さむ(冷)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞 ① ( 冷 ) 熱い物、特に液体の温度が自然に下がる。 東大寺本大般涅槃経平安後期点(1050頃)四「鉄の冷(サメ)ぬるときに、還りて熱からしむべきがごとし」
舞姫(1890)〈森鴎外〉「一盞の咖啡の冷むるをも顧みず」
冷・褪
② たかぶっていた感情が消える。心が静まる。 源氏物語(1001‐14頃)夕顔「右近はただあなむつかしと思ける心ちみなさめて泣きまとふさま、いといみじ」
③ 関心、興味、感慨などが薄らぐ。 宇津保物語(970‐999頃)国譲下「ごたち『いぬ宮の御時おもしろかりしを、こたみはさめたりや』といふ」
④ ( 褪 ) 色がうすくなる。あせる 仁安二年八月皇太后宮亮経盛歌合(1167)七番「もみち葉はくれなゐふかくなり行けどひとりさめたる松のいろかな〈藤原伊行〉」
破壊(1906)〈島崎藤村〉五「手袋は〈略〉色は褪(サ)めたが」
広辞苑 自動詞 (「寒い」と同源)
➊物体の熱、物事に対する熱意が低下してもとの状態になる。
①《冷》熱くした物の温度が普段の温度まで下がる。ぬるくなる。冷たくなる。
永久百首「夜と共に下に焚く火はなけれどもしまねの御湯は―・むるよもなし」。
「スープの―・めない距離」
冷む・覚む・醒む・褪む
②《冷・覚・醒》心の高ぶりがなくなり、普段の心の状態に戻る。気持が静まる。 源氏物語夕顔「ただあなむつかしと思ひける心地皆―・めて、泣き惑ふさまいとみじ」。
日葡辞書「ココロガサメタ」。
「あの人に対する熱も―・めた」「ほとぼりが―・める」「興味が―・める」「―・めた目で見る」
➋《覚・醒》眠り・酔い・迷いなどが消え去って、普段の判断ができるようになる。
①眠った状態から起きた状態に戻る。夢からうつつにかえる。正気に戻る。
万葉集19「()ぐたちに寝―・めて居れば河瀬とめ心もしのに鳴く千鳥かも」。
霊異記中「地にたふれて臥し 嘿然 (しずか)なり。ものいはず、やや久にありて()め起ち」。
源氏物語帚木「いたづらぶしとおぼさるるに御目―・めて」。
「夢から―・める」
②酒の酔いがなくなる。 大鏡道隆「この殿御酔のほどよりはとく―・むることをぞせさせ給ひし」。
「酔いが―・める」
③迷いがなくなり、普段の判断ができるようになる。物思いが晴れる。 源氏物語槿「今日は老いも忘れ、憂き世の嘆き皆―・めぬる心地なむ」。
「迷いから―・める」
➌《褪》染色などがうすれて、濃かった色が薄い色になる。色が分からなくなる。くすむあせる 風雅和歌集夏「風わたる田の()の早苗色―・めて入日のこれる岡の松原」。
「着物の色が―・める」
大言海 自動詞 (サム)ノ活用シタル語カ(()るモ、(クラ)ノ活用ナラム)尙、考フベシ〕
(一)熱、漸ク()ス。次第ニ、()ユ。
永久四年百首、 溫泉 (イデユ)「夜ト共ニ、下ニ()ク火ハ、ナケレドモ、しまねノ 御湯 (ミユ)ハ、さむるヨモナシ」
(二){酒ニ醉ヒタル熱、()ユ。 大和物語、中「(フミ)ヲ遣ラムト、醉ヒさめテ思ヒケルニ」
(三){勢ヒ、𮕩フ。興、(ウス)ル。 宇津保物語、嵯峨院 九十一 御產養 (ミウブヤシナヒ)ノ景況「大宮ノ御時、面白カリシヲ、 此度 (コタビ)ハ、さめタリヤ」
狹衣、三、下 四十七 「面白ウ、メデタカリツル物ノ()、皆、さめテ、聞ク限リノ人人、目ヲ見カハシテ、物モ言ハレズ、アキレタリ」
(キヨウ)さむ」
動詞活用表
未然形 さめ ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 さめ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 さむ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 さむる も、かも、こと、とき
已然形 さむれ ども
命令形 さめよ

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附箋:下二段 自動詞

最終更新:2024年09月16日 20:20