ひ(火)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 ① 物が燃えて光と熱を発する状態や現象。
(イ) 物の焼けて赤く熱したもの。また、物が燃える時にあげる炎。火焔。
※古事記(712)中・歌謡「さねさし 相模(さがむ)の小野に 燃ゆる肥(ヒ)の 火中に立ちて 問ひし君はも」
(ロ) おき。炭火。 ※枕(10C終)一「いと寒きに、火などいそぎおこして、炭もてわたるもいとつきづきし。昼になりて〈略〉火桶の火もしろき灰がちになりてわろし」
(ハ) 火事。火災。 ※紫式部日記(1010頃か)寛弘五年一二月三〇日「人の泣きさわぐ音の聞こゆるに、いとゆゆしく、ものおぼえず。ひかと思へど、さにはあらず」
(ニ) 火打ちの火。きりびひきりび ※公事根源(1422頃)六月「卜部氏の人火をうちて宮城の四のすみにて祭事有」
(ホ) 物を煮炊きする火。転じて、食物を炊(かし)ぐこと。 ※洒落本・恵世物語(1782)そのあと「お客がたの火は別にいたします故」
(ヘ) 灸(きゅう)としてすえる艾(もぐさ)の火。 ※浄瑠璃・曾我会稽山(1718)一「身柱(ちりげ)に一炷(ひとヒ)据へふかと威されて」
② (「灯」とも書く) 燃やしてあかりとするもの。ともしびあかしあかり。灯火。 ※万葉(8C後)一五・三六六九「旅にあれど夜は火(ひ)ともし居るわれを闇にや妹が恋ひつつあるらむ」
狼煙(のろし) ※平家(13C前)二「異国の習には、天下に兵事おこる時、所々に火をあげ、太鼓をうて兵をめすはかり事あり。是を烽火と名づけたり」
④ ①のように光り輝くもの。光っていて①と見まちがうようなもの。蛍の火、鬼火などの類。 ※伊勢物語(10C前)三九「この蛍のともす火にや見ゆらむ」
⑤ はげしく起こりたつ感情。おこりたかぶる気持。 ※万葉(8C後)一七・四〇一一「云ふすべの たどきを知らに 心には 火(ひ)さへ燃えつつ 思ひ恋ひ 息衝き余り」
⑥ 月経。経水。月のもの。 ※俳諧・紅梅千句(1655)一〇「火を遠のくる縁付の夜半〈友仙〉 逢事はかさねてといひ他屋に寝て〈貞徳〉」
[補注]上代特殊仮名づかいでは乙類であり、「ひ(日)」は甲類であるから、「日」とは別語と考えられる。
広辞苑 名詞 (古形はホ。「日」とは別語)
①熱と光とを発して燃えているもの。高温で赤熱したもの。
万葉集15「君が行く道のながてを繰り畳ね焼きほろぼさむ天の―もがも」。
「―が燃える」「―に掛ける」
ほのお。火焔。 古事記中「さねさし 相模 (さがむ)の小野に燃ゆる―の 火中 (ほなか)に立ちて問ひし君はも」
おき。炭火。 枕草子1「火桶の―もしろき灰がちになりて」
④火打ちの火。きりび 「―を打つ」
⑤(「燈」「灯」とも書く)ともしび。灯火。 枕草子43「―ちかうとりよせて物語などみるに」
⑥火事。火災。 蜻蛉日記下「夜中ばかりに―の騒ぎするところあり」。
「―を出す」
⑦火のように光るもの。 伊勢物語「この蛍のともす―にや見ゆらん」
⑧おこりたかまる感情のたとえ。 万葉集17「心には―さへ燃えつつ」。
「胸の―」
のろし 「―を立つ」
⑩月経。
大言海 名詞 (一)物ヲ燒ク元トナルモノ。燃エテ赤ク光リテ、極メテ熱シ。 字類抄「火、ヒ」
肥前國風土記「其夜虛空有火、自然熛、稍稍降下就此山
淮南子、天文訓「積陽之熱氣生火」
(二){火打ノ火。燧火 古事記、上 五十七 (キリ)(イデテ)云、是我()(レ ル)火者、於高天原者、云云」
景行紀、四十年十月「則以燧出火之向燒」
論語、陽貨篇「新穀旣升、鑽燧改火、期可已矣」
「火ヲ取ル」火ヲ打ツ」
(三){トモシビ燈火 顯宗卽位前紀「命居竈傍左右 秉燭 (ヒトモサシム)
萬葉集、十五 廿 「旅ニアレド、夜ハ火トモシ、ヲル吾ヲ、暗ニヤ妹ガ、戀ヒツツアルラム」
源、二、、帚木 三十八 「アナクラシトテ、火カカゲナドスベシ」
同、同 三十九 「木丁ヲサウジグチニタテテ、火ハホノグラキニ見給ヘバ」
「火ヲトボス」
(四)スミビ炭火 「火ヲ()クル」
(五)煮ルコト。 「火ノ物斷チ」
(六){火事。火災 榮花物語、廿一、後悔大將「出デサセ給ヒヌルナゴリ、火ヲ打消チタルヤウニ人聲モセヌニ」
方丈記「戌ノ時バカリ、都ノタツミヨリ火出デ來テ、云云、一夜ガ程ニ塵灰トナリニキ」
宇治拾遺、三、第六條「隣ノ家ヨリ火出デ來テ、風オシオホヒテ責メケレバ」
王維詩「春窓曙滅九微火」
「火ノ元」火ノ見」火消」火ノ用心」
(七){怒リ、妬ミ、戀フルナド、情ノ極メテ烈シク發スルモノ。 萬葉集、十七 四十五 長歌「イフスベノ、タドキヲ知ラニ、心ニハ、火サヘ燃エツツ、思ヒ戀ヒ」
「胸ノ火」

検索用附箋:名詞名称

附箋:名称 名詞

最終更新:2024年05月10日 21:25