超神は信じられなかった。
マーダーだと宣言した覚えは無いものの、絶対的な危機を前にしたこの期に及んで身を挺して自分を助けに来る者がいるとは思っていなかったのだ。
なんとか直撃は免れたものの、超神を庇ったことで光の翼に裂かれた様を眼にし、口が勝手に動き声を出していた。
一番言いたかったことを言えないままに。
――……馬鹿な、お前は……何をしている? よせ、逃げろ
本当はそう言いたかったのに。
冥王だけではない。修羅王もまた大事な彼の仲間なのだ。
過疎ロワとされ、延々終わらないと揶揄された
スパロワの終盤に飛び込んできてくれた新人の姿がどれだけ超神には嬉しかったことか。
自分と戦った末や、冥王の技でならともかく、別ロワの、
漫画ロワの技に沈むところなんて見たくはなかった。
なのに
「託された意志を明日へと繋ぐために! 陥れるのではなく、護る先に望む未来があることを信じてッ!
今一度! 俺はスパロワ書き手の道を往く――――――――――ッ!!」
修羅王は退く事はなく、どころかここに立てたことを笑いながら誇っていた。
逆立つ真紅の角、龍の顎のごとき両腕、純白の体躯、朱に染まった頭髪。
かつてフォルカを操者に選び、修羅界を、混沌の地球、そしてスパロワを駆け抜けた猛撃の修羅神。
ヤルダバオト。その神化した姿こそ、彼がクロススレ効果で歪められたゾフィーの呪縛から逃れえた証。
「これで、俺は戦える。俺の、俺が望む戦いを……ッ!」
ゾフィーを封じてくれた何者かに心の中で礼を言う。
ありがとう、と。
あなたのおかげでロワそのものを荒らし尽くすなんて書き手にあるまじき行為をやらずに済んだのだと。
あなたもまた、ゾフィーと戦った友だったと。
続けて心に浮かんだのは、そんなゾフィーへの復讐心に逸ってばかりだった修羅王を助けようとしてくれた男の姿。
流行のツンデレとでも言うべきか、厄介な性格と趣味を持っていたが、修羅王は知っている。
あの男もまた尊敬できる書き手であり、友だったと。
「なあ、超神。もしもさ。Kっていう斉藤一の姿をした男に会ったら伝えといてくれないか?」
両拳から飛んだ覇龍が一切の傷を与えることなく、鳳龍に食いつぶされる。
拳の、蹴りの乱撃を加え、獣面の衝撃波を浴びせ、再び殴り、吹き飛んだ先に一瞬で回り込みまた殴り飛ばすもワンキューは止まらない。
「ありがとうって。お前のおかげで俺は一人じゃなかったってさ」
「な、待て、修羅王、俺は――」
返事も聞かず修羅王は、覇気を凝縮、特大の覇龍を撃ち放つ。
覇龍が何度も虎龍王を打ち据える。無効。
それでもヤルダバオトはその覇龍に飛び込んだ。
覇龍が口を開く。そこに駆け上がってきたヤルダバオトが覇龍と一体になりワンキューへと突撃。
程なくしてワンキューの螺旋超振動に両の腕を砕かれる。
身体を浸透した螺旋の波に臓物が押し出されそうになるも必死で抑える。
まだだ、まだまだ終わらない。
修羅王は、本物のフォルカアルバーグはこの程度ではくたばらないッ!
絶対的な終焉にも、命ある限り反逆の牙を突き立てるッ!
―Alter code Fire!
コクピットの中修羅王が、右腕を伸ばす。
ヤルダバオトの存在しない右腕に、真紅の輝きが溢れ腕の形を成す。
――2nd Ignition!!
ここにいるはずもないKが、左腕を伸ばした気がした。
ヤルダバオトの存在しない左腕に、蒼天の煌めきが生まれやはり腕の形に。
光が構成する腕を、重ね合わせる。
―――Advanced 3rd!!!
『ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォー……』
もう一人。
ヨッミーATらしき霊魂が唱える呪文のような言葉・その意味は、『二つの力を一つに』。
白き新世界を満たす虹色の輝きがワンキューへと向かい、鳳龍のオーラを消し去っていく。
「俺の動きが、鈍っただとッ!?」
――――The 4th Detonator!!!!
ヤルダバオトが、組み合わせた両腕を突き出す。
その身体から光がレールのようにワンキューへと伸びて、『狙いを定める』。
死に逝く身とは思えないほど、その姿は命に満ちていた。
「受けてみろ……こいつの一撃を!」
「俺の想いと力――スパロワと二次スパの力を!」
『絶対無限の、書き手の力を!』
言葉はなくとも心で通じる。
Kと、修羅王と、ヨッミーの全てが同化し、駆け抜ける!
合わせた拳に想いを、力を、命を込めて!
「……なんだと……この俺が……【破転】……ワンキューが……!」
「うわ、こりゃあ、参った」
予想を覆し続けた鎧の男、
最終回書き手でありながら一話で退場した亡霊、
一切の区別なく、彼らは叫ぶ。
未来を拓く、そのために。
これで全てが終わるのだとしても、後悔はない。
生きた証、この炎はきっと消える事無く、受け継がれているから。
だから、
―――――The 5th Vanguard!!!!!
「「『ウィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイタァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」 」』
全てを浄化し、消滅させる光が、白い宇宙を真白の閃光で塗り潰し――
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最終更新:2018年04月19日 02:47