私は空っぽだった。
立っているのか倒れているのか、生きているのか死んでいるのか、それすらひどく曖昧だった。
ほんの少し前に見た、現実味のないバカげた映像だけが何度も何度も脳裏を廻る。
あの方の――ジョルノ様の、首、が。

「……あ、あ、アアアアアァァァァァァァァァァアアァァァァ!」

堪らず絶叫し、床を殴りつけていた。あらん限りの力を込めて打ちつけた拳は、磨き抜かれた床にぴしりと小さなクモの巣のようなヒビを入れた。

(何故、何故、なぜ!?)

あの方が、ジョルノ様が、あんな――あんな。

(何故――殺されなければならなかった?)

あの方の涼しげな声を憶えている。
あの方の凛とした眼差しを憶えている。
あの方がしてくださったことを……憶えている。

「ジョルノ、さま」

ぽとりと落ちた声は、まるで自分の声じゃないみたいに弱々しくてかすれていた。
そのとき、視界の端に何かが映った。

(荷物……支給品)

そうだ、あの男。あの気の狂ったようなジジイが言っていたこと。

「バトル・ロワイアル……」

何でも? 願い事を叶える? 望むもの全て?

――願えば、人が生き返るとでも?



そんなことはあり得ない。
それは私の人生において常に突きつけられてきたことでもあり、あの方に救って頂いたことでもある。
殺された姉、その仇を取ってくださったジョルノ様。
私はあの方に救われ、あの方についていこうと思った。
それなのに……殺されてしまった。奪われてしまった。
あの方の刃となり、楯となり、あの方の正義に尽くしていくために生きていた私だけ、残ってしまった。

「……望むことはたったひとつ」

私は誰だ?
シーラE。Eは――復讐(エリンニ)のE。

「あの方を奪ったこと、地獄で後悔しろ」

そのために邪魔なもの、力づくでもいい、薙ぎ払ってやる。
あのクソジジイをブチ殺してジョルノ様の仇を取る、そのためならなんだってやってやる。

私はシーラE、復讐者のシーラE。

そう決めて、私は辺りを見回した。
室内だが、窓などは見当たらない。出口を探さなければ。
暗闇に目を凝らすと、壁に掛っている絵に気がついた。
上半身裸の男が、生首を掴んでいる絵だ。なんだか妙に滑稽に見える。
さらに視線を巡らせると、扉があった。
あのクソジジイからの手土産だというのが気に食わなかったが、荷物を改めてこの部屋を出ることにする。さしあたっての手掛かりはこれだけだから。

「――行こう」

デイパックを背負い、扉に手をかけて、ふと思いついた。
あのクソジジイの首を、あの絵のように切って落とそう。
ジョルノ様を手に掛けた罪を思い知らせてやろう。


そのとき、きっと私は微笑んでいた。





【A-2 ルーヴル美術館内・1日目 深夜】

【シーラE】
[スタンド]:『ヴードゥー・チャイルド』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始前、ボスとしてのジョルノと対面後
[状態]:利き手にダメージ(小)、健康、スティーブンへの復讐心で視野狭窄気味
[装備]:素手
[道具]:基本支給品一式、確認済みランダム支給品1~2(武器ではありません)
[思考・状況]
基本行動方針:ジョルノ様の仇を討つ
1.主催者のクソジジイを探す、殺す
2.邪魔する奴は容赦しない
[備考]
参加者の中で直接の面識があるのは、暗殺チーム、ミスタ、ムーロロです
元親衛隊所属なので、フーゴ含む護衛チームや他の5部メンバーの知識はあるかもしれません
行き先は次の書き手様にお任せします


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最終更新:2012年07月19日 22:00