恐怖心

 この地に転送されたと同時に始まり、死者を告げる放送の最中も継続。
 放送が終わって結構な時が経過しても、全く終わりが見えない。
 そんな争いが、繰り広げられていた。

 ……争いっつっても、殺し合いの舞台で四人くっついて転がってるだけなんだけどね。

「離してやるから止まれっつってんだ、このボケがァ――――ッ!!」
 額に青筋を浮かべたハーグ。
 背後に顕現しているスタンドは、彼にとっての通常形態である白黒の異形。
 接着してしまった衣服と機器を剥がすために、何度かクレイジー・ダイヤモンドへ変化させていたのだが……
 一人が頑なにそれに従おうとしないので、ひとまずホワイトスネイクのままにしてあるのだ。
「騙されるか! 止まった隙に攻撃する気だろう!
そもそも、後ろに怪人連れてる輩のいうことを聞くか! 橘さんの姿をしてるからって、俺を馬鹿にしてんのか!」
 声を張り上げるのは、件のハーグの提案を拒み続ける男―――流されやすいRe:birth
 断るだけならまだしも、逃げようとするから始末に負えない。
 前述の通り、現在は四人がくっついてしまっているのだ。
 一人が激しく動くだけで、ゴロゴロ。
 その勢いが止まるまでの間、ズルズル。
 立ち上がろうとして、ズッテン。
 何とか説得しようとするハーグの横で、狂人スヴェルグは『この強制イベント終わるまでもう黙っていよう』などと考えていた。
「もういい。死ね」
 いい加減に痺れを切らしたのか、宝貝:勇者王が接着していない左腕をRe:birthへと向けた。
 勇者王の動作に呼応するように、上空で静止していた哮天犬がRe:birthを睨みつける。
 哮天犬をRe:birthへと突撃させようとしたのだが、射線上にホワイトスネイクが入り込んだので勇者王は攻撃をやめる。
 ホワイトスネイクを破壊すればハーグが倒れ、そうなれば勇者王の腕はくっついたままになってしまうからだ。
「なァ~~、ちょいちょいっと触らせてくれりゃあいいんだぜ? ちゃっちゃと外して、俺は俺はあのガキをブン殴りてェんだよ」
「なめるな! 漫画ロワ書き手と明かしたのが運の尽きだったな。
未把握が多いために読んではいないが、ライスピが参戦しているのは知っているぞ!」
「テメー頭脳がマヌケか!? 確かに俺はライダーも好きだけど、こんな怪人いねえだろうがッ!」
「マヌケはお前だ! こんな気色の悪い人形、怪人以外の何だと言うんだ!」
「気色悪いだとォォ~~~? スタンド、馬鹿にすんじゃねェ!」
 Re:birthの発言が癇に障ったらしい。
 冷静に対応していたハーグが、勢いよく立ち上がろうとした。
 今まで動き回っていたRe:birthは、変身して初めて超人クラスのパワーを発揮できる。
 対して、ハーグは変身などなくても力を出せる。
 そんなハーグが全力で立ち上がろうとして、結果―――ビリッ。
「「あっ」」
 Re:birthとハーグの声が重なった。
 彼らとスヴェルグを繋いでいた服が破れたのである。
 そりゃあ服だけでくっついてたんだから、思いっきり引っ張ればこうなる。
 スヴェルグはともかく、神父服とスーツが破れた両者は地面に両手を付けた。
 orzのポーズで落ち込む二人を、勇者王が現実に引き戻す。
「おい、俺も離せ」
「うっせェ―――! 元はといえば、テメーが」
 勇者王の右腕が腹にくっついたまま、ハーグは声を張り上げようとした。
 そのまま掴み上げて何発かブン殴ってやろうとして、見てしまった。
 遠くに聳える巨大な建造物に。
 いや、茶色というか土色をしたそれは、どうにも見覚えがあって。

「……四国…………?」

 思わず、ハーグは呟いてしまっていた。


「っつーワケで、俺は行くからな」
 四国を見据えるハーグの表情は険しい。
 彼には、四国を投げそうな奴に心当たりがあった。
 そんなことを仕出かしそうなそいつは、最後に会った時には四国の近くにいた。
 正直放っておきたいが、あんな目立つことをされては別だ。
 他の誰かが向かわない内に、どうにかする。
 そう、ハーグは決断した。
「馬鹿馬鹿しいな。四国を投げるような奴に一人で向かっていく?
実際はグルで、同行しようもんなら二人がかりで殺しにかかってくる……そんなことも考えられるな」
「来なくてもいいぜ。練った策はあるが、それが使えるかも分からねェからな」
「…………っ」
 ギャレンとなった姿を見ていないとはいえ、自分を戦力と見なしていないような発言。
 Re:birthは歯を噛み締めるも、自らにむしろこれでいいと言い聞かす。
「おい、テメー」
 それまで会話していたRe:birthに背を向けて、ハーグは仰向けに寝そべっている勇者王の元へと歩み寄る。
 彼が倒れている理由は簡単だ。
 ハーグが、スタンドのラッシュを叩き込んだから。
 右腕を離すと同時に、クレイジー・ダイヤモンドの拳を叩き込んだ。
 むごいと思うかもしれないが、勇者王はピンクダークの少年を燃やしたのだ。ハーグにしてみれば、当然の行動だった。
「殴ったことは謝らねーがな。理由があったっつーんなら、いつでも文句言いにこい。生きてたら相手してやるぜ」
 それだけ告げて、ハーグは駆け出した。
 弾く波紋により、一跳び十メートル以上。
 それでも必死で急ぐ。四国を投げたと思われる相手の無茶苦茶さを知っているから。



【一日目 朝/バトルフィールドエリア東部】

【勇気】ハーグ@漫画ロワ】
【状態】腕に軽い打撲、波紋で随時回復、疲労中、『 軽 症 』ったら軽傷
【装備】なし
【道具】支給品一式、LUCKの剣@ロボロワ、スーパーエイジャ@漫画ロワ、『ピンクダークの少年』3部までセット@ジョジョ2nd
【思考】基本:あのスカタン(主催者)を一発ぶん殴ってやらねぇと気が済まねぇ~~。
1:大体見当は付いているけど、四国投げたヤツを止める。
2:『ピンクダークの少年』第二部以降を読む。
3:逃走王子に追いつき、説得して落ち着かせる。
4:仲間欲しー。
【備考】
※外見はプッチ神父の服を着たジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険です。
※ジョジョのことで知らないことはありません。
※波紋を使えて、スタンド『ホワイトスネイク』を操れます。
※【勇気】により、十秒間だけ『首元に星型の痣があるキャラのスタンド』にホワイトスネイクを変化可能。
※疲労は一度回復した後、スタンド変化で蓄積しました。


 昇りかけの太陽で明るくなってきた空を見つめながら、勇者王は確信していた。
 出会った時に告げられたトリップ。
 事実か確かめるために、全力で戦った。
 しかし、相手は殆どダメージを受けていない。
 スーパー宝貝による攻撃であったのに、だ。
 納得せざるを得なかった。
「―――『俺』、か」
 声にならない声で呟くと、微かな風が赤い髪を靡かせた。
 この殺し合いに呼び出された時から、勇者王はもう一人の自分の存在にぼんやりと感付いていた。
 だからこそ、強者を求めていたのだ。
 もう一人の自分が、弱いはずがないから。
 傲慢といわれるかもしれない発想だが、勇者王は現にもう一人の自分を見つけ出した。
 誰にともなく笑みを浮かべて、ゆっくりと勇者王は立ち上がる。
 寝ている場合ではない。
 出会ったのだ。その相手が死地に赴くのだ。
「……っ、お前!」
 焦って声をかけてくるRe:birthに、勇者王は簡潔に『俺も行く』と告げた。
「本気で言っているのか? あんだけ殴られて……正気じゃないぜ!? まさか、お前も俺を騙そうと」
 Re:birthが不信感を露に言葉を詰まらせる。
 静かに、勇者王は口を開く。
「俺が行くのは、『俺』だからだ」
 反論が返ってこないのを確認して、勇者王は地面から足を離した。



【一日目 朝/ルインズフィールドエリア西部】

【宝貝:勇者王@ロボロワ】
【状態】健康、イークイップにより戦闘形態 、全身にダメージ
【装備】M.W.S.@ロボロワ、哮天犬@ロボロワ、金蛟剪@ロボロワ(非支給品)
【道具】支給品一式、不明支給品0~1(確認済み)
【思考】基本:強いヤツと戦う。
1:『俺』を追う。
【備考】
※外見はナタク@封神演義です
※イークイップすることにより、戦闘形態(金蛟剪モード)になれます。


 残されたRe:birthは、光の宿っていない瞳で虚空を見つめていた。
 圧倒的な戦力に一人で向かう姿が、それを追う姿が、彼の愛する仮面ライダーに重なって。
 しかし、それでも、Re:birthは恐れていた。
 騙されてしまうことを、ひたすらに。
 恐怖心、彼の心に恐怖心が巣食っていた。
 彼と同郷の書き手が、放送で呼ばれてしまったのも関係しているだろう。
 どうすればいいのか見出せないまま、Re:birthは力なくくずおれてしまう。
「教えて……くれ、よ……」
 尋ねかけるが、答えが返ってくるはずもなし。
 なぜだか、彼の前に彼のモデルとなった男の姿が蘇る。
 騙された結果、正義も組織も恋人も失った。
 それなのに、男はよく笑っていた。
 Re:birthには、その理由が分からなかった。



【一日目 朝/ルインズフィールドエリア西部】


【流されやすいRe:birth◆N4mOHcAfck@ライダーロワNEXT
【状態】ダメージ(小)疲労(小)
【装備】ギャレンバックル
【持物】支給品一式、不明支給品0~1 、デルタギア
【思考】基本:絶対に他人に騙されない
1:俺は――――――?
2:頭脳戦において、自らの力量を証明したい
【備考】
※外見は黒いスーツを着た橘 朔也@仮面ライダー剣です


 ハーグ達とくっついていたはずのスヴェルグは、既に元々いたエリアの中央部まで到達していた。
 服が破れたのと同時に忍び足で遠ざかり、ある程度離れたところで支給品のバイクに跨ったのだ。
 ラスト一人になるのが、このゲームの勝利条件。
 ならば、わざわざ龍を出したりスタンドを操ったりする者を相手する理由はない。
 ゆえに離れた。
 バトルロワイアルをゲームと思い込んでいる以上、Re:birthと違って迷いはしない。
 目指すのは、ただ一つ。
 ゲームクリアだけなのだから。



【一日目 朝/ルインズエリア中央部】

【狂人スヴェルグ@RPGロワ】
【状態】健康。ゲーム脳。 疲労(小)
【装備】“神を斬獲せし者”@AAAロワ、ヘルダイバー@漫画ロワ
【道具】支給品一式、不明支給品0~1
【思考】
基本:バトルロワイアルというゲームのルールに従い、クリアする。
1:このゲームを楽しむ。
※外見は トカ@WILDARMS 2nd IGNITION です。

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幻想(ゆめ)だけじゃ守れない 【勇気】ハーグ 狂い咲く書き手の証明
幻想(ゆめ)だけじゃ守れない 宝貝:勇者王 狂い咲く書き手の証明
幻想(ゆめ)だけじゃ守れない 流されやすいRe:birth  ?
幻想(ゆめ)だけじゃ守れない 狂人スヴェルグ パチパチ! はじける獣拳

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最終更新:2009年12月25日 22:08
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