つく(着・附・付・就・即(自動詞))

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞 [ 一 ] あるものと他のものとのすきまがなくなる。離れない状態になる。
① 接触する。また、触れそうに近づく。
万葉集(8C後)二〇・四四三九「松が枝のつちに都久(ツク)まで降る雪を見ずてや妹が籠り居るらむ」
更級日記(1059頃)「河上の方より黄なる物流れ来て、物につきてとどまりたるを見れば」
付・着・就・即・憑
② くっついて離れない状態になる。付着する。 万葉集(8C後)二〇・四三八八「旅と云(へ)ど真旅になりぬ家の母(も)が着せし衣に垢都枳(ツキ)にかり」
徒然草(1331頃)二一五「小土器にみその少しつきたるを見出て」
③ 色、よごれ、傷など、何か行なった跡が残る。 万葉集(8C後)七・一三七六「やまとの宇陀の真赤土(まはに)のさ丹着(つか)ばそこもか人の吾を言(こと)なさむ」
源氏物語(1001‐14頃)帚木「かかるきずさへつきぬれば」
④ 連歌や俳諧で、前の句と後の句とがうまく連関する。 連理秘抄(1349)「かくいへばとて、一向につかぬ句をせよとにはあらず」
[ 二 ] ある人、物事などに従う。
① ある人に心を寄せる。その言葉に従う。また、従い学ぶ。
万葉集(8C後)一四・三五一四「高き嶺(ね)に雲の着くのすわれさへに君に都吉(ツキ)なな高嶺と思ひて」
平家物語(13C前)二「西光と云下賤の不当人めが申事につかせ給て」
② あとに続いてゆく。ある人、物のそばに添う。話などを理解してあとに従う。つき添う。 古今和歌集(905‐914)離別・三七五・詞書「つかさをたまはりて、あたらしきめにつきて、年へてすみける人をすてて」
土左日記(935頃)承平五年一月二一日「使はれんとて、つきてくるわらはあり」
③ 対立するものの一方に加わる。味方をする。 平家物語(13C前)九「中にも阿波讚岐(あはさぬき)の在庁ども、平家をそむいて源氏につかんとしけるが」
尋常小学読本(1887)〈文部省〉七「子供の石合戦を見たるに、其一方の人数は、殆ど他の方の二倍なりし故、見る者、皆多き方に就きたり」
④ ある場所に沿う。 万葉集(8C後)九・一六八九「荒磯辺に着(つき)て漕がさね杏人(ももさね)の浜を過ぐれば恋しくありなり」
青年(1910‐11)〈森鴎外〉一「追分から高等学校に附(ツ)いて右に曲がって」
⑤ ある物事に、他の事が付随する。ある事に応じて起こる。 源氏物語(1001‐14頃)若紫「法花三昧行なふ堂の懺法の声、山おろしにつきてきこえくる」
源氏物語(1001‐14頃)蓬生「風につきてさとにほふがなつかしく」
⑥ 物事のどちらか一方に従う。また、はっきりと、ある状態になる。 蜻蛉日記(974頃)上「とにもかくにもつかで、よにふる人ありけり」
徒然草(1331頃)一七四「大につき小を捨つることわり」
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一「官員とも見えず、商人ともつかぬ言語恰好」
⑦ 漢文的表現で、対象がある状態や方向にすすむ。 菅家文草(900頃)一・重陽侍宴、賦景美秋稼「万里如雲稼、重陽就日晴
[ 三 ] ある気持、力、作用などがはたらく。
① ある気持になる。
竹取物語(9C末‐10C初)「深き心も知らで、あた心つきなば」
古今和歌集(905‐914)恋二・五八九「つゆならぬ心を花におきそめて風吹くごとに物おもひぞつく〈紀貫之〉」
② 力、知恵などが加わる。 伊勢物語(10C前)六三「世心つける女、いかで心なさけあらむ男にあひ得てしがなとおもへど」
平家物語(13C前)五「勢のつかぬ先にいそぎ打手をくだすべし」
③ ( 憑 ) 神仏、物のけなどが、のりうつる。とりつく。 万葉集(8C後)二・一〇一「玉葛(たまかづら)実ならぬ樹にはちはやぶる神そ著(つく)とふならぬ樹ごとに」
宇治拾遺物語(1221頃)四「物のけ、物つきにつきていふやう」
④ 病気にかかる。感染する。 大和物語(947‐957頃)一七〇「あさましうかかる病(やまひ)もつくものになむありける」
⑤ 効果などが生じる。 源氏物語(1001‐14頃)柏木「まだ験(げん)つくばかりの行なひにもあらねば」
⑥ 火が燃え始める。また、あかりがともる。 万葉集(8C後)二・一九九「春さり来れば 野ごとに 著(つき)てある火の 風のむた なびかふごとく」
武蔵野(1887)〈山田美妙〉下「見る間に不動明王の前に燈明(あかし)が点(ツ)き」
⑦ 植木やさし木が、地面に根を張る。根づく。 俳諧・鷹筑波(1638)三「ひっちぎり植てもつくや餠つつじ〈利正〉」
⑧ (目、耳、心などに)知覚される。 万葉集(8C後)一・一九「へそかたの林のさきの狭野榛(さのはり)の衣に着くなす目に都久(ツク)わが背」
俳諧・曠野(1689)二「藪深く蝶気のつかぬつばき哉〈卜枝〉」
⑨ 運が向く。 東京の孤独(1959)〈井上友一郎〉台風一過「こんな所で、猿丸さんにお会い出来るなンて、ほんとに、あたくし、ツイてますわ」
[ 四 ] ある定まった状態になる。
① 性質や状態としてそのものにそなわる。
蜻蛉日記(974頃)中「いと葉しげうつきたる枝に」
枕草子(10C終)四九「目はたたざまにつき、眉は額ざまに生ひあがり」
② 名前、値段などが定められる。 「値がつく」
枕草子(10C終)三七「もろこしに、ことごとしき名つきたる鳥の」
東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉六月暦「前者の方が存外面白くて安くつく」
③ 道などが設けられる。 「道がつく」
④ ある状態に落ちつく。ある結果や結論が出ておさまる。 「かたがつく」「想像がつく」
建礼門院右京大夫集(13C前)「大方の身のやうもつく方なきにそへて」
科学者と芸術家(1916)〈寺田寅彦〉「永い間考へて居てどうしても解釈の付かなかった問題が」
⑤ 身や心によく合う。 枕草子(10C終)二七八「あざやかなる衣どもの身にもつかぬを着て」
源氏物語(1001‐14頃)桐壺「いとをかしげにかしづかれたる人とは見ゆれど、心にもつかずおぼえ給て」
[ 五 ] ある地位、場所などに身を置く。
① ( 着 ) 進んで行ってある場所に至る。
万葉集(8C後)一五・三六八八「今日か来む 明日かも来むと 家人は 待ち恋ふらむに 遠の国 いまだも都可(ツカ)ず」
源氏物語(1001‐14頃)須磨「申の時ばかりにかの浦につき給ひぬ」
② ( 即 ) ある地位、特に、帝位にのぼる。 古今和歌集(905‐914)仮名序「東宮をたがひにゆづりて、位につき給はで」
③ ( 着 ) 座をしめる。ある場所にすわる。 落窪物語(10C後)二「供の人々は〈略〉すゑたる所共につきて、くひののしりて座にゐ並みたり」
梵舜本沙石集(1283)八「折節酒宴の座席にて、侍ひ共百人計り座に着たるに」
④ ( 就 ) ある役目や任務を負う。 「任につく」
伊勢物語(10C前)一一四「今はさること似げなく思ひけれど、もとつきにける事なれば、大鷹の鷹飼にてさぶらはせ給ひける」
内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉八「首尾めでたく領事館に入りて、通弁〈略〉の職に就(ツ)きぬ」
[ 六 ] ( 「…につき」「…につきて」「…について」などの形で用いる )
① …に関する。→つき(就)
蜻蛉日記(974頃)上「『むかしすきごとせし人も、いまはおはせずとか』など、人につきてきこえごつを聞くを、ものしうのみおぼゆれば」
尋常小学読本(1887)〈文部省〉七「此虫に就きては、種々の面白き話あり」
② …の理由による。→つき(就)
③ …を単位とする。→つき(就) 「一回について(つき)百円」
他動詞 ① くっつける。付着させる。 源氏物語(1001‐14頃)帚木「おのがじしは、塵もつかじと身をもてなし」
② 添え加える。特に、名を与える。 高野本平家(13C前)一「いかさま是は祇といふ文字を名について、かくはめでたきやらむ」
保元物語(1220頃か)中「法名を義法房とぞつかれける」
③ 相手として持つ。また、自分の身にそなえ持つ。 大鏡(12C前)三「この御ぞうの、頭あらそひにかたきをつき給へば」
徒然草(1331頃)一八八「大なる道をも成じ、能をもつき、学問をもせんと」
広辞苑 自動詞 ➊二つの物が離れない状態になる。
①ぴったり一緒になる。くっつく。
古事記下「たこむらに(あむ)かき―・き」。
万葉集20「旅と()ど真旅になりぬ家の()が着せし衣に垢―・きにかり」。
「よく―・く(のり)
付く・附く・着く・就く・即く

㋐しるしが残る。
源氏物語帚木「かかる疵さへ―・きぬれば」
㋑書き入れられる。記される。 「帳簿に―・いていない」
㋒そまる。 万葉集7「(やまと)の宇陀の 真赤土 (まはに)のさ丹―・かば」
③沿う。 源氏物語末摘花「蔭に―・きて立ち隠れ給へば」。
「塀に―・いて曲がる」
④(目に)とまる。注意をひく。 万葉集1「へそがたの林のさきの 狭野榛 (さのはり)の衣に着くなす眼に―・くわが背」。
「耳に―・く」
➋他のもののあとに従いつづく。
①心を寄せる。従う。味方する。
万葉集14「高き嶺に雲のつくのすわれさへに君に―・きなな高嶺と()ひて」。
伊勢物語「家刀自まめに思はむといふ人に―・きて人の国へいにけり」。
平家物語9「平家にそむいて源氏に―・かんとしけるが」。
日葡辞書「ヒトノテニツク」。
「彼の言葉に―・く」
②あとに続く。随従する。 源氏物語若紫「忍びて引き入りたまふに―・きてすべり入りて」「法花三昧行ふ堂の懺法の声山おろしに―・きて聞えくる」。
「兄に―・いて行く」
③つきそう。かしずく 平家物語10「是も八つより―・き奉て、重景にも劣らず不便にし給ひければ」
④従いまなぶ。 「先生に―・く」
➌あるものが他のところまで及びいたる。
①到着する。届く。
万葉集15「家人は待ち恋ふらむに遠の国未だも―・かず大和をも遠くさかりて」。
土佐日記「 澪標 (みおつくし)のもとよりいでて難波に―・きて河尻に入る」。
「目的地に―・く」「荷物が―・く」
②通じる。 「道が―・く」
➍その身にまつわる。
①その身にそなわる。
源氏物語葵「物になさけおくれてすぐすぐしき所―・き給へるあまりに」。
「身に―・いている物」
②わが物となる。すっかりその物となる。 「くせが―・く」
③ぴったりする。よくあう。 源氏物語桐壺「大殿の君いとをかしげにかしづかれたる人とは見ゆれど心にも―・かず覚え給ひて」
➎感覚や力などが働きだす。
①その気になる。心がきまる。
源氏物語若紫「かの人の御かはりに明暮の慰みにも見ばやと思ふ心深う―・きぬ」。
平家物語2「他人の口よりもれぬさきに、かへり忠して命生かうど思ふ心ぞ―・きにける」。
「決心が―・く」
②カや才能が加わる。 源氏物語帚木「寝覚の語らひにも身の才―・き 朝廷 (おおやけ)に仕うまつるべき道々しき事を教へて」。
「力が―・く」
③(「点く」とも書く)燃え始める。ともる 万葉集2「冬ごもり春さりくれば野ごとに―・きてある火の風の(むた)靡くが如く」。
「火が―・く」「電灯が―・く」
④感染して効果を生じる。 「種痘が―・く」
⑤植えた木や 挿木 (さしき)が根をおろす。 猿蓑「さし木―・きたる月の朧夜」(凡兆)
⑥(「憑く」と書く)のりうつる。 大鏡伊尹「護法―・きたる法師おはします御屛風のつらにひきつけられて」。
日葡辞書「テングガヒトニツク」
⑦(「ついている」の形で)運が向いている。
➏定まる。決まる。
①定められ負う。
平治物語「その頼信を打ち返して信頼と―・き給ふ右衛門督殿は」。
「名が―・く」
②値が定まる。値する。 「値段が―・いていない」「高く―・く」
おさまる。落ちつく。まとまる 「かたが―・く」「話が―・く」
➐ある位置に身をおく。
①帝位にのぼる。即位する。
源氏物語薄雲「御位に―・きおはしまししまで」。
「皇位に―・く」
②その場所に安定する。座をしめる。 源氏物語桐壺「みこたちの御座の末に源氏―・き給へり」。
徒然草「出仕して饗膳などに―・く時も」。
「床に―・く」
③任務を負う。仕事を始める。 「任に―・く」
④こもる。 鳥屋 (とや)に―・く」「(ねぐら)に―・く
➑(他の語に付けて用いる。多くヅクとなる)その様子になる。なりかかる。→づく 平家物語6「入道相国病ひ―・き給ひし日よりして、水をだに喉へ入れたまはず」
➒(「つきて」「ついて」の形で)
㋐関して。
徒然草「古への聖代すべて起請文に―・きて行はるるまつりごとはなきを」。
「一身上の事に―・いて」
㋑…ごとに。 「一人に―・き、一点限り」
➓(助詞の「に」に接続して)…により。…だから。 「定休日に―・き休業します」
大言海 自動詞 (一){(ヒタ)ト相合フ。接合ス。共ニ寄ル。ネバル。クッツク。 古事記、下(雄略) 三十四 「タコムラニ、あむ搔キ都伎」 着・附・付・就・卽
(二){行キ到ル。トドク。及ブ。到着ス。 萬葉集、十五 三十 「ワギモコヲ、行キテハヤ見ム、淡路島、雲居ニ見エヌ、家都久ラシモ」
堀河百首「五月雨ハ、宿ニつく閒ノ、アヤメグサ、軒ノ雫ニ、カレシトゾ思フ」
伊勢物語、廿四段「シリニ立チテ追ヒ行ケド、エ追ヒつかデ」
「都ニ着く」洪水、床ニ着く」
(三){從フ。カシヅク。附屬ス。附隨 服屬 古事記、下(允恭) 廿 「天下人等、皆背輕太子、而(ツク)穴穗御子
安康卽位前紀「群臣不從、悉(ツキヌ) 穴穗皇子」
後撰集、五、秋、上「二人ノ男ニ物イヒケル女ノ、一人ニつきニケレバ」
「身方ニ()く」敵ニ()く」師ニつく」(オヤ)ニつく」勢ニつく」
(四)感ズ。カブル感染 「病菌ガつく」
(五){ ()カカル。ノリウツル。狐憑 萬葉集、二 二十 「玉カヅラ、ミナラヌ木ニハ、チハヤブル、神ゾ着くトフ、ナラヌ木ゴトニ」
宇治拾遺、四、第一條「物ノ()、モノニつきテ云フヤウ」
邪祟 (モノノケ)つく」狐ガつく」
(六)土ト 馴染 (ナジ)ム。 「根ガつく」
(七) (コモ) 「巢ニつく」塒ニつく」
(八)登ル。卽位 大鏡、上、淸和帝「父帝ノ御位ニつかセ給ヘル、五日ト云フ日」
「位ニ卽く」
(九)勤メニ掛ル。(去る、ノ反) 「職ニ就く」業ニ就く」
(十)(アタヒ)ス。(アタ)ル。 「價、百圓ニつく」
(十一)記ス。 「帳面ニつく」
(十二)負ハス。 「馬ニ荷ヲつく」
(十三)添フ。加ハル。 「勢附く」力附く」
(十四)ツタハル。沿フ。 「岸ニつきテ下リ行ク」
(十五)係ル。關ス。 「身上ニつきテ」
(十六)定マル。立ツ。成立ス。 「思案ガつく」處置ガつく」
動詞活用表
未然形 つか ず、ゆ、る、む、じ、す、しむ、まほし
連用形 つき たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 つく べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 つく も、かも、こと、とき
已然形 つけ ども
命令形 つけ

検索用附箋:自動詞四段
検索用附箋:他動詞四段

附箋:他動詞 四段 自動詞

最終更新:2025年03月22日 12:58