おく(置(他動詞))

日本国語大辞典
辞書 品詞 解説 例文 漢字
広辞苑 他動詞 あるがままその位置にとどめる意。
➊すでに存在する事物をそのままにする。
①手を触れずにいる。手を加えることをしない。
万葉集1「 黄葉 (もみち)をば取りてそしのふ青きをば―・きてそ嘆く」 置く・措く・擱く
②そのままの状態で残す。保存する。 土佐日記「便りあらばやらんとて―・かれぬめり」
③《措》さしおく。除く。 万葉集5「我を―・きて人はあらじと」。
源氏物語匂宮「春宮をばさるやむごとなきものに―・きて奉り給ひて」。
「感激―・く能わず」「何を―・いてもやらねばならない」
④見捨てる。ほったらかす。 万葉集20「泣く子らを―・きてそ来ぬや(おも)なしにして」。万葉集1「(そら)にみつ大和を―・きて」。
伊勢物語「女をば草むらの中に―・きて逃げにけり」
⑤途中でやめる。中止する。中断する。 狂言、悪太郎「重ねて意見は―・いてもらひませう」。
「箸を―・く」「筆を―・く」
⑥(「…ねば―・かぬ」の形で)必ずそのことをやり通す決意を表す。「…しないでは済まさない」の意。 浄瑠璃、心中二枚絵草紙「どうでもかうでも聞かにや―・かぬ」
➋ある位置を占めさせる。
①人や物などをある所にとどめる。人をある位置にいさせる。
古事記中「をとめの床の辺に我が―・きし剣の大刀」。
万葉集18「針袋取り上げ前に―・きかへさへば」。
宇津保物語吹上上「この節会に佩き給ふ 御佩刀 (みはかし)(しち)に―・かむ」。
伊勢物語「男の形見とて―・きたるものどもを見て」。
「机の上に本を―・く」「社会福祉に重きを―・く」「困難な状況に―・かれる」「支配下に―・く」「下宿人を―・く」
②埋葬する。葬る。 万葉集2「引出ひきでの山に妹を―・きて」
③設ける。設置する。 万葉集3「あらかじめ妹を留めむ関も―・かましを」。
大鏡後一条「太政大臣はこの帝の御代にたはやすく―・かせたまはざりけり」。
「市内に図書館を―・く」「専門委員会を―・く」
蒔絵 (まきえ)や箔を作りつける。細工をほどこす。 大鏡伊尹「箱の漆つき、蒔絵のさま、くち―・かれたりしやうなど」。
「ふすまに金箔を―・く」
⑤(主に「心―・く」の形で使われ、不信・疑い・遠慮などの気持をそこにとどめる意)心を隔てる。警戒する。気がねする。 伊勢物語「心―・くべきこともおぼえぬを」。
源氏物語帚木「すきたわめらむ女に心―・かせ給へ」。
徒然草「朝夕へだてなくなれたる人のともある時我に心―・きひきつくろへるさまに」
⑥(算木などを置き並べて)占い・計算をする。 万葉集13「行きし君何時来まさむと(うら)―・きていはひ渡るに」。
ひさご「そろばん―・けば物知りといふ」
⑦(時間・距離などを介在させる意)へだてる。 万葉集15「ほととぎす間しまし―・け」。
平家物語11「扇のかなめぎは一寸ばかり―・いて、ひいふつとぞ射切つたる」。
「時を―・かずに」「3軒―・いた隣」
➌(動詞の連用形、または、それに助詞「て」の付いた形に続けて)用意・放置の意をそえる。話し言葉では、「ておく」は「とく」となることもある。
①あらかじめ、ある動作をする。前もって…する。
万葉集11「あしひきの山桜戸を開け―・きてわが待つ君を」。
徒然草「草を揉みてつけぬれば則ち癒ゆとなむ、見知りて―・くべし」。
「耳に入れて―・く」
②そのままにする。そのまま受け入れる。 浮世床初「山王さまはおれが 贔屓 (ひいき)だから、おれが宗旨にして―・かア」。
「一応聞いて―・く」「言わせて―・けばつけあがる」「ほっといてくれ」
自動詞 《置》露や霜などが地上におりる。 万葉集4「ひさかたの(あま)の露霜―・きにけり」。
日葡辞書「ツユ、また、シモガヲク」
大言海 他動詞 (一){据ヱツク。載ス。 萬葉集、五「赤駒ニ、 倭文 (シヅ)鞍打チ意伎」
(二){手向 (タム)。( 置座 (オキクラ)ニ置く意) 萬葉集、三 廿四 「佐保(地名)過ギテ、奈良ノ 手向 (タムケ)(峠)ニ、置く幣ハ」
名義抄、八部「奠、オク」
(三){ (ハウム)。(上古ハ、棺ヲ埋メズ、墓穴中ニ置くアリ、或ハ、地上ニ置きテ土ヲ掩フアリ)今、葬ルヲ、取置くト云フ、是レナリ。 崇峻卽位前紀「須使萬族作墓而(オカ)
(四){サシオク()ケスツ。 古事記、上 四十二 長歌「汝ヲ()(オキ)ノ約)テ、()ハ無シ」
古今集、廿、東歌「君ヲおき ここに文字を入力 テ、 他心 (アダシココロ)ヲ、我ガ持タバ」
名義抄「措、オク」
(五){(アヒダ)ヲ棄ツ。隔ツ。 萬葉集、十五 三十九 「ホトトギス、 閒暫 (アヒダシマシ) 於家 (オケ)、汝ガ鳴ケバ、我ガ思フ心、イタモスベナシ」
「一年置く」二日置く」
(六)養フ。抱フ。召シツカフ。 「食客ヲ置く」下女下男ヲ置く」
(七)設ケ備フ。カネテ用意ス。 「貯ヘテ置く」記シテ置く」覺エテ置く」
(八)作リ附ク。(蒔繪、箔ナドヲ) 榮花物語、八、初花「白銀ノ 御衣 (ミゾ)箱、 海部 (カイブ)おかセテ」
「箔ヲ置く」
(九){預ケ入ル。(質物ヲ) 宇津保物語、吹上、下「此節會ニ()キタマフ() 佩刀 (ハカシ)ヲ、質ニおかム」
(十) 算木 (サンギ)ヲ使ヒテ數フ。(算木ノ條ヲ見ヨ) 發心集、二、第二條「算ヲイクラモイクラモ、おきヒロゲテ」
動詞活用表
未然形 おか ず、ゆ、る、む、じ、す、しむ、まほし
連用形 おき たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 おく べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 おく も、かも、こと、とき
已然形 おけ ども
命令形 おけ

又、「おく(置(自動詞))」も参照。

検索用附箋:自動詞四段
検索用附箋:他動詞四段

附箋:他動詞 四段 自動詞

最終更新:2025年02月23日 21:29