「元々怪物とは、新教の侵略によって土着の神々が零落した姿、っていう見方もある。あ
らゆる神話・伝承を取り込んだ末に成立した吸血鬼が、余分な属性を削ぎ落とした果てに
神格を得るのはある意味では必然の道筋だと思わない?」
吸血鬼の『念動力』は『見えない手』を操る感覚だが、ヒルデガルドのそれは大げさで
はなく天より降る『神の見えざる手』と呼んで差し支えなかった。
一歩一歩が命懸けである。濃密な聖性を纏い、放つその身は、相対するだけでこちらの
身を害する。視線を合わせた時などは、内側から引き裂かれるような苦痛を転げ回りそう
になった。