C-4、魔法の森の内部に存在する『魔理沙の家』。
一応は【何でも屋」ではあるのだが、客が来ることは殆ど無く大した整理整頓もされていない為にアイテムや日用品が散らかっている。
尤も、当の家主も家を開けていることが多い為さほど気にしてはいないのだが。
そんな家の一室にて、金色の髪と魔女風の服装が特徴的な少女「
霧雨魔理沙」が椅子に座りながらぽつりと呟く。
「まさか、此処から始まりだなんてな」
自分の自宅がスタート地点だとは思っても見なかったが、まぁラッキーだったということで片付けておく。
私の日頃の行いの良さ(?)が此処に来て良い影響を及ぼしたのだろう。
私はそんなことを思いつつ、「殺し合いのゲーム」のことについて考え込んでいた。
「にしても…殺し合い、ねぇ」
たった一つの「生還」という席を巡る殺し合いゲーム。
今までの弾幕ごっこのようなお遊びなんかじゃない。命を賭けた文字通りの真剣勝負。
最初はしょうもないドッキリか何かか?とでも思ってたけど…あの秋穣子がみせしめとして殺された。
穣子の死が証明したんだ。ゲームは嘘っぱちなんかじゃなく、紛れもない本物の催しだったと。
私だってあの時はぞっとした。久しぶりに「恐怖」を抱いていたんだ。
それにしても、確かあいつら…荒木飛呂彦に、太田順也とか言ったっけ?
何でか知らないが、太田とかって方は…こう、変な感じがした。
何だろう。昔会ったことあるような、何となく懐かしさを感じるような。
アイツを初めて目にした時、私は奇妙な感情を抱いていたのだ。
その感情の正体が未だに分からない。何とも気持ちの悪い妙な感情が渦巻いていると言うか…
…まぁ、それはともかくとしてだ。一先ず私の方針はもう決めている。
「殺し合いなんて…悪趣味にも程があるぜ!私は乗らないね」
当然、反抗だ!殺し合いに乗るつもりは無い。
正直心細いし、誰を信じれば良いのかも解らないし…不安で仕方がないのは確かではある。
だけど、だからっておめおめと殺し合いに乗るってのも癪だ。
第一私は殺人は専門外だしやるつもりも一切無い、ふざけんなって奴だ。
「そうとなると、これからどうしようか…」
さて、そうと決まれば霧雨魔理沙。どうする?
まずはこの会場から脱出がしたい。ただ、今回ばかりは一人でどうにか出来そうにも無い…
どうやら名簿を確認した限りでは、半分以上が「見知った奴ら」だった。
人間、妖怪、神様。まさに何でもありってレベルの人選。この中で確実に信頼出来る奴と言えば…
…うん、まずは霊夢を捜そうかな。異変解決を生業としてるし、あいつなら絶対にこの殺し合いに反抗するだろう。
それ以外にも、何だかんだであいつのことは親友だって思ってるし…絶対に信じられる。
よし決定!まずは霊夢と合流しよう。それがベストだぜ。
――あ。そういえば、支給品とか言うのがあるんだったな。
今後の行動方針を決定した直後に、ふとそのことを思い出した。
名簿や地図は確認していたけど、支給品のことを失念していたのだ。
私はすぐにデイパックの中に手を突っ込み、マジックアイテムめいた不思議な紙を開いた。
そこから勢いよく飛び出てきたのは。
「…何だこれ」
奇妙な輝きを見せる一枚の円盤。メモ書きが同封されていた。
「なになに…『頭に挿入して使ってください』…?」
何だ、これ?意味が分からないぜ。こんな円盤を頭に差せってのか?
そんなことして何になるんだ?用途不明の物体を前に疑問しか浮かばない。
半ば疑いのような感情を抱きつつ、「まさかなぁ」と思いながら頭にDISCを押し付ける―――
「―――う、おおぉっ!!?」
直後本当に頭の中にDISCが『入り込んだ』。
まるで精神に直接干渉してくるかのような不思議な感覚が全身を駆け巡る。
これには流石の私も驚きを隠せず、声を上げてしまった…。
そして少しして、身体と心が落ち着きを取り戻す。息を整えつつ、自身の胸に手を当てた。
「………な、何が…起こったんだ?」
一滴の汗を流しつつ、私は呟く。
変な感覚に襲われたが、特に変化したような要素は見受けられない。
身体が逞しくなったとか魔力が増したとか、そんな感じの直接的な影響は感じられない。
何だったんだ、あの円盤…?
自身の思考を冷静に落ち着かせようと腕を組んだ直後に―――
私は気付いた。
「え?」
自身の肩に、変なちっこいのが乗っかってることに気付いた。
まるで蜂のような黄色と黒のストライプ模様のそいつはせいぜい小判程度の大きさしかない。
それどころか、そいつは『何匹もいた』のだ。わらわらと私の両肩に乗っかってたのである。
―――私は、目を見開きながら驚愕した。
「何だ『コイツら』はァーーーーーーーッ!!!?」
◆◆◆◆◆◆
それから、少しだけ後。
さっきの円盤による影響だとすぐに気付けたとはいえ、あの時は流石に驚きを隠せなかった。
突然あいつらは私の両肩現れたんだから。
だけど私は何となく理解出来た。
「さっきは驚いたけど…こいつは凄いな。なかなか使えそうだぜ」
そう、このちっこいのは『私が召還した』ということを。
こいつらは私の意のままに操れる存在だということを。
私の命令に従わせて自在に動かせるということを。
使い魔や守護霊の類いなのかは解らないけど、ともかくそうゆう存在なんだろうと。
私は理解することが出来たのだ。
「『傍に立つ』。だから『スタンド』ってワケなんだな」
先程の支給品には『スタンドDISC』とか書かれてあった。
多分こいつらが『スタンド』とか言う存在なんだろうということも、すぐに解った。
不思議な奴らだ。こんな類いの連中は幻想郷でも見たことがない。
一体何者なんだろうか、この変な生き物は?そもそも生き物なのかすらも疑わしいけど。
だけど、まぁいいや。使えるものは何でも使わせてもらうのがこの霧雨魔理沙だ。
コイツらやDISCに関しては、あとでじっくりと調べさせてもらおう。
そして―――こいつらの『名』はッ!
「―――『ハーヴェスト』ッ!!」
魔理沙の呼び声と共に、無数の小さなスタンドビジョンが瞬時に彼女の足下へと出現する。
総勢500体以上。それはまるで蟻の群れのような「群体」!
縞模様の丸い身体に小さな手足の生えた奇妙な姿をしたスタンド達が姿を現す!
スタンド『ハーヴェスト』はまるで百を超える兵隊のような統率性でその場に並ぶッ!
魔理沙が見渡すように視線を向けるのは、日用品などが散乱したこの部屋一帯!開きっぱなしの部屋の扉!
そして彼女は、『指示』を出したのだ!
「さ、家の中から使えそうなマジックアイテムを集めてくるんだ!!」
司令塔・魔理沙の指示と同時に無数のハーヴェストが家中に散らばっていく!
このスタンドの能力は『収集』!物品を掻き集めることを何よりも得意とする。
それを魔理沙が知っているかはさておき、彼女はその無数の群体であるというこのスタンドの特性を利用した!
支給品にマジックアイテムが無くとも、此処は魔理沙の自宅。
かつてよりあちこちで掻き集めていたマジックアイテムが散乱…もとい、保管されているのだ。
それを装備出来れば、自身に取っての強力な自衛手段として使えるだろう。
とはいえ、正直うちは日用品もごちゃ混ぜになっていたりするのでドコに何があるか、自分でもよく解っていない。
自力で家中を探しまわるのは流石に面倒だし大変だ。
「ほらほら!かっかと働けーーーーーーーーっ!!!」
そこでこのスタンドを利用した!こいつらに捜させれば荷物探しも超楽勝!
こうゆう時は人海戦術が一番!数に物を言わせれば何でも出来るぜ!
アリスが人形達に雑用させるのも納得できる。面倒なことはこうゆう人海戦術に任せれば万事解決だからな!
そのまま数百体を超えるハーヴェスト達は、収集の為に魔理沙の家中をあちこち忙しなく駆け巡っていく――――!
◆◆◆◆◆◆
およそ10分後。
「………………。」
なかった。
何の成果も得られなかった。
マジックアイテムなんて何処にもなかった。
全てのハーヴェスト達が等しく手ぶらで戻ってきた。
自室にて魔理沙はぽかんとした表情で椅子に座って燃え尽きていた。
「おかしい…幾ら何でも一つも持ってこないなんて」
もしかして、あの主催者共がうちのマジックアイテムを勝手に押収しているのか?
どう考えてもそうとしか思えない。現にこの部屋を捜してみてもアイテムが一つも見つからない。
自室なんだから一つはおいてあるはずだし、ハーヴェストにも捜させたのに…ない。
兎に角、この家からマジックアイテムがごっそり無くなっていたのだ。
「うーん…やっぱりあの主催者共に勝手に盗まれたりでもしたか?」
冷静に考えてみれば、こんな所でマジックアイテムが回収出来るわけがないとも思ってきた。
そもそも此処は殺し合いの会場。言わばゲームの盤上なのだ。
わざわざ支給品を寄越して殺し合いをさせているというのに、マジックアイテムが現地調達可能なんて言ったらそれこそ魔法使いに有利にも程がある。
つまりフェアじゃない。メモ書きを見る限り参加者には制限も課せられているらしいし、ゲームはバランスを保つのが大切なのだ。
故に現地調達できる物資で『特定の参加者が有利になる物』は置いていないのだろう。多分。
「クソッ、あいつら殺し合いに巻き込むどころか人のもん勝手に盗むなんて。最低だぜ」
魔理沙が言えた口ではない。
…というかそもそも此処は『幻想郷』なのか?そんな思考が魔理沙の脳裏をよぎった。
地図が明らかに変だった。存在するはずの無い施設がいくつもあったのだから。
家の中から僅かに感じ取れる程度だが、魔法の森の瘴気も何だかいつもより大分薄いように感じられる。
何だか環境がおかしいのだ。もしかしたら『幻想郷っぽいだけの会場』なのかもしれない気がしてきた。
マジックアイテムは盗まれたのではなく、元々無かったのでは?
…まぁ、そうだろうとそうじゃなかろうとどっちでもいい。真相は後でゆっくり調べよう。
今は殺し合いっていう現状を打開することが先決なのだから。
「仕方無い。此処にはもう用はなさそうだな」
ひょいっと座り込んでいた椅子から飛び上がり、とことこと窓辺へと移動する。
そのまま部屋の窓を勢いよく開き、私は軽快な動きで外へと身を乗り出し飛び出した。
入口から出てもよかったけど、何となくこっちのが手っ取り早い気がしたのだ。何となく。
「よっと、」
窓から家の外へと出て、雑草の生えた地面に着地しながら私はふっと顔を上げる。
正面に広がるのはいつも通りの魔法の森だ。…瘴気が薄くなっていること以外は、いつも通りに見える。
鬱蒼としている森を見渡しつつ、私はすぐさまその場で思考を纏める。
まずは適当にあちこちを駆け回ってみよう。とりあえず早く霊夢と合流したいし。
とはいえ、いつもの箒が無いせいで移動がちょっと面倒臭いな。
徒歩であちこち動き回るのもたまにはいいかもしれないけど、疲れそうだし…
「…ん、待てよ。」
そうだ。こんな時にもこいつらが使えるんじゃないか?
あんだけ数がいるんだし、頑張れば出来るかもしれない。
そう思って、私はすぐさま傍に『スタンド』を出現させた。
「ハーヴェスト!」
よっこいしょ、と私はその場で座り込む。
そして数百体のハーヴェストに座っている私を持ち上げさせた。
こいつら、何だかんだで見た目以上に結構パワフルかもしれない。数多いからかもしれないけど
そして私は、「もしかして出来るのでは?」と考えていた指示を出した。
「このまま私を運ぶんだ!」
私の掛け声と共に、無数のハーヴェスト達はそのままバケツリレーの如く私を持ち上げて移動を始めた!
数百体のスタンドがせっせと小柄な私の身体を素早く運んでくれる。
決して魔理沙をその手から落とすことも無く、きっちりと持ち上げながら運搬してくれている!
「おお!本当に出来たっ…!」
私は感心したように声を漏らす。なかなかのスピードだ!普通に歩くよりはずっと早いし楽チンだぜ!
こいつらやっぱり使える!さっきはマジックアイテムを見つけられなかったけど、それでも十分働いてくれた!
そもそも現にこうして私を運べている時点でキビキビと働けているんだ。まさにディ・モールトベネ(非常に良い)!って奴だな!
ハーヴェスト。こいつの魅力はマジックアイテムに勝るとも劣らない。
全く、こんな悪趣味ゲーム会場で何ともグレートな物をゲットしたもんだぜ!
案外『ツイてる』のかもしれないぞ、私!
「いやぁ、スタンドって最高だぜー!!」
ご満悦な様子で魔理沙はハーヴェストに運ばれていき、そのまま魔法の森を進んでいく。
数百体のちっこい何かが魔法使いの少女をせっせと運んでいる。
端から見れば異様な光景だが、何だかんだで魔理沙は新たな力「スタンド」を楽しんでいた。
気分は最高。昂揚感と共に『魔女』と『兵隊』は森の中へと消えていった。
【C-4 魔理沙の家/深夜】
【霧雨魔理沙@東方 その他】
[状態]:健康
[装備]:スタンドDISC「ハーヴェスト」@ジョジョ第4部
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:異変解決。会場から脱出し主催者をぶっ倒す。
1:スタンドってすげー!
2:適当に会場を移動。まずは信頼出来る霊夢と合流したい。
3:出会った参加者には臨機応変に対処する。
4:出来ればミニ八卦炉が欲しい。
5:何故か解らないけど、太田順也に奇妙な懐かしさを感じる。
[備考]
※参戦時期は後の書き手さんにお任せします。
※「魔理沙の家」に本来あったはずのマジックアイテムが全て消失しています。
生活用品などは十分に置いてありますが非常に散らかっています。
<スタンドDISC「ハーヴェスト」>
破壊力:E スピード:B 射程距離:A 持続力:A 精密動作性:E 成長性:C
霧雨魔理沙に支給。
これを頭に差し込むことでスタンド「ハーヴェスト」が使用可能になる。
総勢500体以上(本体の自称)もの小型のスタンドビジョンからなる群体型スタンド。
名前通り『収集』することを得意とする能力で、作中ではあちこちから金銭やクーポン券などを掻き集めていた。
単体の破壊力自体は低いものの、その小ささや数に物を言わせた人海戦術は脅威的。
制限により射程距離は100m前後に低下している。
最終更新:2013年10月10日 23:19