「なるほど、そういうことか――――って」

訳知り顔でつぶやいた少年は、次の刹那、両手で鼻を押さえた。
忍法『匂追(におい)』。相手の匂いから相手のことを探る技の反動が、ひどく大きい。
痛みに反応して、四肢を構成していた巻物がもとの形を取り戻せば、

「こちらを探ってきたかと思えば、ずいぶんと無様な姿を晒すものだな。◆MobiusZmZg」
「よう、◆Ok1sMSayUQ……ちょっと出目が悪くてさ。でも、すごく『悪のカリスマ』らしい姿になってやがんね」

じゃあ、「ボクもアンタに合わせた姿になるよ」。
ルガールの赤い隻眼に貫かれたエヌアイン――先刻までは御斎学園の中忍頭・藤林修羅ノ介の姿をしていた者が両手を挙げる。
◆MobiusZmZg。『悪のカリスマ』のSSを繋いだ書き手は、コードネームと称して『間違えた世界』と名乗った。
ロワという終わった世界のなかで、それでも完全に見える流れを描こうとした者にしては、どうにも自虐が過ぎる名だった。

「しかし……アンタらしい考え方だけど、ボクには合わないだろうな」
「先の忍法か。たしかに、お前はひとり終わった世界を嘆くが似合いだな」
「そう? あれは、べつに嘆いてるつもりじゃないんだけど」

力ない笑みを刻む『間違えた世界』。
彼の書く作品もまた、『悪のカリスマ』は高みから睥睨していたことがある。
降り止まぬ雪を前にした世界が眠りにつきかけていようと、彼は、それを美しく描写していた。
居場所を喪った少年たちを、彼は、居場所がない状態を嘆かせず、居場所がない事実を変えないままに慰撫した。
旧人狩りを行った側にあった『神の現実態』をも、彼は世界に謝罪させ――世界を許させて、現在という舞台に立たせた。

「どう、言うべきなのかな……TRPGでPCのデータを作るときとか、格ゲーのキャラ対と同じさ。
 情報を読み込んで手筋を考えて、これなら応手が返ってくるって信じて遊んでいく。
 こんな世界【ゲーム】は終わってるなんて思うより、そうするほうが力の振るい甲斐もあるから」

間違えた世界は、世界に抗わず、受け容れて瞑目した。
自分がゲームマスターとプレイヤーの関係にあると信じる彼の箱庭は、今もゲームの要素にあふれている。

「でも……アンタも身に覚えがあると思うけど、ロワを支配するとして、そこでGMなんかやると『削れる』よ」
「軽く見られたものだな。お前と違って、私は『物語を完結させた』というのに」
「うん。そうだね。いくら書いても、いくら夢を見ても――それでもボクは空っぽだから」

だから、それがアンタの『欲望』なら、ボクは否定も肯定もしない。
異形となっても貫きたいと願う、胸を焦がすものの焔が、そのとき間違えた世界の双眸に宿った。

「情報は使わないから安心しなよ。ボクは、こんなふうでもアンタたちのことが嫌いじゃない。
 だって、守りたいものがあるんだ。こんな力【非リレー向き】でも、こんな体【閉じこもりがち】でも、……それでも」



     キミ【ゲーム/リレー/ロワ】だけが望むすべてだから。



力を手にしてなお、逸脱することを望めない間違えた世界。
力を使いきれない時点で半端な存在に、悪のカリスマが言うべきことは何もない。
そのはずだった。

「望むものに対してイカサマをしておきながら、お前はそれを言えるのか」

だが、彼は間違えた世界の手許にある得物を見逃さずに問いかける。
エヌアインの姿をした相手が、手の中でもてあそんでいたのは『イカサマのダイス』。
振った賽の目がすべて役をなす、ギャンブラーが扱うものとしてはある意味で間違えた武器だ。

「違うね、ボクは誤魔化さない」

冷然とした視線を向けた悪のカリスマ。
その眼前で、間違えた世界は最初のダイスロールを行ってみせる。

「……ダイスみっつでも1ゾロ? シノビガミでもダブルクロスでも絶対失敗<ファンブル>だな」

それもイカサマではないのかと、悪のカリスマは問わなかった。
より正確には、問いかけたところで意味などないことに思い当たってしまった。
この世界にあって、『間違えた世界』は、すでに世界のルール【ロワ】へ支配されている。
そんな相手に、自分が持つはずの『悪のカリスマ』は、いったいどんな色と、音と光を発しているのか。
スタンスのみを考慮すれば白と黒――これ以上ないコントラストがきいているはずなのに、まったくと分からない。

「でもどんな目が出たってイカサマだって、それは、全部ボクを心待ちにしてる未来だと思いたいから」

眉間に皺を寄せた悪のカリスマに向けて、間違えた世界は言葉を続ける。
情報を探り、スタンスを明かしたことに対する後悔の色は、けれどもそこにない。
痛みをこらえるような顔をうつむける彼は、好意をもって『いばらのみち』を受け容れようと足掻き続ける。

「だからボクは、ボクの魂【嘆き】なんか救う必要もない世界を…………好きに、なりたかったよ」

ダブルクロス。それは、裏切りを意味する言葉。
悪のカリスマに背を向ける少年の『影』は、無音の空間を波立てることなく解けていく。
その言葉の意味するところなど、もう知っていると言わんばかりに。



【一日目・深夜 ???】
【悪のカリスマ(◆Ok1sMSayUQ)@PWBR】
【状態】健康
【外見】ルガール・バーンシュタイン@THE KING OF FIGHTERS
【装備】不明
【持物】基本支給品、不明支給品(1~3)
【思考】
基本:主催を撃破し、ロワを支配する。
1:間違えた世界@SLBRに対する嫌悪感。眺めていても良い気持ちはしない。


【間違えた世界(◆MobiusZmZg)@Splendid Little B.R.】
【状態】嗅覚の麻痺(徐々に回復)
【外見】エヌアイン@エヌアイン完全世界
【装備】萬川集海@SLBR、イカサマのダイス@RPGロワ
【持物】基本支給品、不明支給品(0~1)
【思考】
基本:自分の打った手が面白い時間を作るのだと信じ、全力でこのゲームを遊ぶ。
1:悪のカリスマ@PWBRを、ともにゲームを遊ぶプレイヤーとして信頼する。

 ※忍法『匂追』で、悪のカリスマ@PWBRの行動方針を知りました。
 ※間違えた世界の肉体を構成するのは、忍術秘伝『萬川集海』です。
  巻物を肉や骨とし、『影』を操って他者を模倣することが可能ですが、能力の対象となるのは
  彼がこれまでに愛して喰らった(執筆した)キャラクターに限られます。


【書き手紹介】
【渾名/コードネーム】間違えた世界
【トリップ】◆MobiusZmZg@『Splendid Little B.R.』
【直近の所属ロワ/シンドローム】Splendid Little B.R./RPGロワ/PWBR
【投下数】2……?

あと3話で完結ロワにて、『素晴らしき小さな戦争(Splendid Little B.R.)』を進行中の書き手。
「3話詐欺」とも称される投下数、まとめサイトを自前で持ったことを活かした予告漫画の提示、TRPGのシステムを
拾っての世界観構築やシーン構成など、自分に出来ることのすべてを試そうという意気が感じられる。
得意なキャラは、おそらく藤林修羅ノ介@SLBR、エヌアイン@PWBR、魔王@RPGロワのような
『いばらのみち』を行こうとする者。RPGロワでは、地味にジョウイの「好意をもっての魔王化」に影響している。
直近の所属ロワはちょうど3つだが、三種の企画を書くことに目覚めた『トライブリード』かどうかは分からない。


071:夢追いの男 ◆時系列順に読む 072:Getting
073:運命を分ける意思 ◆投下順に読む 075:リレーする書き手のことを考える書き手の鑑
071:夢追いの男 悪のカリスマ 090:戦いとは、ぶっぱである。
間違えた世界 090:戦いとは、ぶっぱである。

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最終更新:2013年06月08日 19:50