かり(許)

日本国語大辞典 接尾辞 (「が‐あり」または「か(処)‐あり」の変化した語) 代名詞または人を表わす名詞に付き、その人の許(もと)に、その人の所に、の意を表わす。格助詞「に」や「へ」を伴わないで、移動の意を含む動詞に直接に続く。 ※万葉(8C後)一四・三五三八「広橋を馬越しがねて心のみ妹我理(ガリ)やりて我(わ)はここにして」
※御伽草子・福富長者物語(室町末)「典薬頭、清麿がり行きてしかじかと歎きいひければ」
名詞 ((一)の用法から変化したもの) 人を表わす名詞に、格助詞「の」を介して付き、その人の許(もと)に、その人のいる所に、の意を表わす。形式名詞のように使われるようになったもの。 ※阿波国文庫旧蔵本伊勢物語(10C前)A「つとめてもなほいみじう降るに、ある人のがりやりし」
※宇治拾遺(1221頃)七「這ひ起きて約束の僧のがりゆきて、物をうち食ひてまかり出でけるほどに」
広辞苑 (カアリ(処在)の約カリの連濁。一説に、リは方向の意)人を表す名詞や代名詞に付いて、または助詞「の」を介して、その人のいる所へ、の意を表す。 万葉集14「妹―やりて」。
栄華物語浦々別「夜ばかりこそ女君の―おはすれ、ただ宮にのみおはす」
辞書 品詞 解説 例文 漢字
大言海 名詞 ()(アリ)ノ約、 在處 (アリカ)ト、同意〕
其人ノ居ル處。(モト)。他語ニツクトキハ、 連聲 (レンジヤウ)ニテ、がりト濁ル。
古事記、中(神武) 十二 (イデ)(マシテ)其伊須氣余理比賣之(カリ)
枕草子、三、三十七段「ヤムゴトナキ物持タセテ、人ノかり遣リタルニ」
蜻蛉日記、上、上兼家「イヅレトモ、ワカヌ心ハ、ソヘタレド、コタビハサキニ、見ヌ人ノかり」
宇治拾遺、三、十四條「國司ノかり、向ヒヌ」
萬葉集、十四 三十 「心ノミ、(イモ) 我理 (ガリ)遣リテ」
同卷 三十二 (カナ)シキ(セロ)ガ、 吾許 (ワガリ)通ハム」

又、「がり(許)」も参照。

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最終更新:2024年05月02日 19:46