心理学を学んでも人狼は上手くならない
心理学とは、科学的な手法によって研究される心と行動の学問である。そのアプローチとしては、行動主義のように行動や認知を客観的に観察しようとするものと、一方で、主観的な内面的な経験を理論的な基礎におくものとがある。研究法を質的研究と量的研究とに大別した場合、後者を主に学ぶ大学では、理数系学問として心理学を位置付けている。https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%83%E7%90%86%E5%AD%A6
「心理学を修めれば人狼ゲームマスターになることができる!」というのは初心者がよく想起しがちな誤りである。前述の通り、心理学とはあくまでも研究調査によって観察される人間の一定的な傾向を推し量る学問なのであって、相手の考えていることを見抜くことができるエスパーサイケトリックな学問ではない。すなわち、心理学を学べば人狼が強くなれるというのはミーハーの勘違いなのである。
だいたいだ。何故このような論理的な誤りが生まれてしまうのだろうか。心理戦ゲームとしての印象が強いから?それともそのような読心術のようなものに憧れがある人が多いからなのか?いずれにしても、いくら心理学の本を書って読み漁ったところであなたは相手の心を見抜く「スーパーエスパー」にはなることはできない。万が一あなたの脳内に直接、相手の心の声が聞こえてくるようであれば、それはあなたが何らかの精神疾患を抱えている可能性が高い。早急に精神病院を受診することをおすすめする。
このページで述べたいことは次の2点に集約される。
第1、冷静に考えて、他人の考えていること何ぞ、全てを理解することはできない。私たちが相手を読心しようと躍起になっている文章とは、「相手の脳内の中の一部を切り取り、言語という媒介を通じて表出された一面」なのであって、「相手が脳内で考えていることの全て」とイコールではない。このような僅かな氷山の一角から相手の考えていること全てを見抜くなんてことは当然できないのである。もし、たったの100文字前後のログで相手の考えていることを正確に理解できると誰かが言うのならば、そんなものは心理学そのものに対する中傷であり、冒涜である。
第2に、最初に述べたこのような前提によって、あくまでも、心理学とは「私たちにはこのような一定の傾向があるよね」というものである。平坦な言葉で言えば、「人間あるある」のような形でのみしか人狼への応用はできない。『会えば会うほど好きになる』で有名な「ハロー効果」なんかまさにその最たる例であるだろう。10回会った人を絶対あなたは好きになるのか?いやそんなことはない。10回会った結果好きになるかもしれないし、10回会った結果幻滅するかもしれない。ただ10回会えば好きになるほうの確率が僅かに高い、ただそれだけの話なのだ。心理学は絶対的な理論ではないのだ。
私たちが心理学で論じているのは、コインを100回投げたとして50回の確率で表が出るのではなくて、51回の確率で表が出るのであれば、それは心理学理論として「傾向」を言うことができるよね、というレベルの話でなのある。所詮「若干の傾向」の話なのである。これら心理学理論に基づいて推察を行えば、人間の行動論理を完全に理解できる訳では決してない。あくまで、知っていればちょっとした決め打ちの検討材料にできる、そんな程度のものである。私たちが通俗心理学を学ぶことで得られるのは、コインが表を向くか裏を向くかの賭けに対して、僅かに有利になることなのである。
通俗心理学理論集
このような前提に基づいて、若干ばかり使えそうな通俗心理学理論をいくつか以下に記す。使うか使わないかはあなたの良識に基づいてほしい。
- 確証バイアス
人は自分の信念や仮設を支持する情報を選択的に収集し、解釈する傾向がある。このバイアスにより、人狼ゲームの参加者は自身の推理を正当化する証拠に偏って注意を払い、反証を見落としやすくなる。
- 群集心理
個人は集団の意見や行動に影響されやすい。人狼ゲームにおいて、この心理は他の参加者の意見に流され、自己の独立した判断を曇らせる要因となる。
- 非言語コミュニケーション
言葉以外の手段で伝えられる情報は、人狼ゲームにおける重要な手がかりである。参加者は、他者の身振り手振りや表情から、その人の真意や役割を読み取ることができる。
- 認知的不協和
行動と信念が一致しない場合、人は不快感を感じる。この理論に基づき、人狼ゲームにおいて自分の役割と矛盾する行動をとる参加者は、その不一致を解消しようとする過程で、不自然な振る舞いを見せることがある。
- ソーシャルプルーフ
他人の行動を模倣することで、何が「正しい」行動であるかを判断する傾向がある。人狼ゲームでは、他のプレイヤーの行動を見て、自分の戦略を調整する参加者が見られる。
- ヒューリスティックとバイアス
簡易的な思考法を使って複雑な判断を行うが、これにより誤った推理をすることもある。人狼ゲームでは、過去の経験に基づく短絡的な推測が行われることが多い。
- 影響力の法則
権威ある人物の意見は、他者に大きな影響を及ぼす。人狼ゲームにおいては、影響力のあるプレイヤーが述べた意見が、他の参加者の判断に強く影響することがある。
- 心理的距離
人は心理的に近い事柄に対して強い関心や感情を抱きやすい。このため、人狼ゲームで親しい参加者が疑われると、その人を守ろうとする傾向が強くなる。
- 帰属理論
他人の行動の原因を推測する際、内的要因か外的要因のどちらかに帰属させがちである。人狼ゲームでは、参加者の行動をその人の役割に帰属させるが、時にはその帰属が誤っていることもある。
- プライミング効果
ある刺激が後の行動や判断に影響を与える。人狼ゲームにおいて、特定の話題や疑いが提起されると、その情報が後の判断に影響を与えることがある。