こゆ(越・踰)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞 ① 山、峠、谷、川、溝、関所など、障害となるものを通り過ぎて向こうへ行く。その上空を過ぎて行く場合にもいう。 日本書紀(720)仁徳四〇年二月・歌謡「梯立のさがしき山もわぎもこと二人古喩例(コユレ)ば安席(やすむしろ)かも」
方丈記(1212)「風にたへず、吹き切られたるほのほ、飛ぶが如くして一二町をこえつつ移りゆく」
越・超・踰
② ( 「年が越える」などの形で ) 年が二年以上にわたる。また、区切りとなるある日時が過ぎる。その時を経過する。 竹取物語(9C末‐10C初)「つかはしし人は、夜昼待ち給ふに年こゆるまで音もせず」
③ 数量がある程度以上になる。 大唐西域記巻十二平安中期点(950頃)「狭きは則ち一里を踰(コエ)ず」
④ ある範囲や限界内にとどまらず、その外へ出る。 古典と現代文学(1955)〈山本健吉〉抒情詩の運命「彼等の個性や才能を超えた問題として」
方丈記私記(1970‐71)〈堀田善衛〉三「現実はやはり想像を越えていた」
⑤ 位、段階など、順を追わないで間を飛んで上に進む。また、他の人を抜いて上の地位になる。 落窪物語(10C後)四「昨日けふの若人どもに多くこえられて」
⑥ 他よりすぐれる。ぬきんでるまさる 源氏物語(1001‐14頃)柏木「いみじきことを思ひ給へ歎く心は、さるべき人々にもこえて侍れど」
浄瑠璃・出世景清(1685)四「身は畜生にて有ながら智恵人間にこえたれば」
⑦ 規則にそむく。規則にはずれる。 日葡辞書(1603‐04)「ノリヲ coyuru(コユル)」
広辞苑 自動詞 動作・状態がある限界を一挙に上まわる意。
①《越》物の上を過ぎて行く。障害などをのりこえて行く。
仁徳紀「 梯立 (はしたて)(さが)しき山も我妹子と二人―・ゆれば 安席 (やすむしろ)かも」。
大和物語「逢坂の関―・えて浜へゆき下るるほどに」。
「国境を―・える」
越ゆ・超ゆ
②その時を経過する。 竹取物語「年―・ゆるまで音もせず」「冬を―・える」
③ある程度(限界)を過ぎてそれ以上になる。 平家物語灌頂「そともの 小田 (おだ)も水―・えて、鴫立つ隙も見え分かず」。
「気温は三〇度を―・えた」「定員を―・える」
④上まわる。まさる 平家物語2「その恩の重き事を思へば、千顆万顆の玉にも―・え」。
「力は先輩を―・える」
⑤きまりなどにそむく。規則にはずれる。 ロドリーゲス大文典「心の欲する所に従へども(のり)を―・えず」
⑥順序を追わず進む。とびこす。追いこす。 大鏡道長「大臣―・えられたることだに、いといとほしくはべりしに」。
「兄を―・えて弟が家を継ぐ」
⑦(主義・立場などを)超越する。 「利害の対立を―・えて事に当たる」「怨讐を―・えて協力する」
大言海 自動詞 (一){物ノ上ヲ、過ギ行ク。 齊明紀、四年十月「山 古曵 (コエ)テ、海渡ルトモ」
萬葉集、廿 五十五 「堀江 故要 (コエ)、遠キ里マデ、送リケル、君ガ心ハ、忘ラユマジモ」
字鏡 十八 「踰、越、 古由 (コユ)
越・踰
(二){ () ()經過 後撰集、十四、戀、六「問フ事モ、待ツニ月日ヲ、こゆるぎノ、磯ニヤ出デテ、今ハ恨ミム」
(三){ (スグ)マサルヌキンヅ超越 後撰集、十一、戀、三「君ガ思フ、心ハ人ニ、こゆるぎノ」
「智略、人ニ超ゆ」
(四)(トド)キテ、過グ。超過 「水ノ深サ、膝ヲ超ゆ」入費、千圓ヲ超ゆ」
動詞活用表
未然形 こえ ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 こえ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 こゆ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 こゆる も、かも、こと、とき
已然形 こゆれ ども
命令形 こえよ

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附箋:下二段 自動詞

最終更新:2024年08月10日 16:29