辞書 | 品詞 | 解説 | 例文 | 漢字 |
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日本国語大辞典 |
他動詞 四段 |
[一] 物に物を強く当てる。また、たたくような動作をする。強く刺激を与える。 ① 物を、物に向けて強く当てる。たたく。ぶつ。ぶつける。 (イ) 手や、鞭(むち)、杖(つえ)などの手に持った道具で、物をたたく。 |
※万葉(8C後)一四・三五三六「赤駒を宇知(ウチ)てさを引(び)き心引きいかなる背なか我がり来むといふ」 ※説経節・さんせう太夫(与七郎正本)(1640頃)中「いたはしやつし王殿は、今は姉御を、うつかたたくかさいなむか」 |
打・討・撃・撲・拍・擣・搏・伐・射 |
(ロ) 雨、風、波、雷などが強くうちつける。自動詞的にも用いる。 |
※古事記(712)下・歌謡「笹葉に宇都(ウツ)や霰(あられ)の」 ※土左(935頃)承平五年一月二六日「追風の吹きぬるときはゆく船の帆手うちてこそうれしかりけれ」 |
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(ハ) からだなどをあるものに強くぶつける。 | ※虎明本狂言・神鳴(室町末‐近世初)「あいたやなふ、ああいかふこしをうったよ」 | |||
② 火を出すために、火打ち石をたたく。 | ※貫之集(945頃)八「をりをりにうちて焚(た)く火のけぶりあらば心ざす香をしのべとぞ思ふ」 | |||
③ 楽器や手を鳴らす。 (イ) (拍) たたいて鳴らす。 |
※万葉(8C後)四・六〇七「皆人を寝よとの鐘は打(うつ)なれど君をし思へば寝(い)ねかてぬかも」 | |||
(ロ) 弾いて鳴らす。弾ずる。 | ※続日本後紀‐承和九年(842)八月甲戌「天には琵琶をそ打なる」 | |||
④ (擣) つやを出すために、砧(きぬた)で衣をたたく。また、柔らかくするために、藁(わら)などをたたく。 |
※枕(10C終)二七八「葡萄染(えびぞめ)の織物の直衣(なほし)、濃き綾(あや)のうちたる、紅梅の織物など着給へり」 ※山椒大夫(1915)〈森鴎外〉「安寿は糸を紡ぐ。𢊍子王は藁を擣(ウ)つ」 |
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⑤ 弓の弦(つる)をはじく。 | 〔色葉字類抄(1177‐81)〕 | |||
⑥ 古綿や繰り綿を綿弓ではじく。 | ※浮世草子・日本永代蔵(1688)五「打綿の弓〈略〉もろこし人の仕業を尋ね、唐弓といふ物はじめて作り出し、世の人に秘(かく)して横槌にして打(ウチ)ける程に」 | |||
⑦ 球戯で、球をたたいて飛ばす。 | ※学生時代(1918)〈久米正雄〉選任「つづいて第二球が来た。彼は此度は曲らぬ前を打たうと思って」 | |||
⑧ (撲・搏) 相手と引っ組む。ぶつかり合って争う。 | 〔名語記(1275)〕 | |||
⑨ 製品を作るために、材料を鍛えたりして手を加える。 (イ) 金属を鍛えて、刀剣などを作る。 |
〔日葡辞書(1603‐04)〕 ※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)出羽三山「此国の鍛冶、霊水を撰(えらび)て爰に潔斎して剣を打(うち)」 |
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(ロ) 弓、沓(くつ)、面などを作る。 | ※申楽談儀(1430)面の事「面ども打(うち)て、近江申楽(あふみさるがく)に遺物(ゆひもつ)しけるが」 | |||
(ハ) 練り固め、たたいて、そば、うどんなどを作る。 | ※俳諧・古活字版中本犬筑波集(1532頃)雑「是非ともに又も来らばうちやせん うどんたらいでかへすきゃくしん」 | |||
⑩ たたいて伸ばす。 |
「金箔をうつ」 ※太平記(14C後)一四「錦の御旌(はた)を指し上げたるに、俄(にはか)に風烈しく吹いて、金銀にて打て著けたる月日の御紋きれて」 |
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⑪ (たたくような動作をするところから) 田畑を掘り返す。耕す。 |
※古事記(712)下・歌謡「山城女(やましろめ)の 木鍬(こくは)持ち 宇知(ウチ)し大根(おほね)」 ※万葉(8C後)一一・二四七六「打(うつ)田に稗(ひえ)はしあまたありといへど択(え)らえし我そ夜をひとり寝(ぬ)る」 |
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⑫ (むちでたたくことから) 馬を走らせる。馬に乗る。 | ※今昔(1120頃か)二五「然ば前(さき)に打(うち)て渡れ。頼信其れに付て渡らむと云て、馬を掻(かき)早めて打寄ければ」 | |||
⑬ 物事のきまりがついたことを祝って、手をたたく。手をしめる。 | ※歌舞伎・伊勢平氏栄花暦(1782)三立(暫)「『目出度く顔見世の御祝儀に打ちやせうか』『よいよいよい、よいよいよい』ト手を拍つ」 | |||
⑭ (「金を打つ」という形で) 刀の刃、鍔(つば)、小柄(こづか)などをうち合わせて誓約する。金打(きんちょう)を行なう。 | ※今昔(1120頃か)一六「観音の御前にして、師の僧を呼て、金打て事の由を申させて」 | |||
⑮ しるしを付ける。 (イ) たたくような動作で、しるしを付ける。銘を刻む。 |
※徒然草(1331頃)一六三「太衝(たいしょう)の太の字、点うつ、うたずといふ事」 | |||
(ロ) 墨縄で、まっすぐな線を付ける。 | ※万葉(8C後)一一・二六四八「かにかくに物は思はじ飛騨人の打(うつ)墨縄のただ一道に」 | |||
(ハ) さお、縄などで、土地を測量する。 |
「検地をうつ」 ※日葡辞書(1603‐04)「サヲヲ vtçu(ウツ)」 |
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⑯ (太鼓を打つところから) 芝居、相撲などを興行する。また、巡業する。 |
※浄瑠璃・妹背山婦女庭訓(1771)五「三つの恵みも鎮常(とこしなへ)打てばはづさぬ陣太鼓」 ※滑稽本・続々膝栗毛(1831‐36)三「寺勧化(くゎんげ)のために芝居を興行(ウチ)てへといって」 |
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⑰ 針を突き入れる。また、注射をする。 | ※虎寛本狂言・神鳴(室町末‐近世初)「今の様にうごかせられては針が打(うた)れませぬ程に、動かぬ様に被成て被下い」 | |||
⑱ キーをたたいて操作する。 (イ) (キーをたたくところから) 電報を発信する。 |
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉一〇「一通の祝電をうった」 | |||
(ロ) タイプライター、ワープロ、パソコンなどを操作して文字を入力する。 | 「ワープロをうつ」 | |||
⑲ (鐘、太鼓をたたいたり、時計が打ったりして) 時を知らせる。 |
〔ロドリゲス日本大文典(1604‐08)〕 ※不言不語(1895)〈尾崎紅葉〉二「床の間の置時計十時を打てば」 |
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⑳ たたくように動かす。ばたばたさせる。 | ※別天地(1903)〈国木田独歩〉下「無心の鴎(かもめ)は其白き翼を搏(ウッ)て彼方此方を翔け廻って居る」 | |||
㉑ 心や感覚器官に刺激や感動を与える。 |
※めぐりあひ(1888‐89)〈二葉亭四迷訳〉二「貴嬢(あなた)を見て美に撲(ウ)たれないものはない」 ※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉六「一歩踏込めば、臭気鼻を撲つ」 |
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㉒ (自動詞的な用法) いやな経験をして閉口する。気がふさぐ。 | ※洒落本・古今三通伝(1782)「そう気どられては、ちとうつね」 | |||
[二] たたいたり、はったりして、ある物を安定させる、固定する。また、ある状態に作りあげる。 ① くぎ、くいなどを、たたいて入れこむ。 |
※古事記(712)下・歌謡「泊瀬(はつせ)の川の 上つ瀬に 斎杙(いくひ)を宇知(ウチ) 下つ瀬に 真杙(まくひ)を宇知(ウチ)」 | |||
② 額や札などをうちつける。掲げる。とりつける。 |
※保元(1220頃か)中「黒糸威の鎧(よろひ)に、鍬形(くはがた)打(うっ)たる冑(かぶと)を着」 ※徒然草(1331頃)一六〇「門に額かくるを、うつといふはよからぬにや。勘懈由小路二品禅門は、額かくるとのたまひき」 ※火の柱(1904)〈木下尚江〉二「何がし学校の記章打ったる帽子」 |
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③ 紙や、膏薬などをはり付ける。 |
※右京大夫集(13C前)「ほうぐえりいだして、料紙にすかせて、経かき、またさながらうたせて」 ※歌舞伎・芽出柳緑翠松前(1883)大詰「数ケ所の疵所(きずしょ)へ膏薬打ち」 |
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④ (荷物などを)積み加える。 | ※万葉(8C後)五・八九七「ますますも 重き馬荷に 上荷(うはに)打(うつ)と いふことのごと」 | |||
⑤ 物をうちつけたりして、仮に作り設ける。 (イ) 桟敷(さじき)、梁(やな)、屋根などを構え作る。 |
※万葉(8C後)三・三八七「いにしへに梁打(うつ)人の無かりせばここにもあらまし柘(つみ)の枝はも」 | |||
(ロ) 幕や綱などを張る。 | ※大和(947‐957頃)一四七「生田の川のつらに、女、平張(ひらばり)をうちてゐにけり」 | |||
⑥ 門などをしめる。とざす。 |
「城戸をうつ」 ※浄瑠璃・仮名手本忠臣蔵(1748)三「表御門、裏御門両方打たる館の騒動」 |
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⑦ (かたちが整うように)添える。 | ※浮世草子・西鶴織留(1694)四「先(まづ)椀(わん)折敷(をしき)に箸(はし)までうって、皿、小道具までを三人の請取にて出せば」 | |||
⑧ ひも、縄、むしろなどを編む。組む。 |
〔日葡辞書(1603‐04)〕 ※俳諧・曠野(1689)員外「大勢の人に法華をこなされて〈越人〉 月の夕に釣瓶縄(つるべなは)うつ〈傘下〉」 |
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⑨ 罪人などに縄をかけたり、枷(かせ)をはめたりして動けなくする。 |
「縄を打つ」 ※浄瑠璃・出世景清(1685)四「足を牢より引き出だし左手(ゆんで)右手(めて)へ取ちがへ、山だし七十五人してひいたる楠の木にてあげほだしをうたせ」 |
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⑩ 型に流し込んで固める。 |
〔日本建築辞彙(1906)〕 ※岬(1975)〈中上健次〉「掘り方を終えると、すぐ、コンクリを打つ作業にかかるはずだった」 |
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[三] 手、または道具を使って遠くへ飛ばす。また、投げるような動作で、あることを行なう。 ① (撃・射) 投げる。放つ。発射する。また、当てて傷つける。 (イ) 物を投げる。道具から発射する。 |
〔日葡辞書(1603‐04)〕 ※彼岸過迄(1912)〈夏目漱石〉風呂の後「蛸(たこ)の大頭を目懸けて短銃(ピストル)をポンポン打つんだが」 |
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(ロ) (投げたり、発射したりして)当てる。当てて傷つけ殺す。 |
※宇津保(970‐999頃)蔵開中「南のおとどより、かうじを一つなげて、大将をうつ人あり」 ※宇治拾遺(1221頃)三「庭に雀のしありきけるを、童部(わらはべ)、石をとりて打たれば」 |
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② 投げ広げる。撒(ま)く。 (イ) 物を投げ広げたり、撒いたりする。 |
※虎明本狂言・福の神(室町末‐近世初)「いざさらばまめをうたふ」 ※雑俳・もみぢ笠(1702)「それぞれに風呂敷打って侘花見」 |
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(ロ) (網を投げて)とらえる。 | 〔日葡辞書(1603‐04)〕 | |||
③ (身を)思い切って投げ捨てる。ほろぼす。 | ※浄瑠璃・生玉心中(1715か)下「命惜しいほどなら高で身をうつこともない」 | |||
④ ばさっと落とす。 | ※日葡辞書(1603‐04)「イカリヲ vtçu(ウツ)」 | |||
[四] 武器などで、傷つけ倒す。 ① たたいたり切ったりして傷つけ殺す。 |
※古事記(712)中・歌謡「久米の子らが 頭椎(くぶつつ)い 石椎(いしつつ)いもち いま宇多婆(ウタバ)良らし」 ※浄瑠璃・女殺油地獄(1721)上「討(うっ)て捨(すつ)ると刀の柄に手をかくる」 |
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② 攻撃する。相手の弱点をつく。 (イ) (討・伐) 攻める。攻め滅ぼす。 |
※大唐西域記巻十二平安中期点(950頃)「兵を興し衆を動して咀叉始羅国を伐(ウツ)」 | |||
(ロ) (駁) 非難する。他人の意見などを攻撃する。 | ※浮世草子・傾城禁短気(1711)一「てれん上人といふ此宗旨の尻持、強(あなが)ちに女道宗を破して〈略〉諸の流身派の女道門をうつ事」 | |||
③ たたき切る。切りとる。 | ※万葉(8C後)一四・三四七三「佐野山に宇都(ウツ)や斧音(をのと)の遠かども寝もとか子ろがおもに見えつる」 | |||
[五] 時機を失しないである事を行なう。すばやく動作する。たたくような動作に関係する場合が多い。 ① 碁(ご)、すごろくなどの遊戯をする。 |
※古今(905‐914)雑下・九九一・詞書「まかり通ひつつ碁うちける人のもとに」 ※談義本・世間万病回春(1771)三「かのよみかるたうつ人の」 |
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② ばくち、遊びなどにふける。 |
「どらをうつ」 ※徒然草(1331頃)一二六「ばくちの負きはまりて、残りなく打ち入れんとせんにあひては、うつべからず」 ※油地獄(1891)〈斎藤緑雨〉八「拳を打ったり歌を唱ったり」 |
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③ 強盗などをはたらく。 | ※言継卿記‐大永七年(1527)五月六日「事外世上盗人夜々打候。此御所へも可 レ 打由雑説あり」 | |||
④ 総金額のうち、いくらかを渡す。また、品物の交換などで、不足金を支払う。 |
「手金をうつ」 ※歌舞伎・桑名屋徳蔵入船物語(1770)三「『庄六。替へんかい』『なんぼううつぞ』『やみぢゃ』『滅相な。たかでまたげの仕事にやみ打ってたまるもんかい』」 |
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⑤ 祝儀などを与える。心づけをやる。 |
「花をうつ」 ※浮世草子・俗つれづれ(1695)五「お衆さまがた持あはせが御座らばすこしの露をうたしゃりましょ」 |
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⑥ ある手段をとる。 |
「にげをうつ」「なげをうつ」「ストをうつ」 ※金刀比羅本保元(1220頃か)中「敵の上手(うはて)をうたんと申し候ひつるは、ここ候ふぞ」 |
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⑦ 急激にひっくり返るような動作をする。 |
「もんどりをうつ」「なだれをうつ」 〔新撰字鏡(898‐901頃)〕 ※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三「枕に就いて二三度臥反(ねかへ)りを打ったかと思ふと」 |
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[六] 周期的、もしくは等間隔に繰り返される動作・状態についていう。 (イ) 「…をうつ」の形で用いる。 |
「脈を打つ」 ※全九集(1566頃)一「左右の三邪ともに一向に脉うたざるをば双伏といへり」 ※倫敦塔(1905)〈夏目漱石〉「肩を揺り越した一握りの髪が軽くうねりを打つ」 |
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(ロ) (自動詞的な用法) 等間隔で動きを繰り返す。 |
「心臓がうつ」 ※それから(1909)〈夏目漱石〉一「動悸は相変らず落ち付いて確に打ってゐた」 |
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(ハ) (自動詞的な用法) ずきずきする、どきどきするような動作にいう。 |
〔日葡辞書(1603‐04)〕 ※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉三「頭痛がうったり脚病がしたりするのは」 |
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広辞苑 |
他動詞 四段 |
➊ある物を他の物に瞬間的に強くあてる。 ①《打・撃》勢いよく当てる。 |
古事記下「ささのはに―・つや霰の」。 大鏡伊尹「手をはたと―・ちて」。 日葡辞書「カヲヲウツ」 |
打つ・討つ・撃つ |
②たたいて鳴らす。 |
万葉集4「皆人を寝よとの鐘は―・つなれど」。 土佐日記「舟子どもは腹つづみを―・ちて」。 日葡辞書「ツヅミヲウツ」。 「時計が3時を―・つ」 |
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③ |
源氏物語野分「朽葉のうすもの、今様色の二なく―・ちたるなど引き散らし給へり」 | |||
④石などを強くたたいて火を出す。 |
貫之集「をりをりに―・ちて焚く火の煙あらば」。 日葡辞書「ヒヲウツ」 |
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⑤強い感動を与える。 | 「心を―・つ」「胸を―・つ」 | |||
⑥むち打って、馬を走らせる。 | 平家物語9「二日路を一日に―・つて」 | |||
⑦電報を発信する。 | 「電報を―・つ」 | |||
⑧舌をならす。 | 日葡辞書「シタツヅミヲウツ」 | |||
⑨綿弓ではじく。 | 「古綿を―・ち直す」 | |||
⑩たたいて伸ばす。 | 「金箔を―・つ」 | |||
⑪材料を鍛えて製品をつくる。 |
大鏡頼忠「かねの御器ども―・たせ給へりしかば」。 日葡辞書「ウマノクラヲウツ」「ユミヲウツ」。 仮名草子、国町の沙汰「近江が―・ちし紫檀の三味線」 |
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⑫そば・うどんなどをつくる。 |
日葡辞書「キリムギヲウツ」。 ひさご「うどん―・つ里のはづれの月の影」(荷兮) |
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⑬たがやす。すきかえす。 |
古事記下「木鍬もち―・ちしおほね」。 日葡辞書「タヲウツ」 |
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⑭土地を測量する。 | 日葡辞書「サヲヲウツ」 | |||
⑮墨縄を使う。 | 万葉集11「飛騨人の―・つ墨縄のただ一道に」 | |||
⑯伐り採る。 |
万葉集14「佐野山に―・つや |
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➋《打》 ①釘や |
古事記下「こもりくの初瀬の川の上つ瀬に 大鏡師輔「胸に釘は―・ちてき」 |
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②針などをさし入れる。 |
狂言、雷「之を痛い所へ―・ち込みまする。…―・つてくれい」。 「注射を―・つ」 |
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③釘を打つなどして、とめる。はりつける。 |
平家物語1「御墓所の廻に我寺々の額を―・つ事あり」。 日葡辞書「ウラヲウツ」 |
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④筆などで印をつける。 | 「点を―・つ」「番号を―・つ」 | |||
⑤非難する。なじる。 | 「非の―・ちどころがない」 | |||
➌《撃・討》きずつけたおす。 ①武器などで打撃を与え、敵をたおす。ころす。斬る。 |
古事記中「久米の子が 日葡辞書「ヒトヲウツ」。 「首を―・つ」 |
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②矢・弾丸などをあてて殺す。 | 「獣を―・つ」 | |||
③敵を攻める。攻めほろぼす。 |
日葡辞書「テキヲウツ」。 「不意を―・つ」 |
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➍《打》(遠くへ投げる意から) ①投げてあてる。投げる。 |
宇津保物語蔵開中「南のおとどよりかうじを一つ投げて大将を―・つ人あり」。 宇治拾遺物語3「石を取りて―・ちたれば当りて」。 日葡辞書「ツブテヲウツ」 |
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②投げ広げる。 | 日葡辞書「ナゲアミヲウツ」 | |||
③網で鳥をとらえる。 | 日葡辞書「トリヲウツ」「ウチアミ」 | |||
④まく。 | 狂言、文相撲「水を―・たせて置け」 | |||
⑤おろす。 | 日葡辞書「イカリヲウツ」 | |||
⑥(「射つ」とも書く)発射する。 | 日葡辞書「テッポウヲウツ」 | |||
⑦ |
浄瑠璃、心中二枚絵草紙「いつやらの紙花も思の外に遅なはり面目ない…今改めてこりやばつと―・ちなほすわ」 | |||
⑧身を、なげだす。すてる。ほろぼす。 | 浄瑠璃、生玉心中「命惜しい程なら高で身を―・つ事もない」 | |||
⑨巡礼する。 | 歌舞伎、傾情吾嬬鑑「西国を―・つ気はないか」 | |||
⑩〔仏〕伝法灌頂をうける。 | ||||
➎《打》物を組み合わせる。 ①仮に構え設ける。門・幕などを、とざす。しめる。 |
宇津保物語藤原君「賀茂川の辺にさじき―・ちて」。 奉公覚悟之事「幕之事…常は張るといふべし。敵を見かけては―・つといふべし」。 浄瑠璃、仮名手本忠臣蔵「表御門裏御門両方―・ちたる館の騒動」 |
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②ひも・糸状のものを組む。編む。 | 日葡辞書「ムシロヲウツ」「ヲヲウツ」 | |||
③罪人になわをかける。 | ||||
➏《打》転じて、あることを行う意。 ①芝居や相撲を興行する。 |
「芝居を―・つ」 | |||
②碁・将棋・すごろくなどの遊戯を行う。 | 古今和歌集雑「碁―・ちける人のもとに」 | |||
③ばくちをする。 | 徒然草「ばくちの負けきわまりて残りなく―・ち入れむとせんに相手は―・つべからず」 | |||
④ある方策を行う。手段を講ずる。 | 「新しい手を―・つ」「広告を―・つ」 | |||
⑤物事のきまりがついたことを祝って手をたたく。手をしめる。 | ||||
⑥総金額のうち幾分かを渡す。品物の交換などの場合、不足金を補いはらう。 | 「手金を―・つ」 | |||
⑦あるしぐさをする。 | 狂言、瓜盗人「夜瓜を取るにはころびを―・つて取るものぢや」 | |||
⑧勢いよく動く。進んで事を行う。 | 「文壇に―・って出る」 | |||
自動詞 下二段 |
(打たれるの意) ①打撃を受ける。押しつぶされる。 |
太平記13「五百余人一人も残らず |
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②負ける。 | 古今著聞集16「又よりあひて取るにこのたびは壇光―・てにけり」 | |||
③誓約を破って罰を受ける。 | 平家物語12「起請には早くも―・てたるぞかし」 | |||
④気を呑まれる。けおされる。 | 浄瑠璃、五十年忌歌念仏「大坂の娘子達に交りても―・てずおされず」 | |||
⑤承服する。納得する。合点がいく。 | 浄瑠璃、心中天の網島「さすがの武士も―・てぬ顔」 | |||
⑥魚などが腐る。 | ||||
大言海 |
他動詞 四段 |
(一){强ク當ツ。タタク。ブツ。 |
古事記、下(允恭)
廿
長歌「 |
打・擊 |
(二){打チテ、火ヲ出ス。 |
景行紀、四十年十月「王(日本武尊)知
レ
被
レ
欺、則、以
レ
|
|||
(三){打チテ、鳴ラス。敲ク。 |
萬葉集、四
三十二
「皆人ヲ、 「半鐘ヲ打つ」 |
|||
(四){槌ニテ、タタキコム。㧻 |
古事記、下(允恭)
二十三
長歌「コモリクノ、ハツセノ河ノ、上ツ瀨ニ、伊久比ヲ宇知、下ツ瀨ニ、麻久比ヲ宇知」 「釘ヲ打つ」 |
|||
(五)釘ニテ、打チ付ク。 |
平家物語、一、額打諭事「東大寺ノ額ヲうつ、云云、興福寺ノガクヲうつ」 徒然草、百六十段「門ニ額カクルヲ、うつトイフハ、ヨカラヌニヤ、勘解由小路二品禪門ハ、額カクルト宣ヒキ」 「表札ヲ打つ」 |
|||
(六){墨繩ヲツカフ。カクル。 | 萬葉集、十一 廿七 「飛驒人ノ、打つ墨繩ノ」 | |||
(七)スキカヘス。耕ス。 |
素性法師集「三月ニ、田うつヲ」 「畠ヲ打つ」 |
|||
(八)タタキ延ベテ、作ル。 | 「箔ヲ打つ」 | |||
(九)取リ着ク。着ク。 | 「鍬形ニ打ッタル兜」紋所ヲ打つ」 | |||
(十){斬ル。殺ス。擊 |
古事記、中(神武)
八
長歌「クブツツイ、石ツツイ持チ、宇知テシヤマン、云云、クブツツイ、石ツツイ持チ、イマ宇多バヨラシ」 「首ヲ打つ」仇ヲうつ」 |
|||
(十一){攻ム。襲フ。征伐ス。伐 討 |
欽明紀、五年二月「唯庶克濟
二
多難
一
、 「敵ヲ擊つ」謀叛人ヲ討つ」 |
|||
(十二)放ツ。發ス。發射 | 「鐵砲ヲ打つ」 | |||
(十三) |
「鳥ヲ打つ」 | |||
(十四) |
名目抄「 「 |
|||
(十五) |
「綿ヲ打つ」 | |||
(十六)批難ス。 |
||||
(十七)鍛ヘ作ル。鍛 |
唐船噺今國性爺(享保、近松作)中「祕密ヲ盡クシ打つ劔」 「刀ヲ打つ」 |
|||
(十八){構フ。張ル。構 |
宇津保物語、藤原君
四十九
「賀茂川ノ邊ニ、サジキうちテ」 「幕ヲ打つ」假屋ヲ打つ」 |
|||
(十九){打チツク。投グ。投 |
宇津保物語、藏開、中
四十二
「南ノオトドヨリ、 「石ヲ打つ」 |
|||
(二十)組ム。編ム。組 | 「紐ヲ打つ」打紐」マルうち」ヒラうち」 | |||
(廿一)搦ムル。 | 「罪人ニ繩ヲ打つ」 | |||
(廿二)撒ク。投ゲ下ダス。撒 |
狂言記、文相撲「鞠ヲナサレウホドニ、カカリヘ水ヲうたセテオケ」 「網ヲ打つ」 |
|||
(廿三)撿地ニ、竿、繩ニテ、段別ヲ量ル。丈量 | ||||
(廿四){博奕、碁、雙六ナドヲ爲ス。博 | 源、三、空蟬 三 「碁うたセ給フ」 | |||
(廿五)蕎麥切、饂飩ナド作ル。 | ||||
(廿六) |
||||
(廿七)芝居、見世物ヲ興行ス。(太鼓ヲ打つナリ)開場 | ||||
(廿八)締メ切ル。閉ヅ。閉 | 「城戶ヲ打つ」大門ヲ打つ」 | |||
(廿九)送ル。發 | 「電報ヲ打つ」 | |||
(三十)他ノ動詞ノ上ニ、熟語トシテ、意ナク、或ハ、稍、意ヲ强クシテ用ヰル。 | 「打ち連ル」打ち任ス」打ち聞ク」打ち絕ユ」打ち出ヅ」打ち忘ル」打ち亂ル」打ち續ク」打ち開ク」打ち遣ル」打ち過グ」打ち渡ス」 |
動詞活用表 | ||
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未然形 | うた | ず、ゆ、る、む、じ、す、しむ、まほし |
連用形 | うち | たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても |
終止形 | うつ | べし、らし、らむ、ましじ、まじ |
連体形 | うつ | も、かも、こと、とき |
已然形 | うて | ども |
命令形 | うて |
動詞活用表 | ||
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未然形 | うて | ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし |
連用形 | うて | たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても |
終止形 | うつ | べし、らし、らむ、ましじ、まじ |
連体形 | うつる | も、かも、こと、とき |
已然形 | うつれ | ども |
命令形 | うてよ |
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