いづ(出(自動詞))

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞 (ある限られた所、外から見えない所、私的な所などから)広々とした所、人目にたつ所、表だった所などに現われる。でる
① (ある限られた場所から)その外へ進み動いて行く。また、外のある場所に位置を変える。
(イ) (出発点に重点がおかれ、動作性が強い場合) 外へ行く。出かける。出発する。
※古事記(712)上・歌謡「青山に 日が隠らば ぬばたまの 夜(よ)は伊伝(イデ)なむ」
※書紀(720)崇神八年一二月二〇日・歌謡「味酒(うまさけ) 三輪の殿の 朝戸にも 伊弟(イデ)てゆかな 三輪の殿戸を」
(ロ) (目的先に重点がおかれ、状態性が強い場合) 姿を現わす。(特に、目的先が、ある働きを必要とするような場所の場合) 出仕、出陣、出場、出演、出席などする。 ※万葉(8C後)二〇・四三六〇「浜に伊泥(イデ)て 海原見れば」
※方丈記(1212)「頼むかたなき人は、みづからが家をこぼちて、市にいでて売る」
(ハ) (ある働きをやめる事情が含まれている場合) 離れる。去る。離職、離縁、出家、卒業などする。 ※栄花(1028‐92頃)月の宴「その暁にいで給ひて、法師になり給ひにけり」
② (今まで隠れていたものや、なかったものなどが)表に現われる。
(イ) (さえぎられたり、おおわれたりなどして隠れていたものが)表に現われてくる。出現する。
※万葉(8C後)一四・三三六八「足柄(あしがり)の土肥の河内に伊豆流(イヅル)湯の世にもたよらに子ろが言はなくに」
※古今(905‐914)雑上・八七七「おそくいづる月にもあるかなあしひきの山のあなたも惜しむべらなり〈よみ人しらず〉」
※平家(13C前)一二「もし世に出(いで)てたづねらるる事もこそあれ」
(ロ) (なかったものが)新しく生じる。発生する。生まれる。また、ある土地から産出する。 ※伊勢物語(10C前)九六「身に瘡(かさ)も一つ二ついでたり」
※浮世草子・好色一代男(1682)三「神崎中町にしろど、白目などいへる遊女の出(いで)し所也」
(ハ) 表だった所に発表される。特に、出版される。 「掲示に出づ」「新聞に出づ」「大著出づ」
③ (多く助動詞「たり」を伴って) 外に向かってはりだす。でっぱる。つきだす。 ※徒然草(1331頃)三四「口のほどの、細長にしていでたる貝のふたなり」
④ ある限界、標準などを超える。超越する。ぬきんでる。 ※宇治拾遺(1221頃)一「生死のさかひをいでなんと思ひとりたる聖人に候ふ」
※花間鶯(1887‐88)〈末広鉄腸〉上「政府の歳入は僅々八千万円の上に出でず」
⑤ (あることに)原因がある。もとづく。 ※小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉上「是れしかしながら、アルレゴリイと勧懲主眼の小説との差別(けぢめ)を知らぬに出(イデ)たることにて」
⑥ (動詞の連用形に付いて) その動詞の示す作用や状態によって、現われる意。 「歩みいづ」「起きいづ」「逃げいづ」「降りいづ」
他動詞 ① 外に現わす。いだす ※万葉(8C後)一七・四〇〇八「言に伊泥(イデ)て言はばゆゆしみ」
※古今(905‐914)春下・一〇四「花見れば心さへにぞうつりける色にはいでじ人もこそ知れ〈凡河内躬恒〉」
② (動詞の連用形に付いて) その動詞の示す作用によって、表に現わす意。 「言ひいづ」「染めいづ」「取りいづ」「召しいづ」
[補注]自動詞は後に一段活用となって、口語「でる」となる。他動詞には、四段活用の「いだす」およびその口語形「だす」がある。
広辞苑 自動詞 内にあって見えなかったものが外へ現れる(移る)こと。
①出る。出て行く。
崇神紀「朝戸にも―・でて行かな」 出づ
②表に現れる。人目にたつ。 万葉集12「こもりぬのしたゆ恋ひ余り白波のいちしろく―・でぬ人の知るべく」
③生まれる。生ずる。音などが発せられる。 伊勢物語「身に(かさ)も一つ二つ―・でたり」。
源氏物語明石「音もいと二なう―・づる琴どもを」
④(限定された境域から)離れる。去る。出家する。離脱する。 栄華物語月宴「その暁に―・で給ひて、法師になり給ひにけり」。
徒然草「必ず 生死 (しようじ)を―・でむと思はむに」
⑤外に向かってはり出す。でっぱる 徒然草「 甲香 (かいこう)は…口のほどの細長にして―・でたる貝のふたなり」
⑥…に出所がある。由来する。もとづく 「自分一個の意志に―・づる行為」
⑦他の動詞の連用形に付いて、「出る」の意を添える。 竹取物語「こがね・しろかね・るり色の水、山より流れ―・でたり」
他動詞 内や奥などにあって見えないものを、外や表などから見えるようにすること。
①出す。あらわす
万葉集17「乱るる心(こと)に―・でて言はばゆゆしみ」
②他の動詞の連用形に付いて、「出す」の意を添える。 源氏物語帚木「よろづの御装ひ何くれと珍しきさまに調じ―・で給ひつつ」
大言海 自動詞 (一) (オコ)。生ズ。イデル。デル 萬葉集、十四 伊豆流 (イヅル)湯」(溫泉)
金葉集、二、夏「タマクシゲ、 二上 (フタガミ)山ノ、 木閒 (コノマ)ヨリ、出づれバ明クル、夏ノ夜ノ月」
(二)家ノ外ニ行ク。立出ヅ。 天智紀、九年五月、長歌「打橋ノ、(ツメ)ノ遊ビニ、 伊堤 (イデ)マセ子」
萬葉集、十一 廿八 「馬ノ音ノ、トドトモスレバ、松蔭ニ、出でテゾ見ツル、若シハ君カト」
動詞活用表
未然形 いで ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 いで たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 いづ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 いづる も、かも、こと、とき
已然形 いづれ ども
命令形 いでよ

検索用附箋:自動詞下二段
検索用附箋:他動詞下二段

附箋:下二段 他動詞 自動詞

最終更新:2024年05月06日 20:54