「あなたが『神様』?」
「そうだよー」
「……冗談が許される状況ではないと理解して言っているの?」
「あーうー、やっぱり『外の人』には信じられないよね。
ともかく、最初に殺された女の子がいたよね?
あの子の上司みたいなものだと覚えてくれたらいいよ」
「でも、今は力を封じられている」
「うん、地面にも長いこと潜っていられないようだし。
全盛期だったら、火山を噴火させた大地を揺らしたりするぐらいはできるんだけどね」
「……死人を蘇らせることも?」
「うん? 何か言った?」
「いいえ、何でもないわ。とにかく、私には早急に倒すべき敵がいる。
命が惜しければ、同行しようなどと考えないことね」
「おいおい、話はまだ終わっていないよ。
お互いに、探してる知り合いの情報とかあるはずじゃないの?
……あ、ちなみに私は家族が呼ばれてるんだけどね」
「家族……」
「そう、家族だよ。名前は……ああ、先に行かないでってば。
あと、さっきから気になってたんたけどさ」
「…………」
「タバコ……逆さだよ?」
使命を、背負っていた。
一族のために。血統のために。今は亡き夫のために。世界のために。
何よりも、人間の未来のために。
生き残った二人の『柱の男』を打倒し、秘宝であるエイジャの赤石を守るという使命。
それを果たすまでは母としての幸せなど望まないと決めていたし、必要ならば心だって殺すつもりだった。
たとえば、十数年ぶりの再会を果たした息子に、母親だと明かさずに厳格な『師匠』として接したように。
たとえば、もう一人の息子も同然だった愛弟子を喪った直後だろうとも、決して涙を流さないように。
悲しみをすべて心の底に封じて、
ワムウと
カーズに襲撃を仕掛けるために。
だというのに。
気づけば、見知らぬ場所にいた。
愛用の武器であるマフラーを没収されていた。
二人の東洋人から、殺し合いを宣告された。
だけでなく。
あの暗闇の空間には、確かにいた。
波紋マフラーがなくとも、その存在感を感知できるほどにありありと。
倒すべきはずの、柱の男たちが。
しかも。
確認した名簿には、見覚えのある名前がいくつもあった。
『
ジョナサン・ジョースター』や『
ディオ・ブランドー』と言った名前に、同姓同名の別人かと考えざるを得なかった。
その死を知ったばかりの愛弟子と、弟子にして実の息子である青年。
荒木という男の嘯いていた『死者の蘇生』が脳裏をよぎる。
有り得ない、と
リサリサの内面が悲鳴をあげる。
信用できない、偽の名簿に踊らされているだけかもしれない。
深く考えてはいけないと、そう断じていた。
いずれにせよ、果たすべき使命は残ってる。
人を殺して回るだろう柱の男たちを打倒し、このような催しを主催した東洋人たちに引導を渡す。
やるべきことは、はっきりしていた。
ジョセフがこの場にいようとも、シーザーが生きていようとも、情ではなく理性で考えなければならない。
戦力が増えるかどうかという一点でしか、彼らのことを気にかけてはいけない。
だがしかし、それでも。
最期に遺された鮮血のシャボンが割れた後のこと。
ジョセフに遺体を探してはならないと制止した、あの瞬間。
確かに、彼女の頭をよぎる想像があった。
もし、同じことがジョセフの身に降りかかってしまえば……?
彼女の名を、エリザベス・ジョースターという。
戦士である前に、一人の母であった。
◆
「命が惜しければ付いてくるなと言ったはずよ」
「そうは言ってもね、私の目的地はこっち方向だし」
「そう。私の後を追っているようにしか見えないけれど、どこを目指しているというのかしら」
「守矢神社」
「…………」
「あ、いま、『チッ、まさか本当に同じ方向だったとは』って感じの目をしたね。
そのセンでいくと、あなたもウチの神社近くに用があるんだ。
地図を見たところだと、『エア・サプレーナ島』か『サンモリッツ廃ホテル』のどっちかかな?」
「…………」
正解、らしかった。
感情を表に出さないような態度が目立つのに、揺れている様子は分かりやすい。
なんとも、難しい事情を抱えているようだね。
それが、リサリサと名乗った彼女に対する
洩矢諏訪子の心象だった。
若いみそらで大変そうだねぇ、と感想は口にださずにとどめる。
早苗にも生真面目で色々と背負い込むところがあったけれど、感情表現だけは素直だった。
もっとも、リサリサは早苗よりも年配が上のようだったが。
――早苗は、きっと大丈夫。
やはり気にかかるのは、風祝であり家族であり娘も同然である早苗のことだった。
しかし、あの子は意外と強い。
いや、強くなったと言うべきか。
幻想郷に来たばかりの頃は、右も左も分からずに神社の儀式の進行さえおぼつかなかったというのに。
博麗の巫女の影響か、異変や妖怪退治に感心を持つようになって。
いい意味での無鉄砲さを身に着けるようになった。
最近では、稽古をつけたつもりだったのに諏訪子の方が一本取られることだってあった。
とはいえ、あまり無鉄砲すぎるのも心配の種になる。
神奈子の方は過保護だから、今頃などはもっとずっと心配しているかもしれない。
荒木と太田。
アイツらはヤバい。敵に回してはいけないものだ。
八百万神の一人だった少女が見せしめとばかりに脳漿を撒き散らした時、そんな直観が伝わった。
それは、ずっと昔に神奈子と戦った時のそれに近かったかもしれない。
あるいは、外の世界が信仰の薄い時代になって、初めて『人間に姿を認知されなくなった』時のそれにも似ていた。
これからどうにもならない絶望がやってくるような、そうなのだと分かる感覚があった。
――でも、親の私が、早苗に顔向けできない有様を見せるわけにはいかないね。
流れに逆らわず自然の成り行きに身を任せるのが神ならば、無体な真似を働く者に祟るのもまた神というものだ。
早苗が、信仰に値する神様だと胸を張って誇れるように。
神の畏怖される所以を、あの主催者どもに見せつけてやろうではないか。
……なんて、思ってみたりするのだけれど。
(この様子じゃ、この人から信仰をもらうのは無理そうだねー。
ああでも、そばにいたら色々と頼りになるところをアピールできるかも。
そうしたら信仰をもらえて協力者もできて一石二鳥じゃないかしら。
あーうー。こういう営業っていつもは神奈子の担当なんだけどなぁ……)
まずは慣れない草の根運動について考えながら、早苗たちの向かいそうな神社を目指すことにしよう。
彼女の名を、洩屋諏訪子という。
一人の母でありながら、一柱の神であった。
【A-6 草原/深夜】
【リサリサ@ジョジョの奇妙な冒険 第2部「戦闘潮流」】
[状態]:健康
[装備]:タバコ
[道具]:不明支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:柱の男と主催者を打倒する。
1:一先ずはサンモリッツ廃ホテルに向かう
2:ジョセフとの合流。息子の心配より、波紋戦士としての使命を優先したいが……。
3:シーザーのことは、まだ考えない。
4:もし『死者の蘇生』という言葉が真実であれば、もし息子を失えば……。
[備考]
参戦時期はサンモリッツ廃ホテルの突入後、瓦礫の下から流れるシーザーの血を確認する直前です。
煙草は支給品ではなく、元から衣服に入っていたためにそのまま持ち込まれたものです。
【洩矢諏訪子@東方風神録】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:不明支給品(確認済み)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:荒木と太田に祟りを。
1:一先ずは守矢神社へ向かう。
2:神奈子、早苗をはじめとした知り合いとの合流。早苗はきっと大丈夫。
3:信仰と戦力集めのついでに、リサリサのことは気にかけてやる。
[備考]
※参戦時期は少なくとも非想天則以降。
※制限についてはお任せしますが、少なくとも長時間の間地中に隠れ潜むようなことはできないようです
最終更新:2013年12月03日 22:33