ヤンデレの妹に愛されておちおち寝てもいられねえ……!

「……まさか、私が書き手ロワに出ることになるなんて」

 一仕事終えて、私、繋ぎ・SH・ナイツは溜め息を吐きながら額の汗を拭う。
 拭った右手が紅く染まっているのを見て、その液体が汗ではなく返り血であることに気付き、再度溜め息を吐く。
 視線を、足下に転がっている『それ』に向ける。
 森の地べたに横たわる『それ』は、死体だった。
 死因は、包丁で喉を幾度か貫かれたことによる、中々にグロイ死。何故知っているかって? それは勿論、殺したのが私だからだ。
 森の中を不用心に歩いていたから、こっそりと後ろから近付いてグサっと。
 この男ときたら、刺される瞬間まで背後の私に気が付いていなかった。

「高そうな金ぴかの鎧着てるくせに、情けない奴」

 そう言いながら、自分はこんな無様な死に方はしないと心に固く誓う。
 そう、私は生き残らないといけないのだ。
 私が書き手をしているニコロワβは、ついこないだ最初の放送を迎えたばかり。
 今のところは多くの書き手に支えられて順調に進んでいるけれど、まだまだ気は抜けない。今が大事な時期なのだ。
 だから――こんな所でロワに参加している暇なんて、私には無い。
 絶対に優勝して、ニコロワβに凱旋しなければ。

「そのことを考えたら、この姿は運がよかったわ。今の私はただの女子高生にしか見えない。油断した隙に……グサッ! っと」

 この書き手ロワにおいて、私に与えられた肉体は、ヤンデレ妹、野々原渚。
 ニコニコ動画において数多のお兄ちゃんを屠り、血に染めてきた、私のニコロワβにおける初作品の登場人物である。
 時に仮面ライダーのお兄ちゃんやらサイヤ人のお兄ちゃんまで圧倒するその力は、支給された包丁と同様、今の私にとってとても心強い武器。

「うふふ、待っててねお兄ちゃん! 渚――じゃなかった、この繋ぎ・SH・ナイツが、一人残らず血祭りに上げてあげるからね!」

 まずは……ここからでもよく見える、あのお城にでも行ってみようかな? ああいう特徴的な建物は、人が集まるからね。

【一日目・深夜/大阪】
【繋ぎ・SH・ナイツ@ニコロワβ】
【状態】健康
【装備】包丁@現実
【道具】支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
基本:全員殺して、ニコロワの続きを書かないと
1:とりあえずお城(大阪城)へ






 野々原渚の姿をした、繋ぎ・SH・ナイツが走り去ってしばらくした頃。

「ああ、痛かった……」

 もしも、この一部始終を目撃していた人間がいれば、自らの目を疑ったに違いない。
 たしかに包丁で首を何度も刺されたにも関わらず、金色の鎧を着た――ギルメガッシュの姿をした男は、
まるで何事も無かったのかのように立ち上がり、いつの間にやら完全に塞がっていた傷痕を摩っていたのだから。
 やがて、その微かにあった傷痕すら消えて無くなり、ほんの十分ほど前まで死体同然の姿で転がっていたとはとても思えない。
 一体どのようなトリックを使ったのか? その問いに対する答えは、程なくして彼の口から発せられた。

「ふう……不死者じゃなければ即死だった」

 不死者。それは、ライトノベル原作のアニメ『BACCANO バッカーノ!』に登場する、死なない人間の名称。
 そう、彼の書き手としての名前は、極天乖離す英雄の覇<<バッカーノ>>。
 天馬行空の言葉が誰よりもよく似合う英雄の王の肉体と、誰よりも馬鹿騒ぎ(バッカーノ)を愛すカモッラの如き精神を合わせ持つ、アニ2を代表する書き手の一人である。

「……まあ、エアを使えば撃退は容易だったんだけどね」

 呟き、<<バッカーノ>>は静かに苦笑する。
 彼の言う通り、ギルメガッシュの宝具である乖離剣エアを一度振るえば、並大抵の相手ならば即座に勝負は決まっていた。
 先刻のように繋ぎ・SH・ナイツに不覚を取ることも、恐らくはなかっただろう。
 ならば、何故彼はそうしなかったか。
 その理由は、決してギルメガッシュのように慢心に由来するものではない。

 答えは簡単、彼は優勝も、主催の打倒も、どちらも望んでいなかったからだ。

 彼が目指すものはただ一つ、彼の名前が示す通り、ド派手で無茶苦茶な馬鹿騒ぎ(バッカーノ)。

「切札を使うのはやっぱり……馬鹿騒ぎの最高潮、観客が手に汗握る最終局面。伝家の宝刀を最初からバシバシ使ってちゃ、興も醒めるってもんだ」

 瞳を閉じて、彼は考える。
 せっかくの馬鹿騒ぎ、祭の参加者は多ければ多いほどいいだろう。
 それもただ数が多いだけじゃダメダメだ。様々なタイプの対主催、マーダー、奇人狂人が集まってこそ、馬鹿騒ぎは盛り上がる。
 まあ、ここがバトルロワイアルである以上、変人には不自由しないだろう。

「いやあ、実際にロワに参加して馬鹿騒ぎを起こせるなんて、書き手冥利に尽きるなあ……。
 さて、こうしちゃあいられない。メンバーの選定にフラグ立てに、やることは一杯だ」

 まあとりあえずは旅の扉でも探しますかね、と満面の笑みで続けながら、彼は夜の森を走り出した。



 深夜に笑みを浮かべながら我様が森を駆け回る光景は軽くホラーだったけれど、残念なことに突っ込み役が不在のため<<バッカーノ>>がそれに気付くことはなかったとさ。


【一日目・深夜/大阪】
【極天乖離す英雄の覇<<バッカーノ>>@アニロワ2nd】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品0~3
【思考】
基本:せっかくの書き手ロワなので、馬鹿騒ぎ(バッカーノ)を起こす
1:旅の扉を探す
2:同時に、馬鹿騒ぎにふさわしい面子の選定、フラグ立て
3:エア?そんなの序盤から使ったりしませんよ。切札は最高に盛り上がる場面で使ってこそ。

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繋ぎ・SH・ナイツ ヤンデレの妹に愛されて……でもそんなの関係ねえ!
極天乖離す英雄の覇<<バッカーノ>> 130:ギル様がみてる

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最終更新:2009年04月23日 00:48
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