かむ(噛)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 他動詞 ① 上下の歯をあてて、ものをはさみ砕く。咀嚼(そしゃく)する。 ※古事記(712)上「十拳劔(とつかつるぎ)を乞ひ度(わた)して、三段(みきだ)に打ち折りて、〈略〉さがみに迦美(カミ)て」
※宇津保(970‐999頃)国譲中「焼米(やいごめ)は、おうなの歯はたへで、かみ残したる」
噛・咬・嚼
② 上下の歯を強く合わせる。歯をくいしばる。また、歯で傷をつける。 ※小川本願経四分律平安初期点(810頃)「若し虫噛(カミ)穿(うが)ちたらば、泥を以て泥(ぬ)れ」
※日葡辞書(1603‐04)「シシ ヒトヲ camu(カム)」
※おしの(1923)〈芥川龍之介〉「まっ蒼になった女は下脣を噛んだなり、神父の顔を見つめてゐる」
③ 物の間ではさむ。 ※帰省(1890)〈宮崎湖処子〉五「之を除かんと悶ゆるほどに、益々鉄鎖に噛まるるに似たり」
④ 正しくない言動をする者を、道理をもって説き伏せる。また、叱りつける。 〔評判記・色道大鏡(1678)〕
※歌舞伎・傾城暁の鐘(1708)上「そんな事したら奥州様にかまれうもの」
⑤ 歯車などの歯と歯がうまく合う。→噛み合う ※造化妙々奇談(1879‐80)〈宮崎柳条〉八「大輪、次の二輪と噛(カ)み、二輪の軸、次の項輪と噛み」
⑥ 水、球、車などが、岩、砂、土などを激しくえぐる。 ※おとづれ(1897)〈国木田独歩〉上「泥を噛(カ)む轍(わだち)の音重々しく聞えつ、車来りぬ」
⑦ 仕事や事件などで、それを動かすようなある部分に関係をもつ。 ※解体の日暮れ(1966)〈杉浦明平〉一〇「老中も一応かんでいるこの陰謀を」
[語誌]上代では、カムに対して、クフは口にくわえる意、ハムが食う意で使用された。また、古く酒を造ることをカムと言うが、これは米を口でかんでから発酵させたことによるもの。→かむ(醸)
広辞苑 他動詞 ①上下の歯を強く合わせる。歯をくいしばる。 拾遺和歌集物名「怒猪の石をくくみて―・み来しは(きさ)のきにこそ劣らざりけれ」 嚙む・嚼む・咬む
②上下の歯で物を押しくだく。 咀嚼 (そしゃく)する。 宇津保物語国譲中「 焼米 (やいごめ)は、おうなの歯いたみて、―・みのこしたり」。
日葡辞書「シラアワヲカム」。
「よく―・んで食べる」
③歯で傷つける。咬みつく。 日葡辞書「シシヒトヲカム」。
「岩を―・む激流」
④(遊里語)道理を以て説き伏せる。 色道大鏡「かむ。嚼の字也、物をいひひしぐ事也。一かみにかむといふ意なり。邪なることをいひもし行ふ者にあひて正理をもて(ただ)し怒る(かたち)をいふ」。
歌舞伎、韓人漢文手管始「また平様に―・まれにやならぬ」
⑤歯車などの歯と歯とが食い合う。 「よく―・み合った歯車」
⑥あることがらに関わる。 「あいつも一枚―・んでいる」
⑦(演劇・放送界で)言葉をなめらかに発音しそこなう。
大言海 他動詞 (一){上下ノ齒ヲ、强ク合ハス。切齒 「齒ヲ嚙む」
(二){上下ノ齒ニテ、押シクダク。(食物ヲ)咀嚼 古事記、上 廿 「十拳劔、云云、佐賀美爾 迦美 (カミ)而」
(三)齒ニテ(キズツ)ク。カブルカジル (獸ナドニ云フ) 「犬、人ヲかむ」
(四)善ク()キテ、粉ニス。( 碾臼 (ヒキウス)ニ云フ)
動詞活用表
未然形 かま ず、ゆ、る、む、じ、す、しむ、まほし
連用形 かみ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 かむ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 かむ も、かも、こと、とき
已然形 かめ ども
命令形 かめ

検索用附箋:他動詞四段

附箋:他動詞 四段

最終更新:2024年05月08日 21:08