きよひめのなく頃に~飴菓子編~

埼玉のとある場所。
数名の男女がそこに集まり、その内の二人が、睨み合っていた。
二人の男。
片や黒スーツを着た勇者アルスの姿をした男、むっつりラナルータ
片やアーカードの帽子を被ったヴァッシュ、フィールド破壊の貴公子
彼らは互いに奇怪な言葉をやり取りしていた。

「東京ビッグサイト。国内有数の規模を誇る浦山ダム。東京都庁」
「東京ドーム。滝沢ダム。都心の摩天楼根こそぎ。さいたまスーパーアリーナ」
「環状山の手線。国会議事堂。」
「首都圏外郭放水路。東京タワー」
「ぐ……新宿警察署……」
「プリンスホテル各種。十階以上のビル纏めて薙ぎ払い」
「…………くぅっ」
「………………」
「「大聖堂」」

その末にがくりと、むっつりラナルータが膝を突く。
彼は、負けたのだ。
目の前に居るフィールド破壊の貴公子に。
フィールド破壊の貴公子は真っ黒に染まった髪を揺らし、苦笑いと共に答えた。

「危ないところでした。途中で追いつかれている事に気づき薙ぎ払いで稼がなければどうなっていた事やら」
「どちらにせよ、俺の負けだ。おまえは俺に勝ったという事になる」
「ええ、その様ですね。
 いやはらマップ破壊の元祖たるFFDQの書き手に勝てるとは、私も案外捨てたものでは……」

どさりと倒れ付す貴公子に、ラナルータは肩を貸した。
黒く染まった髪は、そこまで消耗するほどエンジェル・アームを撃ちまくった事を意味している。
彼はむっつりラナルータに勝利する為、後先を考えず全力での砲撃を連発したのだ。
幾らピオリムで加速しているとはいえ、火力に劣るラナルータではどうしても遅れる。

結果、東京と埼玉の高層建築物の悉くを破壊したフィールド破壊者達の熱き競争は、
命を賭したフィールド破壊の貴公子に軍配が上がった。
その髪は最早殆ど全てが漆黒に染まっている。
後はゆっくりと、死ぬだけだった。

それでも彼は、勝者だった。

「見事だ、フィールド破壊の貴公子。貴様は我らなのはロワの誇りだよ」
掛けられた賞賛の言葉。
なのはロワ無常の騎士は彼を褒め称える。
何処かしら苦い響きを含んだ声で。
「……教会は壊して欲しくなかったがな」
むっつりラナルータとフィールド破壊の貴公子の最終激突地点は、幻影の大聖堂。
つまりはギャルゲ写本により建てられた旅の扉である。
そこがものの見事にぶっ壊された。

そういうわけで、旅の扉が有る大聖堂は瓦礫の山と化していた。

「これでは次のフィールドに飛べないではないか。どうしてくれるのだ」
「ご安心ください……問題は有りませんよ……」
貴公子は苦痛の表情を浮かべながらも不敵に笑う。
怪訝に問い返した無常の騎士に、ラナルータが同意するように頷いた。
「最後の一瞬に限れば、俺達の衝突は互角だった。破壊の力は相殺され、聖堂を中心に渦巻いた」
「つまりそこには台風の目が有ったのです。偶々、ですがね」
その言葉と共に。

崩れた瓦礫の隙間から、渦巻く光があふれ出した。

「さあ、行ってください。新フィールドへ」
「おまえもだ、フィールド破壊の貴公子。俺は確かに負けた。
 だが、ならば見るが良い。
 次のフィールドで俺は、このフィールドのおまえに負けないほどの大破壊を見せてやる」
むっつりラナルータはフィールド破壊の貴公子を背負って、旅の扉へと飛び込んだ。

無常の騎士はそれを見送り、溜息と共にそれを追った。
同胞を守る男の一人くらい、見送ってもいいだろう。
無常の騎士は既にマーダーとしての仕事を果たしている。

ビルの物陰で背後からスパロワ2のれんげを殺し。
その支給品からクレイモア地雷を抜き取り、
真紅の悪魔達が去った後の◆CppH18E08cを殺し、その死体に仕込んだのは彼女だ。
もう少し殺しておきたかったが、第一放送時点では上出来という所だろう。
彼女は二人を追って、旅の扉に飛び込んだ。
………………。



しばらくして、足音が響いた。

「ぜぇ……ぜぇ……酷い目に遭った……」
知的変態ヘアニスト。
レオーネ・アバッキオには生存を絶望視された彼女だが、実は生きていた。
生きて、彷徨い、
その末になんとかここまで辿り着いた。
「壊れてるのを見た時はもうダメかと思ったけど……良かった、まだ生きてるんだ」
ヘアニストはほっと安堵の息を吐き。

旅の扉へと、駆け込んでいった。



また、新たな足音が響いた。

「や、やっと見つけた……旅の扉……!」
ナナミという少女の姿をした参加者。
RPGロワ魔王ヴァルハラ

ギャルゲ写本に返り討ちにされて気絶した彼女はその後に色々と有ったような無かったような、
長い長い旅の末にようやくここまで辿り着いたのだ。
彼女はよろよろとした足取りで。
「わたしは……帰る。帰って完結させるんだ。
 あの人の問うた、覚悟を……手にして!」

それでも、最後の一蹴りだけは力強く。

魔王ヴァルハラは旅の扉へと飛び込んだ。



そして、もう一度。
足音が、響いた。

やはりその足取りはおぼつかない。
揺れるように、惑うように。
倒れるように、歩く。

言霊の女教皇。

彼女は真っ赤に泣きはらした瞳で、旅の扉を見つめた。
次のフィールドへの扉を。

「──────」

呟きは、かすか。

少女は倒れこむように。

旅の扉へと入っていった。

………………。













ところで。
確かに、幻影の大聖堂が崩壊しても旅の扉本体は残っていた。
しかしその旅の扉は、本当に壊れていなかったのだろうか?

そもそもこの旅の扉は、ギャルゲ写本の能力によって作られた物だ。
その際に『元々ここに旅の扉が有った事』を利用し、
『聖堂と教会、旅の扉と抜け穴の扉、類似性による偶像崇拝の原理』により作り出した。
……ならば、少なくとも次の論理は確実だろう。

大聖堂は、ギャルゲ写本に作り出された旅の扉の重要な一部分を担っていた。

つまり大聖堂を失ったこの旅の扉は半分ほど壊れていたのだ。
その結果、半分ほどしか次のフィールドに転移できない。
二人に一人、という意味ではない。

飛び込んだ都度に、半分だ。

さて、人は上半身だけで生きられるだろうか?
右半身だけ、左半身だけではどうだろう?
そもそも下半身しか無かったらどうだろう?

その意味するところは一つだ。

【『この内容は改竄されました』 むっつりラナルータ@FFDQ3rd】
【『この内容は改竄されました』 フィールド破壊の貴公子◆jiPkKgmerY@なのはロワ】
【『この内容は改竄されました』 無常の騎士◆HlLdWe.oBM@なのはロワ】
【『この内容は改竄されました』 知的変態ヘアニスト@kskロワ】
【『この内容は改竄されました』 魔王ヴァルハラ@RPGロワ】
【『この内容は改竄されました』 言霊の女教皇@LSロワ】





「あ、あれ……今、何が……」
「何か起きた、ようだが……」
「…………え……?」

呆然となる彼らは、ふと目の前に一人の少女が立っている事に気がついた。
いや、少女というなら別々に飛び込んだ何人かが居るのだがそれとは別だ。
その少女は明らかに、全身から異質な存在感を放出していた。
誰も知らない“はずの少女が何者であるか一同は唐突に理解”した。

「うん、一々説明して、聞いて、考えて、納得してもらうのは面倒だからね。
 一足飛びに理解してもらったよ」

彼らは理解した。
彼女は書き手ロワ2ndエピローグで出現した“あの子”に他ならない。
こことは別の多元世界でこことは別の書き手ロワ3rdを開催している筈の少女。
それが何故か、目の前に居た。

「何故か、か。うーん、まず私とこの世界の因縁を理解してもらおうかなあ」

因縁。
そんな物が有るのか。
あのOPで『この世界には介入しない別世界の主催者』というあまりに遠い位置づけをされた少女に。
生まれた疑問が発される必要すらなく少女は理解し、答える。

「そもそもあのOPは疑問を持って欲しいな。
 ねえ、どうして。
 どうして私は、一人でもロワを開催できるのにそうせず、
 よりによって没話になった世界からネコミミストさんを主催に呼んでるんだろうね?」

生まれたのは、困惑。

「……ああ、そうか。この次元からは因果の果てに消えた没話の話なんてしても困るよね。
 いけない、いけない。一通り解説しなきゃ。
 あのね。ある没話の中で、唯一の生還者である衝撃のネコミミストさんは、
 七氏さんに言葉責めされて、その内に眠っていた666の因子を目覚めさせられちゃうんだ。
 666とはつまり、書き手ロワ2で大暴れした最悪に鬼畜な黒幕の事だね。
 それによりネコミミストさんの中には666と化す可能性が芽生えて、
 書き手ロワ3rd主催候補として噂されるようになっていたんだ。
 666に目覚めた彼女なら、主催を開くだけの力と動機が有るもの。
 でもね。
 ここで一つ、おかしな事があるんだ。
 そのお話の中で、ネコミミストさんがそれまで666化していなかった理由は何か?
 それは七氏さんの盤上には居なかった存在。
 つまりは私の仕業。
 そのお話の中でひどい事をした七氏さんがとってもひどい死に方をするのはどうしてか?
 それは彼に恨みを持っていた存在。
 つまりは私の仕業。
 私は、ネコミミストさんが666化する事を望んではいなかったんだ。

 そもそも書き手ロワ2ndという物語で、私は666の指示した結末を否定している。
 私は書き手ロワ3rdを開くつもりだった。
 ネコミミストさんは666に目覚め書き手ロワ3rdを開くかもしれなかった。
 目的は同じ。
 でも、私は666を拒否する側に立っていたんだよ。

 その私が、どうしてネコミミストさんとロワを開いているんだろうね?

 さあ、ここからは『今回の殺し合いでも作中で語られたお話』だよ。
 例えばこんな事が事実として確定されているんだ。

 『ならば赤、七氏は書き手2没話「祝いと呪いに関する考察」の作者である。
  七氏はこの作品ないしこの作品のリテイクを書き手2に本投下しないことを保証する。』

 ……ってね。
 666の因子を覚醒させるネコミミストさんはこの世界において絶対に存在しえない。
 私はわざわざ彼女が存在する多元世界を捜して、彼女と一緒に書き手ロワ3rdを開いている。
 開こうと思えば一人でロワを開くだけの絶対的な力は持っているのに、ね。

 まあ、本当は些細な理由かもしれないよ。
 それでも私は、今のところ“深入りはしない”という前提付きでこのロワと因縁を持ってしまっているんだ。
 謎という名の因縁をね。

 ……と、まあ長くなったけど。
 私はこのロワのOPで、このロワの関係者の一人にはなってるって話、判ってもらえたかな?」

正確には参加者が転移した後に主催者と話した少女の事など、誰も知らない。
それさえも少女との会話の中では問題となりえなかった。
彼らは独りでに知識を補完されながら認識した。
つまりこの少女は、このロワの主催の知り合いのようなものなのだと。

次なる疑問が飛んだ。
ならどうして、おまえはここに介入しているのかと。

「うーん、それは感謝して欲しいなあ。
 あなた達の飛び込んだ旅の扉は壊れてたんだよ?
 あのままだとあなた達6人はみんなみんな死んでしまうはずだった。
 だけどそれじゃ勿体無いと思ったんだ。
 ……個人的にちょっとだけなら贔屓してあげたい人も居るからね。あ、こっちの話」
少女の視線は一瞬だけ、むっつりラナルータと言霊の女教皇を撫でた。

……本当に、彼らとはまるで関係の無い話なのだ。
その二人と元を同じくする全くの別人が少女の片親である事など、
会った事も聞いた事も無い遠縁の親戚くらいの関係だ。
見捨てても何ら問題は無かったし、ここで助けるのは贔屓だと自覚している。
大体彼女はこっちのロワは合間に覗いてるだけで、自分のロワもあるのだ。

だから少女の助けはちっぽけで、機会を与えるだけのものだった。

「私がしてあげる事はほんのちょっとだよ。
 あなた達の飛び込んだ旅の扉は半分だけしか次のフィールドに移動できなくなっていた。
 このままじゃ次のフィールドに着くのはバラバラ死体だった。
 その消滅してしまう、次のフィールドに着けない部分を、死んだ人から集中させてあげる。
 丸三人分の消滅分を三人の死者に。
 それだけ。意味は判るよね?
 あ、時間はあんまり無いから急いでね」

それっきり少女は黙り込んだ。
ハッと自体を理解した彼らの間に、重苦しい沈黙が下りる。
つまりはこういう事だ。

この六人は急いで半分まで死ね。
そうすれば残りの三人は五体満足で次フィールドに移動させてあげる。

超小型バトルロワイアルがそこに有った。



【現在位置・新フィールドへ ※】
【むっつりラナルータ@FFDQ3rd
【状態】:健康
【装備】:斬鉄剣@アニロワ1st
【持物】:基本支給品
【思考・行動】
基本思考:次のフィールドではフィールド破壊の貴公子以上の破壊をもたらす。
1:──────
【備考】
見た目はタークスの黒スーツを着たアルス(DQ3男勇者)です。
FFDQ3rdラジオMCのエドから生まれた完全な別人格・肉体です。

【フィールド破壊の貴公子◆jiPkKgmerY@なのはロワ】
【服装】ヴァッシュのコート、アーカードの帽子
【状態】黒髪化(10割)
【装備】ワルキューレ@スパロワ
【持ち物】デイパック、基本支給品、ランダム支給品0~1
【思考】──────
 基本:派手に暴れられるマーダー路線
 1.──────
【備考】
 ※外見はアーカード@HELLSINGの帽子を被ったヴァッシュ@トライガンです

【無常の騎士◆HlLdWe.oBM@なのはロワ】
【服装】パピヨンマスク@なのはロワ
【状態】疲労(小)、イライラ
【装備】物干し竿@アニロワ
【持ち物】デイパック、基本支給品、ランダム支給品0~2
【思考】
 基本:殺し合いに優勝する。
 1.──────
 2.コリジョン・ナンバーズを殺す
 3.基本スタンスは暗殺と扇動マーダー。主に後者を優先
【備考】
 ※「XANADO」:無常の騎士の持つ異能。暗闇の地形に潜ることができる。
  ただし、地形に潜れるのは10秒前後。再度潜るまでにもしばらく間を置かなければならない。
 ※外見はパピヨン@武装錬金のマスクをつけたフェイト@なのはA'sです

【知的変態ヘアニスト@kskロワ
【状態】大ダメージ(斬撃・弾幕など)、全身打撲、虎柄ビキニ
【装備】ボクシンググローブ@現実
【道具】支給品一式、首輪探知機@現実?、不明支給品0~1
【思考】
基本:主催を叩きのめす
 1:──────
 2:あわよくば、綺麗な髪を味わいたい。

【魔王ヴァルハラ@RPGロワ】
【状態】
【装備】エクスカリバー@ギャルゲロワ2
【道具】支給品一式、不明支給品0~2、
【思考】──────
1:優勝して元の世界に帰ってロワ完結させる
【備考】
※外見はナナミ@水滸伝です。

【言霊の女教皇@LSロワ】
【状態】薬中、蒼星石状態、満身創痍、精神衰弱
【装備】刺身包丁@現実
【道具】支給品一式、5-MeO-DIPT(30/50・1つ10g)、北高のセーラー服@アニ1
【思考】──────
0:──────
【備考】
※外見は「タバサ(主人公の娘)@DQ5」と「蒼星石@Rozen Maiden」です。気分で使い分けられます。

※:上記六人の扱いについて
  放送までにSS投下が無くても次フィールドに移動します。
  ただしその場合ワープで体の半分を千切られ、第二マップ到着直後に高確率で死亡します。


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最終更新:2009年07月19日 14:22
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