おる(降・下)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞 [一] そうしようとする意志が働いて、上から下へ人や物の位置が変わる。また、ある位置から退く。
① 高い所から低い所へ移り動く。くだるさがる。⇔のぼる
※万葉(8C後)六・一〇二八「ますらをの高円(たかまと)山にせめたれば里に下(おり)来(け)るむざさびそこれ」
※徒然草(1331頃)一〇九「かばかりになりては、飛びおるともおりなん」
下・降
② そうなるきまりのものや仕掛けのもの(幕や錠など)が上から下へ動かされる。 ※枕(10C終)一三九「つれづれなるもの〈略〉馬おりぬ双六(すごろく)」
③ (馬、車、船など)乗っていた乗物から離れる。⇔乗る ※竹取(9C末‐10C初)「船よりおりて」
④ 貴人の前から退く。退出する。さがる。⇔あがる ※伊勢物語(10C前)六五「曹司(ざうし)におり給へれば」
⑤ 天皇が位を退く。また、(一般に)ある職をやめる。 ※落窪(10C後)三「俄(にはか)にみかど御ここちなやみ重くて、おり給ひて、東宮位につかせ給ひぬ」
⑥ こすって物を細かく砕く作用をもつ。磨(す)れる ※日葡辞書(1603‐04)「チャガ ヨウ voruru(ヲルル)〈訳〉茶臼(ちゃうす)が良いので挽(ひ)いた茶が石臼から下へよく落ちる」
⑦ 上から下への移動と見なし得るそれぞれの動作をいう。
(イ) 卒業したりして学校を離れる。さがる
※青春(1905‐06)〈小栗風葉〉春「小学校降りてから、漢字を別に遣ってそれから絵も少し習った」
(ロ) 仕事や催し、勝負事などに参加する権利をすてる。 ※普賢(1936)〈石川淳〉三「『彦さん、少し降りてるといいや』残った二人で勝負をつづけてゐる傍で」
(ハ) 官公庁や目上の人などから、金品や指示が与えられる。 「恩給がおりる」
※闘牛(1949)〈井上靖〉「簡単に許可が降りるかどうか確定的なことは請合へないと」
[二] 自然の力に従って、上から下へ位置を変える。
① (露、霜が)地上に生じる。おく。また、霧が生じる。
※俳諧・冬の日(1685)「霧下りて本郷の鐘七つきく〈杜国〉 ふゆまつ納豆たたくなるべし〈野水〉」
② からだの中から下へ出る。 ※浮世草子・西鶴織留(1694)四「十六に成(なる)むすめ、四年此かた大べんおりずして」
[補注]高い所から低い所への位置の移動を基本的に表わし、「あがる」の対義語と見なされるが、「坂ののぼりおり」「車ののりおり」というように、「のぼる」「のる」と対をなすこともある。
広辞苑 自動詞 上から下への移動を示すが、到達点に焦点をおく点で「さがる」と異なり、目的・意図のある作用を示す点で「おちる」と異なる。
①高い所からだんだんに移って下の位置・場所に着く。また、そのような状態になる。
後撰和歌集雑「よと共に峰へ麓へ―・り登り行く雲の身は我にぞ有ける」。
枕草子78「いみじう霧りわたりたる庭に―・りてありくを」。
「遮断機が―・りた」「肩の荷が―・りる」
下る・降る
②車・舟などの乗物から出る。 竹取物語「舟より―・りてこの山の名を何とか申すと問ふ」。
枕草子33「車とどめて―・るる人」。「次の駅で―・ります」
③貴人の前から退く。退出する。 源氏物語野分「中将―・りてなかの廊の戸より通りて」
④位を退く。職を辞す。役がらをことわる。 大鏡陽成「世をしらせ給ふこと八年位―・りさせ給ひて」。
後撰和歌集雑「殿上―・りて侍りける時」。
「彼はあの役を―・りるそうだ」「政権の座を―・りる」
⑤勝負事などで、参加する権利をすてる。また、役から退く。 「つきが回ってくるまで絶対に―・りない」
⑥《下》役所などから指示や決定などがくだされる。 「許可が―・りる」「恩給が―・りる」
⑦《下》体内から、下に出る。 「回虫が―・りる」
⑧露・霜・霧などが置く。 冬の日「霧―・りて本郷の鐘七つきく」(杜国)。
「初霜が―・りる」
⑨固形物が磨すられて粒子状になる。 日葡辞書「チャ(茶)ガヨウヲルル」。
「硯がわるくて墨がよく―・りない」
大言海 自動詞 〔於ノ假名遣ナリ、他動ノ ヲ、萬葉集、十五ニ「靑柳ノ、枝()リ於呂之」トアリ〕
(一)高キヨリ、低キニ移ル。下ヘ行ク。クダルサガル
土佐日記、二月四日「ヨスル波、ウチモ寄セナン、ワガ戀フル、人ワスレ貝、おりテヒロハン」 降・下
(二) (マカ)シリゾク。退出ス。 後撰集、十五、雜、一「藤原ノさねきガ、藏人ヨリ、 位階 (カウブリ)賜ハリテ、明日、殿上罷リおりナムトシケル夜」
源、四十、幻「曙ニシモ、ざうしニおるる女房ナルベシ」
(三) ()。凝リテ形ヲ成ス。(霧、露、霜、ナドニ)
動詞活用表
未然形 おり ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 おり たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 おる べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 おるる も、かも、こと、とき
已然形 おるれ ども
命令形 おりよ

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附箋:上二段 自動詞

最終更新:2024年12月21日 15:57