いく(生(他動詞))

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 他動詞 ① 命を保たせる。生存させる。死なないようにする。 ※蜻蛉(974頃)上「いでなほここながら死なんと思へど、いくる人ぞいとつらきや」
※平家(13C前)一一「是を鎌倉の源二位に見えなば、人も多く損じ、我身も命いけらるまじ」
※小学読本(1874)〈榊原・那珂・稲垣〉四「翌年光仁天皇御即位有りて道鏡をば命計をいけて下野国の薬師寺を造る別当にせられ」
生・活・埋
② 死んだもの、死にかけたものの命をとりもどす。よみがえらせる。 ※古本説話集(1130頃か)五八「『この馬(むま)いけて給はらん』と念じいりたるほどに」
③ 魚を生簀(いけす)などに入れて飼う。 ※滑稽本・八笑人(1820‐49)三「鱸(すずき)を一本さし上ませうとぞんじて、〈略〉生洲(いけす)へ活(イケ)ておきました所が」
④ (鑑賞のために形をととのえて)草花や木の枝などを花器にさす。 ※玉塵抄(1563)二二「すみえの画軸に白い椿の花、水仙花、梅と三を花瓶にいけたをかいた」
⑤ (埋) (火鉢などで、火を保ったり、熱気を防いだりするために)火を灰の中に埋める。 ※日葡辞書(1603‐04)「ヒヲ iquru(イクル)」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三「中にちょんぼりと火のいけてある形が」
⑥ (埋) (保存のために)野菜などを土に埋める。(悪くならないように処置して)しまい蓄える。 ※日葡辞書(1603‐04)「クリ ミカン ナドヲ iquru(イクル)〈訳〉栗、オレンジその他の果実を、長持ちするよう地面の下に保存する」
※土(1910)〈長塚節〉二「大根も干したり土へ活(イ)けたりして闇いから闇いまで働いた」
⑦ (埋) 物の全部、または一部を地面に入れこむ。 ※和英語林集成(初版)(1867)「ゴミヲ ツチニ ikeru(イケル)」
広辞苑 他動詞 ①生かす。生かしておく。死なないようにする。 宇津保物語藤原君「ひばりの 乾鳥 (ほしどり)、これらを―・けて 媒鳥 (おとり)にて捕らば、多くの鳥出で来ぬべし」。
蜻蛉日記上「ここながら死なむと思へど、―・くる人ぞいとつらきや」。
鶴の翁「岩舟にもろもろの魚を―・けたり」
生く・活く
②(死んだものを)生き返らせる。 源氏物語手習「尼君は…此人を―・け果てて見まほしう惜しみてうちつけにそひ居たり」。
宇治拾遺物語7「この馬を―・けて給はらんと念じてゐたる程に」
③(切り取った花や枝を枯らさないようにする意から)花や枝をびんなどに挿す。生け花をする。 鶴の翁「水瓶に松を―・け給ふ」
④(「埋ける」とも書く)土の中や灰の中に埋める。 日葡辞書「クリ・ミカンナドヲイクル」。
続猿蓑「火燵の火―・けて勝手をしづまらせ」(馬莧)。
「炭を―・ける」「土管を―・ける」
大言海 他動詞 前前條ノ語ノ他動、(()く、つくる。(ツヅ)く、つづくる)(イケ)モ、魚ヲ()けオク所ナリ、(イケ)()モアリ〕
(一)生キテアラシム。 (イカ)
神代紀、上 三十六 「溺苦無生、云云、若(イケタマハ)()、吾生兒八十連屬、不汝之垣邊、當俳優之民也」
源、五十二、手習「尼君ハ、親ノワヅラヒタマフヨリモ、此人ヲいけ()テテ見マホシウ惜シミテ、打付ケニ()ヒ居タリ」
蜻蛉日記、上、上 三十 「死ナムト思ヘド、いくる((イカ)ス)人ゾ、イトツラキヤ」(愁歎ニ病ミテ、死ニタク思フニ、藥ヲ飮マセナドスル人アルヲ云フナリ)
舊、今昔物語、廿四、廿二語、 算置 (サンオキ)ノ名人「人ヲ置キ殺シ、置キいくる術モアリ」
菩提心集(大治三年、珍海)下「一ツヲ殺シテ、十ヲ()くト云フ事モアリ」
宇治拾遺、十、第十條「此僧一人ハ、いけムトテ、船ニ載セツ」
竹齋物語(寬永)「大聲アゲテ呼ビいくる」(郞等ノ死シタルナリ)
(二)炭火ヲ、灰ノ中ニ(ウヅ)ム。火力ヲ保タシムル意。口語ニ、いけるト云フ。(()(イケ) 生火 (イケビ) 江家次第、十四、卽位「主殿、圖書、就爐焚香」註「主殿、先( ク)炭、圖書焚香」
動詞活用表
未然形 いけ ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 いけ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 いく べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 いくる も、かも、こと、とき
已然形 いくれ ども
命令形 いけよ

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附箋:下二段 他動詞

最終更新:2025年02月23日 21:25