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アマガミ部『二人の時間』

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アマガミ部『二人の時間』


 影が濃くなったあまがみ部の部屋の中、佐村井御琴が牙を立てて口に含む度に糖度100%の声が微かに耳に過ぎった。
 履き込んだ上履きを片方脱いだ御琴は脚を伸ばして、一日付き合ったソックスで締め付けられたふくらはぎを労った。

 緊張と緩和。支配と奉仕。加虐と被虐。部屋の二人の関係なんて、漢字なんかで説明はつかない。

 「美味しい」
 「なに?」
 「ミコ。美味しい」

 声の主は大場狗音。ふわふわゆるゆる高校生な彼女、大人のような狗音の囁きが、殺風景な部屋を淫靡な世界に塗り変えていた。
 もし、あなたがその場に居れば心乱すかもしれない。なぜなら二人の行為はそれくらい扇動的だからだ。誰彼目を気にすることない、
小さな部屋でカチコチと古時計が鳴らすリズムだけが平常心を保って見守っていた。

 本能のまま、思うまま。迷ったら、かぶり付いちゃうぞ。

 「あんっ。そんなに欲張っちゃダメよ」

 狗音のダメは喜びのダメ。御琴は彼女の声に興奮する。 

 「久し振りの出会いなんだから言いっこなし。ほら……だんだん指先がしっとりと」
 「ミコのせい……だからね。ぜーんぶ。許さない」
 「くー。スカートにシミが」

 ぽたりと狗音の口から甘いエキスが雫となって、御琴を逃しまいとしがみつく。もう、すべてはわたしのもの。勘違いにも似た独占欲。
 ふたりで分かち合った経験は、きっと永遠の誓い。抜け駆けなんか、許しはしないからともう一度、口いっぱいに……。

 「誰にも内緒だよ」
 「もちろんよ」
 「こっそり持って来たんだからね。このすいか」

 二人揃って食べかけの輪切りのすいかを皿の上に置いた。彼女の歯型が付いたすいかはゆらゆらとシーソーのように揺れる。

 「ミコ。美味しい」

 御琴はにやにやと狗音が牙を立てるすいかに自分を重ね合わせながら、狗音からのすいかのお返しを待っていた。

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