うつ(自動詞)

広辞苑
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日本国語大辞典 自動詞 (「打たれる」意から)
① 力、技、態度などで圧倒される。
(イ) (すもうなどで)負ける。
※順集(983頃)「言の葉はこはく見ゆれどすまひ草露にはうつる物にざりける」
※古今著聞集(1254)一六「『いざさらば、いま一度とらむ』とて、又よりあひて取るに、此のたびは壇光うてにけり」
(ロ) (花が霜などで)しおれるまける ※賀茂女集(993‐998頃)「くれなゐの世になからめや菊の花霜にもうてぬ色ぞかなしき」
(ハ) 気おくれする。臆する。また、けおされる。 ※源平盛衰記(14C前)三四「ゆゆしく見えつる磨墨(するすみ)も、勝(まさ)る生唼(いけづき)に逢ふたれば、無下(むげ)にうててぞ見えたりける」
※ささめごと(1463‐64頃)上「大内裏大極殿の高座にて、ひとりなしても、うてぬやうにといふ。たくましく強力にといふなるべし」
② おしつぶされる。 ※太平記(14C後)一三「軍兵共五百余人、一人も残らず、圧(おし)にうてて死にけり」
③ 神仏に罰せられる。ばちがあたる。 ※宇治拾遺(1221頃)二「あはれ、世にもあひ、年なども若くて、みめもよき人にこそあんめれ、式にうてけるにか、此鳥は式神にこそありけれ」
④ 承服できる。合点がいく。多く打消の形で用いる。 ※浄瑠璃・聖徳太子絵伝記(1717)二「嶋主一円うてぬ顔」
⑤ 魚などが腐る。 〔譬喩尽(1786)〕
⑥ 評判される。うたわれる。 ※浄瑠璃・倭仮名在原系図(1752)四「壬生(みぶ)村で名うてにうてた器量よし」
大言海 自動詞 〔擊つノ受身ノ擊たるノ、(ツヅマ)リテ、一ノ自動詞トナレルモノ、(口語ハ、うてる)()かるノ、(オク)るトナルト、趣ヲ同ジウスル語ナリ〕
(一){ 氣壓 (ケオ)サル。 (ヨワ)。壓シ倒サル。負クル。所壓倒 所壓
源順集「 言葉 (コトノハ)ハ、(コハ)ク見ユレド、 相撲草 (スマヒグサ)、露ニハうつる、モノニザリケル」
金葉集、十、連歌「取ル手ニハ、ハカナクうつる、花ナレド、引クニハ(コハ)キ、相撲草カナ」
六帖、一「()ケシ夜ノ、行合ヒノ霜ニ、うてシカド、ナド身ニ寒ク、アタラザリケム」
盛𮕩記、三十四、東國兵馬汰事「磨墨ニモ(マサ) 生唼 (イケズキ)ニ逢ヒタレバ、 無下 (ムゲ)ニうてテゾ見エタリケル」(磨墨、生唼、共ニ名馬ノ名)
著聞集、十六、興言利口、壇光坊、相撲「今一度取ラムトテ、又寄合ヒテ取ルニ、此ノタビハ壇光うてニケリ」
太平記、十三、時行滅亡事「大佛殿ノ棟梁、微塵ニ折レテ、云云、五百餘人、一人モ殘ラズ、壓ニうてテ死ニケリ
(二)神ニ罰セラル。 平家物語、十二、土佐坊事「イカニ土佐坊、起請ニハ早クモうてタルゾカシ」(起請文ニ背キテ捕ヘラレタルナリ)
宇治拾遺、二、第八條、鳥ニ(ヱド)ヲシカケラレ「此ノ鳥ハ、 式神 (シキガミ)ニコソアリケレ、云云、オノレ只今、式ニうてテ、死ニ侍リヌ」
動詞活用表
未然形 うて ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 うて たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 うつ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 うつる も、かも、こと、とき
已然形 うつれ ども
命令形 うてよ

広辞苑は同じ見出し語の扱い。「うつ(打・撃)」を参照。

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最終更新:2024年01月12日 20:41