ため(為)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 [ 一 ] 助詞「が」「の」の付いた体言、または用言の連体形に接続し、形式名詞として用いることが多い。「に」を伴うこともある。
① 「ため」の上にくる言葉が、下にのべる恩恵、利益を受ける関係にあることを示す。…の利益となるように。また、利益。利得。便益。
仏足石歌(753頃)「御足跡作る 石の響きは 天に到り 地(つち)さへ揺すれ 父母が多米(タメ)に 諸人の多米(タメ)に」
② ( 利益を期待するところから転じて ) 行為などの目的を表わす。めあて。…という目的で。 万葉集(8C後)五・八〇六「龍の馬も今も得てしかあをによし奈良の都に行きて来む丹米(たメ)」
③ 「ため」の上の語が、下の事柄と、かかわりをもつことを示す。…にとっては。…に関しては。 続日本紀‐天平宝字八年(764)一〇月九日・宣命「仮令後に帝と立ちて在る人い、立ちの後に汝 乃多米仁 (いましのタメに)礼無くして従はず、なめく在らむ人をば」
伊勢物語(10C前)八四「世の中にさらぬ別れのなくも哉千世もといのる人の子のため」
④ 「ため」の上の語が、その行為をこちらに及ぼした主体であることを示す。下に受身表現を伴うことが多い。…の行為によって。…によって。 日本書紀(720)神代下(寛文版訓)「此の鳥(きし)下来(とひきた)り天稚彦の為(たメ)に射(い)られ其(そ)の矢(や)に中(あた)りて」
⑤ 「ため」の上の語が、下の事柄の理由や原因になっていることを示す。ゆえわけ。せい。 今昔物語集(1120頃か)二「人に捨られて寒の為に死ぬべかりき」
[ 二 ] 修飾語を受けない用法。
① 利益となること。また、利益になることを言ってやること。忠言。忠告。また、その人を思っているように見せかけて言うこと。おためごかし。
日葡辞書(1603‐04)「コレワ votame(ヲタメ) デ ゴザル」
坐談随筆(1771)「もしこなたの説せらるる所と違ひまして、見て為(タメ)にわるいやら」
② 下心(したごころ)。利己的な目的。→ためにする
③ 数字の「四」をいう、露天商・賭博・盗人仲間の隠語。 〔隠語輯覧(1915)〕
わが新開地(1922)〈村島帰之〉六「先づ商売に必要な一二三から始めるかナ。一ヤリ、二フリ、三カチ、四タメ、五シズカ」
広辞苑 名詞 (助詞「の」「が」或いは用言の連体形につづく)
①利益。利得。幸福。
源氏物語末摘花「かの翁の―までかみしもおぼしやりて奉り給ふ」。
「世の―、人の―に働く」
②(利益を期する意から)目的。 万葉集7「山高み夕日隠りぬ浅茅原後見む―にしめゆはましを」。
万葉集12「時つ風 吹飯 (ふけい)の浜に出で居つつ(あか)ふ命は妹が―こそ」。
「子供の教育の―に貯蓄する」
③その身の上にかかわること。…にとって。 万葉集5「天地は広しといへど()が―は()くやなりぬる」。
平治物語「光頼卿は、信頼の―には、母方の伯父なるうへ、大力の剛の人なれば」。
「―を思う」「自分の―には大切な恩人」
④因果関係を表す。ゆえ。せい。…によって。 今昔物語集25「既に(かたき)の―に討たれにけりと思ひて」。
「事故の―に死んだ」
大言海 名詞 又、
(一)所以 (ユヱ)ワケ
萬葉集、五「龍ノ馬モ、今モ得テシガ、アヲニヨシ、奈良ノ都ニ、行キテ來ム丹米」
拾遺集、十一、戀、一「戀ヒ死ナム、後ハ何セム、生ケル日ノ、ためコソ人ハ、見マク欲シケレ」
(二)タスケタヨリ。利益。 源、六、末摘花 廿七 「彼ノ翁ノためマデ、カミシモ、思シヤリテ、奉リ給フ」
同、二、帚木 廿九 「君達ノ御爲ニハ、ハカバカシク、シタタカナル御後見ハ、何ニカセサセ給ハム」
新永代藏(正德、團水)一「是ホドニ銀親ノためニナル仕カタ、世ニ又ト聞カズ」
(三)其上ニ係ハルコト。 枕草子、四、四十四段「コレハ身ノためニモ、人ノためニモ、サテイミジキ喜ビニハ侍ラズヤ」
「我ガ爲ニハ、父ナリ君ナリ」

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最終更新:2025年02月16日 17:25