既に空は明るみを増し、朝の光が降り注いでいた。
窓から差し込むその光に目を細めながら、邪神は先程聞こえた「声」を思い返す。
――死ぬな、殺すな、諦めるな!
一人の男の決死の叫びは、彼女達の心にも届けられた。
この声がどこから放たれ、如何なる手段を用いて届けられたかは、彼女達には知る由もない。
ただ、この声を聞いて確実にわかったことはあった。
次の世界へ飛ぶための旅の扉が、埼玉県に存在すること。
そしてそれを求めて、多くの参加者達が埼玉に集まるであろうことだ。
(これだけの魂の叫び……まさか、聞こえたのがあたし達だけってことはないだろうしね)
邪神はこの声を、拡声器のそれと同質のものだと受け取った。
その使用は死亡フラグに直結する。恐らく、この声の主は遅かれ早かれ、何らかの窮地に陥るだろう。
だが同時に、そのリスクに見合うだけの効力があるのも事実だ。
これは、狼煙だ。
かつてイングラム・プリスケンが撃ち放った、反撃の狼煙。
それと同じ匂いを、この声から感じ取った。
ならば……他の不特定多数の参加者にも、この声は少なからず聞こえている。
この地域一帯か、あるいはもっと広範囲か――日本中に届いている可能性すら否定できない。
そして、その参加者達に何らかの影響を与えるだろう。
パロロワの書き手ならば、多くがそう仕向けるはずだ――
「なんだか、リアルにロワやってるって感じでやんすね!盛り上がってきたでやんす!」
まるでシリアスの欠片も感じさせず、エースの人は一人wktkを募らせていた。
それを見る少女の目は、どこか冷え切っていた。
(これはマジなバトル・ロワイアルなのよ。そして、あんたも巻き込まれてんの。
……これから、嫌でも思い知ることになると思うけどね)
仮面ライダー零の叫びを聞いてなお、邪神の心が変わることはなかった。
熱い展開だ。しかしそれこそが彼女にとって、最高の欝の引き立てとなるのだから。
「エースさん、準備できたの?」
「ああ、いつでも出発できるでやんすが……
どうするでやんすか?あっしらも埼玉に向かいやす?」
「うーん、それは考え直したほうがいいかもね」
これから埼玉には日本各地から参加者が押し寄せてくるのだ。
人が集まれば、その分多くの混乱が生じる。そしてパロロワである以上、必ず血が流れる。
自分以外にも、煽動を目的とする参加者はいるだろう。自分が殺戮を煽りにいく必要などない。
ならば、わざわざ混乱の真っ只中に身を投じることもない、と判断した。
「え?でも、旅の扉は埼玉にあるんでやんしょ?行かないことにはあっしらも……」
エースの人の疑問はもっともだった。次の世界への切符は旅の扉にしかない。
旅の扉を探し使用しなければ、生き延びることは不可能なのだ。
「慌てない慌てない。旅の扉は一つじゃないはずよ。
多分、埼玉以外にも……西日本にももう一つくらいはあると思うわ。
でなきゃ、西日本スタートの人がハンデありすぎるじゃない」
「確かに、ここから埼玉までは結構遠いでやんすからねぇ」
「無事に辿り着けるという保証もないし……そもそも、時間までに間に合うかどうか。
それくらいなら、いっそもっと近い、他の旅の扉を探したほうがいいかもよ」
もっとも、邪神に支給されている、ギャバンの戦闘母艦である超次元高速機ドルギランや、
そこに搭載された超次元マシン・サイバリアンを使えば、移動は容易ではある。
その辺の余裕があるが故の提案でもあるのだが……
何より彼女としては、それらの力は切り札として極力温存したかった。
「じゃ、あっしもその案に乗るでやんす。となると、何か足となる物が必要でやんすね……」
「え?エースさん、乗り物とか支給されてるわけじゃないでしょ?」
「いや、今のあっしはウル忍のエースでやんすよ!ならば、アレが使えるはずでやんす!」
「アレ?」
「そう、幸いこの部屋は畳張り!そしてやかんにちゃぶ台、タクワンに梅干しと、
必要なものは全て揃ってるでやんす!
さあ、とりあえず部屋の畳を一枚外すのを手伝っておくんなせぇ!」
「……畳?なんで?」
エースの意図を理解できず、言われるがままに部屋の一枚の畳を取り外す。
その畳の上にお湯の沸いたやかんと、タクワン&梅干しを乗せたちゃぶ台を置いて。
「さあ!タタミカー発進でやんすよ!!」
「いや……何言ってんの、あんた……って、うわ!?」
突然畳が浮かび上がり、動き始める。
浮かび上がった畳は、まるで魔法の絨毯かドラえもんのタイムマシンかのように、
エースの指示のままに動き出した。
「嘘ぉ!?何この畳!?つーか何この展開!?」
「フフフ、ウル忍のエース名物といえば、このタタミカーでやんすよ!
これで高速で、楽々移動できるでやんす!」
「どういう名物!?ていうか原理どーなってんの!?」
「ギャグ漫画だからでやんす!」
「なるほど」
納得する邪神。ここは書き手ロワである、この程度の展開など日常茶飯事と、あっさり受け入れた。
「それじゃ、出発するでやんすよ!」
「オッケー……って、ちょっと待って!」
いざ出発、という時に……邪神は「それ」に気付いた。
外れた畳の、床下に。
「それ」は、存在していた。
「……え?」
二人は、とんでもないものを見つけてしまった。
それは今の今まで話題に出ていた、彼女達が探そうとしていたモノ。
…… 旅 の 扉 。
「「 え え え え え え え え え え え え え え え え え え え え !? 」」
唐突な発見に、二人の驚愕の声がハモる。
今の今までエースが寝ていた場所の真下に、旅の扉の一つが設置されていたのである。
「……その発想はなかったわ」
「じゃ、これに飛び込めば次の世界に飛べるんでやんすね!よーし……」
「ちょ、ちょっと待ったエースさん!!まだ早いってば!」
早速飛び込もうとするエースを、慌てて引き止める邪神。
「へ?どういう意味でやんすか?」
「だ、だから……ほら、仲間になりそうな人が他にいるかもしれないじゃない!
その人達をほったらかして行っちゃまずくない?」
「うーん……確かに、そうかもしれないでやんすね……
集められる仲間は、早いうちに集めたほうがよさそうでやんす」
それっぽい理由をつけてエースを納得させ、邪神は胸を撫で下ろす。
ロワはまだまだ序盤である。他の参加者達は、このミニチュア日本の中で戦っているはず。
そんな中で自分達だけさっさと次の世界に行っちゃ、いろいろまずいだろう。
邪神としても、この序盤のうちに可能な限り火種を撒いておきたかった。
「じゃ、決まりね……あたし達はもうしばらく残って、仲間を集める!それでいいわね」
「構わないでやんすよ。それじゃ、どこを探すでやんすか?」
「そうね……さっきの声が聞こえてたら、みんな埼玉……東を目指すだろうし。
だったら、ここから西……九州を探してみたら、見つかりやすいんじゃないかな」
「よし、それじゃタタミカーを出発させるでやんす!」
空飛ぶ畳に乗って、二人は九州に向けて飛び立った。
エースはゲームを共にする仲間を求めて。
そして邪神は――発見した旅の扉に、可能な限り多くの参加者を集めるために。
人が集まれば、その分混乱や殺戮が起きる可能性は高くなるのだから。
【1日目・早朝~朝/愛媛県(タタミカーで西方面へと移動中)】
【
エースの一日の人◆Y5spzXL3vI@ボンボンロワ】
【状態】正常
【装備】ゼットセイバー@
ロボロワ
【道具】支給品一式(ちなみに支給されてる食料は全てタクワンと梅干し)、タタミカー@ウルトラ忍法帖
【思考】基本:この世界から脱出するべく、仲間を集めゲームに乗る(ロワの趣旨を把握してません)
1:
『邪神』を守り、共に行動する
2:仲間を集め、共に愛媛の旅の扉で次の世界へ
※外見はウルトラ忍法帖のエースの姿です。
※タタミカーを使用できるのは基本的にエースのみです。
【『邪神』@
スパロワ】
【状態】健康
【装備】なし
【持物】基本支給品、宇宙刑事ギャバンの装備一式@特撮ロワ、不明支給品(
『冥王』分)
【思考】
基本:熱血対主催を装い、殺し合いを徹底的に煽る。
1:エースをロワに積極的に参加させる
2:愛媛の旅の扉に参加者を集める
2:スパロワの書き手は警戒。
※コンバットスーツ蒸着可能。ドルギランと、そこに搭載された兵器各種召喚可能。
※外見はスパロボのミオ・サスガ
※愛媛県、エースの人がいた民家の畳の下に旅の扉が発見されました
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最終更新:2009年06月13日 13:59