ディバックを漁る。
武骨な石で出来た仮面であった。
指でなぞるが、特になにが起こるというわけでもなく、ただの仮面が支給品として配布されたのだと気付く。
成程。
仮面が支給品とは中々洒落のきいたことをする。
彼女は石の仮面、曰く石仮面と呼ばれるそれを手放すと、青い焔が纏わり、彼女の周囲にふわついた。
仮面の付喪神である彼女――表情豊かなポーカーフェイスこと
秦こころ。
彼女の目覚めはAの3の草原でだった。
何のことはなく、誰かに襲われるでもなく、平凡な目覚めである。
だからこそ、最初は夢かと思った。
今はまだ感情希薄の身分にして、夢見たがった。
希望がない――そう思う。
奪うまでもなく、現状ここには希望が見えない。
操るまでもなく、どうしようもなく絶望的である。
「……」
狐面を被り、これからのことを考えてみる。
殺し合いに乗ることは、しない。
現状彼女は『殺意』というものを抱いていないからだ――。
いや、そもそもの根底として、『死』とはつまり、『感情が零』であることを指す。
言いかえるならば、それは絶望であり、『希望』とは両極端に位置することだ。
『死』は希望(みらい)を作らない。
ましてや『殺す』、『殺される』だなんて、言語道断。
彼女の成すべきことは、全ての感情が平等に訪れるように調整することだ。
感情をなくすことでは決してないのである。
だとすれば、彼女は動かなければならない――この『異変』に対して。
ふわふわと自分を軸に回る仮面の一つ――『完璧な希望の面』を手に取り彼女は決意する。
彼女の『自我』がそうさせた。
まずは、どこかに移動しよう。
こんな草原の中に居たところで、仕様がない。
さしあたって行きたい場所も、特別合いたい人間もいないのだが、人目につくところに赴こう。
そうしたほうが、盛り上がる。
気分が。
「よーし♪」
何時までも意気消沈してられない。
心機一転、気持ち新たに。
幸先のいいスタートを切ろうと、『私と最強の称号を賭けて闘え!』という先ほどの宣言とは何だったのか、な決め台詞を唱えようと。
仮面を構えて、威勢よく。
「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」
唱えた。
変な言葉が出た。
見ると石仮面を被った彼女は、傲然と、言い放つ。
――表情豊かな彼女。いささか表情豊かが過ぎたらしい。
「最強は誰のものでもないッ! このこころだッ!
殺し合いを起こすなんてッ、ましてやこのこころまでをも巻き込むとはよほど馬鹿と見た!――しかし我々は、容赦せん!」
「なーんちゃって」
石仮面を外して。
女の人の仮面をつけ直す。
意気込み新たにしたところで、ようやく彼女は(これでも一応対主催として)最初の一歩を踏み出した。
こうして、表情豊かなポーカーフェイスな秦こころの旅路は始まる。
殺し合いを経て、彼女は感情はどのような得るだろう。或いは得れないのだろう。
――それを知るのは、まだ先のお話。
【A-3/草原/深夜】
【秦こころ@東方 その他(東方心綺楼)】
[状態]健康
[装備]様々な仮面、石仮面@ジョジョ第一部
[道具]基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない
1:ひとまずふらつく
2:殺し合いに乗っている人間がいたら戦う?
3:私が最強だ!
[備考]
※少なくとも東方心綺楼本編終了後から
※周りに浮かんでいる仮面は支給品ではありません
最終更新:2013年10月10日 23:13