さて（然而）

辞書	品詞	解説	例文	漢字
日本国語大辞典	副詞	( 副詞「さ（然）」に助詞「て」が付いてできたもの ) ① すでに存する事柄を状態として具体的に指示する。そのような状態で。そのままで。それがすべて。	万葉集（８Ｃ後）一〇・二三二九「雪寒み咲きには咲かず梅の花よしこのごろは然而(さて)もあるがね」 徒然草（1331頃）八二「しのこしたるを、さて打置たるは、面白く」
		② すでに存する事柄を、状態として抽象的に指示する。しかじかの状態で。これこれで。	蜻蛉日記（974頃）上「二日ばかりありて見えたれば、『これ、さてなんありし』とて、見すれば」
		③ すでに存する事物・事態をうけて、それに時間的・論理的に後続して生ずる事物・事態の叙述の説明、修飾とする。そうなった後に。その次に。	万葉集（８Ｃ後）一〇・二二四四「住吉(すみのえ)の岸を田に墾(は)り蒔きし稲乃而(さて)刈るまでに逢はぬ君かも」
	接続詞	( 扨・偖・扠 ) ① 文脈上すでに存する事物・事態をうけ、これと並行して存する他の事物・事態に話を転じる。一方では。他方。ところで。	竹取物語（９Ｃ末‐１０Ｃ初）「其(それ)よりなむ少し嬉しき事をば、かひありとはいひける。さてかぐや姫、形の世に似ずめでたき事を、帝きこしめして」 虎明本狂言・福の神（室町末‐近世初）「先此のこりは、ふくの神がたべう、さてなんじらは、たのしうなりたいな」
		② すでに存する事物・事態をうけ、時間的にこれに続く事態を導く。 (イ) そうして。それから。その後。	伊勢物語（１０Ｃ前）一〇「むかし、をとこ、武蔵の国までまどひありきけり。さて、その国に在る女をよばひけり」
		(ロ) だから。そこで。	蜻蛉日記（974頃）下「かういふ人、あまたあなりときく。さてなるべし。我ならぬ人まつならばまつといはでいたくなこしそ沖つ白波」
		(ハ) だからといって。そうはいっても。さりとて。	落窪物語（１０Ｃ後）一「ともかくも御心。さてつかひよしとはしもなの給そ」 多情多恨（1896）〈尾崎紅葉〉前「一日二日は切に其事ばかりを考へてゐたが、さて分別は容易に着かぬ」
	感動詞	① それにしても。まあ。それはそうと一体。はてさて。さあ。 (イ) 疑問文に用いる。	謡曲・山姥（1430頃）「これは思ひも寄らぬことを承り候ふものかな、さてたれと見申されて山姥の歌のひと節とはご所望候ぞ」
		(ロ) 感動文に用いる。	虎明本狂言・花子（室町末‐近世初）「ああさて、はなごのやさしや、まだ夜もふかひほどに、おくらうと云て」 鞍馬天狗（1924‐59）〈大仏次郎〉江戸日記「さて困った！ 用事とは困ったな」
		② 文末に置かれる特殊用法。自分の発言内容をいかにもその通りだと確認する気持を表わす。まあ。	虎明本狂言・花子（室町末‐近世初）「うでがうなりと、づかうなり共おたきやれさて」
		③ 何か動作をしようとするときに発する語。さてと。さあ。
	形容動詞	一つの事態に対する、強い疑惑・不賛成の気持を表わす。うまくないさま。よくないさま。あぶないものだ。	応永本論語抄（1420）子張第一九「人は管見ではさて也」 謡曲・烏帽子折（1480頃）「三つが三つながら消ゆるならば、今夜の夜討ちもさてよのう」
広辞苑	副詞	①そのようで。そのままで。	万葉集10「梅の花よしこの頃は―もあるがね」
		②これこれで。しかじかで。	蜻蛉日記上「これ、―なんありとて、見すれば」
		③そうしてそれから。その外。	源氏物語花宴「―の人々は、皆臆しがちに」
	接続詞	(「扨」「偖」と書く)上を受けて下に移る時の語。また、局面をかえて説き起こす時の語。そうして。それから。ところで。	竹取物語「それよりなん、少し嬉しきことをばかひあるとは言ひける。―、かぐや姫、かたちの世に似ずめでたきことを」。 「仕事を終え、―帰ろうとすると」
大言海	副詞	〔 然 (サ)アリてノ意〕 ソノ如クニテ。ソノママニテ。ソレニテ。	萬葉集、十 六十一 「雪寒ミ、咲キニハ咲カズ、梅ノ花、 縱 (ヨシ)此頃ハ、 然而 (サテ)モアルガネ」 續紀、十七、天平勝寳元年十二月、宣命「 歡 (ウレ)シミ、 貴 (タフト)ミナモ、 思 (オモホ)シメス、 然 (サテ)、猶、止ムコト得ズシテ、 恐 (カシコ)ケレドモ、御冠 獻 (タテマツ)ル事ヲ、 恐 (カシコ)ミ恐ミモ申シタマハクト申ス」 竹取物語「此 燕 (ツバクラメ)ノ子安貝ハ、惡シクタバカリテ、取ラセタマフナリ、さてハ、エ、取ラセタマハジ」	然而

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