「予想通りの展開だな。書き手を吸収したとはいえ、書き手そのものでは無いクリーチャー如き。
あの人達の敵じゃない」
「ケッ。予想通り、ねえ。俺が一番嫌いな言葉だぜ。お前もだろ、あの最終回を書いたんだからよ!」
「このロワに限って言えば俺は全うな対主催……希望だったんだけどね」
「ハッ、つまんねえなあ! まあその姿で対主催、しかも登場話死亡つったら、確かにこの上ない予想外だがよおお!
HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!」
「俺は死ぬとは思ってもいなかったんだがね」
「いいじゃねえか! それでこそおもしれえっつうもんよ!」
「はいはい。まあ恨み言を言う気はないけどさ。何人も死亡話を書いてきた。今度は俺の番だった。それだけさ」
「お、随分物分りがいいじゃねえか? なら何故俺を呼んだ?」
「せっかちだな、あんた。
漫画ロワ書き手ならしかないけどさ。いいぜ、教えるよ。
簡単なことさ。これでも書き手だ――後に何も残せないままじゃ死んでも死にきれない。だから――」
「ああ、ありがたくもらってやる。けどな、お前の筋書き通りっつうのはご免こうむるッッッ!!!
見せてやるぜ、お前にも俺の、【破転】を!
おったまげろおおおおオオオオオおおオオオオオオオオオオーーーーッ!!」
「ッ!やったか!?」
モケーレムベンベを中心に破裂した光の爆発が止み世界が色を取り戻す中、修羅王が叫ぶ。
少しずつ晴れていく視界には、あれほど蠢いていたQBヘッドの姿も、自らが呼び出したインベーダーの肉片すらも存在していない。
余波ですらこの威力なのだ。直撃を食らったあの怪竜が生きているはずが
「『生きているはずが無い』、そう思ったか?」
ないと思ったまさにその時、声が響いた。
修羅王の知らない声だった。
傍らに立つ邪神も首を傾げていた。
ただ一人、神をも超えたボディを持つからこそ、光に眼を焼かれること無く全てを見届けた超神だけがその人物を睨みつけていた。
「『そのとき、『時』が来た。』お前の作品再現で死者が力を貸してくれるとでも思ったか?」
それはヒーローに相応しい鎧を身にまとった男だった。
無骨なボルトと鋭い棘に覆われて尚、清廉とした魂を感じさせる姿だった。
背にはブースター、首にはマフラー。
日本男児たるもの、その外見から誰しもが正義の味方を想像するだろう。
一部の漫画読者や、あるロワに属する者たちなら大手を振って彼の名前を呼ぶに違いない。
正義、完成。
葉隠覚悟、と。
ならば、この男は正義か?
本来の黒とは違い鮮血を帯びたかの如く真っ赤な零に身を包む彼が?
頭部に星型の模様が無く、代わりにどこかで見たことのある形を浮かべている彼が?
いつしかマフラーがカーディナルデビルの翼のように変形している彼が?
よく見れば鎧の材料は複合装甲展性チタン合金を模したDG細胞な彼が?
否。
否否否否、断じて否!
男は、男の名は――
「その予想を裏切るッッッ!!!」
【破転】ワンキュー!
正義や悪なんていうちっぽけな枠組みじゃあ推し量れないぶっ飛んだ男ッ!
そして先刻まで身につけていなかったはずの鎧こそが彼にとっての強化外骨格ッ!
零? NO! 霞? NO! 雹? NO! 震? NO! 霆? NO!
まさかまさかの掟破りの雷電?
漫画ロワ書き手らしく荒?
それすらも、NOォォォォォオオオオオオオオオッッッ!!!
簡単な、実に簡単な話だ。
ここまで出たヒントを見れば気付いた人も多いだろうってくらい簡単さ。
ワンキューは言った。
モケーレムベンベが生きているはずがない、その予想を裏切ると。
しかればそのモケーレムレンべはどこに行った?
今、
スパロワ書き手3人衆の前にいるのはワンキュー一人。
あの巨体の影はどこにもない。
なれば、答えは一つ。
姿を変えたワンキューこそが
「デビル、四国ッ!!!」
「ちげえな、強化鎧骨格「紅死国」だッ!!」
仕留め逃した獲物に向かって怒りを込めて叫ぶと共に超神の胸元に追撃の光が集う。
超神には分かっていた。
男が何をしたのかを。
今にも崩れ落ちる寸前だったモケーレムレンベにワンキューは手を伸ばし、『ハッキング』しDG細胞を我が物としたのだッ!
もしも漫画ロワ住人がいればここでも裏切られたと思っただろう。
本編では三村のハッキングは何の成果も得られなかったのだから。
けれども、安易な原作再現を許さないのが【破転】!
見事モケーレムレンベをしつけたワンキューは、滅び行く龍に新たな宿り先を提供したのだ。
即ち、ワンキュー自身を!!
それも、自身に感染させるのではなく、DG細胞に漫画ロワ因子を取り込ませて強化外骨格へと変化させる形で!
「アイン・ソフ・オウルッ!!」
巨大では無くなった分、デビルガンダム程迷惑では無くなったにも関わらず、超神は容赦なくワンキューへと砲をぶっぱなす。
全霊を賭けた追悼の一撃が不完全に終わらされて愉快なはずがない。
チャージもせずタイトルすら付けないでの攻撃だったが、その分出は早くワンキューに避ける暇を与えない。
彼からすれば避ける必要はそもそも無かったのだが。
「東方に迎撃の用意あり、なあんてな! 弾幕昇華弾、くううっらえええええっっっ!!」
――神槍「スピア・ザ・グングニル」
瞬間、昇華弾とは名ばかりの乖離剣の砲身が突き出した右指先から現れる。
本来の物より随分細いとはいえ、五指のそれぞれがエアだ。
5つの螺旋が荒れ狂い、一本のエネルギー槍と成したそれは通常のアイン・ソフ・オウルすらギリギリ相殺する威力を誇っていた。
それでも超神の予想通りなら邪神パワーで3倍へと強化されたアイン・ソフ・オウルを打ち消すことはできなかっただろう。
だが、ワンキューはその予想を裏切った。
超神同様、ワンキューの攻撃もまた3倍へと膨れ上がったのだ。
「そんなっ!?」
魔空空間の主である邪神が悲鳴を上げた。
まさかコンバットスーツに搭載したミニ地軸転換装置までハッキングを受けていたのだろうか?
そう考えてセルフチェックしてみたものの異常はない。
異常はないのに魔空空間はワンキューをスパロワ書き手と認識している。
「なんでっ、どうして!?」
「驚くよなァ、予想外だろォォ! 何せ俺は漫画ロワ書き手なのになァァァ!!
スパロワの属性付きなんざ思いもしなかっただろおおおおっ!」
実に嬉しそうに語るワンキュー。
にやっと笑い自らの強化外骨格をコンコンと叩く。
するとそれに答えて浮かび上がる一つの影。
強化外骨格には付き物、いや、憑きものの英霊。
その姿を見て、3人が3人絶句した。
ただし、その意味はそれぞれ大きく違ったが。
――現れたのは蒼き鬼神、グランゾン
零が無数の骸骨をアバターとしていたようにグランゾンをアバターにする人物がいるとすれば
3人の驚きの声にあっさりと返すグランゾンこと冥王。
予想もしていなかった邂逅に、修羅王は純粋に驚き、超神は強敵(とも)と再会できたことに笑みを浮かべ、
最も驚いたであろう冥王殺害の下手人、邪神は恐怖を覚える。
その様を見て取ったのだろう、困ったように冥王は続ける。
「ああ、大丈夫。俺はちゃんと死んでいるから。でもね、邪神。
どうやら君に言った何の特殊能力も持ち合わせてないっていうのは嘘だったみたいだ」
「う、そ?」
「うん、『マサキとシュウ』。死んで初めて意味を為す能力」
――その効果は魂が取り憑ける何かを持っている相手へ一度だけ冥王の全力を行使できる権利の委譲
「原作再現だと俺を殺した君に憑くべきだったんだろうけどね」
さあっと青ざめる邪神。
どういうことかと詰め寄る修羅王の姿も彼女の眼には入っていなかった。
魂の憑ける物?
言わずと知れた強化外骨格だ。
冥王は四国で死んだのだ、おかしくはない。
だったらワンキューは冥王の全力を一度に限り行使できることになる。
じゃあ全力って何?
冥王の全力って『アレ』のことじゃないの?
ううん、まさかね。
ありえない。
だって、だって、まだ第一放送が終わったばかりなのよ!?
そこであんな大技だなんて、“最終回”だなんてカード切るはずがない!
温存するはずだわ、そうに決まってる!
欝書き手らしく最悪の事態を考えてしまい、必死に打ち消す邪神。
その甘えをワンキューは許さないッ!!
「最終回は温存するもんだってか? ははッ! 言った筈だぜえい? その予想を裏切るとッ!」
七生ではなく破天と刻まれた頭部、肩、全身から。
ガキュガキュと効果音を轟かせ、幾多もの角やトゲが伸び行く。
それだけではない。
ネオグランゾンが縮退砲を放つ時のように、胸部装甲が開いていくではないか。
内から飛び出してくるのは、取り込まれたままの真紅の悪魔の顔。
虚空へと向いたままの少女の口が開かれ、そこに黒い光が生まれた。
「ファイナル――」
それは混沌。
一つのパロロワの終焉を飾った物語に相応しい全ての決着が詰め込まれたもの。
希望が、絶望が、渇望が、愛が、理念が。
我等が生きる世界そのものよりも価値のある壮大な一つの終焉を型作っていく。
――おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお………
なればこそ、この声は新たな世界の産声だ。
あらゆるスパロワ読み手に、ロワの枠すら超えてパロロワ界に、果てはどこかの誰かの人生に、新しい世界をもたらした物語を祝福する声だ。
太陽の数百倍を越える巨大な恒星、その重力崩壊に匹敵するエネルギーを生む原理で生じる力をそのまま叩き込まれていく。
恒星はその一生を終える際、銀河の果てにすらその光が届くほどの爆発を起こして消滅する。
あまりに巨大であまりに膨大なエネルギーは、そのものの存在をそのままとどめておくことすら許されない。
開放されたときには、まさに全てが吹き飛ぶ。
だがそれは新たな星を生み、そして新たな宇宙の一つが誕生する礎となるのだ。
これこそが超新星爆発。
「バトル――」
――では、もしもその超新星爆発を、二つ合わせたらどうなるだろうか?
その答えが超神の眼前へと広がっていた。
美しい。
素直にそう思えた。
そうだ、これがあの男、冥王が紡いだ最終回だった。
神をも超えると、パロロワ界の黒幕だとまで言われた自分がやられたと笑ってしまった絶望的な最後。
出せるもの全部を出し尽くし、燃やし尽くした果てにあって尚輝く灰色とは遥かに遠い黒き宝石。
―――― ……が必要だった。
「自分を隠し、偽って……何になる」
期待していたのだ。
自分が一瞬…!! だけど…閃光のように……!!! 眩しく燃えて輝けば、
その結果がどうであれあの男が相応しくも素晴らしい締めを用意してくれるのではないかと。
起承転結の『結』の名を与えられたこともある自分が、他人に最後を委ねてみるのもいいかなんてことを考えていたのだ。
何もかもを一人で描き切ってしまうのは、思い通りに行きはすれど、酷く寂しく、悲しいまでにつまらない。
―――― ……が必要だった。
「……くだらない」
―――― ………人が必要だった。
「本当にくだらない」
―――― …………他人が必要だった。
「今更……そんなものがなんになる」
―――― ……………歩み、繋いでくれる他人が必要だった。
「俺はもう、マーダーを。他を蹴落とす道を選んだんだ」
―――― ………………自分と歩み、繋いでくれる他人が必要だった。
「だから……これでいい」
PROMISED LAND、超神は呟いた。
同時に空に舞い上がった超神の背後で、超新星爆発にも匹敵する力を持つフォトンが収束する。
何もない天を切り裂き、黒い翼が伸びていく。地平線見渡す限り空を上下に分断する黒いライン。
黒い雷光が、空を埋め尽くす。激しい閃光と共に世界に響きわたる超神の神託。
超神が、胸の前――カラータイマーの前に手をかざし、力を集中させた。
内蔵されたディスレヴが唸りを上げ、エネルギー源から直接くみ上げるフォトンストリームは、嵐となって吹き荒れる。
眼には眼を。
超新星爆発を超えた超新星爆発には、銀河を滅する無辺無尽光に太陽の14乗という高密度で生み出された中性子星をくべた焔を。
(1)~(4)、略せず圧縮したこの一撃で、さあ
「俺の心の矛盾螺旋を終わらせようッ!!」
「――ロワイアルッッッ!!!」
ボソンジャンプにより一切のエネルギーを消費することなく敵陣へと投げ込まれるファイナルバトルロワイアル。
間一髪で標準を修正したPROMISED LANDと世界を黒と黒に染め上げ激突するッ!!
ワンキューのいる側は輝かしいまでに黒く、超神のいる側は堕ち行く奈落のような黒さで。
お互いの生み出した世界を浸食しあいながら、世界の枠を軋ませる両者の一撃。
既に魔空空間なんか吹き飛んでいた。
両者が技をぶつけ合っているのはニューワールド――世界を生み出す一撃同士がぶつかったことで生誕した新たな世界、まさにそこ。
その新世界すらももう長くは保たないだろう。
音が死に、大気が死に、念が渦を巻き、二つの馬鹿火力が鬩ぎ合っているのだから。
ただ、どうやら心配は要らなかったみたいだ。
「――――――!」
超神は見た。
「――――鳳龍」
互いに喰らい合い、威力を削がれた二条の漆黒が稲妻のような白き光に両断されるのを。
「――――神雷」
拳に龍を宿し、あれで終わりと思ったかと言わんばかりに勝ち誇った笑みの男が突撃してくるのを。
「――螺旋ッッッ!!」
締めの締めで投影完了した闘気のイメージに己が漫画ロワの技を割り込ませた彼の者の拳をッ!
PROMISED LANDにありったけの激情と力を込めた超神に、拳を躱す力は残れていない。
元がゼストな超神はバリアに回すエネルギーが切れてしまえば極度に脆い。
無防備だ。
よって、
「覇龍 煌めく 刻 ……」
彼が助かったのは
「……馬鹿な、お前は……何をしている?」
内的宇宙に封じられたゾフィーを生贄に捧げ、巨大ロボ――修羅神ヤルダバオトを召喚した修羅王が庇わんと割り込んできたからに他ならなかった。
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最終更新:2009年09月07日 23:57