から(自・従)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 助詞 〘格助〙 体言または体言に準ずるものを受ける。
① 動作の経由地を示す。…のまにまに。…に従って。…に沿って。上代はこの用法のみである。
※書紀(720)神代下(兼方本訓)「膂宍(そしし)の空(むな)国を頓丘(ひたを)自(カラ)、覔国(くにま)ぎ行去(とほ)りて」
※神楽歌(9C後)早歌「〈本〉谷加良(カラ)行(い)かば尾加良(カラ)行(い)かむ 〈末〉尾加良(カラ)行かば谷加良(カラ)行かむ」
② 動作の起点を示す。中古に現われ、現代に至る用法。上代は、この用法としてはもっぱら「より」の方を用いる。時間的起点を示す場合と、空間的起点を示す場合とがある。 ※催馬楽(7C後‐8C)本滋き「本(もと)滋(しげ)き 本(もと)滋(しげ)き 吉備の中山 昔より 昔加良(カラ) 昔可良(カラ) 昔より 名の旧(ふ)りこぬは 今の代のため 今日の日のため」
※宇治拾遺(1221頃)一〇「その遣戸(やりど)から顔をさし出給へ」
③ 手段を示す。…によって。…で。 ※書紀(720)推古八年是歳(岩崎本訓)「直に新羅を指して泛海(ふねカラ)、往く」
④ (②の用法から転じて) 体言または接続助詞「て」を受け、「…から後」「…以上」の意を表わす。近世以後の用法。 ※交隣須知(18C中か)一「泥 キモノニ ツイタニヨリ ホシテカラ モンテ タタケ」
⑤ (②の用法から転じて) 体言を受け、「…からはじめて」「…をはじめとして」の意を表わす。「からして」の形でも用いられる。→からして ※二百十日(1906)〈夏目漱石〉「かう云ふ山の中の鍛冶屋は第一、音から違ふ」
〘接助〙 活用語の終止形を受け、原因・結果を順接の関係において接続する。近世以後の用法。 ※浄瑠璃・袂の白しぼり(1710頃)上「案ずる事はちっともない、外には人も知らぬから。一先(ひとまづ)内へ去(い)なしゃんせ」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「私は茶が嫌(きらひ)だから、これをたべます」
[補注]語源に関して、(イ) 「理由」または「間」という意の体言(山田孝雄、松尾捨治郎)、(ロ) ある事物に少しも積極的な力を加えない、という概念をもつ形式体言(石垣謙二)、(ハ) ウカラ、ハラカラ等「血族」を意味する体言が、山カラ、川カラ等「事物の性質」を表わすに至り、更に抽象化して「自然のつながり」「自然のなりゆき」の意となり、そこから経由地・出発点・理由を示す助詞が出た(大野晉「日本語の黎明」)など言われる。→語素「から(柄)
広辞苑 助詞 (万葉集に助詞「が」「の」に付いた例があり、語源は体言と推定でき、「うから」「やから」「はらから」などの「から」と同源とも、「国柄」「人柄」の「(から)」と同源とも)
➊(格助詞)
①㋐(場所を示す語に付いて)動作の経由点を示す。
万葉集17「ほととぎす鳴きて過ぎにし岡び―秋風吹きぬよしもあらなくに」。
「窓―捨てる」「裏通り―行く」
㋑(平安時代以降の用法)起点となる場所・時を示す。 古今和歌集物名「浪の花沖―咲きて散り来めり水の春とは風やなるらむ」。
蜻蛉日記上「こぞ―山ごもりして侍るなり」。
土佐日記「明けぬ―船を引きつつのぼれども」。
日葡辞書「コレカラアレマデ」。
浄瑠璃、卯月潤色「谷―水を汲んで来て」。
「端―端まで人で埋まる」「明日―始める」「家―駅まで五分」「出来て―が心配だ」
㋒(動詞連体形に付いて)後の事態が、前に引き続いて直ちに起こることをいう。…するとすぐ。…するや否や。…だけでもう。 古今和歌集別「惜しむ―恋しきものを白雲の立ちなむ後は何心地せむ」
㋓動作の発する人物を示す。 浄瑠璃、丹波与作待夜の小室節「お乳の人はどこにぞ。御前―召します」。
「私―言って聞かせましょう」「君―得た情報」「父―叱られた」
㋔一連の動作の始まりを示す。 歌舞伎、傾城江戸桜「そち―鉄火を取らすぞ」。
浄瑠璃、心中天の網島「先づ礼―いひましよ」
㋕起算のはじめを示す。多く、下限をいう。 「十二三―八つ九つの娘」「千人―の人が死んだ」
㋖最初だけを示し、後も同様であることを推量させ、強調する。 「長―してこの体たらく」「うまい料理は材料―違う」
②㋐原因・理由を表す。…によって。…のせいで。…ゆえ。…なので。 万葉集9「()が心―(おそ)やこの君」。
源氏物語帚木「ただ見る人―艶にもすごくも見ゆるなりけり」。
浄瑠璃、心中天の網島「やいやい、そのたわけ―事起る」。
「些細なこと―喧嘩になる」「必要―発明が生まれる」「寒さの折―お気をつけて」
㋑手段を表す。…で。…によって。 落窪物語1「かち―参りて」。
歌舞伎、水木辰之助餞振舞「おれが手―やつてもだんないか」
㋒資料・素材・原料を示す。…を使って。…で。 史記抄「漢書と云も、史記―できたほどにぞ」。
「日本酒は米―作る」
➋(接続助詞)
①原因・理由を示す。…のために。…ので。
毎月抄「古風の見え侍る―、か様に申せば、又御退屈や候はんずらめなれども」。
山谷詩抄「民をあなどる―けがをするぞ」。
「うまい―食べすぎた」「よい子だ―おとなしくしなさい」「疲れた―って、休めない」
②(「…―は」「…―には」の形で)決意・判断の根拠を示す。…する以上は。…する上は。 狂言、宗論「かう参る―は…都までは、とくと御供致さう」。
「やる―には立派にやれ」
③(「…て―」の形で)順接の仮定条件を表す。…するとしたら。…ならば。 浄瑠璃、博多小女郎波枕「聞入れじ、聞入れて―小女郎が恥」。
浄瑠璃、心中重井筒「いや、もはや来られませぬ。来て―、今度は出されませぬ」
大言海 天爾遠波 (カラ)ノ轉用カ〕
二ツノ閒ニ移ル意ヲ示ス(テニハ)よりニ同ジ。
神代紀、下(カラ) 頓丘 (ヒタヲ)(マギ) 國行去 (クニトホリ)
萬葉集、十 十九 長歌「ホトトギス、 卯花邊柄 (ウノハナヘカラ)、鳴キテ越ユナリ」
同、十七 四十九? 之乎路 (シヲヂ)(地名)可良、(タダ)越エ來レバ」
古今集、十、物名「浪ノ音ノ、今朝から殊ニ、聞ユルハ」
貫之集、三「ホトトギス、マタ鳴カヌから、待タレケルカナ」
催馬樂、本滋「(モト)繁キ、吉備ノ中山、昔 與利 (ヨリ)、昔 加良 (カラ)、名ノ()リ來ヌハ、今ノ世ノタメ、今日ノ日ノタメ」
自・從

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最終更新:2024年05月08日 21:15