537 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2014/02/13(木) 12:43:37.15 ID:1GYqCe5p
「それでは、珊瑚諸島海域の突破を祝して!乾杯!」
「「「かんぱーーーい!!」」」
鎮守府、フタマルマルマル時。艦娘と提督が一同に会し、祝勝会が開かれていた。
100人に近い艦娘達が大騒ぎしている様は、圧巻というほかない。
戦艦勢が次々と盃を空にしては注文の声を上げ、間宮と鳳翔はてんてこ舞いの様子だ。
向こうの方では那珂が2人の姉を引っ張り出して歌いはじめたのが見える。この時間なら夜戦夜戦と騒がしいはずの川内も、妹の勢いに押されている。
「提督!次はいよいよ最前線ですね!」
「五月雨じゃないか。先の海戦ではよくやってくれた。次もよろしく頼む」
「お任せくださいね!」
「だから・・・私は飢えてなんかないって・・・何度言ったら・・・・」
「駄目だ、もう出来上がってやがる。羽黒、足柄を頼むよ」
「は、はいっ」
俺はといえば、皆の間をまわって、今次作戦で活躍した艦娘の慰労につとめていた。
飲み物を注いでやり、自分も一杯やって、しばし会話を楽しむ。
どっちが慰労されているのか分からなくなりそうだが、これだけの規模の艦隊を運営する日頃の激務を思えば、これぐらいの役得があってもバチは当たるまい。
一回りおえて空母勢のテーブルに来てみると、想像外の光景が展開されていた。
「やはり鳳翔さんの料理は最高ですね・・・潮さん、おかわりをください」
「た、ただ今っ」
「ええ、本当に・・・漣さん、おかわりを」
「はい、どうぞ」
「お前たち、随伴艦を給仕に使うのはやめないか」
そこにあったのは、山盛りの茶碗と、同じく山のように積み重なった皿と、せっせと働かされる哀れな駆逐艦と、食欲なお衰えぬ赤城に加賀の姿であった。
「提督、続けて出撃の予定もないのに高速修復材を使用したのはいかがなものかと思いますが」
「遠征組が頑張ってくれているんだ、当分使い切る心配はないさ。そんなことより、主賓抜きで祝勝会もないだろう」
「それは、そうですが」
「お前たちが疲れを癒してくれなければ、この会を企画した意味もない。存分に楽しんでくれ」
「ありがとうございます」
「適当なところで給仕も解放してやれよ」
そう言って席を立ち、その場を後にする。宴席を回る間にそれなりの量を飲んでおり、少し酔いを覚ましたかった。
執務室に戻ると、秘書艦のいない空間がやけに広く感じた。いくつか残した書類を片付けるべく机にむかうが、酔った頭で作業がはかどるはずもない。
多少なりともなんとかならないかと格闘しているさなか、ふとノックの音が響いた。
「加賀、戻りました。────申し訳ありません、お手伝いもせず」
「ああ、おかえり。構わないよ、今日はもう仕事にならないからやめだ」
立ち上がって加賀を出迎える。彼女も酒が回っているのだろう、かすかに上気した顔に視線が釘付けになる。
「少し、こっちにこないか」
「?はい」
電燈のスイッチを切って、俺は加賀を窓際へ誘った。
暗がりのなか、はっとした表情の加賀が月明かりに浮かび上がったが、彼女は何も言わずについてきた。
肩を並べて外を眺めると、がらんとしたドックの上に月が浮かんでいるのが見えた。
「綺麗な月ね──────」
「ああ、戦の真っ最中だというのに、嘘みたいだな」
「そうね」
「改めて、今回はよくやってくれた。礼を言うよ」
「私は務めを果たしたまでです」
「それでもだ。加賀航空隊の奮戦がなければ、今日こうして祝うこともできなかった」
その言葉は嘘ではなかった。攻めあぐねていた敵戦艦を吹き飛ばして突破への道を開いたのは、他でもない加賀航空隊だった。
「みんな優秀な子たちですから」
加賀はそう言って左肩の飛行甲板をゆっくりと撫でる。普段と変わらない沈着な表情、しかしその目にはどこか愛おしさが込められているように感じた。
「大事に思っているんだな」
「ええ、私の誇りです」
「なら、優秀な旗艦である加賀は俺の誇りだな」
「・・・・・提督、夜戦はお断りしたはずですが」
肩に手をやって引き寄せると、加賀は抗議するように腕の中で小さく身じろぎした。
「今次作戦の一番の武勲艦に、なにか褒美を上げたいと思ってな」
「褒美、ですか。それは受けとらなければ失礼にあたるわね」
こうやって加賀からスキンシップを拒否されるのは、初めてではない。
最初は、飛行甲板はデリケートだから触るなと言われた。飛行甲板でなければいいのだろうと頭を撫でたら、怒られた。
次は遠征に出る水雷戦隊の見送りに行った帰り道、そっと手を握ってみた。こっちを睨んできたが、手が冷たいから暖めてくれと言うと、焼き鳥にされたいのかと言いつつもおとなしくなった。赤城に見られそうになると慌てて振りほどいて逃げていった。
大破してボロボロの状態で執務室に帰ってきて、思わず抱きしめたこともあった。さっさと報告を聞いて入渠させろと言いながら、抵抗はしなかった。
そんなこんなで徐々に距離が近づいていったある日、近代化改修を終えた自分を見てほしいと言ってきた加賀を、俺は抱いた。
何か理由でもなければ触れることを許してくれないのは、彼女なりの照れ隠しなのだということに、その時ようやく気づいた。
以来、俺たちは子供じみた言い訳を見つけては体を重ねることを繰り返していた。加賀からねだってくることも、珍しいことではなかった。
腰に手を回して抱き寄せる。もう抵抗するそぶりもない。互いの体が密着する。程よくくびれた腰の感触。こちらを見上げる目つきに背筋がざわつく。
これ以上我慢できなかった。俺は彼女を抱きしめ、そっと唇を重ねた。
539 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2014/02/13(木) 12:48:56.50 ID:1GYqCe5p
短いですが、以上です。やっぱり書くのは難しかった。
何かお気づきの点があったら、ご指摘ください。
546 名前:527 ◆pzvVvkndz. [sage] 投稿日:2014/02/13(木) 17:41:08.81 ID:1GYqCe5p
レスありがとうございます
続きは・・・書けるか分からんです 書けるだけ書いてみるつもりでいますが
一応酉つけて消えます
最終更新:2014年02月13日 22:40