか……。 殺「お話があります。こちらへ」 主「え……うん」 よく分からない。なんだか知らないけどよく分からない。別に怒っている素振りもないし、何か約束しているわけでもないし……もし...
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小さなアイドル
夕食の食材が入ったビニール袋を持ち、家路を急ぐ。 今日は主の好物である牛丼。こちらとしても、簡単に作れる料理で 喜ばせることが出来るのはありがたい。 ……手を抜いている訳ではないが。 まぁ、とりあえず早く帰ろう。 冬場は日が落ちるのも早い。すでに空は夕焼けの様相だ。 その上、この厳しい寒さだ。家の近所にある公園も、近頃は遊ぶ子供達の姿が見えない。 そんな寂しい公園の一角に、老若男女十数人ほどの人だかりが出来ていた。 一体何の集まりか……遠巻きにその様子をうかがっていると、 そこから少女らしき声色の歌声が聞こえてきた。 可愛らしく、それでいて澄んだ歌声。乾燥した空気の中で、その声は柔らかく、 そして確実に響いている。 ……この声を、某はよく知っている。 「……はい、これで終わりですっ」 歌声が終わり、人だかりの中か...
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彼女が学ぶ理由(わけ)
珊「主、この図書館という場所に連れて行って頂きたいのだが」 そんな話から始まった休日。珊瑚の奴、いきなり図書館ってどういうことだろうか。 まぁ、俺も暇だしたまには付き合ってやってもいいという事で、こうして地元の図書館に来ている訳だ。 主「で、珊瑚は何について勉強したいんだー?」 珊「少々現代の知識に乏しい。だからその知識の補完をしたいのだ」 主「なるほど……じゃあ俺も少し手伝ってやるよ」 珊「かたじけない」 ………… とはいったものの、何をどう手伝うべきか……。 まぁ、適当に回ってみて珊瑚の気になった事を教えてやるってのが一番いいのかも知れないな。 珊「主、この嫌韓流というのはどういうものなのだ? テレビで韓流というのは聞いた事あるのだが」 主「……お前も天河石みたいなところに興味を持つんだな」 というか、何でいちいち俺の行く先にこの本あるん...
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お箸を使おう
今日の晩飯は、白いご飯におでんと味噌汁、そして天の好物ハンバーグ。 そして、俺達三人の手には、それぞれ自分専用の箸。珊瑚の焼くハンバーグは 小さくて柔らかいため、箸でも十分食べられるものだ。 それにしても、箸というのは便利ではあるが慣れてない人には使いにくい代物だと、つくづく思う。 「天河石、また箸の持ち方が悪いぞ」 「あうぅー……」 珊瑚と天河石の、毎日食事時に繰り返されるやりとり。 天河石の手にある箸は、いつも通りバツ印を描きながら、危なっかしい 箸使いでおかずを取ろうとしている。 俺も、子供の頃は親にこんな感じで怒られた。天には悪いが、日本の子供が通るべき 宿命として、耐えてもらうとする。 「こら、刺して食べようとしない」 「えうぅ」 「だけど一応箸にはフォークとしての使い方も」 「そういう問題ではない」 思わずフォローしようと口を挟むも、...
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大きな想い
「ご主人様♪」 僕の隣に、蛋白石が腰を下ろす。 周りはみんな酔っぱらっていたり、夜も遅いので居眠りを始めていたりと、先ほどに比べてずいぶんと静かだ。 だから、蛋白石の方も少し大胆だ。僕に密着するや、腕にしがみついてくる。 それを僕は拒まない。なるべく彼女の好きにさせてあげたいから。 「静かになっちゃいましたけど、すごーく楽しかったですよね?」 「うん」 誰かに見られてるかも分からないけど、自然と恥ずかしさはこみ上げてこない。 こうしていることが自然なだけで……。 ……でも、二人きりになりたい。そんな思いがこみ上げる。 「蛋白石、散歩に行かない?」 「お散歩ですかー?」 「うん、少し酔い覚ましに、ね」 「そういうことなら大歓迎ですよ、ご主人様の身はしっかりと守りますからっ」 と、頼もしいことを言ってくれる。 だけどそれよりも嬉...
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桜の花が咲くほどに
早い地方では桜の便りが聞こえてきた季節。僕の自宅近辺はまだ蕾がふくらんでいるところだったりする。 当然、自宅の庭の桜の樹も開花はまだ先の話だ。 それでも、ペリドットは毎日のように桜の樹の前に立ち、日毎にふくらむ蕾に春の訪れを感じているようだ。 「見張りですか? お姉さま」 「あら、誰かと思ったらマスターですか。ふふっ。見張ってなんかいませんよ」 「でも、毎日見てるよね。そんなに眺めていると、桜の樹も見張られているように感じてたりして」 「この桜さんとは長いつき合いですから。今年も綺麗に咲いてくれるようですよ」 「分かるんだ」 「ええ。お話してましたから」 「へぇぇ」 草木と馴染みの深い彼女の言葉だ。気持ちが通じるのだろう、と、このときは思っていた。 あまり気にしなかった僕は言葉を続ける。 「世の中にたえてさくらのなかりせば 春の心はのどけからまし...
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思い出の味
「ん?」 気配を感じて振り返るとペリドットが立っていた。 手には大きなバスケットが二つ。 「まったくお前は……。 人の家を訪ねるときに気配を消すやつがあるか」 といっても、普段から足音もたてずに歩くような奴だ。 意識してやっているわけじゃないしな。 「それでも、貴女には気が付かれてしまいますね。 おじゃましますね」 アトリエの一角にあるテーブルと椅子をすすめる。 グラスに注ぐのはアイスミントティー 裏の池に自生しているミントを摘んで夏の暑い季節に使っている。 「爽やかで美味しいですねぇ」 「よかったら、少し持っていくといい。 お前のマスターも、そのミントの香りは気に入っていたはずだ」 右の眉がピクリと動く。 なんだ、知らなかったのか。 ちょっとまずいことを言ってしまったかと後悔する。 こいつを怒らせると、かなり困ったことになる。 ましてやマスターの...
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縁談と嫉妬
ソ「ねぇねぇー、お見合いってなぁに?」 主「ブフォッ!!」 い、いきなりこの子は何を……。 殺「お見合いですか? 人目を忍ばない逢い引きみたいなものですよ」 主「殺生石っ、デタラメ教えないの!」 殺「ふふふ、たまにはわたくしも冗談の一つを言うのですよ。で、お見合いというのはですね、結婚したい男性と女性が出会うことですよ。そこでおつき合いをするかどうか決めるのです」 ソ「んぅー……えっとぉ、ラブラブするかどうか決めるのぉ?」 ら、ラブラブするって、意外とエッチな表現な気もするなぁ。 殺「そうですね。つまり、わたくしとだんな様みたく相思相愛の二人には関係のないことですよ」 主「え、ちょっ、いつから相思相愛って……ゴメンナサイ。だから睨まないで」 いきなりなんてこと言うんだよぉ、まったく。 でもお見合いかぁ。ホント、なんでソーダちゃんいきなりそんなこと聞いて...
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三が日限定!
正月の朝……うぅ、眠い。 確か蛋白石に初日の出を見ようと無理矢理起こされたんだっけ。あれ、その後の記憶が曖昧……まぁ、寝ぼけながら布団に潜ったんだろうけど。 「おはよぉ……」 「あっ、ご主人様ー。明けましておめでとうございますっ」 「……おめでとー」 さっそく居間で出迎えてくれる二人。 だが一人足りない。いつもなら僕の寝ぼけ顔を微笑みながら見つめてくるあの殺生石だ。 台所からは物音もしないし、一体どうしたのだろうか……。 「蛋白石、殺生石はどうしたの?」 「え? 確か野暮用とかで出かけてますよー」 「へぇー、珍しいね」 「はつもーでー?」 「……それはみんなで行くって約束したでしょ」 しかも電気石のイントネーションだとどうしても発毛デーに聞こえてしまう。そんな正月は嫌だよ。 「ただいま戻りました」 と、殺生石の声が玄関から。 ...
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七夕の災難
短冊に書く願い事。 見せ合っている子もいるけれど、僕のは到底見せられない。 『もう少し女の子らしくなれますように』 ……こんなの見られたら、本当に大変だ。特にアメジストには。 「私には、何だって?」 「うわあぁぁっ!?」 どうして彼女はこんなにも唐突なんだろう。 「ふむ、女の子らしく、か。そうかそうか」 で、いつの間にか僕の手から短冊はなくなっていて……。 短冊を持ったアメジストが、何故かとても嬉しそうに見えた。 「えっ、あ、か、勝手に見ないでよっ!」 「大丈夫、誰にも見せないよ。もちろん月長石にも」 「そ、そういう問題じゃなくてっ……って、えぇっ、ど、どこに行くのっ!?」 突然アメジストにさらわれたと思えば、着いたのは何故か僕の部屋。 いや、僕の部屋というのはおかしいか。マスターの家だし……。 「さて、用意したのはいいが、どうしたもの...
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食わず嫌い
朝の食卓につく。目の前には鮮やかかつ深い色合いのグリーンの液体がなみなみと注がれたジョッキが一つ。こ、こいつは……。 「あ、マスター。私の庭園で作った野菜をミキサーにかけてみたんです。とっても身体にいいのですよ。寒い季節ですから、栄養をたっぷり採らなきゃいけません。早起きして収穫してきちゃいました。新鮮ですから、美味しいですよぉ」 「あ、ああ……そうなんだ。わざわざありがとう……でも、毎日きみの手料理を食べているわけだし……栄養面では問題無いんじゃないかな……うん、そうだ。そうに違いない」 「褒めていただけると嬉しいです。でも、マスターはお仕事が忙しくなると生活が乱れがちですから。過剰といかないまでも、普通の人よりは多めに採る必要があります。さあ、召し上がれ」 「そ、そうか……それじゃ……いただくよ……う~ん、いい色合いだ。素材の新鮮さをうかがわせる鮮やかさ。それでいて君の瞳の...
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カミナリコワイ
突然だが、我が家は現在停電状態だ。 いや、我が家というのはおかしいか。この地域一帯が、台風の影響で停電中だ。おかげで懐中電灯やらろうそくやら用意するので大忙しだった。 「まったく、これぐらいもっと早くできませんの?」 ちなみに、こんなときでも優雅に紅茶を飲む相方は手伝う気ゼロなので、全て俺がやった。 「いや、そうは言うけどな……できれば鶏冠石も手伝って」 「乙女に仕事をさせるような殿方に育てた覚えはありませんわ」 ……そうっすか。まぁ、今さらどうこう言うつもりもない。鶏冠石らしいじゃないか、実に。 「だいたい、これだけ大きな家なら自家発電ぐらい用意したらどうですの?」 「ちょ、病院じゃないんだからさ」 「お黙りなさい。貴方は宝石乙女のマスターという自覚があるのですか? 常に万全の配備を整え、私の身の安全を保護する義務が――」 と、ろうそくの明かりの下で小言が始...
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西洋下着
「だからねぇ、たまにはあなたもこういうのを」 「んー……私はかわいい方が好きなんだけどなぁ」 爆弾岩と蛋白石が、テーブルの上に雑誌を広げて雑談を繰り広げる。 雑誌の内容は、どうやら西洋の下着に関するものらしい。先ほどから爆弾岩が言う あだるとという言葉はよく分からないが、二人とも楽しそうに話をしている。 だけど、二人の間に座らさせられているだんな様は、相当居心地が悪いらしい。 女性の下着を選ぶのに付き合わされるのは、殿方としてつらいのは明白だ。 「あ、あのぉ、やっぱり僕は必要ないと思うんだけどなぁ。その、レポートもあるし、部屋にぃ」 「えー、ご主人様も一緒に選びましょうよぉー」 「そうよぉ。いざというときの練習と思ってね」 「いざというときって、一体いつ……って、二人とも腕掴まないでってば!」 腕を捕まれ、絶対逃げられまいと押さえつけられ...
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貴方が望むなら
私は、元から笑っていたわけじゃないの。 私は笑うことがなかった。 笑うことだけでなく、怒ったり、泣いたりすることもなかった。 そんな私だったから、お姉様たちの手を焼かせたことだろう。 それでも、例外なく私もマスター候補の元へ送られる。 無表情で無愛想な私を見た彼らは、誰もが私を疎ましく思う。 ときにはマスターを放棄して捨てられたこともある。 そのせいか、私は余計に自分の殻に閉じこもってしまった。 そんな中、とある時代に彼に出会った。 いつものように、マスターである彼の元に送られてきた私。 そんな私を彼は歓迎してくれた。 初めてのもてなしに、私は面食らって戸惑った。 しかし、そんな私の心境なぞお構いなしに、終始彼は笑顔で私に優しく接してくれた。 初めのうちは、どのマスターも優しく接してくれていた...
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だんな様を、捕まえて
窓から見える、どんよりとした曇り空。 「昨夜はずいぶんと帰宅が遅かったですね」 正座した僕を、真っ直ぐな視線で見つめる殺生石。 その顔に、いつもの微笑みはない。だからといって怒っている訳でもなく、 言うなれば無表情。 蛋白石と電気石は、すでにこの不穏な空間から避難している。僕だって逃げ出したい。 「……ごめんなさい」 でも逃げられない。今の僕は、彼女に謝ることしかできない。 深々と頭を下げる。この程度で許してもらえるとは思っていないけど。 「急用であれば、連絡を下さればいつでも対応しましたが」 「ごめんなさい」 「どうやらご友人とからおけというものに行っていたようで」 「ほんっとうにごめん! 彼女にフラれた傷心を癒すって言うから、つい」 「だからといって、わたくしとの約束を忘れる理由にはなりませんね」 胸に、ぐさりと何か...
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うちの娘たちが世界で一番
宝石乙女のマスターに求められる資質の一つとして、『孤独を好む』というのはかなり重要だと思う。衆目を避けるため、たいていは山奥で暮らすことになるからだ。 「マスター、鶏冠石さんたちがお見えになりました」 「お、もうそんな時間か。あいつらももうちょっと早めに連絡くれればいいのになあ。まったく迷惑なことだ。黒曜石も、無理して豪華な料理を出すことないぞ」 「ふふ、またそんなこと言って。本当は遊びに来てくれて嬉しいんですよね。顔が笑ってますよ」 ……まあ、たまに人恋しくなることもある。時には同じマスター同士、乙女たち相手にはできない話をするのも悪くない。 「やあ、久しぶりー。ちょっと近くを通りかかる用事があったもんだから、寄らせてもらった――いてっ! 何すんだよ鶏冠石!」 「挨拶ぐらいきちんとなさい……こほん。マスターが失礼いたしました。突然の訪問、お許しください」 「はは、相...
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