さる(避)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 他動詞 ① 望ましくない物事を避ける。 源氏物語(1001‐14頃)玉鬘「和歌の髄脳、いと所せう、病さるべき所多かりしかば」
② いやだとことわる。辞退する。 日本書紀(720)允恭元年一二月(寛文版訓)「今羣臣の請ふこと、事理(ことわり)灼然(いやちこ)なり。何ぞ遂に謝(サラ)むや」
[語誌]( 1 )「去る」の他動詞用法「遠ざける」の意味から、さらに積極的に対象を避けたり、拒んだりする意味に転じたもので、元来同源の語。
( 2 )類語に「さく」「よく」があるが、不可避の意味を表わす場合には、「えさらず」の形で「さる」が用いられた。
( 3 )中世以降は衰えて、「さりがたし(避難)」などの形に限って用いられるようになるのに対して、「よく(よける)」「さく(さける)」は、その動作の対象を表わす語などに違いはあるものの、今日まで引き続き用いられている。
広辞苑 他動詞 自分の意思のままに遠ざけたり、譲ったり、拒んだりする意。
①遠ざける。はなす
蜻蛉日記中「なほしばし身を―・りなむと思ひたちて」。
源氏物語桐壺「あながちにお前―・らずもてなさせ給ひし程に」
去る・避る
さけるよける 古今和歌集春「道も―・りあへず花ぞ散りける」。
古今和歌集雑「世の中に―・らぬ別れのなくもがな」。
源氏物語玉鬘「和歌の髄脳いと所せく、病―・るべきこころ多かりしかば」
③譲歩する。ゆずる 源氏物語葵「ここにやは立たせ給はぬ。所―・り聞えむ」。
源氏物語紅葉賀「やんごとなき御腹々のみこたちだにうへの御もてなしのこよなきに、煩はしがりて、いと殊に―・り聞え給へるを」
④離縁する。 宇治拾遺物語4「もとの妻をば―・りつつ、わかくかたちよき女に思ひつきて」
のぞくすてさる さらんべ草1「行水などして身の(あか)を―・つて」。
「俗念を―・る」
ことわるこばむ。辞退する。 允恭紀「今群臣の請ふこと 事理 (ことわり) 灼然 (いやちこ)なり。何ぞ遂に()らむや」。
大鏡為光「かの左衛門督はえなられじ。又そこに―・らればこと人こそはなるべかなれ」
⑦連歌・俳諧で、 指合 (さしあい)にならないよう句を隔てる。 三湖抄「舟と舟、煙と烟、衣と衣いづれも七句―・るなり」
大言海 他動詞 〔去るト通ズルカ〕
() ()
神代紀、上 二十三 天照大神「 日神 (ヒノカミ)曰、吾弟、云云、欲我之國者歟、吾雖婦女、何( ゾサ)(ラム)()
同、下武甕槌神、經津主神、出雲ニ歸リテ、大己貴神ニ、皇孫、此地ニ君臨シタマハムトス「汝意如何、 當須避不 (サリマツラムヤイナヤ)、云云、蹈 船枻 (フナノヘヲ) 避之 (サリヌ)
古今集、二、春、下「梓弓、春ノ山邊ヲ、越エ來レバ、路モさりアヘズ、花ゾ散リケル」
源、五十三、夢浮橋「さりガタキ(ホダシ)ニ、オボエハベリテ」
()ざる」 退 ()ざる」
此語、打消ニ用ヰテ、()けられず、(ノガ)れられず、ノ意ヲ成ス。 竹取物語「此月ノ十五日ニ、カノ(モト)ノ國ヨリ、迎ヘニ、人人、(マカ)()ンズ、さらず、罷リヌベケレバ」
古今集、十七、雜、上「老イヌレバ、さらぬ別レノ、アリトイヘバ、イヨイヨ見マク、欲シキ君カナ」
新古今集、廿、釋敎「さらずトテ、幾世モアラジ、イザヤサハ、法ニカヘツル、命ト思ハム」
動詞活用表
未然形 さら ず、ゆ、る、む、じ、す、しむ、まほし
連用形 さり たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 さる べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 さる も、かも、こと、とき
已然形 され ども
命令形 され

検索用附箋:他動詞四段

附箋:他動詞 四段

最終更新:2024年09月22日 21:57