さや(鞘)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 ① 刀剣類の刀の部分を納めておく筒。形状によって丸鞘、平鞘の別がある。また、装飾によって木地鞘、塗鞘、懸鞘(かけざや)の類がある。 正倉院文書‐天平一〇年(738)周防国正税帳「大刀鞘料馬皮壱張」
平家物語(13C前)一一「白柄の長刀(なぎなた)のさやをはづし」
〔詩経疏‐小雅・瞻彼洛矣〕
② 筆や鉛筆などの先端にかぶせて保護するもの。かさ。ふでかさ。 和訓栞(1777‐1862)「さや〈略〉筆のさやは、帽也」
③ 牢屋の外囲い。また、牢屋の二重格子の外にある土間。また、獄舎そのもの。 俳諧・西鶴大矢数(1681)第三一「少の科て(サヤ)に三年 古里のおははの㒵も見忘た」
④ 雅楽で、笛を入れておく筒。横笛と高麗笛(こまぶえ)と二本を並べて入れるものを二つ鞘、横笛だけを入れるのを一つ鞘という。ただし、神楽笛(かぐらぶえ)には用いない。 〔楽家録(1690)〕
⑤ ( 江戸時代、帳合米(ちょうあいまい)と正米(しょうまい)との差をいう「差違(さい)」から生じた語という ) 取引相場でいう語。さやびらき。
(イ) ある値段と他の値段の差額、ある利率と他の利率との差違をいう。
〔取引所用語字彙(1917)〕
(ロ) 売り値と買い値との差額をいう。
(ハ) 各銘柄や地域による相場と相場との差違をいう。
⑥ 江戸時代の俗語で、女性の性器。また、妻女。男根を「抜き身」ともいうところから、抜き身を納めるものの意から生じた語。 雑俳・川柳評万句合‐宝暦八(1758)松「国にさや置てぬきみの江戸住居」
⑦ ( 「め(目)の鞘(さや)」の略 ) まぶた
⑧ 家をいう、盗人・てきや仲間の隠語。 〔特殊語百科辞典(1931)〕
いやな感じ(1960‐63)〈高見順〉三「サヤ(家)も豪勢だし」
⑨ 手数料をいう、闇屋仲間の隠語。 現代風俗帖(1952)〈木村荘八〉現代風俗帖「その間の手数料(サヤ)がこの婦人の商売らしく見え」
[語誌]語源は諸説あるが、刀剣の名称は、植物の呼称にちなむものが多く、「さや(鞘)」も、石製刀子(とうす)を入れた革鞘の形状がエンドウマメなどの莢(さや)に類似しているところから名付けられたものと思われる。他にも、柄が頭に近づくにつれ太くなり先端に玉葱状のふくらみのある金具をつける「頭槌(かぶつち)の大刀」は、蕪(かぶ)に見立てたもの、「蕨手刀(わらびでとう)」は、中子(なかご)が柄となり、先端にゆくにしたがって細くなり先が丸形になっている様子が蕨の芽を出した形に似ているところからつけられた、といった類例が挙げられる。
広辞苑 名詞 ①刃物の刀身の部分を納める筒。材は 厚朴 (ほお)の木を最良とし、布で包み、漆を塗ることが多い。刀室。 「―走る」「もとの―におさまる」
②筆・鉛筆などのキャップ。
③(取引用語)
㋐値段や利率の差。
㋑売値と買値との差。 「利―」
㋒ある銘柄についての相場と相場との開き。
④牢屋・堂・蔵の外囲い。 「―堂」
大言海 名詞 (サヒ)()ノ略ト云フ((シヒ)()つ、(シコ)つ。 肱木 (カヒナギ)(カナギ))或ハ、さハ、()すノ語根ト云フ、日本釋名(元祿)下、武具「(サヤ)(サス)()也、刀ヲサス()也」又、或ハ、 鏡奩 (カガミノス) 蜂房 (ハチノス)ナドノ、すノ轉カ( 丈夫 (マスリヲ)、ますらを。(スス)、すさむ)鏡奩ヲ、かがみの(イヘ)トモ云フ、刀室ト、同意、下學集、下、器財門「(サヤ)、刀子家也」〕
(一){刀ノ()ヲ、()シ入レオク、筒ノ如キモノ。 厚朴木 (ホホノキ)ノ材ノ、善ク枯レタルヲ用ヰ、大小、長短、刃ニ合ハセテ造ル。木地ナルヲ、 白鞘 (シラザヤ)ト云フ、多クハ、黑漆ニテ塗ル、黑鞘ト云フ、朱漆ナルヲ、朱鞘ト云ヒ、鮫皮ニテ包ミタルヲ、鮫鞘ト云フ。
神功紀、五十二年九月「 七枝 (ナナサヤノ)刀」
萬葉集、七 廿六 劒後 (タチノシリ)、鞘ニ 納野 (イリヌ)ニ」
天治字鏡、五「鞘、刀劒室、佐也」
倭名抄、十三弓劒具「鞘、刀室也、佐夜」
(二)牢屋ノ、 外圍 (ソトガコヒ)。(堂、藏ナドニモ)
(三)取引所ノ語。さやびらき(鞘開)ノ略、(其條ノ(二)ヲ見ヨ)其差額ノ僅少ナルヲ、 薄鞘 (ウスザヤ)ト云フ。

検索用附箋:名詞物品名称

附箋:名称 名詞 物品

最終更新:2024年09月21日 18:02