すぐ(過(自動詞))

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞 [ 一 ] 人、物、時などが近づいて来て、または、そこを通って、向こうへ去って行く。
① ある場所、ある道筋を通って、その先へ行く。通過する。
古事記(712)中・歌謡「新治 筑波を須疑(スギ)て 幾夜か寝つる」
② ある物、場所の近くを通って、そこから離れ去って行く。 万葉集(8C後)一五・三六〇六「玉藻刈る処女(をとめ)を須疑(スギ)て夏草の野島が崎にいほりすわれは」
③ 日時、年月が移って行く。経過する。 万葉集(8C後)一五・三六八八「時も須疑(スギ) 月も経ぬれば 今日か来む 明日かも来むと」
④ ( 他動詞的に用いて ) 日を暮らす。また、生計を立てる。 宇治拾遺物語(1221頃)一「それにその金をこひて、たへがたからむ折は、売りてすぎよ」
日葡辞書(1603‐04)「ミヲ suguru(スグル)。または、イノチヲ suguru(スグル)」
[ 二 ] 物事が盛んな状態から、衰退・消滅・終了の状態へと進んで行く。
① 盛りを経て衰えて行く。
万葉集(8C後)一七・三九一七「ほととぎす夜声なつかし網ささば花は須具(スグ)とも離(か)れずか鳴かむ」
源氏物語(1001‐14頃)若紫「京の花さかりはみなすぎにけり」
② 物事が終わりになる。すむ 蜻蛉日記(974頃)上「いみもすぎぬれば、京にいでぬ」
③ ある気持などが消えてなくなる。 万葉集(8C後)二・一九九「嘆きも いまだ過(すぎ)ぬに 憶(おも)ひも いまだ尽きねば」
④ 死ぬ。 万葉集(8C後)一・四七「ま草刈る荒野にはあれど黄葉(もみちば)の過(すぎ)にし君が形見とそ来し」
咄本・都鄙談語(1773)時宜「隠居が逝(スギ)られ、追つけ葬礼を出す支度」
[ 三 ] 物事が、ある数量や程度を越える。
① ある数量や程度を比べて、それ以上になる。まさる。→過ぎない
万葉集(8C後)一七・四〇一一「近くあらば いま二日だみ 遠くあらば 七日のをちは 須疑(スギ)めやも」
平家物語(13C前)三「子に過たる宝なしとて」
② 適当な度合を越える。
(イ) その人の身分・地位や、その場所の様子などにふさわしくないほど、物事の度合が高くなる。分を越える。過分になる。
古今和歌集(905‐914)仮名序「よろこび身にすぎ、たのしび心にあまり」
日葡辞書(1603‐04)「ブンニ suguita(スギタ) キルモノヂャ」
(ロ) 物事が適当な度合を越える。過度になる。動詞の連用形や形容詞・形容動詞の語幹に付けて用いることも多い。 西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)九「已に衰へ邁(スギ)老い耄(ほ)れ」
源氏物語(1001‐14頃)帚木「ものむつかしげにふとりすぎ」
広辞苑 自動詞 ➊事物・事柄が深いかかわりを持たないうちにいつのまにかある過程をへて去ってしまう。
①ある所を越してさらに先へ行く。よぎる。また、ある距離を越える。越えて行く。
古事記中「 新治 (にいばり)筑波を―・ぎて幾夜か寝つる」。
万葉集20「ほととぎすまづ鳴く朝け如何にせば我が門―・ぎじ語りつぐまで」。
日葡辞書「ミチヲユキスグル」。
「駅を―・ぎる」「その駅を―・ぎた」「四〇キロを―・ぎる」
過ぐ
②基準の時刻をこえる。ある時刻が過去となる。また、ある量の時間が終わる。時が去る。 万葉集15「時も―・ぎ月も経ぬれば」。
徒然草「そしり笑はるるにも恥ぢず、つれなく―・ぎてたしなむ人」。
日葡辞書「スギニシコロ」。
「定刻を―・ぎる」「五時間が―・ぎる」「二〇歳を―・ぎた大人の自覚」
③暮らす。生活する。生計を立てる。 宇治拾遺物語「薪をとりて世を―・ぐるほどに」。
御伽草子、物くさ太郎「(あきない)をして―・ぎよとあればもとで候はずと申す」。
日葡辞書「ミヲスグル、また、イノチヲスグル」
➋物事の盛りの時期を越して終りへ近づいて行く。
①盛りを越して衰える。
万葉集17「ほととぎす夜声なつかし網ささば花は―・ぐとも()れずか鳴かむ」
②終わる。済む。なくなる。消える。滅びる。 万葉集2「我が大君の万代と思ほしめして作らしし香具山の宮万代に―・ぎむと思へや」「春鳥のさまよひぬれば嘆きもいまだ―・ぎぬに思ひもいまだ尽きねば」。
源氏物語夕顔「ただばかりのすさびにても―・ぎぬべき事を」
③死ぬ。 万葉集1「ま草刈る荒野にはあれど黄葉の―・ぎにし君が形見とそ来し」
④花が散る。 「花が―・ぎて葉が出る」
➌物事がある数量・程度の水準をこえる。
①適当な度を越す。
崇神紀「(おおみたから) 死亡 (まかれる)者有りて 且大半矣 (なかばにすぎなむとす)」。
日葡辞書「ブンニスギタキルモノヂャ」。
「わがままが―・ぎる」「言い―・ぎる」「声が大き―・ぎる」
まさるすぐれる 雄略紀「(まめなること) 白日 (てるひ)()え、(またきこころ) 青松 (とこまつ)に―・ぎたり」。
「子に―・ぎたる宝はなし」「彼には―・ぎた女房だ」
③(「…に―・ぎない」の形で)…を越えず、何の価値もないことである。 「一介の社員に―・ぎない」「言い訳に―・ぎない」
大言海 自動詞 (一){越エテ、行ク。通ル。經過 古事記、中(景行) 五十二 「新治、筑波ヲ 須疑 (スギ)テ、幾夜カ寢ツル」
「山ヲすぐ」川ヲすぐ」
(二){前ヲ歷テ、行ク。ヨギル 萬葉集、廿 四十九 「ホトトギス、マヅ鳴ク朝ケ、イカニセバ、我ガ門 須疑 (スギ)ジ、語リ繼グマデ」
伊勢物語、廿三段「喜ビテ待ツニ、度度すぎヌレバ」
名義抄「過、スグ、ヨギル」
「門ヲすぎテ、入ラズ」
(三){移リ行ク。去ル。推移 古今集、一、春、上「梅ガ香ヲ、袖ニ移シテ、止メテバ、春ハすぐトモ、形見ナラマシ」
同、七、賀「徒ラニ、すぐる月日ハ、オモホエデ、花見テ暮ス、春ゾ少ナキ」
萬葉集、廿 四十五 「鶯ノ、聲ハ 須疑 (スギ)ヌト、思ヘドモ、()ミニシ心、ナホ戀ヒニケリ」
(四){死ヌ。ミマカル 敏達紀、十四年八月「何故事 死王 (スギタマヒシキミ)之庭、弗生王之所也」
萬葉集、五 廿五 長歌「道ニ臥シテヤ、命 周疑 (スギ)ナム」
「すぎニシ人」
雄略紀、九年二月「今臣 命過 (ミマカリタル)之際」
(五){程ヲ超ユ。度ニ餘ル。分ヲ越ス。 崇神紀、五年「國內多疾疫、民有死亡者 且大半 (ナカバニスギナムトス)
雄略紀、七年「國家情深、君臣義切、忠踰白日、節(スギタリ)靑松」(冠ハ、勝ノ意)
源、七、紅葉賀 插頭 (カザシ)ノ紅葉、(イタ)ウ散リすぎテ」
「言葉ガすぐ」分量ガすぐ」
(六) (スグ)マサル。超ユ。超絕 「才力、人ニすぐ」力、萬人ニすぐ」
動詞活用表
未然形 すぎ ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 すぎ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 すぐ べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 すぐる も、かも、こと、とき
已然形 すぐれ ども
命令形 すぎよ

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最終更新:2025年02月23日 21:50