あく(明(自動詞イ))

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 自動詞 物事の、ある期間が終わって、次の新しい状態になる。
① 夜が終わって朝になる。明るくなる。→あくる
※書紀(720)継体七年・歌謡「愛(は)しけくも いまだ言はずて 阿開(アケ)にけり 我妹(わぎも)」
※古今(905‐914)春上・四五「暮るとあくと目かれぬものを梅花いつの人まにうつろひぬらん〈紀貫之〉」
明・開・空
② 時が経過して、年月日や季節があらたになる。次の年になる。→あけてあくる ※宇津保(970‐999頃)俊蔭「あくる年の春より」
※源氏(1001‐14頃)乙女「式部卿宮、あけん年ぞ五十になり給ひける」
③ ある一定の拘束を伴う期間が終わりになる。満期になる。 ※平家(13C前)五「親討たれぬれば孝養(けうやう)し、忌(いみ)あけて寄せ」
※雑俳・柳多留‐七二(1820)「誰が年(ねん)明けたと足袋屋聞て見る」
他動詞 ① へだてや、おおいなど、ふさいであるものを除く。閉じてあるものを開く。 ※万葉(8C後)四・五九一「わが思ひを人に知るれや玉匣(たまくしげ)開き阿気(アケ)つと夢にし見ゆる」
※伊勢物語(10C前)二四「この戸あけたまへとたたきけれど」
② そこを占めているものを取り除く。
(イ) ふさいでいるものを除いたり、間を広げたりして空間や時間の間隔をつくる。
「四時間以上あけて服用のこと」
※源氏(1001‐14頃)蜻蛉「心なし、道あけ侍りなんよ」
※宇治拾遺(1221頃)一〇「此櫃を、刀のさきして、みそかにあなをあけて」
(ロ) 中に入っているものや人を外に出す。出してからにする。また、器の中のものを他に移す。 ※日葡辞書(1603‐04)「ウツワモノヲ aquru(アクル)〈訳〉容器をからにする」
※浮世草子・西鶴織留(1694)四「此方の家さへあけてくださるれば」
(ハ) 外出して留守にする。 ※落語・三軒長屋(1894)〈四代目橘家円喬〉「此間からチョイと明けた様だが余り女房のに心配させちゃ不可ねへぜ」
(ニ) 隔てを置く。また、間隔を広げる。 ※秘密(1955)〈安岡章太郎〉「彼女はあらかじめそれを知ってゐるかのやうに、先に距離をあけてしまふのだ」
③ 使わないようにする。
(イ) 仕事をしないでいられる時間をつくる。
※日葡辞書(1603‐04)「ヒマヲ aquru(アクル)」
※蓼喰ふ虫(1928‐29)〈谷崎潤一郎〉七「今日は一日空(ア)けてあるんです」
(ロ) 使わない状態のままにする。 ※坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉七「座敷を明けて置いても無駄だから」
④ 商売、芝居などを始める。公開する。 ※人情本・春色梅美婦禰(1841‐42頃)四「もうお客が来て休む時分だのに、お見世も明(アケ)なひで」
※春泥(1928)〈久保田万太郎〉むほん「春匆々あけるって芝居をそんなことでどうするんだ」
⑤ (心の中が見えるようにひらく意から) 隠さないで話す。うちあける。 ※歌舞伎・傾情吾嬬鑑(1788)序幕「例へ心にどう思うても、明(ア)けて云はぬが廓の花」
⑥ (「らちをあける」の形で) 物事がうまく行く方法などを見つける。 ※日葡辞書(1603‐04)「ラチヲ aquru(アクル)〈訳〉道、方法をあきらかにする、またはひらく」
⑦ 芸妓などが客席から帰る意の花柳界の語。
広辞苑 自動詞 (アカ(明・赤)と同源で、明るくなる意)
①明るくなる。夜が終わって朝になる。
万葉集15「ぬばたまの夜見し君を―・くる朝会はずまにして今そ悔しき」。
「夜の―・ける前に出発する」
明く
②日や年があらたまる。 宇津保物語俊蔭「―・くる午の時ばかりまで」「また、―・くる年もくれぬ」。
「―・けましておめでとうございます」
③期限が満了する。終わる。 平家物語5「親討たれぬれば孝養し、(いみ)―・けて寄せ」。
「年季が―・ける」「 梅雨 (つゆ)が―・ける」
大言海 自動詞 (アカ)ヲ轉ジテ、活用ス((タカ)、日たくる。(フカ)、夜ふくる)〕
過ギ(ヲハ)ル。 ()。立ツ。
萬葉集、十五 三十六 「ヌバタマノ、(ヨル)見シ君ヲ、 安久流 (アクル)(アシタ)、會ハズマニシテ、今ゾ悔シキ」
新古今集、六、冬「年ノあけテ、浮世ノ夢ノ、覺ムベクバ、暮ルトモ今日ハ、(イト)ハザラマシ」
「夜、明く」年季、明く」あくる日」
動詞活用表
未然形 あけ ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 あけ たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 あく べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 あくる も、かも、こと、とき
已然形 あくれ ども
命令形 あけよ

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附箋:下二段 他動詞 自動詞

最終更新:2023年09月26日 19:06