さぐ(下)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 他動詞 ① 物の一端を固定して下へ垂らす。
(イ) 物に掛けてつるす。つりさげる
催馬楽(7C後‐8C)庭に生ふる「庭に生ふる 唐薺(からなづな)はよき菜なり はれ 宮人の 左久留(サグル)袋を おのれ懸けたり」
俳諧・曠野(1689)五「煤はらひ梅にさげたる瓢かな〈一髪〉」
下・提
(ロ) ( 提 ) 手に持って下へ垂らす。ぶらさげる 説経節・説経苅萱(1631)下「ちちかるかやのどうしんは、はなかごをてにさけて、おくのゐんよりおかへりあると」
② 前から後ろへと位置を変わらせる。後ろへ移す。 「一歩さげる」
③ 地位が上の人のいる所から離れさせる。
(イ) 目上の人や客などのいる前から退かせる。
源氏物語(1001‐14頃)帚木「心地なやましければ、人々さげずおさへさせてなむと聞こえさせよ」
(ロ) 人の前から料理などをとりかたづけて台所などへ運び出す。 多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉後「お種は勝手へ下げる物を片付けて婢(をんな)を呼ぶと」
(ハ) ある人の近くから物を他へ移す。 落語・宗漢(1895)〈四代目橘家円喬〉「生憎此間から夜具蒲団を洗濯に下(サ)げて今宅にないのでございます」
(ニ) 奉公先、稽古所、学校などから帰らせる。また、そこへ行くのをやめさせる。 雑俳・川柳評万句合‐明和六(1769)智三「諷ではどふてくへぬとおやじ下げ」
細君(1889)〈坪内逍遙〉一「もうひとり小間使がゐましたが、訳があって下げたので、当分は忙しからう」
④ 高い所から低い所へと移す。おろす。⇔あげる 天草本伊曾保(1593)エジットよりの不審の条々「トリノ エヲ モタセ サシアゲバ、トリモ ウエニ アガリ sagueba(サゲバ) トリモマタ サガル ヤウニ ナラワセテ」
⑤ 一方または一部分を他より低くする。⇔あげる 竹取物語(9C末‐10C初)「つばくらめ尾をさけていたくめぐるにあはせて」
多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前「お種が辞儀をすれば、柳之助も同じやうに頭を低(サ)げて」
⑥ 物事の程度などを低くする。⇔あげる
(イ) 地位や格式、価値などを低くする。
高野本平家(13C前)一「わが身にあやまつ事はなけれども、すてられたてまつるだにあるに、座敷をさへさけらるることの心うさよ」
(ロ) 値段、相場などを安くする。 俳諧・炭俵(1694)上「茶の買置をさげて売出す〈孤屋〉 この春はどうやら花の静なる〈利牛〉」
(ハ) 音の高さ、大きさを低くしたり速度、濃度などを減じたりする。 三道(1423)「上声五句斗(ばかり)、指声五句斗、下て云ひ納むるまで、五六句斗、曲舞十二三句歟」
海に生くる人々(1926)〈葉山嘉樹〉二五「九哩の速力をどうしても、もっと下げなければならない筈であった」
⑦ 目上の者から目下の者へ渡す。また、官府が書類などを返したり渡したりする。 人情本・春色梅児誉美(1832‐33)初「おれが名代に、畠山さまへ行たれば、随分金子は下(サ)げつかはすが」
⑧ 貯金などを引き出す。 苦の世界(1918‐21)〈宇野浩二〉六「けさ郵便局から小遣ひをさげておかうと思ひながら」
⑨ 軽蔑する。見下げる。 平家物語(13C前)七「わどのをさぐるにはあらず、存ずるむねがあれば名のるまじいぞ」
⑩ ( ①(ロ) の意から ) ある性質、気持、顔つきなどを持つ、有する。 浄瑠璃・女殺油地獄(1721)中「おのれが五体どこを不足にうみ付た。人間の根性なぜさげぬ」
安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉初「こちとらア四十づらアさげて色気もそっけもねへけれど」
⑪ 支払う。 洒落本・玉之帳(1789‐1801頃)「玉をさげぬ内は子共を廻さず」
⑫ 支払いを待ってやる。つけにしてやる。 洒落本・駅舎三友(1779頃)出立「下らふといっても茶屋は下げず」
広辞苑 他動詞 ➊物の一部を固定して他は下方へ垂らす。
つるすぶらさげる
大鏡兼家「くれなゐの袴に赤き色紙の物忌いと広きつけて土とひとしう―・げられたりしかば」。
「看板を―・げる」
下ぐ
②(「提げる」とも書く)手に持ってぶらぶらさせる。転じて、たずさえる。ひき連れる。 源氏物語若紫「よべ縫ひし御衣どもひき―・げて、みづからもよろしき衣着かへて」。
「かばんを―・げる」「土産物を―・げてやってきた」
③ぶらさげて持つ意から、「持つ」「有する」の意をいやしめていう語。 浄瑠璃、女殺油地獄「人間の根性なぜ―・げぬ」
④一方の端または一部を他より低くする。 徒然草「 倚廬 (いろ)の御所のさまなど、板敷を―・げ、葦の御簾をかけて」。
「目尻を―・げる」
➋後へ退かせる。 源氏物語藤裏葉「中宮の御母御息所の車押し―・げられ給へりし折の事」。
「椅子をうしろへ―・げる」
➌高い所から低い所へ位置をかえる。
①低い位置へ移す。くだすおろす。下方へ向ける。
竹取物語「鼎の上より手とり足とりして―・げおろし奉る」。
天草本伊曾保物語「(こうべ)を地に―・げへりくだつたれば」。
日葡辞書「アタマヲサグル」。
「棚板を一段―・げる」
②目上の者の前から退かせる。しりぞけるのける 源氏物語帚木「心地なやましければ、人々―・げずおさへさせてなむ」。
歌舞伎、傾情吾嬬鑑「コレ、お伝、この新造めを―・げてくりやれ」。
「供物を―・げる」
③勤務場所・学校などから帰らせる。また、そこをやめさせる。
④目上の者から目下の者へ物を渡す。また、役所が書類などを下付する。 梅暦「随分金子は―・げつかはすが…さし引き残り千両は早速に上納いたせ」。
「役所から鑑札を―・げてもらう」
➍物事の程度などを低くする。
①地位・格式などを低くする。
平家物語1「我身に過つ事は無けれども、すてられたてまつるだにあるに、座敷をさへ―・げらるる事の心うさよ」
②価値・値段などを低くする。劣った状態にする。 炭俵「茶の買置きを―・げて売り出す」(孤屋)。
「値段を―・げる」「評判を―・げる」「男を―・げる」
③高低・強弱の度合を低くする。また、(速度を)おとす。 「温度を―・げる」「もっと速度を―・げろ」
④見さげる。けなす 平家物語7「さては互ひに好い(かたき)ぞ。但わ殿を―・ぐるにはあらず」。
日葡辞書「ヒトヲサグル」。
「人を上げたり―・げたりする」
➎銀行などから金を引き出す。おろす
大言海 他動詞 〔さがるノ他動((アガ)る、あぐる)〕
(一){上ヨリ、下ヘヤル。クダスオロス。(()ぐノ反)
竹取物語「鼎ノ上ヨリ、手トリ、足トリシテ、さげオロシ奉ル」
(二){()ケテ、垂ラス。 神樂歌、採物、劒「 白銀 (シロガネ)ノ、目貫ノ太刀ヲ、左介()キテ、奈良ノ都ヲ、()ルハ誰ガ子ゾ」
催馬樂、庭生「庭ニ()フル、加良(ナヅナ)ハ、()キ菜ナリ、宮人ノ、左久留袋ヲ、己レ懸ケタリ」(袋ハ、 魚袋 (ギヨタイ)ナリ、薺ノ實ハ、極メテ小サキ袋ノ如シ、今、雀の巾着ト云フ)
(三)調子ヲ、低クス。 「聲ヲ」()ヲ」
(四)低クス。(オト)ラス。オトス降等 「位ヲさげる」價ヲさげる」
(五) 退 (シリゾ)クル。 (アト)ヘさげる」
さげる
(一)()ぐ、又ハ、()ぐ、ノ口語。
(二)退クル。オロス(シモ)ヘ送ル。撤退 「供物ヲさげる」
(三) (オト)ケナスサゲスム 「人ヲ評シテ、あげタリさげタリ」
(四)自動トナリテ、汐ガ、 退 ()ク。(あげるニ對ス)退潮 「汐ガさげる」さげ汐」
動詞活用表
未然形 さげ ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 さげ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 さぐ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 さぐる も、かも、こと、とき
已然形 さぐれ ども
命令形 さげよ

検索用附箋:他動詞下二段

附箋:下二段 他動詞

最終更新:2024年08月24日 22:14