565 名前:名無しの紳士提督[sage] 投稿日:2015/03/29(日) 02:02:08 ID:x9TyJddY
流れブッタだけど艦娘嫌いの提督で書き始めたらどんどんブラックな感じになったので
息抜きにやたら強い提督投下します
頑張っても本番は無理ぽ
提督>艦娘
きがくるっとる
オリジナル艦娘(娘?)います
非エロ
万物は流転する。
かつて地球に生命が誕生した時、それは海の中に生まれたという。
やがて陸に上がったそれらの生物は長い長い時間をかけて人類の祖先となった。
地球上に最初に誕生した生物は、深い海の底から地上に出て、二本の足で歩くようになるとは恐らく考えもしなかっただろう。
生物は本人も想像できないような驚くべき変化を遂げる。現在の人間がその終着点なのか、もしくは未だ過渡期にいるのか、それは誰にもわからない。
そしてまた、そうした悠久の時間の中での進化と共に、突然変異は常に生まれてくる。
人間の体内においても、癌細胞という突然変異は誰もがきたす可能性があるといえば、その身近さが分かるかもしれない。
そして、体内でそうした当然変異が生まれている以上、人間の体のみが例外であるという保証などどこにもない。
もしごく普通の人間がそのような事態に陥ったらどうなるのか。
ただ一つ確実に言えることは、
「な、な、なんじゃこりゃあー!?」
パニックになるという事である。
早朝の鎮守府に提督の絶叫が木霊する。
「司令朝から何騒いで―」
近くを通りかかった陽炎が部屋を覗き込むが、その言葉は途切れている。
暫し沈黙。
ふと後ろを振り向いた陽炎。
「ねえ不知火。これ夢かな」
「残念ながら現実です」
「……そっか」
再び沈黙。
ふっと、陽炎が息を吸い込む。
「誰かー!誰か来てー!!超弩級の変態よー!!」
「まっ、待て陽炎落ち着け!話せばわかる!」
「問答無用。沈め」
陽炎が叫び、超弩級の変態こと提督がうろたえ、既に艤装をつけていた不知火が静かに砲口を向ける。
「お、お、落ち着けお前ら!これには訳があって……」
「ご安心を。信管を抜いた榴弾です。殺す前に聞くこともありますし、誰の物かは分かりませんが 艤 装 を 壊 す わ け に は い き ま せ ん」
不知火は確かに艤装と言った。
別に何も間違ってはいない。
何故なら、提督は今、
駆逐艦の艤装を身に着けているのだから。
いや、それだけならここまで騒がなかったかもしれない。それ「だけ」なら。
「何ですか!?スクープの香りがしますねぇ~」
「なになに?この那珂ちゃんを差し置いてスキャンダル?」
「もしかして夜戦!?」
「提督、何が起きようと榛名は大丈夫です」
騒ぎを聞きつけた者達が思い思いの事を口走りながら集まってくる。
部屋に飛び込んだ彼女達が目にしたのは、駆逐艦娘の姿をした提督。
即ち、艤装のみならずセーラー服とスカート―それもサイズが小さいためピチピチの―を着た提督の姿。
再度の沈黙。
苦笑い、軽蔑、絶望。様々な思いの入り混じった視線が提督に集中する。
「いや~…スクープはスクープですけど……。流石にこれは記事には出来ないですね」
「……きも」
「これはテイトク=サンのケジメ案件では?」
「提督……。流石にこれは榛名も大丈夫じゃないです…」
(ですよねー。うんうん、そうだよその通りだ。君たちの気持ちは実によく分かるよ。だって俺が一番そう思ってるもん。
あと那珂ちゃんに素でリアクションされると結構傷つくな。畜生め、俺が何したっていうんだ。ただまっとうに生きる事すら許されないのか俺は?
朝起きたら駆逐艦娘になっていた?何だよそれ、カフカだって虫どまりだったのに。いや、嫌いじゃないよ駆逐艦。
むしろ好きだよ?ロリコンかそうでないのかで言えば多分ロリコンの方に入るよ?でもこれはおかしいじゃん。ありえないじゃん。
太郎君は花子さんが好きでした→太郎君を花子さんにしてあげました。どういう解決法だよ。何も解決してねえよ。むしろ新たに大問題発生だよ)
「司令。最後の慈悲です。憲兵に引き渡されるのか、この場で“責任をとる”のか選んでください」
「まて不知火落ち着け。落ち着いて話を聞いてくれ」
何とか宥めて訳を話す提督。
全員の疑いの視線が痛い。
「成程、朝起きたらそんな事になっていて、外そうにも外れないと」
「そうなんだよ。信じてくれ。現にこれ、誰の艤装とも違うだろう?」
提督の言葉にその場にいた全員が値踏みするように提督を観察する。
駆逐艦の艤装と言えば確かにそうなのだが、具体的に誰の、もしくは何型の、となればどれにも当てはまらない。
手に持っているのは睦月型同様の単装砲だが皐月や文月のそれを髣髴とさせるデザインではあるものの、形状が微妙に異なる。
背中に背負った煙突部分も角柱型で他に例がない形をしており、煙突と一体化した前艦橋とみられる部分は、
駆逐のそれよりむしろ高雄型のものをよりのっぺりとさせたような印象を受ける。
両方の肩にはそれぞれ一つずつ筒が天を向いているが、時雨の様に背負った艤装の一部という訳ではなく、背中のそれとは独立している。
また、吹雪型等の多くの駆逐艦が両足に魚雷発射管をつけているのに対し、提督の両足には見慣れない直方体が魚雷と同じ数つけられている。
「言われてみれば確かに…」
「でもだとしたら、その艤装は一体…」
提督が歪んだ性的興奮を目的としていた訳ではない事は明らかとなったが、それでも謎は尽きない。
提督は不意に自身の机上にあった端末から所属している艦娘の一覧を呼び出し、それをくまなく見ていく。
「……あった。俺だ」
番号不明。型式不明の提督とだけ書かれた項目がいつの間にか追加されている。
通常の艦娘ならば、ここに登録されれば、彼女が何者で、今どういう状態にあって、何を装備しているのか分かる。
何も書かれていない提督の項の内、唯一記載のある装備品を確かめる。
- 四五式12.7cm単装砲
- 四一式垂直型誘導噴進弾発射機
- 20mm機関砲(近接防御火器)
- AN/SPY-1号位相配列電探
「見慣れないものばかりね」
「駆逐なのに四スロなんですね」
横から覗き込んでいた陽炎と不知火がそれぞれの感想を述べる。
(いや不知火、確かにそうだけどさ……そこか?)
確かにその内容についても異常ではあるが、不知火の言う通り駆逐にしては異例の重武装である。
そしてこの見慣れぬ重武装に提督はある思い当たる節があった。
(この名前ってあえて和訳してるけど要するに…)
- Mk45 127mm速射砲
- Mk41VLS
- 20mmCIWS
- AN/SPY-1フェーズドアレイレーダー
「イージス駆逐艦だこれーっ!!」
提督はとんでもないものを背負ってしまったようだ。
それから少しして、提督と陽炎は浜辺に立っていた。
提督が艦娘(?)化してしまったことを上層部に報告したところ、すぐに返事が返ってきた。
曰く、「艦娘化した提督には見た目通りの艦娘としての能力が備わっているのでその艦種として扱え」との事だった。
更に各地の鎮守府や泊地で提督の艦娘化が続発しているという事が判明した。
このため、とりあえず水上を移動する訓練を陽炎が行う事になった訳である。
「……本当に大丈夫なんだろうな?」
「大丈夫よ。艤装をつけていれば。妖精さんの技術を信じて」
不安がる提督を陽炎が勇気づける。
それに応じるように彼の艤装から彼の妖精が顔を出す。
その艤装と同じく見覚えのない妖精は、提督の方を見ると姿勢をただし敬礼する。
「妖精さんとの信頼を築くことがいい艦娘の第一歩よ」
そう言って陽炎は自身の艤装の妖精と軽く戯れる。
戦闘中の艦娘は艦娘本人を中心に装備の妖精たちと協同して戦っている。
電探妖精は周囲を絶えず見張り、武装の妖精が敵を撃ち、機関の妖精が動力を賄い、それらをまとめて実際に動く指揮官兼操縦士が艦娘である。
作戦行動中の艦娘はいわば海の戦車ともいうべきものであり、その乗員である妖精たちとの仲は良好であるに越したことは無い。
「……おっさんが妖精と戯れているのはいくらなんでもきもくないか?」
「大丈夫。今の司令は仮に地球救っても気持ち悪いから」
まあ当然ではある。
「さ、練習しましょう。まずは私の手をとってゆっくり歩くところから」
「お、おう…」
言われるまま水面に立った陽炎が差し出した手を握る提督。
陽炎の掌は意外と柔らかい。
「大丈夫。妖精さんを信じて」
陽炎の言葉におっかなびっくりながら提督が足を水面に下す。
水面は地面の様に提督を受け止め、意外にも揺れを感じさせない。
「ねっ?大丈夫でしょ」
両足がついたのを確認すると、陽炎は微速後進で提督を曳航する。
「そうそう。上手よ司令」
それから三十分ほどで、提督は既に一通りの戦闘機動をとれるようになっていた。
本来訓練にそれほど時間を要さない艦娘であるが、その艦娘の目から見ても圧倒的に優秀と言える。
「……司令、生まれてくるの間違えたよ」
「そう言われてもなぁ…もともとは普通の人間だし」
喜んでいいのか分からないところではある。
「まあ、陽炎のコーチが良かったからな」
「え?あははは、当然よ~♪」
照れ隠しにそう笑う陽炎、その視界に岸を走ってくる不知火が映った。
「陽炎、きもかz…司令。作戦について連絡です」
駆逐艦らしい名前(蔑称)をいつの間にか付けられている提督だった。
鎮守府内の会議室に戻ると、既に本作戦に参加する他の艦娘も集められており、提督の到着と同時に大淀が作戦内容を確認する。
「では、本作戦の概要を説明します。作戦海域はカスガダマ沖、目標は同海域に展開した敵艦隊旗艦装甲空母姫の撃沈となります。
敵艦隊は空母を中心とした機動部隊の他、周辺の敵残存勢力を結集させ、極めて大規模な艦隊を編成。同海域の制圧を開始しています。
また、最優先攻撃目標である装甲空母姫は先日撃沈した装甲空母鬼の同型艦とみられ、大型空母並みの艦載機運用能力に加え、
大型砲を搭載することで戦艦並みの火力をもつ、事実上の航空戦艦といっても過言ではありません。熾烈な空襲に加え、砲撃戦に備える必要があります。
また、同海域には複数の敵
潜水艦の存在が確認されており、これらに対しても警戒が必要となります。
以上の点を考慮し今回の編成は次の通りとします」
正面のモニターに参加する者の名が表示される。
もっとも、集まっているメンバーは皆参加するので最終確認という意味合いが強い。
旗艦 駆逐艦 提督
航空戦艦 伊勢
航空戦艦 日向
戦艦 陸奥
重巡洋艦 最上
駆逐艦 陽炎
最初の一文のインパクトが半端ではない。
だが大淀も他の艦娘も何も言わない。
ただ、大淀の口元がヒクヒク動いているうえに不自然なまでに提督と目を合わさないので、何も感じていない訳ではないのだろう。
「……作戦開始は本日1100。何か質問は?」
提督以外の全員が手を上げる。
「……提督の件以外で」
全員が手を下ろす。
「では、質問がないようなのでこれで解散とします」
誰かが噴き出した。
それからさらに時間は進み、提督は洋上にいた。
意外な事だが、艦隊の士気はいつにもまして高い。
「提督の前でカッコ悪いところは見せられません」
伊勢はそう言い、他の者達も一様にそう答えた。
意外と今回の変身はいい方向に効果があったのかもしれない。
現にここまで大した被害も出さずに進めてきた。
提督がそんな事を考えていた時、日向の水上偵察機が彼女に告げる。
「……来るぞ!」
敵機の来襲に気付いたのは、誰あろう提督で、そして偵察機の情報と提督のそれは全く同じだった。
一瞬の逡巡の末、提督は後続する全員に告げる。
「全艦、単縦陣をとれ!」
全員一瞬戸惑いながらもすぐに単縦陣を組む。
提督の考えではもともと夜戦前提なこの編成では制空権は取れない事は分かっている。
なら一気に懐に飛び込み、その攻撃力を最大に生かして航空機のもと―装甲空母姫を叩いておく。
≪単縦陣…敵モ……ナ……≫
≪ウン?無線不調、繰リ返セ≫
≪何……聞コ……イ…≫
≪……………………≫
深海側航空隊には不可思議な現象が起こっていた。
接近する敵艦隊の迎撃に向かった部隊の無線が、一斉に途切れたのだ。
だが、それで引き返す連中ではない。彼らにも栄えある装甲空母姫の艦載機搭乗員の自負があった。
無線がないなら、無い時のやり方がある。
雷撃隊の先頭を行く隊長機が、雲の切れ間から覗く敵艦隊を捉えた。
直後、蛇がうねるように、急降下した隊長機と同じ軌道をとって雷撃隊が降下を始めた。
次の瞬間、隊長機が弾け飛んだ。
何があったのか分からないまま、2番機、3番機が同じように空中で爆砕される。
後続の隊員達が見たのは、立ち上る白い筋だけ。
そして一瞬、その筋が自分の愛機に繋がる瞬間が見えるが、それに気付いた時には自分も弾け飛んでいた。
血に飢えた毒蜂たちは、それが何かも分からぬまま一瞬のうちに白い蛇に喰われた。
通信の不通が敵によるECMであることを知っていれば、或いは生き延びる者もいたかもしれない。
「……目標群A、全機撃墜。次いで目標群B…」
艦隊の先頭を行く提督の足元から、白い煙と発光体が空中に吸い込まれ消えていく。
直後、白い煙の先端が光り、少し遅れて爆発音が小さく響く。
「馬鹿ナッ!!40機ダゾ!?」
海の向こうで報告を受けた装甲空母姫の声が響く。
一瞬のうちに消息の途絶えた雷撃隊が全機未帰還。普通に考えればあり得ない話だ。
「エエイ構ワン!全テダ!上ガレル者ハ全テ上ゲロ!!出シ惜シミハ無シダ!」
次々と発艦していく艦爆隊と雷撃隊、そして直掩機までもそのエスコートにつける大盤振る舞い。
装甲空母姫は焦っていた。
敵艦隊と接触した友軍艦隊はみな消息を絶ち、度々送った偵察機も殆どが未帰還。
辛うじてわかった情報は敵に見慣れない駆逐艦がいる。というものだけ。
彼女の直感が告げていた。この敵を放置すれば必ず大変なことになると。
だからこそ自身の選りすぐった40機を向かわせたのだ。
だが結果は、その歴戦の40機すら多くの偵察機と同じ運命を辿った。
ならばもう何も考える必要はない。自分の持てる全てをぶつけ、そのまま叩き潰すだけ。
自分はただの空母ではない。搭載されている砲は戦艦のそれと同じ16インチだ。最悪の場合でも撃ち合いで駆逐に負けるなどという事はありえない。
その思いから飛んでいく艦載機の後を追う様に足を速める。
「目標群C接近、トラックナンバ更新……」
提督の脳裏にいくつもの番号が浮かび、それらが次々に更新されていく。
「2-2-3、2-2-4……」
その更新に遅れることなく、白い筋―SAMが幾条も舞い上がっては上空の敵機を吹き飛ばしていく。
その隙間を縫おうとしても、恐ろしく正確な艦砲射撃と機銃が静止した目標を至近距離で撃つように確実に撃ち抜いていく
(糞ッ!何ナンダヨアレハ!?)
深海側の艦攻妖精が毒づく。
この風変りすぎる敵へのまっとうな方法での接近は不可能だ。
それは数えきれないほどの味方が証明してきた。
だから彼は、考え得る限りもっともまともではない方法―即ち、波の飛沫の形が分かるほどの超低空での接近を試みた。
恐らく敵は、こちらでは想像もつかないような電探を持っているのだろう。
だがいかなる電探でもあらゆる角度、あらゆる場所を同時に走査する訳ではない。少なくとも彼の知る限りでは。
ならほぼ曲芸であるこの海面飛行なら、上空に気を取られている今は感付かれる可能性が低いはずだ。
「主砲再装填!その間頼む!!」
先頭が味方にそう告げる。
彼は考える。あの奇妙な先頭の奴は諦める。またその後ろ、同じく奇妙な戦艦二隻も諦める。こいつらはハリネズミだ。どこから近づいてもリスクが大きすぎる。
その後ろの戦艦と重巡洋艦は今から侵入できるコースがない。なら一番後ろ、上空の連中を追っている駆逐艦なら何とかなる。
駆逐艦を正面に捉える。―もう少し。
雷撃体勢に入る。―もう少し。
駆逐艦がこちらに気付く。―もう遅い。
放った魚雷が一直線に走り出す。
「しまっ…」
陽炎が異変に気付いた時、それは既に手遅れだった。
魚雷は発射されてしまった。
自分に向かって走り出してしまった。
回避にはもう遅い。迎撃するにも主砲も機銃も間に合わない。
(駄目だ、やられる)
思わず目を閉じる。
……来ない。
目を開ける。
そこには大きな水柱が立っていた。
発射されたはずの魚雷はその場で爆発し、雷撃機は離脱も間に合わず水柱に突っ込むと、バランスを崩して海面をバウンドし、部品をばらまきながら沈んでいく。
魚雷を爆発させた張本人は先頭からこちらに装填が終わったばかりの単装砲を構えていた。
「司令…っ!!」
何か言おうとして、敵機の大群に遮られた。
そうだ、今は話している場合じゃない。
もっとも“話している場合”はすぐに訪れた。ほとんどの敵機が提督に吸収され空がだいぶ広くなった。
だが―。
「司令!さっきはありが…って怪我したの!?大丈夫!?」
提督の右腕はだらりと下がり、血が流れていた。
「少ししくじってな、破片を浴びただけだ。小破とも呼べんさ」
何事もないようにそう言う提督だが、腕の流血は痛々しい。
「さて……仕上げだ」
「えっ」
陽炎には点にしか見えないが、提督の電探は既に海域に突入する装甲空母姫を正確に捉えていた。
「目標捕捉……発射」
右肩の筒から何かが飛び出し、空中で点火すると水面を這うように水平線に消えていく。
装甲空母姫には、一瞬だけ何かが見えた気がした。
本当に気がしただけだったのかもしれない。
彼女の脳が、それがなんだか理解するよりも早く、何かは空高く跳ねあがっていた。
もし彼女がただの空母ならあるいは避けられたかもしれない結末だった。
だが彼女の装甲と16インチの主砲がその判断を鈍らせた。
接近しても勝てるという危険な幻想は、敵艦隊への接近という空母最大のタブーを犯してしまった。
その結果、彼女の頭にポップアップしたSSMが降ってきた。
爆発に包まれた彼女は、数秒の間意識を失っていた。
やがて意識が戻った時、周りは火の海と化していた。
「何ダ……何ナンダ……コレハ…」
全てが燃えてしまう。海も、味方も、自分自身も。一撃で、一瞬で。
「夢ダ…コンナノ……夢ニ決マッテイル……」
16インチ砲のはるか射程外から、止めが発射された。
「さて、帰るか」
作戦は完了した。もう敵はいない。
帰路に就く途中、伊勢がぽんと、もじもじしている陽炎の背中を押した。
「あの、司令…」
「うん?」
先頭を行く提督に、陽炎がそっと寄り添う。
「腕出して」
言われるがままに差し出された提督の右腕に、血を止めるようにハンカチを巻く。
「大丈夫だぞ?大した傷じゃあないし、ハンカチが血で汚れてしまう」
「いいから。その……司令、カッコ良かったよ」
恥ずかしそうに目を伏せ、頬を染めて陽炎が囁く。
女物のピチピチノセーラー服とミニスカートをはいた成人男性がこんな台詞を言われるのは、おそらく人類の歴史上これが最初で最後だろう。
鎮守府に戻った提督は報告もそこそこにドックへ向かった。
(と言ってもこの程度の傷だし、あいつら来たときに鉢合わせるとまずいからな、バケツで済ますか)
幸いドックは空で、拾ってきたバケツがふんだんにある。
適当に1個掴むとドックの端にあるバケツコーナーに立った。
個室の様に衝立に囲まれた中でバケツを持つと、流石に腕に痛みが走った。
陽炎に借りたハンカチが、血を吸って変色している。
「洗って返すか」
そう言いながらバケツをかぶった。
高速修復剤が全身を包み、腕の痛みも退いていく。
と同時に、背中がやけに涼しい気がして手をやると、何のことも無く背中に手がついた。
「……えっ」
背中に手がついた。さっきまで艤装が外れなくて触れなかった背中に手がついた。
つまり―。
「俺、人間に戻れた…のか?はは、ははははは……」
喜びが込み上げてくる。
「いやっっっっったあああああああああああああああああー!!!!」
雄叫び。
「―それでね。その時司令が私を守ってくれて…なんか、あんな格好してるのにすごくかっこよくってさ……」
「ふむ。何とも想像しがたい話ですが…」
脱衣所にて陽炎と不知火が今日の出来事について話しながら服を脱いでいる。
ドックは艦娘にとって風呂としても使われている。
「えー、不知火信じてないの?本当だよ?本当に司令のことちょっと見直しちゃうぐらいかっこよかったんだよ」
「いえ。陽炎を疑っている訳ではありませんよ。ただ今朝のインパクトが強すぎて…」
そんな話をしながらドックに入る。
「よっっっっししゃああああああー……………あ」
提督(フルチン)と鉢合わせ。
固まる陽炎。
青ざめる提督。
戦艦クラスの眼光を放つ不知火。
「沈め」
「ちょ、ちょ、ちょっとまて落ち着け不知火おちつゴボボボボ…」
この後、ピチピチのセーラー服やスク水を着た高性能なおっさんの集団が尋常ならざる戦果を挙げることになるのだが、それはまた別のお話。
終
575 名前:名無しの紳士提督[sage] 投稿日:2015/03/29(日) 02:44:40 ID:x9TyJddY
以上スレ汚し失礼しました&支援ありがとうございました
エロくするのは難しい
576 名前:名無しの紳士提督[sage] 投稿日:2015/03/29(日) 03:17:22 ID:DFS3YwLI
乙です
イージス艦娘(?):全ての攻撃に対してカットインを発生さることができ、結果ダメージを0にする事が出来る能力を持つ。
だがおっさんだ(これはひでぇー)
577 名前:名無しの紳士提督[sage] 投稿日:2015/03/29(日) 09:38:06 ID:X1z7dXoA
GJです!
これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
最終更新:2015年09月17日 11:56