さて、たまには率直に本題に入ろうか。

今回は『記憶』に関する話だ。まあさっき話したのもある意味では記憶の話だったけど。
もう少し具体的にいうと、次に話すのは“忘れる”ということについて。

この“忘れる”って、何が厄介だっていうと、まあ皆もわかると思うけど、
『自分が何を忘れたかがわからない』ということだな。

あ、いやアレよ。1・2の……ポカン!で技忘れるとかそういうのはナシでね。
今回すぐに俺が本題入ろうって言ったのも、まあこの出来事もいずれ忘れちゃうかなと心配したもんでね、ハハハ。

で、先も言ったように、自分が何を覚えてて何を忘れたかを知らないという事は、そりゃあ相手だって『この人はどこからどこまでを忘れてしまったんだ』と推測することだってできない。
ゆえにこう聞くしかないわけだ。

「どちらさん?ってミスタさん、私ですよ、ミキタカです」
とね。でも忘れた当人からしたらそのセリフが既に意味不明。

「イヤイヤ、それが誰だよ。つーかココどこだよ?俺ぁジョルノと一緒にサンタ・ルチア駅に――」

「?……もしかして、ミスタさんアナタやっぱり記憶が」
「ハァ!?何ナメたこと言ってんだ!さっきは平気だと思ったがテメーやっぱ敵だなッ!」
「え、私はただアナタのことを――ゲブッ」

ここで問答無用でケリ入れたとは言っても、流石にミスタを責めることはできないだろうね。
というかこれはミキタカも甘かった。ミスタって男はたとえ同僚にもヤバけりゃ問答無用で皿を投げつけるような奴だってのを彼は身をもって体験済みだったんだから。

「おら!テメェなんか知ってんだな?2秒だけ待ってやるからチャッチャとしゃべりな、知ってること全部なッ」
襟首をひねりあげられたミキタカは必死に頭を巡らせる。

とは言ってもたかだか二秒。今君らに『とはいっても』と言ったのが実際の二秒くらいだ。
こんなんで何をどう説得しろというのだ?砲弾が自分たちのもとに届くまでに巨人になった友人が敵でないことを証明するよりも不可能だろうな。
だから必死にこれだけを叫んだ。

「私はホントーにあなたの敵ではありません!グイード・ミスタさん!」

本人から聞いていない本名を叫ぶ。が、沈黙……やっちまったか?ミキタカの顔にブアッと脂汗が浮かんだ。
一分とも十分とも受け取れるほどに長い数秒が過ぎた、なんて表現はきっと本人にしか感じられない苦痛だろうね。少なくとも今の俺にはわからん。
と、そんなことを言ってるうちにミスタが反応した。

「俺の名を迷いなく言うか……ケッ、聞いてやろうじゃねぇか。だが少しでも嘘言ってみな、目ん玉の間にもう一つ穴を開けてやるからよ」

そう言ってミスタがゆっくりと手を放す。
だが!ここで!あろうことか!ミキタカは!

「――私の名前はヌ・ミキタカゾ・ンシと言います。ですが私が話すのはあなたが今までどこで何をしていたかを聞いてからです」

逆に思いっきり問い返した!
その理由は!
「……は」
「ハッキリ言いましょう。ワタシはあなたが“『何者かに記憶を奪われてしまった』と疑っています”。
 その疑いが本当か、あるいはワタシの思い違いか。それをハッキリさせたいのです。
 だから聞きます。あなたはついさっきまで、何してました?」

中々に機転の利いたセリフだと思ったね俺は。
記憶を失った人に『アナタ記憶がないんですよ』と言っても普通は混乱するだけだ。
だったらそれを本人自身に『ああ今俺は記憶喪失なのか』と自覚させる方向に持って行ったと。
電波な頭だが決して中身は悪くないと評価できる一瞬だ。

となったら逆に混乱するのはミスタ。
「え……いや俺はジョルノと一緒に――まあ、ドライブか。ドライブしてヴェネツィアに」
「するとジョルノさんの事はご存じで?」

「ンだおまえジョルノのことまで知ってんのか」
「ええ、ワタシはジョルノさんにお会いして、あなたの名前、そして、ブチャラティさん、アバッキオさん、ナランチャさん、トリッシュさんという方々のお名前をうかがいました」
「じゃ……じゃあてめぇ、ミキタカゾ?っつったな?なんだジョルノの知り合いか何かか」
「――まあそんなところですかね。証拠を見せましょうか。ジョルノさんの外見ですよ。
 私は人の顔真似はできませんが……」

「……ブッ」
「どうです?ジョルノさんによく似てるでしょう?私は彼のことを知ってるんですよ」
「文明の利器ってスゲ――――!!!ぎゃーはっはっはっ」

なるほどなるほど。これはいい証明だ、と俺も吹いた。
ミキタカは自分の能力で――まあいきなり目の前でやると驚かれるからデイパックに手を突っ込み――手の一部をチョココロネみっつに変えて、それを頭の上に乗っけたんだ。
ミスタ、爆笑。ミキタカ、したり顔。コロネ、文明の利器。

しかし、ひとしきり笑った後。
いよいよジョルノとミキタカに明確な関係があったと証明された。そうなってくるとミスタの頭はパンクしそうになる。
お世辞にも良いとは言えない頭なのは彼自身良く知っているんだから。
「や、ウンわかったんだが、いやちょっと待ってくれ……頭ん中整理するからよ……」
そういって顎に手を当て考え込む。そんなミスタの決断をミキタカは待った。かつて仗助が自分のことを理解してくれたように。時間さえかければ理解してもらえるだろう。

――と。

「――ああ。とにかく俺は、ミキタカゾ曰く『どうやら記憶障害にあったらしい』という状況は理解した。
 認めたくはねーけどな。だったらまだミキタカゾとジョルノがただ俺の知らない友人だっていう方が信じられるぜ」
「ええ――そうおっしゃる気持ちはよくわかります。そして話してくれてありがとうございます。
 そうしたら私からの提案ですが。ともあれどこかにいるジョルノさんと合流するのが第一の目的だと思います。いかがでしょうか」

いよいよ提案。これも無意識かどうか知らないがなかなか良い。
何がって、『今はある男の主催で殺し合いをしてるんですよ僕ら』なんて言ってみろ?
そこでまた一悶着二悶着あるだろう。だからそこはスルーしたわけだ。
『とりあえず共通の友人に会う』という目的があれば今のところは大丈夫だ。
もちろんこれも不安定なロープの上を歩くに等しい行為だ。

「うーん。そうだな。本当に俺が記憶喪失なのかどうかもジョルノに会って聞いてみればいいか。
 ところで、ここはどこだ?確かにヴェネツィアじゃあねーようだけど……」

そう。記憶云々は置いといたとしても、現状を問われた時だ。
しかしここでもなかなかミキタカは冷静だった。

「そうですね、実をいうと私もさっきまで少しパニック状態でして。ここがいったいどこなんだか……
 とにかく、それも踏まえて少し移動しましょうか。さっきみたいに靴になります?」

……訂正。冷静じゃなかったからこそ正直に答えられたんだな。運がいいんだか頭が良いんだか、あるいはその逆か――

「それがオマエのスタンド能力か――でもとりあえずいいだろ。二人で並んで歩こうぜ」

とにかく、そんな綱渡りを二人は歩き出す。
彼らは無事にジョルノに、あるいはブチャラティチームのような信用できる人間に会うことが出来るのだろうか?
そしてミスタの記憶は?その現在の持ち主との遭遇は?

期待する気持ちはわかるが、まあこの辺でやめておこうか。こうご期待、ってね。



【C-2 南東 / 1日目 午前】

【グイード・ミスタ】
[スタンド]:『セックス・ピストルズ』
[時間軸]:JC56巻、「ホレ亀を忘れてるぜ」と言って船に乗り込んだ瞬間
[状態]:記憶喪失
[装備]:閃光弾×2
[道具]:拡声器
[思考・状況]
基本的思考:なし(現状が全くわからない)
1.とりあえず移動。ジョルノ他俺を(俺の現状を)知ってる人に会いたい
2.どうも俺は記憶喪失になっているらしい。でもあまり信じたくない
3.おいミキタカゾ、そのモノマネは反則だってwww

※第一回放送を聞き逃しました。名簿も未確認です。
※記憶DISCを抜かれたことによりゲーム開始後の記憶が全て失われています。
※ミスタの記憶はJC55巻ラストからの『ヴェネツィア上陸作戦、ギアッチョ戦の直前』で止まっているようです。

【ヌ・ミキタカゾ・ンシ】
[スタンド?]:『アース・ウィンド・アンド・ファイヤー』
[時間軸]:JC47巻、杉本鈴美を見送った直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:チョココロネ×3
[思考・状況]
基本的思考:ゲームには乗らない
1.とりあえずミスタの説得に成功して安心。しかし現状はわからぬまま。やや不安
2.ミスタと共通の知り合いであるジョルノと合流したい。まずは移動
3.知り合いがいるならそちらとも合流したい
4.承太郎さんもジョルノさんと同じように生きているんでしょうか……?
5.顔真似はできないけどこういう方法もあるんだぜ(ドヤ

※第一回放送を聞き逃しました。名簿も未確認です。
※ジョルノとミスタからブチャラティ、アバッキオ、ナランチャ、フーゴ、トリッシュの名前と容姿を聞きました(スタンド能力は教えられていません)。
※第四部の登場人物について名前やスタンド能力をどの程度知っているかは不明です(ただし原作で直接見聞きした仗助、億泰、玉美については両方知っています)。

[備考]
ミスタとミキタカは自分たちの現在位置がわかっていません。また地図も持っていません。
地図もコンパスもない以上は道沿いに歩くようですが、詳しい方向や目的地は決まっておりません(決められません)以降の書き手さんに一任します。


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最終更新:2014年01月31日 20:12