つゆ(露(名詞))

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 ① 大気中の水蒸気が冷えた物体に触れて凝結付着した水滴。夜間の放射冷却によって気温が氷点以上、露点以下になったとき生じる。また、雨の後に木草の葉などの上に残っている水滴をいう。《 季語・秋 》 万葉集(8C後)二〇・四三一八「秋の野に都由(ツユ)負へる萩を手折らずてあたら盛りを過ぐしてむとか」
② 「涙」の比喩として用いる。多く①の意味を持たせて用いる。 伊勢物語(10C前)五六「わが袖は草の庵にあらねども暮るればつゆのやどりなりけり」
③ ( 「つゆの」の形で ) はかないもの、わずかなことの比喩に用いる。つゆばかりの。つゆほど。→[ 二 ]。 枕草子(10C終)七五「つゆの癖なき。かたち・心・ありさまにすぐれ、世に経る程、いささかのきずなき」
④ 狩衣、水干などの袖をくくる緒の垂れた端。一般に留め紐や緒の先端の垂れ下った部分をいう。 曾我物語(南北朝頃)六「烏帽子(えぼし)おしなほし、ひたたれのつゆむすびて、かたにかけ」
⑤ 江戸時代の通貨である豆板銀の異称。 俳諧・大坂独吟集(1675)下「月に影あたいはこぎり申まひ ざれ絵をざっと末広の露〈由平〉」
⑥ 祝儀のこと。心付け。ぽち。 咄本・宇喜蔵主古今咄揃(1678)一「遊山遊興には花の露(ツユ)のといふて、前巾着紫ふくさより出て」
⑦ 弓の弦の矢筈(やはず)をかける位置。さぐり。 〔武用弁略(安政再板)(1856)〕
⑧ ⇒つゆ(汁)
副詞 ① 物事の程度がわずかであるさま。ちょっと。わずかに。 枕草子(10C終)三〇六「つゆあしうもせば沈みやせんと思ふを」
② 否定表現を伴って、強い否定の気持を表わす。全く。全然。 枕草子(10C終)七三「いみじくみじかき夜のあけぬるに、つゆ寝ずなりぬ」
[補注]和歌では、形状から玉・涙にたとえられ、消えやすさから無常の象徴ともされた。
広辞苑 名詞 ①空気が冷えて露点以下に逹し、大気中の水蒸気が地物の表面に凝結した水滴。〈[季]秋〉。 万葉集2「―こそば朝に置きて夕には消ゆと言へ」。
「―にぬれる」
②涙にたとえていう語。 伊勢物語「わが袖は草の庵にあらねども暮るれば―の宿りなりけり」
③わずかなこと。 源氏物語帚木「―にても心に違ふ事はなくもがな」。
「―の()
④はかなく消えやすいこと。 「―のいのち」「断頭台の―と消える」
⑤紐などの垂れた先端の称。
㋐水干・ 狩衣 (かりぎぬ)などの袖ぐくりの緒の垂れた端。
(とばり) 几帳 (きちょう)などの 上差 (うわざし)の緒やのれんの()のあまりの両端に垂れた部分。
㋒巻物や掛軸の留め紐の先端。また、そこにつける装飾的な金具。
㋓太刀の 兜金 (かぶとがね)との()から下げる 腕貫 (うでぬき)の緒の先端につける金物。露金物。
㋔茶杓の先端。
豆板銀 (まめいたぎん)のこと。つゆがね。 好色一代男1「前巾着に細かなる―を盗み溜めて」
副詞 (下に打消の語を伴って)少しも。まったく。 今昔物語集1「家貧しくて―供養し奉るべき物なし」。
「そうとは―知らず」「―疑わなかった」
大言海 名詞 前條ノ語ノ(一)ニ同ジキカ、或ハ云フ、(ツブ)()ノ意ニテ、圓クシテ淨キヲ云フト〕
(一){空氣中ノ水蒸氣ノ、濕メリテ(シル)トナレルモノ。多ク、夏秋ノ夜ニ、草木ノ葉ナドニ凝リツキテ珠ヲナス。ソノ凝リツクヲ、むすぶト云ヒ、又、置くト云フ。
倭名抄、一風雪類「露、豆由
」萬葉集、廿 廿五 「秋ノ野ニ、都由オベル萩ヲ、タ折ラズテ、アタラ盛リヲ、スグシテムトカ」
後撰集、十五、雜、一「コト繁シ、暫シハ立テレ、霄ノ閒ニ、置クラン需ハ、出デテ拂ハン」
貫之集「置ク露ヲ、別レシ君ト、思ヒツツ、朝ナ朝ナニ、悲シカリケル」
六帖、一「秋ノ夜ノ、夢路ニ露ゾ、置キケラシ、通フトシツル、袖ヒヂニケリ」
(二){スコシナルコト。イササカナルコト。 竹取物語「つゆモ物ソラニカケラバ、フト射殺シ給ヘ」
「露ノ閒」露バカリ」露程モ」
(三){ハカナク、消エ易キコト。 源、九、葵 三十 「トマル身モ、消エシモ同ジ、つゆノ世ニ、心オクラン、ホドゾハカナキ」
「露ノ命」露ノ身」
(四)狩衣、水干、直垂ナドノ 袖括 (ソデグクリ)ノ端ノ、袖ノ端ニ餘リテ垂ルルモノ。卽チ、袖ノ下、三四寸下グ。略シテ、袖先バカリニモツク。其使用ニハ、此露ヲ結ビテ肩ニカクト。 曾我物語、六、朝比奈行迎虎局事「烏帽子オシ直シ、直垂ノつゆヲ結ビテ肩ニカケ」
相撲大全「古代行事裝束ハ、侍烏帽子ヲ戴キ、素襖ヲ着シ、露ヲ結ビテ襷トシ」
(五)太刀ノ頭ニ下グル、金銀ノオモリノ稱。

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最終更新:2025年04月19日 14:52