すう

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 他動詞 ① 物を動かないように、一定の場所に置く。きちんと置く。また、安置する。供する。 古事記(712)下「味白檮の言八十禍津日の前に、玖訶瓫(くかへ)を居(すゑ)て」
伊勢物語(10C前)九「かきつばたといふ五文字を句の上にすへて」
据・居
② ほこり、ちりなどをたまったままにする。 古今和歌集(905‐914)夏・一六七「ちりをだにすへじとぞ思ふさきしよりいもとわがぬるとこ夏の花〈凡河内躬恒〉」
③ 人を一定の場所に住まわせる。ある場所や人のもとに、人をとどめておく。 竹取物語(9C末‐10C初)「かぐや姫すへんには例やうには見にくしとの給ひて、うるはしき屋を作り給ひて」
④ 人を置く。人を置いて番などをさせる。 万葉集(8C後)一七・四〇一一「あしひきの 彼面此面(をてもこのも)に 鳥網張り 守部を須恵(スヱ)て」
⑤ 人をすわらせる。 日本書紀(720)神代上(兼方本訓)「一りの少女(をとめ)を中間(なか)に置(スヱ)て撫(かいな)てつつ哭く」
⑥ 人をうずくまらせる。→ひきすえる
⑦ 鳥、とくに鷹をとまらせる。 日本書紀(720)仁徳四三年九月(北野本室町時代訓)「小鈴を以て其の尾に着けて腕(たたむき)の上に居(スエ)て天皇に献る」
⑧ 種子などをまく。植える。 万葉集(8C後)一五・三七六一「世の中の常のことわりかくさまになり来にけらし須恵(スヱ)し種から」
⑨ 建築物などを構える。構築する。設ける。かまえる。 枕草子(10C終)二七八「御桟敷の前に陣屋すゑさせ給へる」
源氏物語(1001‐14頃)常夏「勿来(なこそ)の関をやすへさせ給へらむとなん」
⑩ 用意する。ととのえる 落窪物語(10C後)二「侍の入るべき所、雑色所など、さまざまに物すゑなどして、待ち居給ふ」
⑪ 一定の地位につける。位につかせる。 源氏物語(1001‐14頃)紅葉賀「坊にもすゑ奉らずなりにしを」
⑫ 印判などを押す。印として刻みつける。 太平記(14C後)九「足利殿自筆を執て判を居(スヘ)給ひ」
⑬ 感情、気持、動作などを動揺しないようにじっと落ち着かせる。しずめる 金刀比羅本保元(1220頃か)上「大男の眼(まなこ)をすへ」
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三「据ゑた胸も率(いざ)となれば躍る」
⑭ もぐさを灸穴(きゅうけつ)にあてて火をつける。灸点する。灸をする。 拾芥抄(13‐14C)下「灸治穢者七日。居灸之人三日」
⑮ 醸造する。製造する。
⑯ 弓を切ったり、曲げたりする。
⑰ 馬をとめる。
[補注]室町時代ごろからヤ行下二段「すゆ(る)」が使われたが、その明らかな例は「すゆ」の項にあげた。→すゆ(据)
広辞苑 他動詞 (ウ(植)ヱルと同源。そこに根を下ろすようにしっかりと定着させる意。室町時代頃よりヤ行に活用する例がみられる)
①置くべき場所を定めて物を置く。一ヵ所に定めて動かないようにする。
万葉集2「泣沢の 神社 (もり) 御酒 (みわ)―・ゑ祈れども」。
宇治拾遺物語9「あしくもあらぬ饗一、二膳ばかり―・ゑつ」。
保元物語(金刀比羅本)「大男のまなこを―・ゑ、つらたましひ誠にあらけなかるが」。
「腰を―・えてかかれ」「機械を―・える」「目を―・える」「腹に―・えかねる」
据う
②場所をきめて人をとどまらせる。居させる。すわらせる。 竹取物語「かぐや姫―・ゑむには…うるはしき屋を造り給ひて」。
源氏物語須磨「若君…とて膝に―・ゑ給へる御気色忍び難げなり」。
「客を上座に―・える」
③一定の地位につける。 源氏物語紅葉賀「坊にも―・ゑ奉らずなりにしを」。
「大臣に―・える」「妻の座に―・える」
④人に置いて番をさせる。 万葉集14「筑波嶺の 彼面此面 (おてもこのも)に守部―・ゑ母い守れども魂そ逢ひにける」。
伊勢物語「その通ひ路に夜毎に人を―・ゑてまもらせければ」
⑤鳥などをとまらせる。 万葉集17「矢形尾の鷹を手に―・ゑ三島野に狩らぬ日まねく月そ経にける」
⑥植えつける。 万葉集15「世の中の常の理かくさまになり来にけらし―・ゑし種子から」
⑦設け置く。設ける。 源氏物語常夏「勿来の関をや―・ゑさせ給へらむ」
⑧印判などを押す。捺印する。 太平記9「足利殿自ら筆をとつて判を―・ゑ給ひ」
灸点 (きゅうてん)する。灸をおく。 浮世風呂前「(ぽんぽん)の方は(あつつ)があるからよしませう。(あつつ)ウ誰が―・えた」。
日葡辞書「ヤイトウヲスユル」
⑩製造する。醸造する。 日葡辞書「ス(酢)ヲスユル」
大言海 他動詞 直居 (スウ)ノ義、(スワ)ルノ他動〕
(一){置キ定ム。スワラス。(トマ)ラス。安置
名義抄「居、スフ」處、スフ」
崇神紀、十年九月「以忌瓮()()於和珥武鐰坂上
今昔物語、廿六、十八語「食物、云云、目ノ上ニ捧ゲツツ、持來ヲ、主人寄テ、取居う」
宇治拾遺、一、十七條「 可惜 (アタラ)シキ不動尊、暫シ、雨ダリニオハシマセト言ヒテ、搔キ抱キテ、雨ダリニ、ツイすうト思ヒシニ」
山家集(西行)上「夕立ノ、晴ルレバ露ゾ、宿リケル、玉()リすうる、蓮ノ浮葉ニ」
私加多咄(萬治)弟子、師ノ僧ニ「御大黑ト、並バセラレテ御座ルホドニ、夷折敷ニすうるト云ウタ」
萬葉集、十七 十五 齋瓮 (イハヒベ)須惠ツ、我ガ床ノ邊ニ」
同、廿 十九 長歌「齋瓮ヲ、床邊ニ須惠テ」
伊勢物語、第五段「ソノ通路ニ、夜每ニ人ヲすゑテ、守ラセケレバ」
源、一、桐壺 廿九 「左ノ司ノ御馬、藏人所ノ鷹すへテ、賜ハリ給フ」
後撰集、十、戀、二「立寄ラバ、影踏ム計リ、近ケレド、誰レカ 勿來 (ナコソ)ノ、關ヲすゑケム」
源順集「ゑ文字ヲ、上下ニ置キテ、()ゴヒスル、君ガ 鷂鷹 (ハシタカ)、下枯ノ、野ニナ放チソ、早ク手ニすゑ」
「机ヲすう」礎ヲすう」鷹ヲ肘ニすう」
(二)定ム。鎭ム。オチツクル。 「心ヲすう」魂ヲすう」腹ヲすう」
(三)押ス。捺印ス。 持統天皇歌軍法(正德、近松作)三「アノ男ノお腹ノ臍ノズンニ、印判すゑタガ良イワイノ」
高野萬年草(寳永、近松作)上「腐レ腐レト、血判ヲ据ゑタ、小舌タルイ女子文」
(四)(モグサ)ヲ、灸穴ニツケテ、灼ク。灼灸 曾我會稽山(享保、近松作)一「 身柱 (チリゲ)ニ、 一炷 (ヒトヒ)すへウカト成サレテ、云云、灸嫌ヒノ髭男」
拾芥抄、下、末「灸治、穢者七日、居灸之人、三日」
動詞活用表
未然形 すゑ ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 すゑ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 すう べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 すうる も、かも、こと、とき
已然形 すうれ ども
命令形 すゑよ

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附箋:下二段 他動詞

最終更新:2024年11月03日 18:07