きよひめのなく頃に~櫃塗し編~

詩を諳んじ終えた真紅の悪魔は、丁度寒気に身を凍えさせていた。
自分の身の内と、そして外よりの寒気に。
「今、なにかが発動しかけた……? ううん、それより今の砲撃は、なに!?」
ついさっきまで戦っていた痛ロボの姿は見えない。
最後に訪れた強烈な破壊の余波に巻き込まれ、互いに吹き飛ばされてしまったのだ。
捜そうという気は、無かった。
だって割と手ごわかったっていうかやっぱりロボ相手に戦うって洒落になんないしきついしこわいし。
切り上げられるなら切り上げようと思っていたところだから、戦闘中断はありがたい。
問題は詩を終える時に感じた、内側から込み上げて来る何かだ。
「とにかくあのタイトルは、やっぱり必殺技になってるのね! 流石はわたしだわ!」

     Humpty Dumpty sat on a wall
     Humpty Dumpty had a great fall.
     All the king's horses,
     And all the king's men,
     Couldn't put Humpty together again.

マザーグースから引用されたこの詩はただの詩ではない。
真紅の悪魔が書いた五部作のタイトルなのである。
五部作に渡る作中で無数の登場人物がただ鬱々と死んでいった、無情死の窮みとも言うべき一話。
その長さ、その重み。自作のタイトルを能力として発動させている真紅の悪魔にとって、
恐らく最大の必殺技となるであろう一作である。

ただしこのタイトル、真紅の悪魔自身もその効果をよく判っていなかった。

他の技は使い道くらい何となく判るのだが、この話だけはどういう効果が出るのかも判らない。
もしかすると世界の上の人とかなんか偉い人が扱いに困るからこれだけ技として固めて無いのかなーとか
ちょっぴりメタっぽい事も考えたのだが、詠い終えかけた時の感覚からすると間違いだ。
何だかよく判らないが、魔力とかそーいう力を篭めて詠唱を終えれば、何かが起きる。
真紅の悪魔はなんとなーくそれを認識した。
今さっきは吹き飛ばされて最後の『together again.』を詠唱できなかったけれど、
その一小節の詠唱を終えていればきっと何かが起きていたのだろう。

「これはイケルわ! この話だったらきっと何だかものすごい事が起きるに決まってるもの!」

みるみる自信が湧いてくる。
が、しかし。

「……でもやっぱり、こーいう超火力は反則だとおもうわ。もっとコーヘイにすべきよ」
振り返る視界に映るのは真西から走ってきて東京の南端辺りを消し飛ばして東の海へ消える断崖絶壁。
湧いてきた自信がみるみる萎んだ。
何が起きるかはわからないが、これに匹敵するような事など起きるのだろうか?
正直、逃げたい。とっとと。
「そういえば埼玉に旅の扉が有るんだったかしら。流石はわたしね、すぐ近くよ!」
ふと思い出し、真紅の悪魔は上空に舞い上がる。
風を切って空へ、上空へ、全て見渡せる場所へ。
そしてまた、自信がちょっぴり湧いてきた。

見下ろす限り東京から埼玉に掛けての高層建築物が悉く破壊されていたのだ。

「や、やっぱりわたしって強いじゃない!」
戦う前はこんなになってなかったと思うから、自分とロボの戦いによって壊れたに違いない。
気づかなかったが、これほど大規模な破壊をもたらせるなんて結構な実力かもしれない。
流石に県自体を吹き飛ばすよーなのにはお近づきなりたくないが、参加者中でも強い方だろう。
後はさっさと次フィールドに向かってしまえばそれで良い。
旅の扉が有るという埼玉にある教会は、概ね見当がついていた。
埼玉から戦いながら東京へと移動する際、埼玉の方で大きな教会が見えたのだ。
「教会は確かあの辺りに有って……」
教会の有る方向をじーっと見て。

丁度その辺が、瓦礫の山と化している事に気づいた。

ショックで墜落した。
マジ涙目になっていた。

「ううっ、どうしよう。今から旅の扉をさがして間に合うのかしら。
 旅の扉ってたくさん有るわよね? 全国で2~3個だったりしないわよね?」
答えが有るわけは無い。

「ちょっと増えたり減ったりしたけどまだ五個以上ある筈だよ。はい、これもそう」
あれ、有った。

「あ、ありがとう。んぐ、んぐ…………あ、美味しい。もう一杯!」
「いや、もう一杯飲んでも意味無いよ」
「あれ、そうなんだ。……って、え、あなた誰?」
呆れたような声に、真紅の悪魔はようやく誰かが現れた事に気がついた。
振り返るとそこに居たのは東方キャラの伊吹萃香の姿をした少女だっ。
いや、姿をしたというのは正確ではない。
「私は萃香だよ。ニコニコ出身の、あんたらの言う本物って事になるのかな?
 こうやって旅の扉の効果が有る酒を注いで回るのが今のお仕事さ」
「え……ほ、本物ー!? 待って、おねがい、サインちょうだ──」
「それじゃあ、次フィールドにいってらっしゃーい」

真紅の悪魔はぱひゅんと消えた。

なんだかんだで彼女は割と運が良い。

【一日目・早朝】
【現在位置・新フィールドへ】
真紅の悪魔(カーディナル・デビル)@LSロワ】
【状態】多少の打撲、疲労(中)
【装備】刀銀十字路(楼観剣@LSロワ)
【道具】支給品一式、必須アモト酸@ニコβ、不明支給品0~2
【思考】サ、サイン……
基本:これでもマーダー路線です。
1:なんだかんだいって、ラッキー?
2:それはそうと毒★殺にも浪漫があるよね。
※:『Humpty Dumpty sat on a wall. Humpty Dumpty had a great fall.
  All the king's horses, And all the king's men, Couldn't put Humpty together again.』
  のタイトルも必殺技になっているようですが、何が起きるのか当人も判っていません。

「やらない夫……やらない夫お…………」
白い人間は、打ちひしがれていた。
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りしますこと、やる夫。
アルテマウェポンにやらない夫とあだなを付け、行動を共にしていた青年。
ついさっき。
彼を守って、アルテマウェポンことやらない夫は死んだ。
短い仲だった。
パートにしてそれこそ十数k…………数時間の仲間だった。
だけど、結構気の合う奴だとは思っていた。
そんな仲間はあっさりと、一瞬の理不尽な破壊の奔流に呑まれて。

────がんばれよ。

やる夫にたった一言だけの激励を残して。

やる夫を守り抜いて、死んだ。

「やる夫のせいだお。やる夫があいつらに説教してやるだなんて言い出さなかったら……」
「その末にか。無意味な死だな」
「……え?」

見上げるとそこには、ハカイダーが居た。
その足が、やる夫を蹴り飛ばした。

「ぎゃあっ!? な、何をするお!」
「貴様が知る必要は無い」

その声に滲むのはやり場の無い、怒り。
そう、やる夫が知るはずも無い。
やる夫を必死で守ったアルテマウェポンの功績の余波により、
間に合わずとも彼らを救おうと走った正義の味方が消し飛んだ事など。
それを見たマスクドハカイダーが。
それほどまでして救われたのが、こんな小僧である事に怒りを感じている事など。

全てはやる夫が知る由も無い事だ。

「俺の名はマスクドハカイダー」

マスクドハカイダーは両手の銃をやる夫に向ける。
失意の底にあるやる夫には抵抗の余地すら無い、圧倒的な殺意の権化を。
彼は、告げた。

「貴様を破壊する」

銃声は爆音に等しかった。

アスファルトが砕け散り、粉塵が舞い上がる。
当たれば人間など木っ端微塵になる致命的な破壊の銃撃。

猛烈な銃弾の連射が地を抉り、粉砕と破裂で全てを覆い隠した。

やる夫は鋼鉄の巨大な手の中に包まれている自分を認識した。
揺れる。全てが揺れる。
肉体も心も揉みくちゃに。
薄暗い。
何も理解できない。
「てめぇ、随分と危ないところだったぜ」
そんな中で、誰かの声がした。
まるでマイクとスピーカーを通したような、男の声が。
やる夫は聞き返した。
「おまえ、誰だお……?」
男の声が、答えた。

「レオーネ・アバッキオ。ジョジョロワ2ndの書き手だ」

敵対していた真紅の悪魔は仕留めきれなかった。
共に戦った知的変態ヘアニストは爆発の中ではぐれた。
つまりは……死んだ。

「クソッタレ。クソッタレだ畜生。
 俺はおまえが何者なのかも知らねえ。
 おまえが良い奴なのかどうかもだ。
 だがおまえは誰かの為に泣いていたようだった。
 良いか、俺がおまえを助けたのはただそれだけの事でしかない。
 覚えておけ。それから名前を教えろ」

「以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします……やる夫、だお」

Zy-98シャドウはひた走る。
北上する。
東京から抜け、埼玉を経て……。

「待って、そこのロボット!」

制止の言葉が掛かった。
振り向けばそこに居たのは、二人の少女達。
イエローとスバルの姿をした少女。
その一人が叫ぶ。

「旅の扉の場所を知っていますか!?」

その言葉にアバッキオは頷き、答えた。

「掴まれ! おまえ達も連れて行ってやる! 旅の扉を作ると言った奴の許に!」

【一日目・早朝/栃木県】
【レオーネ・アバッキオ@JOJOロワ2nd】
【状態】健康、痛シャドウを運転中
【装備】防弾チョッキ@原作、痛Zy-98シャドウ(ザイード)@フルメタル・パニック!
    竜殺し@アニロワ、犯人追跡眼鏡の発信機@漫画ロワ
【道具】支給品一式
【思考】間に合いやがれーーーーっ
基本:なるべく犠牲を出さず主催者を打倒する
1:カスガの元に戻り、カスガの作った旅の扉をくぐりぬける
※外見はレオーネ・アバッキオです
※『歪んだ愛の物語』~『「普通の対主催にしか興味ありません!」←お前が言うな』での喪失の物語の所業を知りました。

【以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします @やる夫がバトル・ロワイヤルに参加しているようです】
【状態】健康、ショック
【装備】無し
【持物】支給品一式、不明支給品0~3
【思考】
1、やらない夫(アルテマウェポン)が死んで失意のどん底だお……
【備考】
※外見はやる夫です。ザイードの手に掴まれています。

うっかりゲリラ突撃犯@kskロワ】
【状態】全身に打身、呪印
【装備】ケリュケイオン@kskロワ
【持ち物】工具一式、首輪(うっかりゲリラ)、基本支給品、キョンのワルサー@やる夫ロワ、ゾーリンの大鎌@HELLSING 、影の唇蝶戦人の基本支給品及び不明支給品0~4
【思考】
1.次フィールドに向かう。
2.次フィールドで破天荒王子をはじめとしたロリィタの仲間を捜す。
3.解呪の情報を集め、脱出フラグになりえるものをケリュケイオンに教える
4.ケモノ達に会いたいなぁ…
5.出来れば、ロリィタになにがあったのか聞きたい

【備考】
※首輪に爆発物は入っていないようです
※首輪を解除した時に呪印が付けられました。これが爆弾の変わりだと思ってます。
※首輪を解析しました。少なくとも盗聴器が入っていることを確認しました。

静かなる輝星(サイレント・スター)@LSロワ】
【状態】全身に打身
【装備】無し、全裸
【道具】無し
【思考】
1、次のフィールドに向かう。
2、うっかリリカルロリィタ他、生き残りを探す。
【備考】
※外見はイエローです。
※「人間以外の存在を癒す程度の力」をもっています。どんな能力なのかは不明。



マスクドハカイダーは瓦礫の中から身を起こした。
その体に大した傷は無い。
Zy-98シャドウのガトリングキャノンは寸でのところで回避していた。
その体に大した傷は無い。
泰鬼との戦いも、傷を受け決着する寸前で終わってしまった。
その心にはただ、怒りが有る。

(あれがあの男の末路か!?)

マスクドハカイダーは正義を破壊する者だ。
正義の敵たる存在だ。
だからこそ、思う。
正義たる存在があんなにも愚かしく無意味な終わりを迎えて良いのか、と。

「お兄さん、苛立ってるみたいだね」

声の方を振り向いてみればそこに居たのは一匹の娘。
博麗神社と共に伊吹萃香が現れていた。

「……貴様は何者だ?」
「旅の扉だよ。それが今の私の役目。
 何が有ったのかは知らないけど、一杯いっておく?
 これを呑めば、次のフィールドに飛べるよ」

その言葉と共に伊吹萃香が差し出された杯を受け取り、
マスクドハカイダーはしばらく沈黙し。
やがて、浴びるように飲み干した。

「得体の知れん助力を受けるのは気に食わんが、良いだろう。
 俺は次のフィールドに向かう。
 正義を名乗る者達がどう破壊されるべきか。
 それを破壊する者がどう破壊されるべきかを知りたくなった」
「物騒な目的だね。それに、なんだか……」
「勝手に言え。好きに見て思えば良い。
 誰にどう見られるかなど俺には関係の無い事だ」

そして新たなフィールドに、また一人。

【現在位置・新フィールドへ】
【マスクドハカイダー@ロボロワ
【状態】正常、ハカイダーの姿
【装備】ハカイダーショット@ロボロワ、アポロマグナム@ロボロワ
【道具】支給品一式、不明支給品0~1
【思考】基本:殲滅
    1:正義の味方がどう死ぬべきかという答えを求める。
※クロ@サイボーグクロちゃんと、ハカイダー@人造人間キカイダーの二つの姿を持っています。
 口調や声は、クロの時でもハカイダーのものです。

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最終更新:2009年06月12日 19:51
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