EF58形電気機関車

EF58形電気機関車(- がた でんき きかんしゃ)とは、常磐高速度交通網(JHIS)が保有する電気機関車。


概要

元は国鉄で開発・製造された電気機関車。国鉄EF58形電気機関車

貸与機時代

東北新幹線開業前、常磐線は逼迫する国鉄東北本線のバイパス経路として、主に夜行列車の青森方面への国鉄直通列車を多数運行していた。

1965年、急行として運行していた『十和田』のうち1往復が特急『ゆうづる』に格上げされる際、20系客車で運行されることになったため、AREBブレーキのための増圧ブレーキ装置と元空気ダメ管を持つ機関車が必要となった。しかし、常磐のD級電機では小型のため装備を増設することが難しく、尚且つ重連牽引のため必要な改造機の数が増えてしまう。この為、国鉄から本形式に必要な装備を施して貸与された。

後に『ゆうづる』増発にしたがって貸与機は増加し、最大では1972年から6両が貸与された。

譲受機

1978年に21号、28号を正式に譲り受け、JHISの車籍になった。しかし21号はまもなく台枠に亀裂が見つかったため、1979年度に廃車になった。

1979年に29号、30号機、1980年に(21号の代替として)114号機、1984年に5号機、45号機を譲り受けた。これにより、国鉄直通列車向けEF58形貸与は1985年度で終了した。

改造

譲受時の改造

国鉄電気機関車では空気圧上昇式パンタグラフを搭載していたが、JHIS電気機関車では電車同様のバネ上昇式パンタグラフを使用していた。
本形式についても、正式に譲り受けた車両に関しては、電車型のPS16形(21号、28号、29号、30号、114号)またはPS23形(5号、45号)に換装された。

また、上釣り式の空気圧動作ワイパーを、下付けの電動ワイパーに交換した。

第一次状態改善工事

本形式は旧型客車向けの暖房装置を搭載していたが、JHISでは1986年に外部に暖房装置を求める形式は全廃になった。
これを契機として、1987年に第一次状態改善工事が実施されることになった。
  • 暖房装置の撤去
  • 主制御器および主抵抗器の交換

主制御器はEF13形で採用された電動カム軸制御のJC53形に交換された。
暖房装置撤去後のスペースを活用し、抵抗器への大容量ブロアを設置した。

これらの改造に伴う自重の低減を補うため、コンクリート死重が搭載された。

第二次状態改善工事

もともと東海道・山陽線でのロングラン運用を受け持っていた機関車ということもあり、1995年ごろから台枠や台車の歪みによる軸受けの偏磨耗や異常過熱が看過できないものになりつつあった。

ファンから人気のある機関車であることから、全車廃車は避け、5号、45号、114号の3両については動態保存と波動輸送用を兼ねて現用を続けることとし、長周期の延命を目的とした第二次状態改善工事が実施された。

施工内容は次のとおり。
  • 台車・台枠の歪み是正を伴う車体更新工事
  • 45号、114号の従台車を29号、30号のもの(日立製一体鋳造台車)に振り替え
  • 114号のパンタグラフをPT-4801に交換
  • 20系のCLEブレーキ化に伴うAREBブレーキ対応装備の取り外し

施工は、5号と45号は製造会社である日立製作所東洋電機汽車製造製の114号については自社水戸工場で、それぞれ1997年に実施された。

廃車

先のとおり21号は入線まもなく台枠に亀裂が発見され、溶接補強を施して使用していたが国鉄から代替機の提供の提案があり(114号)1979年度に廃車となり1980年に解体された。

1985年にEF61形が6両そろったことから定期『ゆうづる』の牽引はすべてEF61形の仕業となり、EF58形は波動輸送用とEF61形の故障代走用に限定された。
1986年からEF62形の譲受・投入が始まり、1987年から日光線上野口波動輸送対応がEF62形の指定仕業になったことから常磐線のみでの運用になった。
その後動態保存と波動輸送用をかねる形で6両が在籍したが、1997年3月ダイヤ改正で『ゆうづる』3・2号がキハ181系での運行に切り替えられることになり、EF61形も3両が定期仕業および代走待機からはずれ、波動輸送用に転用された。このため第二次状態改善工事の実施が決定されると、同時に3両を廃車することになった。このうち新車体新製車の45号、114号が優先して選ばれ、旧車体からの車体換装車である4機については最若番の5号を記念機として残すことになり、28号・29号・30号については同年度で廃車となり1998年に解体された。

現状

観光シーズンの増発『ひたち』『ときわ』『うみかぜ』の直流電化区間を牽引しているが、出力がEF61形に劣るため、ダイヤ上の問題からEF58形充当列車は北千住発着となる場合が多い。



最終更新:2013年10月23日 04:12