鏡の世界

前編





2007年 9月30日(日曜日)

「あの頃は良かった」
柊かがみは常々そう思っていた。今私がいるこの世界はあまりにも退屈すぎるのだ。
どこに行っても誰も話し相手が居ない。私はどこに行ってもひとりぼっちだ・・・・

かがみ「衣替えってクラスに1人くらいは夏服のまま来たりする奴がいるのよねー」

なんて、ふと独り言を呟いてみる。大学にはもちろん衣替えなんてないし、クラスもない。
かがみは陵桜学園の屋上に居た。周りには誰もいない。そこで軽く昼食を食べていた。

秋風が心地よい・・・

今、この瞬間、柊かがみの事を頭の片隅にでも想ってくれて居る人は果たして1人でも居るのだろうか・・・いや、居て欲しい。
10月1日、つまり明日は大学が始まる日だ。明日からの事を考えると憂鬱になる。
でもそんな事はこの心地よい秋風に比べればどうでもいい事だった。本当に、どうでもいい事だ。。


2話 柊とみさお

2007年 7月20日(金曜日)

???「お~い ひいらぎぃ」

かがみ「え?え~と、誰?」

みさお「酷すぎる!冷たすぎる!」

かがみ「うそだってば!誕生日おめでとぉう!日下部。」

みさお「薄情者めぇ・・私は今日19歳にn・・・ってアレ?覚えててくれたのか?」

かがみ「まあ特にプレゼントとか用意してるってわけでもないけどね。」

みさお「やっぱり薄情者だぁ 柊は でも覚えててくれただけで良しとしてやるよ。
    今日祝ってくれたのはさぁ、今のとこ柊だけだなんだよぅ」

かがみ「あれ?峰岸は・・・」言いかけて、やめた。なんとなく言わない方がいいと思った。

みさお「と、いうわけで私は寂しいんだってヴぁ! 付き合ってよぉ かがみぃ(抱)」

かがみ「うぁ!抱きつくなって気色悪い! わ、私は忙しいのよ!」

みさお「ん?なんか用事あんのか?ちなみにちびっ子なら商店街で見かけたぜぃ」

かがみ「あんたはこの本が見えないのか 勉強よ! べ ん き ょ う !」

みさお「おぉ!頑張るねぃ! うぁ!数学? もう二度とやりたくねぇ」

かがみ「あんたは・・相変わらずね・・」

みさお「ほら私陸上部だったジャン!なんか夏は動いてないと落ち着かなくって 走ってくるかー かがみも一緒に来るか?」

かがみ「はいはい まあ頑張ってねー」

みさお「うぅ!冷たいなぁ・・・まぁなんか手伝える事あったら呼んでくれよ。勉強とか以外でさ じゃね かがみ」

かがみ「うん。それじゃ日下b・・また、明日ね。みさお。」

かがみはみさおを手を振りながら見送る。みさおも手を振り返す。


かがみはこの日、初めてみさおのことを名前で呼んだ。


3話 こなたとかがみ

2007年 7月27日(金曜日)

普通なら、大学生にとって嬉しい嬉しい夏休みの始まりの日である。
だが、かがみにとってはそんな事はどうでもいい事だ。
.・・・本屋に行ったらこなたが居た。外でこなたを見かけるなんて珍しい。

かがみ「あら?こなたじゃない。っておいおい なんだその紙袋は!」

こなた「あれ?かがみこそどうしたの? ラノベでも読みに来たの?」

かがみ「私はラノベとかはとっくに卒業したわよ。私が買いにきたのはコレよ。」

こなた「うぁ こりゃまた難しそうな本だね そんなの読んでて面白いの?」

かがみ「あんたこそ、その大量の漫画本全部読むの?」

こなた「いやーこの暑い中何度も来るのはダルいし、一気に持って帰って読もうかなーっと」

かがみ「へぇ まあそれ全部読み終わるころには涼しくなってるんじゃないの?」

こなた「甘いよかがみん!私はこの程度なら1週間で読みきる自信があるよ!」

かがみ「そりゃあんたみたいにずっと引き篭もってずっと漫画読むんならそれくらいで読みきるのかもね。」

こなた「大体のやりたいギャルゲはもうやり終えちゃってさー あっ、そうだ今さぁ、お勧めの学園物のエロゲが・・」

かがみ「いやいや、聞いてないから。大体そんなの私はやらないしやる時間なんてないし。あんたはもっと有意義に時間を使いなさいよ。」

こなた「私にとっては今漫画を読むことこそが最も有意義な事なんだよ~。
    かがみも今のうちにやりたい事やっとかないと後悔するんじゃないの?」

かがみ「それも一理あるわね。でも希望は捨てちゃいけないと思うの。それよりあんたこんなに買ってお金は足りるの?」

こなた「ん?お金? え? いやぁ?あはははははぁ 一応多めには持ってきたつもりなんだけどさぁ。」

かがみ「あんたまさか・・・はぁ・・足りない分は貸してあげるから、ちゃんと返しなさいよ。
    社会のルールはしっかり守らなきゃ駄目!」

こなた「うぐぅ・・かがみんは律儀だなぁ 分かったよぅ。」

かがみ「ところで、ゆたかちゃんは・・」

こなた「・・んー?ゆーちゃんはねぇ・・家に居る・・かな?」

かがみ「・・そっか・・今からあんたの家に行こうかな。久々に格ゲーでもやろっか?」

こなた「おーいいね!やろうやろう。しかし格ゲーは対戦相手が居ないとホントにつまらないねぇ」

かがみ「よし、行こっ」

こなた「うーかがみコレ重い!片方持ってくれぇ」

かがみ「あんたは買いすぎだ!」


4話 ゲーム

2007年 7月27日(金曜日)

こなたが住む家で

こなた「うぅ~暑いぃ重いぃ」

かがみ「扇風機ぃ~涼しいい゙い゙い゙い゙」

こなた「あはは 私もお゙お゙お゙お゙」

かがみ「で、何のゲームやるの?」

こなた「あっ・・・」

かがみ「ん?」

こなた「今日って27日だよね?」

かがみ「そうだけど・・どうしたの?」

こなた「いやー・・そーいや今日はあのゲームのWindows版の発売日だったけなぁ・・って思ってさぁ」

かがみ「・・ああ!そういやアーケード完全移植のが出るとか言ってたわね。でもあんたPS2の方持ってたじゃない。あれじゃ駄目なの?」

こなた「いや、それはアーケードと違って古い調整のやつなんだよね。僅かな調整の違いが勝敗を分けるのだよ!かがみん!!」

かがみ「ふぅん、でも、どうせ対戦相手なんて居ないんだからどうでもいいんじゃない?無駄なだけだっての。
    とりあえずそのゲームなら私できるし、やろっか」

こなた「・・うん・・・そーだねぇ」

対戦中
こなたは長いほうきを持ったキャラを使っている。私は、魔法使いだ。

こなた「もしかがみが1回でも勝てたらかがみの言うことなーんでも聞いてあげるよ~。」

かがみ「ほぉ たいした自信だなぁ じゃあ20戦やって1回も勝てなかったらこなたの言うことなんでも聞いてあげるわよ。」

こなた「・・まぁ 頑張ってねぇ~」

10戦やったが、1回も勝てなかった。

こなた「かがみはさぁ なんでそんなに頑張るのかなぁ?」

かがみ「うるさいわね!あんたの方が全然強いんだし、勝てないのは当たり前じゃないの!それに、なんかそのキャラ卑怯じゃない?」

こなた「いやいや、そーじゃなくてさ・・その本・・勉強の事とかね。」

かがみ「えぇ? 私は・・・希望を捨てちゃ駄目だと思うから。あんたみたいに、今だけ楽しければいいなんて考え、理解できないわ。」

こなた「・・・とりあえず負ける気は無いからね~ ちょっと練習中のキャラがあってさ。それに換えるね。」


5話 魔法使いかがみ

2007年 7月27日(金曜日)

こなたはビームやミサイルを発射するメカにキャラを換える。私は、魔法使い。

かがみ「ねぇ こなた。もし魔法が使えたらどうする?」

こなた「うーん。格ゲーで魔法使うキャラが居ると卑怯に見えるのはのは私だけかな?」

かがみ「お~い 話聞いてるかー? もしさぁ 時間を戻す魔法なんかが使えちゃったりしたら、こなたならどうする?」

こなた「もちろんあの頃まで時間戻すに決まってるよ。どうせなら欲張ってつかさやみゆきさんと初めて会った頃まで戻しちゃおうかなぁ?」

かがみ「おいおい私はどうした? 私とは関わりたくないってか?」

こなた「そうだなぁ。その頃に戻ってかがみを徹底的にオタクに染め上げるってのもいいかもね。」

かがみ「・・・いやいや、それはないから。 ・・・・・てか、あんたこのキャラ練習中って割には強くない?」

こなた「あっ、あと1回勝てば私の20連勝じゃん。かがみぃ 覚悟はい~い?」

かがみ「・・実はね。私、魔法が使えちゃったりするんだよねー」

プチ・・・

こなた「って、あああああああああああああ」

かがみ「マジックガンナーかがみんの必殺技 プッシュ・リセット」

こなた「うわぁ今のかがみ・・・すんごく痛いよ。」

がかみ「うう、うるさいわね!とにかくこれで賭けはチャラなんだからね!」

こなた「やっぱり最初からそのつもりだったのかー 卑怯者めぇー 仕切りなおしだー 20戦やり直しだー。」

かがみ「えぇっと ごめんつかさが心配するから今日は私、帰るよ。7時までには帰るって約束があるから・・」

こなた「おぉ、うまく逃げたなぁー はぁ~今日は格ゲーが久しぶりにできて楽しかったよ~。またやろうよ~。」

かがみ「うん。また、やろっか。」

.・・
.・・・
.・・・・
もし私が昔に戻ってこなたとオタクとしてやり直せたら・・・今の状況とかまったく違っていたのかな?

かがみ「・・今が楽しければいい・・か」

それでも私は・・

6話 みゆきと勉強

2007年 8月3日(金曜日)

柊かがみは、受験に失敗していた。
希望した大学に入れなかったため、滑り止めで合格した大学に入学し、その時に仮面浪人を決意した。

今日は図書館でみゆきと勉強

かがみ「・・・・・・・」

みゆき「・・・・・・・・・・・・・」

みさお「・・・」

かがみ「・・?・・みゆき・・・ここは?」

みゆき「えぇっと・・ここはですねぇ・・・」

みさお「みゅううぅぅ・・暑いよぉぉ」

かがみ「ほぉ・・なるほど・・ありがとう、みゆき。」

みさお「・・少 し 休 憩 し よ う よ ぅ」

かがみ「ちょっと静かにしなさいよ。ここさぁ、一応・・図書館なんだよ。」

みさお「いーじゃんか、人なんか居ねーんだからさぁ」

冷房が動いていない図書館・・余計に暑く感じられた。

かがみ「ってか、あ ん た は 漫 画 読 ん で る だ け だ ろ !」

みさお「かがみの方が声大きいじゃん。じゃあさ、なんか私に手伝える事とかないのか?」

かがみ「・・・・じゃあ、はいコレ。」

みさお「ん?ノート?私勉強は全然できn・・」

かがみ「これで私とみゆきを扇いでくれる?」

みさお「・・うぅ・・みゆきさぁん かがみってさぁ、冷たいよなぁ」

みゆき「確かにそれはありますね。」

かがみ「ちょ、みゆきまで・・それにみさおは暑がりすぎだって!」

みさお「かがみは心が冷たいから暑くないんじゃないの? ねぇ みゆきさん。」

みゆき「いえ、かがみさんはとても心暖かい方ですよ。
    でもそれを態度に出さないだけなんだと、私は思います。さり気ない気遣いができるやさしい方なんですよ。」

かがみ「うぅー みゆきは分かってるわねぇ じゃあ少し休憩しよっか。」

みゆき「では、私はこの本を棚に戻してきますね。」


7話 みゆきとみさお

2007年 8月3日(金曜日)

みさお「なんかみゆきさんってなんとなく雰囲気があやのに似てるよな」

かがみ「えぇ?そう?かな」

みさお「もし・・私がさぁ・・・・・・・・・」


みゆき「ひゃああ!」ドサドサッ

!?

かがみ「いったいどうしたの?みゆき?」

みゆき「はわわ、お恥ずかしながら、本棚を倒してしまいまして。」

かがみ「みゆきは相変わらずねぇ。手伝うわよ。」

みゆき「どうも、すいません。」

みさお「歩く萌え要素だもんな。」

かがみ「ちょ、おま、今なんて?」

みさお「ちびっ子がさ、巨乳で眼鏡っ娘でドジっ娘のみゆきさん萌え~って、
    だから歩く萌え要素らしいぜぇ」

みさおが小声でみゆきには聞こえないように言った。

かがみ「あー、やっぱりこなた影響ね、いきなり変な事言うもんだから驚いたわよ。」

みゆき「なんの話ですか?」

かがみ「こなたがまた変な事言ってた って話よ。」

みさお「最近わたし時間潰しにちびっ子のとこちょくちょく行ってんだよ。
    ゲームの相手とかしてやったり。」

かがみ「へー初耳ね。ゲームって格ゲー?あんたできるの?」

みさお「そうそう。簡単だから誰にでもできるって言われたからやってみたんだけどさ、
    本当に簡単だった。ちびっ子に何回か勝ったぞ。」

かがみ「はぁ?あんたがこなたに勝てるわけないでしょ。手加減してもらったんじゃないの?」

みさお「いや、わたし本当に強いんだってヴぁ!
     かがみは1回も勝てなかったんだろ?かがみが弱いだけなんじゃねーのか?」

かがみ「そんなに言うなら対戦するか?もし20戦やって1回でも私が負けたら・・」

みさお「電源消すのは禁止だからなー マジックガンナーかがみん。」

かがみ「あ、あれはただの悪ふざけで・・」

みさお「んじゃ、先ちびっ子のとこ行ってっから勉強の方片づいたら、後で来てくれよな。」

みゆき「私もお邪魔して、よろしいでしょうか?」

かがみ「もちろん、いいと思うわよ。」

みゆき「では、勉強はここまででお披楽喜にして、泉さんのところへ向かいませんか?」

みさお「もちろん、いいと思うぜぃ」

かがみ「っておいみさお、勝手に決めるなって。まぁみゆきがそう言うなら私も今からこなたのところに行こうかな。」

みさお「息抜きも必要じゃん?ほら はやく行こうよぅ」

かがみ「はいはい、分かったから。」



8話 ゲーム2

2007年 8月3日(金曜日)

みさおと対戦中

みさお「次、次は本気だから!もう1回!」

かがみ「まだやるの?もう、何回やっても結果は同じだって。」

みさおはナイフを持った眼鏡少年を使う。私は魔法使い・・・

みさお簡単な連続技すらたまにミスるし、動きがまんま初心者、負ける要素など1つも無かった。
    こなたが耳元で「負けてあげたら?」と何度か囁いたが容赦なくフルボッコにしてやった。

みさお「あーもうつまんねー もうかがみはあっちいけー、次みゆきさんやろーぜぃ」

みゆき「私、こういうのは全くやり方が分からないので・・すいません。」

こなた「じゃあこれやってみない?」

こなたがやろうと提案したゲームは落ち物のパズルゲームだった。同じ色を4つ繋げて消していくゲームだ。

かがみ「それならみゆきでも出来るんじゃない?むしろこういうの得意そうね。」

みさお「ほらほら、早くやろーぜ!」

みさおがみゆきとパズルゲームで対戦

.・・
.・・・

こなた「・・みゆきさんこれやるの初めてなの?」

かがみ「凄い、また7連鎖!流石みゆきね!」

みゆき「なんだか、照れてしまいますねぇ」

みさお「私は頭使うのとか苦手なんだってヴぁ!もうやめようよぅ」

かがみ「みゆき、次は私と対戦しない?」

みさお「だいたいお前等、勉強ばっかりで運動は全然駄目な癖に!こんなもんで勝負して不公平だと思わねーのか?
    こんなの不健康だ!外に出ようぜ」

かがみ「はぁ?全く意味分かんないっての、次私の番だから早く代わってよ。
    ちなみに、こなたは運動も出来るしゲームも得意なの。勉強は全然駄目なんだけどね。
     ただの運動バカだ、お前は。」

みさお「・・・みゅううぅぅ・・ 泉さぁん、かがみが私をいじめるんだよぅ~ 慰めちくりぃ」

こなた「私の呼び方、こなたでいいよ~ かがみは狂暴だからねぇ 次は張り手がくるよ~」

みさお「今まで冷たい奴だとは思ってたけど、本性は狂暴な奴だったのか。かがみ狂暴伝説は真実だった!」

こなた「でも優しくすると途端にデレに変わるかがみん萌え。」

みさお「かがみん萌え・・・?なぁこなた、萌えって何だ?って前もこんなこと聞いたよな。」

こなた「うーん・・萌えってのはねぇ・・・」

.・・
.・・・
.・・・・

結局みゆきにはゲームでほとんど負けた。
みさおがいつの間にか私達3人と打ち解けていた。
高校時代、私はこなた達ともみさお達とも付き合いがあったけど・・・
なんでかな・・・
みんな仲良くなるきっかけは、その時にいくらでも作れたはず・・・
私ってやっぱり、人付き合い下手なんだろうな。


9話 姉妹

2007年 8月8日(水曜日)

あれから丁度1ヶ月が経った・・・夢は・・もう見飽きた。
現実は何も変わらない・・・


.・・しかし、たった数十年の間に世の中は便利になったものだ。この時代に生まれていてよかった。
    パックライス、カップ麺、カロリーメイト、缶詰め、サプリメント・・・

かがみ「カップラーメンとか発明した人には感謝しなくっちゃねー」

つかさ「うん。そーだねぇ」

毎日笑顔が絶えなかったつかさは、あの日以来あまり元気が無い。精神的にかなり疲れているんだと思う。

つかさ「もやしがね、臭くってさー」

かがみ「へー」

つかさ「白卵はメレンゲにして冷凍するといいんだよー」

かがみ「そうなんだー」

何気ない姉妹の会話。つかさと話しているとつらい現実を少しは忘れられる。
つかさは私の大切な妹。きっと私たちは何時までも一緒。

つかさ「お姉ちゃん、これスッゴく甘いの。食べてみてー」

かがみ「ありがとう。うわ、甘すぎじゃないのこれ?」

つかさ「もっと甘さ控えめの方がいーい?」

かがみ「そうね。ホントつかさは甘い物が好きねぇ」

料理系の専門学校に通うつかさは、料理やお菓子作りの話しをする時はとても生き生きとしている。
柊つかさ。私の双子の妹。夢は作った料理やお菓子を世界中のみんなに食べてもらうこと。
私はこの子の行く末を、ずっと見守って行きたい・・・
どうかこの子が夢を叶えられますように。


10話 夏

2007年 8月16日(木曜日)

かがみ「ちょっとは涼しくなってきたわね。」

こなた「そうだねー」

夏といえば、蚊に咬まれたり、蝉がやたらとうるさかったり、生ゴミに蝿が集ったりといった季節だったりする。
夏といえば、友達と海に行ったり、浴衣を着て夏祭りに行って、そして花火を見たりといった季節だったりする。

夏もあと半月ほどで終わる。かがみにとって今年の夏と言えば・・何も無かった。
せっかくの夏だし、海にくらいは行っておくべきだろうか?

そういえばお盆休みだ。どうも曜日感覚が狂ってきたように思うが、まあ気にしない。
お盆休みだろうが、そうでなかろうがもう関係ない。どうでもいい事だ。

あっ! お盆といえば・・・

こなた「一番運転が上手いのはみさおだよねー」

みさお「そうだけど?なんだ、どっか行きたいとこでもあんのか?」

かがみ「・・・」

こなた「お台場の方まで乗せてってくんないかな?」

みさお「お台場?全然おっけーだけどなんか用事?」

こなた「毎年そこで人がたくさん集まるイベントやっててねぇ。3日間のイベントなんだけどね。
    その3日だけで何十万人もの人が世界中から集まる大きなイベントなわけよ。、いうわけで頼むよ~」

みさお「何十万・・そんなイベントがあったのか、今まで知らなかったぜぃ!」

かがみ「・・・」

こなた「かがみも来るよねー?」

かがみ「私は、やめとく。2人で行って来なよ。」

こなた「え・・? なんで?」

かがみ「ごめん、みゆきと約束があるから・・」

こなた「ちょ、ちょっと待ってよ!」

かがみ「・・・」

行きたくないわけではなかったが、逃げてきた。
私にはやるべきことがある。急がなくては・・・


11話 勉強

2007年 8月19日(日曜日)


あらためてみゆきの物分りの良さには感心させられる。
どちらかと言えば私は努力家で、みゆきは天才肌だ。
だから彼女は、志望していた偏差値の高い医学部に、現役で合格できた。

みゆき「かがみさん・・?」

ただ、羨ましい・・私とは生まれながらにして違う人なのだ。

みゆき「かがみさん?大丈夫ですか?」

かがみ「え・・?なに・・?ごめん・・」

みゆき「ぼーっとするなんてかがみさんらしくないですねぇ ここの計算、お願いできますか?」

かがみ「ごめん・・ここね。分かったわ。」

不覚にもみゆきにぼーっとしてる、などと言われてしまった。
今やっている「勉強」はすでにかがみが理解できる範囲を超えている。
かがみができる事といえば、みゆきに頼まれた計算を電卓を使い、式に代入し、解を得ることくらいだ。
その程度の事くらいしかできない。

みゆき「かがみさん、小数点の位置が違っていませんか?」

かがみ「え・・・? あっ・・ホントだ。 ごめん・・やり直すわ。」

みゆき「しっかりしてください。少し休みますか?」

かがみ「いや、続けましょう。 気合い入れなきゃね。」

私は役に立ってるんだろうか、必要なんだろうか、もう居ても居なくてもどっちでもいいのでは?
みゆきには本当に感謝しなくてはいけない。みゆきが居なかったら、この「計画」は成り立たなかっただろう。
そして、「勉強」がようやく終わりそうだ。後半はほとんど何の役にも立てなかったが・・

みゆき「かがみさん・・」

かがみ「やっと終わるわね。本当にありが・・」

みゆき「どうやら私、そろそろ時間みたいですね。残念・・ですが・・」

かがみ「え・・・?」

みゆき「大丈夫です。あとはかがみさん1人でやれますよ。」

かがみ「そんな・・待ってよ・・みゆき・・私1人じゃ・・無理・・だって・・」

みゆき「かがみさんのおかげでここまでやることができたんですよ。まず、お礼をしなくてはいけませんね。
    希望捨てず頑張る。かがみさんならきっとできます。ずっと、そうおっしゃってきたじゃないですか。
     計画が上手くいくことを祈ります。せっかくここまでやってきたんです。努力は無駄にはなりませんよ。
      最後のお願いです。私とかがみさんが今までやってきた事を無駄にしないでください。努力を・・無駄にしないでください。
       それでは、さようなら。 かがみさん、お元気で。また、何時か会えるといいですね・・・・・・・・・・・・・・・・・」

かがみ「・・みゆき・・ありがとう」

「ありがとう」・・がかみが伝えたかった最後の、この思いはみゆきに届いただろうか。

私は・・今までのみゆきの努力を・・無駄にはしたくない。


12話 計画

2007年 8月20日(月曜日)

しばらくみゆきが居ない図書館に取り残されていた。 私はどれくらいの時間、ぼーっとしていたのだろう?
外は真っ暗だった。既に12時を過ぎている。帰り道、みさおに会いに行く。表情を見れば分かるが、聞いてみる。

かがみ「何か収穫は、あったの?」

みさお「いや、なかったよ。」

かがみ「そう・・明日の朝、図書館来てくれる? あと今日、みゆきが・・ね・・」

みさお「・・・分かった。」

.・・
.・・・
.・・・・

朝、つかさを連れて図書館に向かう。・・こなたは、やっぱり手伝ってくれる気は無いらしい。

つかさとみさおに「計画」の説明をする。 完成の予定は約1カ月後・・・


今日の作業が終わり、あたりもそろそろ暗くなるから帰ろうか、という頃にみさおが1つの提案をした。

みさお「みんなでドライブ行かないか? 星が綺麗に見えるとこあってさ・・」

かがみ「星ぃ?星なんてもうどこで見ても同じだろうが。」

みさお「こなたも連れてさ。上手く説得すればあいつ手伝ってくれるかもしれねーじゃん?」

みさおの運転する車で、私たち3人と嫌がるこなたを無理やり連れて「星が綺麗に見えるとこ」へ向かう。
ずいぶんと山奥まで来るものだから変な気でも起こしたかと思ったがそんな心配は無かった。

そこで作業を終え、みんなで星を見る。 空一面に広がる星は、私たち4人だけに輝いているように見える。

かがみ「私たちの住む星以外のどっかの星に知能を持った生き物って、絶対に居るよね。」

みさお「宇宙人か、多分居るんじゃねーかなぁ」

つかさ「私も、居ると思う。こなちゃんは?」

こなた「・・・居ないでしょ。」

かがみ「・・・・・
    日本に居る蟻とさ、ブラジルに居る蟻が出会う事ってまず自然界では無いじゃない?世界はこんなに広いんだし、だから・・」

こなた「何が言いたいかは分かるけど。もう何やっても無駄だよ。それに、蟻がどこに居るって?」

みさお「分かった。率直に言うよ。毎日暇なんだろ? ゲームしかしてないんだったら手伝ってくんねーかな?」

こなた「嫌だね。私はもう絶望したんだよ。これからもずっとぐだぐだと無為に生きる事にするよ。私が消えてなくなる、その日まで。」

つかさ「こなちゃん・・」

かがみ「・・いいよ。私が勝手にやるって決めたことだし。もう、帰らない?」

つかさ「お姉ちゃん、見て!流れ星が・・」

それからしばらく、願い事が3つ言えるだけの長い流れ星を待ったがどれも短い物ばかりだった。
もちろん、願いを3つ言えたところで、もうどうにもならない事は分かっていた。

つかさだけが1人願い事を呟いていた。


13話 優しさは・・

2007年 9月5日(水曜日)

「計画」は順調に進んでいる。

かがみ「コレ、運んで。重いから気をつけて」

みさお「おっけー」

予定より少し遅れているが、少しペースを上げれば、なんとかなりそうだ。

ようやく希望がカタチになってきた・・
無駄な事かもしれない。そんなことは分かっている。
でも私は、みゆきとの約束を守らなくてはいけない。

作業を続けてきて思うのだが、みさおの体力にはつくづく脅かされる。
みさおは、疲れないのだろうか?

かがみ「ふぅ ねぇ少し休憩しない?」

みさお「私はまだ全然平気だぜ。私は続けるから、かがみは休んでなよ。」

根気の無いダメな奴だと思っていたが、間違いだった。
みさおがこんなにも頼りになる奴だとは思っていなかった。

かがみ「いや、私もまだ大丈夫みたい。続けるよ。」

体はすでに疲れきっていた。私は、なんて体力がない奴なんだろう。

体が・・・フラつく・・・

ガシャーン・・ガラガラ

かがみ「痛ッ!・・つっ・・」

みさお「おい、どうした?かがみ!」

かがみ「平気、何でもないから!」

不注意で鉄材を倒してしまった。
大怪我には至らないものの、とっさに右手で鉄材を支えたために、かがみは手に深い切り傷を負ってしまった。

みさお「いっぱい血、出てんじゃん!絆創膏と包帯持ってくるから!」

かがみ「平気だって・・うっ・痛・自分で、できるから。」

みさお「少し、滲みるぞ。」

みさおが手際よく傷口を消毒して絆創膏を貼り、包帯を巻いてくれる。

みさお「この傷、結構深いからかがみは休んでな。その怪我じゃ無理だ。傷口が広がるぞ。」

かがみ「大丈夫よ。ペース遅れてるんだし、急がなきゃ・・」

みさお「いいから!休んでろって!私がかがみの分までやるから!」

.・・もう・・限界だった。涙が溢れ出る・・


14話 告白

2007年 9月5日(水曜日)

かがみ「あんたは・・なんで・・そんなに優しいの?」

みさお「え・・?ちょっと、何泣いてんだよ。そりゃあ、さ、アレだよ。私が、か、かがみを愛してるからだよぅ」

かがみ「なに・・バカなこと・・言って・・」

みさお「あはは、それは冗談だけどさ。友達として好きってのはマジだってヴぁ! 高校の時とかいっぱい世話になったしな。恩返しだな。そう恩返し!」

かがみ「あの・・ね・・」

かがみは親友のみさおに全てを話す。この世界の事・・そして、罪の事・・
これを聞いて・・みさおはどう思うだろうか・・

.・・
.・・・
.・・・・

みさお「なんだよぅ そんな事か、もう過ぎた事だしどうでもいいじゃねーか。
    今かがみが私の事を好きで、親友だと思ってくれてんならそれでいいよ。むしろ大満足だってヴぁ!
     気にすんなって!じゃ私は続けるから、かがみは休んでろよ。」

みさおは怒らなかった。 罵倒され、叩かれ、嫌われても不思議ではなかった。
人間誰でも、誤って醜い心や歪んだ気持ちを持ってしまう事はあるはずだ。みさおにはそれが無いのかだろうか?
根っからの良人間なのかもしれない。本当にいい奴だ。何事にもポジティブで見返りを求めない気遣いや思いやりができる。
くだらない勉強だけができる人間なんかよりみさおのような人間の方が比べようのない程に、価値があるだろう。

私はこんないい奴を高校の頃、冷たくあしらってきたんだ・・・
そう思うと手の傷よりも、胸のあたりの方がズキズキと痛んだ。


15話 ゲーム3

2007年 9月22日(土曜日)

今日は良い知らせと悪い知らせの両方を伝えるためにこなたのところへ向かう。
家に入るとやたらパチパチと変な音がする また何か新しいゲームでも始めたんだろうか?

かがみ「久しぶり・・元気にしてた?」

こなた「やあ、かがみ。久しぶりだね。」

かがみ「って、いったいなんなのよ?このでっかいコントローラーは?」

こなた「ああ・・これは・・」

こなたがやっていたゲームは7つのボタンと1つの丸いターンテーブルを回して遊ぶ、リズムゲームだった。
.・・・DJシュミレーションゲームらしいが、プレイしている姿は全くDJには見えない。

こなた「昔、ゲーセンでちょっとやった事があってね。懐かしくなって、ちょっとやろうかなって思って・・
    単純なんだけど結構ハマるよコレ。かがみもやる?」

かがみ「いや、私はいい・・今日ここに来たのは・・」

パチッ

こなたが選曲してゲームを開始する。 言うタイミングを失ってしまった・・
しかし、こなたってゲームなら何でも出来るんだな・・無数に落ちてくる赤白青のオブジェクトを綺麗に叩ききる。

かがみ「これ・・全部覚えてんの? すごいな・・」

こなた「いや、覚えてるわけじゃないよ。見てから叩いてる。コレ、ランダムかかってるし。」

かがみ「ランダム?なにそれ?」

こなた「7つ落ちてくるのあるじゃん?それが毎回ランダムにバラバラに落ちてくるの。」

かがみ「へぇー でもなんでランダムになんかするの?」

こなた「毎回同じパターンじゃ飽きるでしょ。それにいろんなパターンが練習出来るから早く上達するんだよ。」

かがみ「なる程。いろんなパターンを何回も繰り返してやる事で経験値を上げていく って事ね。RPG風にいうと。」

こなた「そういや、なんかそんなアニメがあったね。何回も同じ世界を繰り返しループするアニメ。2期、見たかったなぁ」

かがみ「そんな事より、今日は話したい事があって・・」


16話 空想と現実

2007年 9月22日(土曜日)

こなた「ねぇ、前にお勧めした学園物のギャルゲあるじゃん?それやらない?」

また、こなたは私の話を折る。多分、分かっててわざとやってるんだろう。
とりあえず半ば強制的にそのゲームをやらされる事になる。時間はあるんだし、こなたの機嫌を損ねないようにしないと。

退屈で平和な毎日をイケメン主人公が可愛い女の子と親友に囲まれながら過ごす。というこの手のゲームではよくある話だ。
とても退屈な毎日のようだ。読み飛ばす。だが、幸せな毎日のようだ。また読み飛ばす。そろそろ飽きてきた・・

開始して2時間ほど、物語は起承転結の承から転へ移る場面。その物語の核心へ入る。

かがみ「・・・」

絶句した・・ 何の言葉も出ない。
こなたは嫌がらせでこのゲームを私に勧めたんじゃないか・・とさえ思った。

.・・
.・・・
.・・・・

そのゲームのおかげでこなたと喧嘩にはなったが、ようやく話を切り出せた。

まず悪い知らせから伝える。

こなた「・・・」

そんな事はもう、分かってたよ。 とでも言いたげな沈黙だった。

次に良い知らせを伝える。

こなた「・・・」

そんな事はもう、期待してないよ。とでも言いたげな目で弱々しく睨まれた。


17話 放送

2007年 9月23日(日曜日)

ついに、完成した。 私の、希望の塔・・ あとは電源のテストだけだ。一面の青い空。いい天気だ・・
つかさにこなたを呼んで来るように頼む。
.・・こなたは来てくれるかな?

陵桜学園の屋上に、みゆきの知恵を借り、みさおとつかさの力を借りて、造り上げた私達の放送局。
こなたは結局、手伝いには来なかった・・ でもそれが正しかったのかもしれない。
何が正しいのか、正しくないかなんて、もう分からない。私はただ、自分がやりたかったことをやっただけ。

電圧をチェックする。大丈夫 きっと上手くいく。 そう自分に言い聞かせる。

それにしてもつかさが遅い。 もう1度電圧をチェックするか・・・

.・・
.・・・

つかさが来た。 こなたは・・・居ない。 やっぱりあいつ来なかったか・・

私に会った途端つかさは泣き始める。

つかさ「こなちゃんね・・こなちゃん・・ね・・うぅ・・」

私は、悟った。そっか、こなたも 「消えちゃった」 のか・・

つかさと2人っきりになってしまった。
私たち姉妹は抱き合い、気がすむまで泣いた。

.・・
.・・・
.・・・・

散々泣いて、だいぶ心も落ち着いた。
「放送」を開始しなくては。
ゴクッと生唾を飲み込む。とても緊張していた・・

電源を入れてマイクを握る。
この2ヶ月半、ずっと世界に伝えたかった事。。

私は・・「此処」に居る・・

マイクを強く握りしめて、大きく・・息を吸う。

そして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・......................






かがみ「  生  き  て  い  る  人  は、



                      い  ま  す  か  ?  」







.

18話 魔法

2007年 9月23日(日曜日)

「この放送は埼玉県、糟日部市、陵桜学園高等部の屋上から行っています。陵は「みささぎ」桜は「さくら」と書いて、りょうおうです。
  私の名前は、柊かがみ。19歳です。双子の妹の柊つかさと共に、陵桜学園高等部の屋上に居ます。
   生きている人が居るなら、陵桜学園まで、来てください。 場所が分からない人は大宮駅、又は新宿駅の改札で待機していてください。迎えに行きます。」

.・・言えた。あとはこの放送を聞いて此処に人が来てくれる事を祈るだけ・・
私は魔法使いだ。私の声は、どこまでも届く。
次はつかさの番だ。つかさの声も世界に届けよう。あの子はちゃんと放送する言葉を考えてきたのかな?

放送を終えて、後ろを振り向きつかさに声をかける。

かがみ「つか・・さ・・・・・」

そこに柊つかさの姿は、なかった。

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最終更新:2024年04月13日 17:19
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