とりあえず、これから登場する男の事について話しておこうか。
その男の名前は
マジェント・マジェント。
彼は、アメリカ合衆国大統領から雇われた殺し屋であり、スタンド使いだ。
これから、殺し屋が殺し屋に出会う物語が始まるのだが、それはまた後にして彼の話を続けよう。
彼のスタンドは『20thセンチュリー・ボーイ』。
能力は簡単だから一回で理解してくれるとありがたい。
『20thセンチュリー・ボーイ』の能力は、攻撃を受け流すだけだ。
着るタイプのスタンドで、『20thセンチュリー・ボーイ』を着ている間は、物理的にも、科学的にも、どんな攻撃も効かない。
この情報だけなら、『20thセンチュリー・ボーイ』はとても強そうに感じるだろ?
残念ながら、一つだけ大きな弱点があるんだ。
それは、動けない事なんだ。
『20thセンチュリー・ボーイ』を着ている間は指一本、いや、1mmたりとも体を動かす事ができない。
頭の回転の速い人ならもう気づいたかもしれないけど、彼が生き残るためには『パートナー』が必要だ。
『基本世界』では、彼の『パートナー』は
ウェカピポと呼ばれる鉄球使いだった。
鉄球使いに関しての説明は省かせてもらうけど、ウェカピポという男は最終的には彼と敵対する事となり、彼はウェカピポに敗北したんだ。
つまりだ。
今、彼には『パートナー』がいない。
必要な物は新しい『パートナー』なんだよ。
この物語は、彼、マジェント・マジェントが、違う世界の殺し屋と出会う物語だ。
それじゃあ、そろそろ始めようか。
★
「スティールさんよぉ、一体全体ここはどこなんだよ。
デラウェア河から助けてもらったのは感謝するけどよ、殺し合いをしろ、だとぉ?
全く……大統領の命令どころじゃあねぇぞこりゃ……」
とりあえずは状況把握か。
懐中電灯……懐中電灯……っと。
スイッチをポチッとな。
「……ありゃー。
こりゃ、悲惨な状態だ……死体が乗ってないだけマシか……」
つい最近聞いた飛行機ってやつが地面に突き刺さってやがるじゃねぇか。
それに飛行機ってのは空を飛ぶんだろ?
見たところ、ここは地上では無さそうだがなぁ……さっぱり意味が分からねぇ……
まぁ、ここへ入ってくる道は一本らしいし、籠城戦にはうってつけの場所って訳だな。
とりあえずグルリと探索はしたが、飛行機の中にもその周りにもめぼしい物は無かったな。
次はデイパックの中身だな。
食料やら何やらの必需品と……折り畳まれた紙が二枚か。
開いてみますかね。
まずは一枚目。
「……額縁がズラッと並んでらっしゃる……よな?
中には……こりゃまた悲惨……」
額縁の中に輪切りの人間とは……これを作った奴の美的センスは常軌を逸しているね……
なんていうか……すごく悪意を感じるな……
さて、気を取り直して二枚目だ。
★
「おっ、人がいるじゃあねぇか。
開始早々ラッキーだな。」
ランダム支給品の双眼鏡でマジェント・マジェントを覗く彼は
プロシュート。
さっき話した、違う世界の殺し屋なんだ。
彼はギャング組織『パッショーネ』の『暗殺チーム』のメンバーであり、彼もまたスタンド使いだ。
彼のスタンドは『グレイトフル・デッド』。
能力としては、ガスに包まれた人間を老化させるんだけど、これにもまた弱点がある。
それは、冷やされたら老化しない、って事だ。
まぁ、それが無きゃ自分も老化しちゃうから仕方ないだろうけど、今の彼には冷やせる方法が、支給品の水を被るしかない。
つまり、長時間スタンドは使えないって事だ。
冷やせる仲間がいればいいのに、とかプロシュートは考えているけど、残念ながら彼の目に写っている人に期待はできない事はみなさんの方も知っているはずだから敢えて言わないよ。
まぁ、期待させておこうか。
おや?動き始めたみたいだよ。
★
さて、気を取り直して二枚目だ。
「おい、お前、そこのお前だ。
ちょっとした質問がある。
お前、どっち側の人間だ、って聞けば伝わるよな?
返答次第では……俺の前で死体になってもらう。
雰囲気が表側の人間じゃあ無いが、俺はお前を確実に殺せる、とだけ言っておくさ。」
なんだあいつは?
全身ビシャビシャでカッコいいスーツが台無しだぜ?
んでもって、確実に殺せる、ってカッコつけちまったけど、ありゃ嘘だな。
俺の『20thセンチュリー・ボーイ』を破れるとは思えないしな。
まぁ、殺し合いに乗る気は無ぇし、良い返事を返してやるかな。
けど、ジョニィ、ジャイロ、ウェカピポ、Dio、スティールは別だからな。
「殺し合いに乗る気は無ぇ。
そういうあんたはどうなんだ?」
軽く笑って、こっちに近づいて来やがる。
俺の質問に答える気は無し、って訳ね。
俺の近くまで来てやっと飛行機の存在に気付いたらしいな。
あいつは懐中電灯も使ってないから仕方ないか。
「飛行機の残骸か……酷い有様だな……」
そう言ってあいつは両手を合わせ、胸の前に持って行き、深く礼をした。
東洋の礼儀作法って言ってたから俺も真似してみたが、これって意味有るのか?
「ところであんt」
「お前あれは何だ、あの額縁はよ?」
なんだ?あぁ、あれな、気持ち悪ぃよな。
「表側の雰囲気がしねぇとは思っていたが……
あの会場にはイルーゾォや
ホルマジオもいた。
お前の後ろにあるあの額縁は忘れたくても忘れられねぇ。
お前がボスなのか?
もしそうなら、復活できたソルベを同じ方法で殺すとは……
邪悪って言葉はお前のためにある言葉だな。
お前がボスじゃなくても謝っちゃやらねぇぜ。
死んでもらう……
『グレイトフル・デッド』ッ!」
「なッ!?『20thセンチュリー・ボーイ』ッ!」
なんだあいつッ!
イルーゾォとかホルマジオとかボスとかソルベとか超訳分かんねえぞッ!
いきなりスタンド攻撃とか……狂ってんのか?
クソ……どうする……
あいつを倒さなきゃどうしようもねぇ……
スタンド像が見えるのが唯一の救いだな。
あれが消えた瞬間しかチャンスはないと考えようか。
とは言っても攻撃手段が……
……そうだ、二枚目……二枚目があるじゃないかッ!
開ききれなかった二枚目がッ!
消えた瞬間に二枚目の紙に賭けるッ!
★
効いてない……だと?
チッ、ボス……殺し損ねたか。
お前は刺し違えても俺が殺す。
『暗殺チーム』への手向けにしてやるよ。
それにしても……近づいたとは言ってもまだ効いていないか。
そうなると、近づいて直触りしかないな。
水も温まってきているな……この際全部かけてやる。
スタンドを解除して一気に走る。
終わりにしようぜ……ボス……
「『グレイトフル・デッド』ッ!解除だッ!」
このまま走り抜けて直に触ってやる。
「『20thセンチュリー・ボーイ』ッ!解除ッ!」
何ッ!
解除だと……ッ!
デイパックに向かって走っている?
まさか……体を濡らした事で弱点がバレてしまったか!?
「悪ぃな……リーダー、
ペッシ。
後はお前らに任せて、俺はボスと戦う……
ペッシ……済まねぇッ!」
★
よしッ!辿りついたッ!
二枚目……二枚目……あったぞ
この紙は俺の運命……生死を決めるネットに弾かれた運命のテニスボールだ。
運命に打ち勝つんだマジェント・マジェント。
『パートナー』無しで勝たなくちゃあならないんだ。
運命を引き寄せろッ!
開けッ!二枚目ッ!
ドスンッ!
……終わった……何もかも。
紙から出てきたのはSBRトロフィー入りの南極の氷だった。
だが、あいつが走ってくる音も止まった……止まった?
「……ハハッ……ハハハハハッ!
運すら完膚無きまでに負けるとはな……完敗だ、ボス……
一思いに殺してくれ。
今はなんだか清々しい気持ちでいっぱいだよ。
……悪いなペッシ、お前は生き残れよ。」
おいおい、なんであいつが完敗ムードになってんだよ……
俺が負けたんじゃねぇのか?
これは……聞くしかねぇだろ。
「完敗ムード満点の時に失礼するけどよ、イルーゾォとかホルマジオとかボスとかソルベとかって何なんだよ。
それによ、負けたのは俺だろ?
こんな氷塊じゃああんたを倒すなんてできやしないぜ。」
「お前、ボスじゃあないのか?
じゃあその額縁は、ソルベの入った額縁は何なんだ。
見間違えるはずがねぇ……そいつはソルベじゃあねぇかよ。」
★
彼らは、知っている情報を話し合ったんだ。
最初はマジェント・マジェントからね。
額縁の真相、互いのスタンド、時代背景、その他必要な事を話し合った。
するとね、プロシュートから疑問点が挙がったんだよ。
「すると、矛盾があるんだ。
まず第一に、俺は1890年の人間じゃねぇ。
ということは、俺とお前は違う時代を生きている事になる。
そして第二に、俺はファニー・ヴァレンタインなんて大統領は知らねぇ。
つまりだ、俺とお前は違う歴史を生きている事になる。
時代も歴史も違う人間が、お前らの世界の人間に干渉されている、って訳だ。
んでもって、俺らには共通目的がある。
ターゲットの殺害と、元の世界への帰還、の二つだ。
前者に関しては至極単純だが、後者に関しての推測としては、十中八九スタンドの仕業だろう。
そして、スティーブン・スティールを倒せばこのスタンドは解除されると考える。
そこでだ、疑った矢先、悪いとは思うが共闘しないか?
後者は、人が多ければ多いほど遂行しやすいだろう。
考えてみてくれ。」
まぁ、マジェント・マジェントの判断は決まっているよね。
ウェカピポに代わる人間が欲しい彼にこんなに美味しい話は無かった。
「考える間でもないな。
俺のスタンドじゃあ、この先闘えねぇ。
さっきの早とちりは許さねぇが、仲間にはなってやるぜ。
よろしく頼むぜプロシュートさんよ。」
「ありがたい。
ところで聞きたい事があるんだが、パイナップルみたいな頭をした奴とか、どっかに飛んでいく釣り糸とか見なかったか?
俺の弟分なんだが、なにせよマンモーニでな、とにかく世話を焼かせる奴なんだ。
あの会場では見かけたんだが……」
彼には、柱の男との悲惨な闘いは教えないでおいてあげようか。
きっと、使い物にならなくなっちゃうしね。
「いいや、見てないな。
力になれなくて済まなかった。」
「俺も期待なんて最初からしてなかったさ。」
彼らの同盟は成立した訳だけど、プロシュートの探すペッシはもういない。
『パートナー』のいない物どうし、せいぜい頑張ってくれよ。
【G-8 墜落飛行機の記憶 南側 1日目 深夜】
【プロシュート】
[スタンド]:『グレイトフル・デッド』
[時間軸]:少なくとも護衛チームとの戦闘開始前
[状態]: 健康
[装備]:なし
[道具]:
基本支給品(水は使い切った) 双眼鏡
[思考・状況]
基本行動方針:ターゲットの殺害と元の世界への帰還
1.暗殺チームを始め、仲間を増やす
2.この世界について、少しでも情報が欲しい
3.この氷塊、当分スタンドは使い放題だな
【マジェント・マジェント】
[能力]:『20thセンチュリー・ボーイ』
[時間軸]: 『考えるのをやめた』後
[状態]: 健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ターゲットの殺害と元の世界への帰還
1.暗殺チームを始め、仲間を増やす
2.この世界について、少しでも情報が欲しい
3.氷塊 を引き当てる俺ってツいてる
【備考】
プロシュートの支給品は『双眼鏡』のみです。
G-8には『SBRトロフィー入り氷塊』と『輪切りのソルベ』があります。
これからの短期的な行動方針は未定です。
支給品は
双眼鏡@現実
輪切りのソルベ@5部
SBRトロフィー入り氷塊@7部
です
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時系列順で読む
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最終更新:2012年07月19日 22:00