よ(助詞イ)

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 助詞 〘格助〙 体言または体言に準ずる語を受けて「より」と同様に用いられる上代語。
① 動作・作用の起点を示す。時間的な場合と空間的な場合とがある。
※古事記(712)中・歌謡「狭井河用(ヨ) 雲立ち渡り 畝火山 木の葉さやぎぬ 風吹かむとす」
※万葉(8C後)一九・四一六〇「天地の 遠き始め欲(ヨ) 世の中は 常無きものと 語り継ぎ ながらへ来れ」
② 動作・作用の行なわれる場所・経由地を示す。空間的・抽象的な場合がある。 ※古事記(712)中・歌謡「己が命(を)を 盗み死せむと 後(しり)つ戸用(ヨ) い行き違ひ 前つ戸用(ヨ) い行き違ひ 窺はく 知らにと」
※万葉(8C後)一五・三七八三「旅にして妹に恋ふれば霍公鳥(ほととぎす)わが住む里に此(こ)欲(ヨ)鳴き渡る」
③ 動作の手段を示す。 ※古事記(712)中・歌謡「浅小竹原(あさじのはら) 腰泥(なづ)む 空は行かず 足用(ヨ)行くな」
④ 比較の基準を示す。 ※万葉(8C後)五・八四八「雲に飛ぶ薬はむ用(ヨ)は都見ばいやしき吾(あ)が身また変若(を)ちぬべし」
[補注]用例は「古事記‐歌謡」と「万葉集」に見られるだけである。
広辞苑 助詞 ➊(間投助詞)
①詠嘆の意を表す。
万葉集1「()も―み籠持ち」
②相手に呼びかける意を表す。 万葉集13「 隠口 (こもりく)の長谷小国によばひせす吾がすめろき―奥床に母は寝たり」。
源氏物語若紫「少納言―、直衣きたりつらむはいづら、宮のおはするか」。
浄瑠璃、心中天の網島「勘太郎―お玉―、ばば様おぢ様がおいでぢや」
③相手に念を押し確かめる意を表す。 万葉集4「今しはとゆめ―わが背子わが名告らすな」。
徒然草「四部の弟子は―な、比丘よりは比丘尼は劣り」
➋(終助詞)名詞に付いたり「…てよ」「…のよ」となったりすると女性的な言い方になる。
①自分の判断を示し、相手に同意を求めたり念を押したりする意を表す。
万葉集4「生きてあらば見まくも知らず何しかも死なむ―妹と夢に見えつる」。
源氏物語若紫「たはぶれにてももののはじめにこの御事―」。
源氏物語玉鬘「げに斯かる人のおはしけるを、知り聞えざりける―」。
平家物語3「童は見忘れたれども僧都は何とてか忘るべきなればこれこそそ―と」。
謡曲、隅田川「あれこそ沖の鴎―」。
「行く―」「行ってもいい―」「いい人だ―」「いい人―」「知らなくって―」
②命令・勧誘・願望・禁止など、相手にその実現を強く求める意を表す。 源氏物語帚木「あこは我が子にてをあれ―」。
平家物語9「敵に馬の足をつからかさせ―」。
「来るな―」「来ないで―」「早く行こう―」「これも食べるの―」
③自分自身で確認する意を表す。 源氏物語野分「今参れる様にうちこわつくりて簀子の方にあゆみいで給へれば、されば―、あらはなりつらむ」。
平家物語9「直実は宵より―」。
滑稽本、素人狂言紋切形「ムムさう―、おれにも頼んだつけ」
④相手を非難する意を表す。 「そうか―」「だめじゃないか―」
➌(格助詞)奈良時代のみに用いられた。→より
①動作の起点となる所・時を表す。…から。
古事記中「伊那佐の山の()の間―もい行き守らひ」。
万葉集17「我せこをあが松原―見渡せばあま少女ども玉藻刈る見ゆ」。
万葉集18「つまのみことの衣手の別れし時―ぬばたまの夜床かたさり」
②動作の経由点を表す。…から。…を通って。 万葉集14「児ろが金門―行かくし良しも」
③比較の基準を表す。…より。 万葉集5「雲にとぶ薬食む―は都見ばいやしきわが身またをちぬべし」
④動作の手段・方法を表す。…で。 古事記中「空は行かず足―行くな」。
万葉集14「鈴が音のはゆま(うまや)の堤井の水を賜へな妹がただ手―」
大言海 天爾遠波 (一)よりニ同ジ。ゆ(從)ノ條ヲ見ヨ。 古事記、中(神武) 十三 「狹葦川()、雲起チワタリ、畝傍山、木ノ葉サヤギヌ、風吹カムトス」
萬葉集、十七「我 夫子 (セコ)ヲ、アガ松原()、見渡セバ、海人ヲトメドモ、玉藻刈ル見ユ」
(二)比ベル意。ヨリ 萬葉集、五 十九 「雲ニ飛ブ、藥食ム()ハ、都見バ、イヤシキ吾ガ身、マタ 變若 (ヲチ)ヌベシ」
(三)方角ヲ示スにノ意。 古事記、中(景行) 五十五 「ハシケヤシ、 我家 (ワギヘ) 方用 (カタヨ)、雲居起チ()モ」

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最終更新:2024年05月10日 22:00